筋肉質な初老の男性の腹部に拳藤の拳がドウッ!という生々しい音共に突き刺さる。それと同時に伏黒の影の中で泳いでいた【玉犬・渾】が現れると拳藤が頭をずらして避けることで一撃が視覚外から顎を跳ね飛ばすようにして突き刺さる。
そしてガラ空きに重なった顎目掛けて拳藤の拳が突き刺さり、胴体に伏黒の《如意金箍》が叩き込まれる。パワフルな拳藤に合わせるのは伏黒にとって
「……フム」
しかし相手はまるで聞いていないかのように首をコキッとだけ鳴らす。これに伏黒も拳藤も驚かされる。そして驚愕する2人を見た男は腹巻きに収納していた匕首を抜くと拳藤目掛けて振るう。
咄嗟に拳藤は避けたものの服が裂ける。そして伏黒は影から呼び出した【蝦蟇】の舌を男に巻き付けると凄まじい勢いで轟が展開した氷壁目掛けて叩きつける。
「拳藤!!」
「
そう言いながら裂けたドレスの胸元部分を見せると胸が見えただけで怪我は見当たらなかった。それを理解すると伏黒はすぐにヴィランに向き直る。
「元気元気。おまけに将来有望ときた。ひひ、殺り甲斐がある」
肩についた粉氷をはたき落としながらなんてことなさそうに現れる。伏黒の【玉犬】の爪はこの建物のシェルターもバターのように切り裂ける。拳藤の一撃は今回きた雄英生の中で最も重い。殴った時に感じた触れた感覚も硬化のそれではなく肉の感じがした。ならば何故、何故ダメージがないのか。
「時間かからねぇんじゃねぇのか」
「……ノーコメントで」
伏黒の言葉に拳藤は思わずと言った様子で目を逸らす。
「来ないのか?年寄りを待たせるのはいかんなぁ。ならこっちから行くぞ!」
すると先ほどまで受け身であったはずのヴィランはまるでバネのような勢いでその場から飛び出すと同時に伏黒の顔目掛けて回し蹴りをかますがそれを難なく避ける。
上体が浮いたことを見逃さなかった拳藤が再度拳を叩き込むがまるで効果はなく、逆に勢いを利用されて顔目掛けて放たれたハイキック喰らう。それを喰らった拳藤は思わず仰け反ると伏黒は咄嗟に取り出し短くした《如意金箍》で男の側頭部目掛けて振り下ろす。
しかし、これも効いた様子は見られずにぐりんと振り返ると持っていた匕首を伏黒目掛けて振るう。これを何とか伏黒は防ぐと拳藤と共にその場から飛び退く。
「ヒヒヒ、楽しいぜ」
愉快そうに笑う男は未だこれといってダメージが通ったようなところは見られない。
「マジでどうなってんだ?いくら何でもタフってレベルじゃない」
拳藤の言葉に伏黒は内心同意する。硬化系の個性でないのは触れてわかったが見当もつかない。十中八九、個性絡みなのは違いないだろう。ふと、無効化の文字が伏黒の脳内で浮かぶと思いつく。
「おい!!オールマイトが来てる!!さっさと逃げたらどうだ!!」
伏黒は軽く威を込めた言葉を発する。伏黒の予想が正しければ
「くっくっくっ、ハッタリが下手くそだな。お前さん方ほど優秀なら捕まってることくらいわかんだろ。つーかだから
嘲りながらそう返す男の言葉に伏黒は予想が確信に変わる。目の前の男ではオールマイトには勝てないことを。となると男の個性が『無効化』などという大それたものではないことを。拳藤も初めは訝しんでいたが何となく察してくれたのか納得していた。
「やる気がないなら。そろそろ死ぬか?」
「伏黒!来るぞ!!」
異常者特有の気配を垂れ流しながらそう言う相手に対して拳藤が拳を構える。そのやりとりを見てふと伏黒が禿げ上がった頭のある部分に目線がいく。そして
「【脱兎】」
伏黒の影から幾百もの兎が飛び出してくる。そしてその内の一体が男の肩に当たる。
「ツッ」
そう言いながら確かに半歩後退した。拳藤の一撃も【玉犬】の爪も意に返さなかった男がである。そしてそれを見た瞬間、全てが繋がると【脱兎】に男をドーム状に囲うように命令する。ドーム状になって隠れた男を見届けると伏黒は拳藤の肩を叩く。
「奴の個性がわかった」
「おぉ!!」
【脱兎】の内の一体をいつの間にか握っていた拳藤が驚きに声を上げる。そして個性の詳細に関しての予想について説明していく。
◇
ヴィラン、
若い頃は「人体をよく知るため」と人の顔の皮を平然と剥ぐなど、生粋のサディストである。「病気がちな母に贅沢をしてほしい」との思いから、大金を稼ぐためヴィランになった、という過去を持つ。……みたいな嘘を平然とつくなど、純然たるゲスそのもの。
