「おおお!!すっごーーい!!!」
拳藤が目の前に広がる光景に思わずといった様子で驚きの声を漏らす。空港を出てすぐであるにも関わらずそこにはまるで遊園地も見紛うような光景が広がっていた。その光景に圧倒されていたのは拳藤だけでなく伏黒と
あの日受け取った封筒の中に入っていたのはI・アイランドの招待券だった。それを見た伏黒は思わず目を見開き声に漏れるほど驚いた。I・アイランドとは海外に浮かぶ巨大人工移動都市である。そこには世界中の科学研究者たちの英知が集まったまさにサイエンスハリウッドのような島として有名だった。
なんでも雄英体育祭に優勝したことからこの地への招待券が送られたということが同封された書面に書かれていた。その事実に流石は雄英と戦慄する伏黒。すると封筒の中には1枚ではなく3枚の招待券が入っていた。なんでもどうせならば家族で来れるようにと伏黒の戸籍を調べたのだろう。納得しつつもならばとっくに2人とも亡くなっていることも確認しとけよと思わされる。
どう残りの2枚を使おうかと迷っているとどうせならば貸のあるやつや知り合いに渡そうと思い、2人ほど連絡する。1人目の拳藤に連絡すると二つ返事で興奮したように行くと言い、2人目の爆豪に連絡すると初めは施しは受けねぇ的なことを言っていたが、貸を返すためというと納得しながら行くと言った。
2人にはヒーローコスチュームを着た上で来るようにと告げると連絡を切った。そんな訳で今まさにI・アイランドの地に降り立つことになった三人であった。
「集まれ2人とも。まずはチェックインからだ」
「呼ぶなよ。わかってっから」
「わかったー!」
そうしてコスチュームを着込んだ3人が生体認証によるゲートを通って自身の情報を登録させるとそのままホテルへと向かう。I・アイランドは確かに観光のように楽しむという面でも優れているが今回はなんと個性やヒーローアイテムの研究成果を展示した個性技術博覧会《I・エキスポ》が開催されるらしく伏黒達は今回その博覧会への参加権も得ていた。ホテルのチェックインが完了してそれぞれが一泊分の荷物を部屋に置いてコスチュームに着替えると向かい合う。
伏黒は渾を主体とした色合いのコスチュームを着て、爆豪は毎度お馴染みの爆弾をイメージしたようなコスチュームを着こなしていた。壊されていた手榴弾型のサポートアイテムのことを伏黒が聞くとどうやら予備があったとのことだ。
少し遅れて現れた拳藤のコスチュームはノースリーブのチャイナ服にマスクといった普段の自身の戦闘をイメージしたものであった。
「何気に初めてだな。お前のコスチューム見んの」
「私も初めてだよ。お前のコスチューム見んの」
「ケッ、惚気てんじゃねぇよ!で、どうすんだ影野郎?」
爆豪の茶々を受け流しつつ言葉を受け止めると伏黒は少しだけ考え込んでから提案してみる。
「せっかくだ、観光と行くか」
「いいねぇ!出来るだけ色んなもの見ときたいしね!」
「チッ、面倒クセェ…」
伏黒の提案に拳藤は本当に嬉しいのか溌剌に笑いながら賛成し、爆豪は悪態こそついたものの反対の意思はないのか先に行くように歩き始める。
こうしてパーティーの時間までI・アイランドを観光することにした三人。行く先々でさまざまなアトラクションやサポートアイテムを体験していく。そこにあるものに共通しているものなど何一つなくただひたすら飽きが来ない娯楽に拳藤を筆頭に爆豪や伏黒も笑みをこぼす。そして一通り味わっていると岩場のあたりから歓声が聞こえてくる。
「あぁ?なんだ?」
「アトラクション…にしては規模が狭いな」
「行ってみればわかるだろ」
どんな事をやっているのか気になった三人は観客席に足を運ぶ。そうして辿りつき、フィールドに目線を向けるとそこでは何やらゲームのような催しをしていることが分かった。盛り上がっていたのは先ほどの人物がクリアしたからなのだろう。
そして次のチャレンジャーが来た際にルールの説明が始まる。ルールはかなり単純で目の前の岩山にいくつかの仮想敵が設置されていて、それらをいかに早く撃破できるかというものだった。聞き終わると同時にチャレンジが開始するとチャレンジャーが全ての標的の破壊を完了すると「23秒!」という声が聞こえてくる。周りが盛り上がっているのをみるにかなり早いタイムであることが伺える。伏黒はこんなものもあるのかと思っていると、