力を他のために使うのではなく己の私腹を肥やすためだけに使い、女子供も平然と殺し弱者を蹂躙する正真正銘の鬼畜である彼はかつて超常社会が確立されるよりも前は自由で人生を謳歌していた。年々増え続ける個性犯罪に手一杯なヒーロー達に対して上手く立ち回れば何者にも縛れず楽に稼げたから。自由にそしてわがままに生き続けた。
しかしその自由は晩年にして奪われることとなった。そう、オールマイトの登場である。かつてAFOにオールマイトの殺害を依頼された際に自身を遥かに上回る存在であるということは一目見ただけで理解させられた。そうして少しずつ犯罪件数も減っていき居場所がどんどんなくなっていった。
するとある日かつてのクライアントであったAFOから連絡が入る。内容はオールマイトへの嫌がらせらしい。初めは一笑に伏して連絡を切ろうとしたのだがウォルフラム という男の立てる計画を聞いた 粟坂二良は乗り気となり、拘束されたオールマイトを見て幾年ぶりかの高揚を感じた。
粟坂二良は憤っていた。自由を奪う?ふざけるな!俺は生涯現役!!死ぬまで弱者をいたぶり続けるのだ!!と。
そうして今日も2人の子供と出会した。1人は生意気だと思いたくなるほど整った顔をしたどこかで見たことあるような男と学生とは思えないプロポーションとルックスを持つ女だった。
粟坂二良は夢想する。女は犯すと決めたが男はどうしてやろうかと。目の前でやるのもありだと影で作られた【脱兎】に囲まれながら考えていると【脱兎】がバシャという音共に消えると【虎葬】が自身目掛けて拳を叩き込んできた。
「はっはっは!!なんじゃこりゃ!!」
吹き飛ばされて壁に再度叩きつけられるものの難なく立ち上がる。すると次の瞬間には【虎葬】が消えていた。
「出したり消したり忙しない!男ならはっきりしろい!!」
「そういうのは俺の担当じゃない」
粟坂は伏黒の指差した方に目線をやると自身目掛けて大量の樹木やドアだった鉄板が突っ込んでくる。それを受け止めた粟坂は内心拳藤の膂力に冷や冷やとさせられる。
そして伏黒の力みの加わった大ぶりを見て内心で笑みが浮かぶ。《如意金箍》を素手で受け止めると片手に持ってた匕首で突く。そして左側から力強く拳を握り締め「シッ」という掛け声と共に一撃を放つ拳藤と今度は【嵌合纏】を発動させて《如意金箍》を振るう伏黒を見ていよいよ笑いを堪えることが出来きずに待ち構える。
粟坂二郎の個性は【あべこべ】。当たった攻撃を強ければ弱く、弱ければ強くするといったもの。今の今までこの個性を解き明かせずに必死の一撃を当てた後のカウンターを躱せたものはいない。必死になればなるほどこの個性のドツボにハマる。
粟坂はまずは冷や冷やさせられた拳藤にと思い個性を最大解放。いつでも受け入れる準備をした。
そして粟坂はブワッと冷や汗が流れる。そして同時に口から血を吐き出した。
◇
「あいつの個性は多分【あべこべ】だ」
「喋ってもいいのか?」
「【脱兎】の気密性を舐めんなよ。ああなったら音も逃さない」
拳藤の心配に対して大丈夫と告げると話を続ける。伏黒が初めに疑問に思ったのは《如意金箍》を叩きつけた際に生じた傷跡にあった。拳藤よりタイミングがズレたにも関わらずだ。おまけに手持ち最弱の【脱兎】の体当たりを食らってよろめいたり、囲まれてもすぐに逃げ出さなかったのもそうなのだと言う。
「じゃあ、デコピンでいけるのかってなるけどそんな単純じゃないよな」
「まあ、弱すぎだと意味はないな」
それもその筈。ただの《あべこべ》であればそれこそ空気抵抗や重力など途轍もなく微細な力で自滅してしまうことになるのだから。となると思い浮かぶのは上限。攻撃に合わせて上限、下限を調節しているのであれば納得がいく。故に規格外のオールマイトなどには意味をなさない。
「となると攻撃方法は同時だな。強い力とある程度弱い力で同時に叩く!」
「それをやるには多少のブラフは張るぞ。バレたことを悟られたくないしな。―――俺たちはこのまま馬力をアピールする。そうすれば相手は勝手にまだバレてないと勘違いする。そこを叩くぞ」
「了解!」
下ろしていた髪をいつものようにサイドテールのようにして纏めると元気よく応える。そしてこの瞬間から拳藤と伏黒の作戦は始まっていたのだ。
口から血を流した粟坂は自身の腹部に突き刺さるピンク色の舌を見た。目線の先にはいつの間にかいた打撃力の低い【蝦蟇】が舌を口に戻しているのがわかる。そして理解した今この瞬間から自身が狩られる側に回ったのだと。
「貴様らッ」