『そこの日本人の方!どうですか、参加してみませんか!?』
実況が伏黒を指しながら誘ってきた。一瞬、誰に言っているのか分からず周りを見渡すが、指している指の後を追うと伏黒を指していることに気がつく。
「俺ですか?」
『はい!その通りです!』
「ハッ!行ってこいよ影野郎!そんでその後、俺がそのタイムをぶち抜いてやるからヨォ!!」
「お!いいねぇ!それじゃあ私もそれに参加しようかな!」
伏黒は名指しされたことに驚いていると爆豪と拳藤がノリ気になりながら言外に言ってこいと告げる。渋々といった様子でフィールドに立つべくゲートから出てきてスタートの合図を待つ。そして
『ヴィランアタック!レディー…ゴー!!』
開始の合図と共に伏黒は【嵌合纏】を発動させて岩山を2歩で踏破すると【鵺】と【蝦蟇】を呼び出す。三手に分かれた【鵺】と【蝦蟇】、そして【玉犬】を纏った伏黒はそれぞれが目に入ったヴィランを模したロボを片っ端から破壊していく。そして最後の一体を伏黒が破壊するとタイムが停止する。
しかし一向に歓声が湧かないどころか実況の声もあがらないことに疑問を抱き戻ると口をポカンと開けながら絶句する実況がいた。
「タイム」
『え?、あ、え?えーっとタイムは……な、な、な、なんと驚愕!まさかまさかの一桁突入!は、8秒!!?と、当然ですが一位です!!』
伏黒がタイムを言うように告げるとハッとした様子で実況はタイムを確認すると目を見開き何度か噛みながらタイムを発表する。その答えにざわめいていた場が静まり返るとドッと湧くように歓声が響き渡る。
万雷の拍手を送られながら退場する伏黒。しかし、伏黒としては自身にとって有利な条件だったしもっとタイムを縮められたなと反省していた。そして入れ替わるように爆豪がフィールドに出た。それを見届けるべく観客席に戻るとそこには
「かっちゃん!?それに伏黒君!?」
緑色を主体としたコスチュームを着こなすもはや見慣れたそばかす顔の緑谷がそこにはいた。しかもそれだけでなくその後ろには麗日、八百万、耳郎、飯田の姿までもが確認できた。
「伏黒のクラスメイトだったか?お、八百万もいるじゃんか久しぶり」
「け、拳藤さん!?どうしてここに!?」
「伏黒が雄英体育祭で優勝したろ?そん時の報酬で《I・エキスポ》の参加券をもらったぽくってさ、チケットも3枚あったからって誘われたんだ。ほら、爆豪もいるだろ?」
拳藤はそう言いながら親指で岩山の方を指す。指を指した方向にはゲートの合図と共に岩山まで迫ると凄まじい速さで敵を撃破していく爆豪の姿があった。
《これは凄い…!!クリアタイム12秒!?第2位です!!》
「「「おおおおおお!!!」」」
「だあぁぁぁぁぁ!!!クソがァァァァァァァ!!!もう一回だ、もう一回!!!」
「何でテメェがここにいるんだァ!!??アアァァン!!??」
「や、やめようよかっちゃん…人が見て…」
「だぁから、何でだっつってんだァ!?」
さっきのことを見られたことがよっぽど腹が立つのか恥ずかしかったのかは知らないが緑谷達の存在に気付くと途端に血相を変え、先ほどのヴィランアタックよりも早いのではないかと疑うほどの勢いで一直線に緑谷の下へ飛んでいった。そして文字通り唾を吐く勢いで問い詰める。そんな2人の間に割り入ったのは飯田で間に入り込むと同時に爆豪を諫める。
「なんで彼はあんなに怒ってるの?」
緑谷の後ろでそれを見ていた金髪の女性は不思議そうに呟く。それに関しては耳郎が「いつものことです」と呆れたように言い、麗日が「男の因縁です」と少しキリッとしながら言い、伏黒が「誰だか知りませんが気にしたら負けですよ」となんてことなさそうに言う。
そろそろ爆豪の顔つきがヤバくなったことを察した伏黒はため息を吐くと
「緑谷と爆豪、どっちが速くクリア出来んだろーなー」
と言ってみる。すると状況は一変。先ほどまで何でいるのかと問い詰めていた爆豪がやるだけ無駄だとキレ始める。緑谷もそれに対して宥めるように頷いていたのだが、嵌めたのかそれとも天然からか麗日が「やってみなきゃ分からないんじゃないかなぁ」と言い、「うんそうだねぇ」を連呼していた緑谷がそれに対しても肯定してしまう。
と言うわけで緑谷のゲーム参加が決定した。
《さて、飛び入りで参加してくれたチャレンジャー!一体どんな記録を出してくれるのでしょうか!?敵アタック、レディーゴー!!》
開始の合図と共に意外と乗り気だったのかそれともやるからには本気を出すつもりなのか《フルカウル》を発動させた緑谷は凄い速さで走り出していく。そして一気に岩山を飛び越えていくと、いつものように拳でロボ敵をどんどん壊していき、戦い方もオールマイトに似ていることもあって会場の注目を集めていく。
《これは凄い!14秒!第三位です!!》
「「「おおおおおお!!」」」
結果は14秒と爆豪に惜しいところで届かないといった結果となった。その結果を見た周りは拍手を送ると緑谷は少しだけ照れくさそうにしながらその場を後にした。それに対してクラスメイト兼、外野の反応は
「凄いわ!デク君!」「ハッ!雑魚が!」「ん~~~惜しい!!」「流石だな緑谷君!」「おー、やるなアイツ。体育祭の時と別人じゃんか」「まあ、お見事!ところで一位はどなたなのですか?…え?伏黒さん?8秒!?」「《フルカウル》の発動が早くなった…。マジで個性の扱いに慣れてきてるな…」
と様々だったが若干一名を除けば皆が一様に緑谷の叩き出した記録を褒めちぎっていた。すると少しして再度、歓声でフィールドが緩れる。何事かと思い雄英校生と見知らぬ外国人が目線を岩山に向ける。すると岩山が氷に覆われて氷山のように成り果てていた。
これほどの氷結を行える個性は相当であると伏黒達が目線を向けるとそこには白い息を吐く轟がいた。
「轟君!?」
《これまた凄い!12秒!!現在同率2位に躍り出ました!!》
「「「おおおおおおおおお!!!」」」
まさかの雄英生徒の追加に思わずと言った様子で叫ぶ緑谷。その声に反応したのか轟が緑谷に目線を向ける。
「彼もクラスメイト?」
「そんなとこです」
「凄い!流石ヒーロの卵!」
ここまでド直球に褒められたことは中々なかったため――あったとしても取材の方便などくらい――素直に照れる伏黒。すると爆豪はすっかり頭に血が上ってしまっているのか何やら突っかかっている。爆豪と轟との会話?で分かったのだがどうやら招待を受けたのは
こんな喧嘩腰の爆豪を普段から真面目で通ってる飯田が許すはずもなくこれ以上、醜態を晒さないためにも皆で止めるように指示を出す。いつものクラスメイトの様子に少しだけ呆れているとフィールドにいつの間にか拳藤が出場していた。
《さあ!今日午前の部最後の挑戦者です!!一体どんなパフォーマンスを見せてくれるのでしょうか!?》
「やんのか、拳藤」
「まぁな。最後っぽかったし丁度いいでしょ」
伏黒の言葉に対して前を向きながら手を振ってそう答えるとスタートの合図を待つ。そして
『ヴィランアタック!レディー…ゴー!!』
開始の合図と共に個性を発動させて左手を巨大化すると全力で地面を叩く。するとその勢いに押されるように拳藤の体が大きく跳ねる。すると中盤くらいの高さまで岩山に突っ込んでいくと、次は右手を巨大化させると岩山に叩きつけて再度跳躍する。
今度は岩山の倍近くの高さまで跳ぶと、いつの間にか握っていた――後から聞くと叩きつけた際に岩盤を毟り取ったらしい――人1人包み込めるほど大きい手に握られていた岩を程よい形の石が残るように潰すとロボ敵目掛けて投擲する。
するとまるでとてつもなく巨大な散弾銃が放たれたかのようにフィールド全域から土煙が上がる。そして同時にタイムアタックも終了した。
《き、記録は…えっ!ええぇぇぇぇぇぇ!!!??な、7秒!!??な、なんと先ほどに続いて一桁台が出ましたーーーー!!!しかも記録更新!!!信じられません!?》
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」
塗り替えられないと思われていた記録を可憐な女性が塗り替えたこともあって会場がどっと沸く。そしてまさかの結果に生徒達も驚きの表情を浮かべていた。
「な、7秒!?嘘でしょ!?」「あんの、メリケン女ァァ!!」「うっわ、マジか」「ええ…B組の子、スッゴ…」「凄まじいな」「アイツ、ゴリラ振りに拍車がかかってんな」「え、ええ……?」「け、拳藤さん。体育祭でも凄まじい方だとは思ってましたけどもここまで強くなってたなんて…!」「す、凄い…!!!一瞬で終わっちゃった…とんでもない人ね!」
A組全員が思い思いの言葉を吐いていると拳藤は振り返ると伏黒に向かって快活に笑いながら手でVサインを送る。こうしてこの催しは最終的に拳藤の記録が最高値となって一旦終わり、昼食休憩を挟んだ。