粟坂が何かを言い終わる前に伏黒と拳藤のコンピネーションが突き刺さる。それが炸裂するたびに粟坂の体に傷が増える。しかし弱者しか相手したことがないとはいえ粟坂は数十年人を殺し続けてきたベテラン。すぐに伏黒と拳藤を匕首を振るうことで引き離す。
「この程度でッ!調子に乗るなよォ、餓鬼共がァァ!!」
烈火のような勢いでそう吠えると長年の勘が強い一撃が放たれるのを感知する。それに合わせて粟坂がカウンターの容量で匕首を放つも拳藤は首を傾けて回避する。そして寸前で攻撃をピタッと中断した。
「は?」
突然のことに粟坂が呆気に取られていると次の瞬間には拡大した拳が粟坂の顔面に突き刺さる。消えゆく意識の中で粟坂は1人、時間差で勢いを殺したのを利用したと理解すると意識は完全に途絶えた。
「お前、意外と器用だよな」
「そうか?それにどうでもいいでしょ勝ったんだから。ハイターッチ!」
呆れながらそう言う伏黒に拳藤はあっけらかんとしながら応えると笑って手のひらを突き出してくる。それを見た伏黒はため息を吐きながら手を勢いよく互いの掌を合わせてパンッという高い音を鳴らす。
◇
ヴィランを縛り終えるとドレスが裂けていることもあって伏黒は自身が着ていた羽織を拳藤に着させる。そしてシステムの主導権を取り戻したのか閉まっていたシェルターが開いていた。シェルターのなくなった道を走り続けていると開けた場所に出る。すると、凄まじい振動がタワーを揺るがした。
「ッ!!なんだ!」
「どうやら間に合わなかったみたいだな」
伏黒が震源地と考えられる場所に目線を向けると塔の最上階の部分一帯に青い稲妻模様が何本も現れと同時に宙には重力に逆らいながら塔の破片がいくつも浮かびあがるのが見えた。そしてそれらの破片が屋上のある一点に集約していき、巨大な怪物のようなモノと成り果てた。
「おいおいマジかよ」
「チッ、行くぞ拳藤!」
「わかってるよ!」
システムが元に戻ったのか空いていた場所に入り込むと拳藤に屋上へ向かうよう促し、塔を登っていく。登り詰めるとそこには血を吐きながら敵の攻撃に耐えているオールマイトがいた。
奥の手を切られたからにはそれなりに追い詰められていたと思っていたが思ってた以上に追い詰められていたことにギョッとする伏黒。そうこうしている間にオールマイト目掛けて挟むように縦幅3メートルを超える幾つもの金属を混ぜ合わせたような塊が迫る。
「拳藤!ぶん投げろ!」
「わかった!オラァ!!」
伏黒が【嵌合纏】を発動させて跳躍すると拳藤が手を巨大化させて待ち構える。そして手のひらに乗った瞬間、オールマイトに迫る金属塊目掛けて伏黒をぶん投げた。そして手が【玉犬】のようになった伏黒は左側の金属塊を切り刻み、右側から迫っていた金属塊は爆豪が壊した。
「遅すぎだ影野郎!!」
「強敵だったんだ多めにみろ!」
「伏黒君!かっちゃん!」
2人の登場に少しボロボロな緑谷が叫ぶ。するとそれと同時に敵に纏わり付いた金属が一斉に凍り付く。これには敵も驚き、一瞬動きを止めた。それを伏黒と爆豪が見逃すはずもなく。
「くらってけ!」
「くたばりやがれ!!」
「チィッ!!」
ヴィラン目掛けて攻撃するが金属に纏わり付いた氷を砕くと金属で壁を作り上げて2人の放つ攻撃を難なく弾く。そして防御に回していた金属の壁が鋭く尖るもの伏黒、爆豪目掛けて殺到する。しかしこれは飯田、拳藤の両名が粉々に砕き、氷結の範囲を広げることで出来るだけ多くの金属を轟が引き止める。
「あんな雑魚さっさと倒せや!オールマイト!!」「こっちはこっちで引き受けますので後はお願いします」「大丈夫ですよ。私たちはこんなんでもヒーローの卵ですから」「行ってください!オールマイト!」
「全く近頃の若い子たちは…そこまで言われちゃあ出来ませんなんて言えないよなぁ!!」
再度大きく笑うと自身にのしかかる巨大な金属の塊を吹き飛ばし跳躍する。それに追い縋るように迫っていく大量の金属を出来る限り減らすべくヒーロー科全員が爆破で爪や電撃で氷と炎で蹴りで拳で片っ端から破壊していく。手数が減って余裕が出てきたからか先ほどまで防戦気味だったのがオールマイトは攻撃に転じることができつつある。
教え子達に発破をかけられ再び奮起したオールマイトは迫り来る金属の塊を悉く粉砕していき、一気に勝負を決めに行く。
「観念しろ!敵よ!」
迫り来る金属塊をクロスチョップで粉砕すると射程圏内まで近づく。そして渾身の右ストレートを敵に見舞うべく空に浮かぶ金属を足場に踏み込むとヴィラン目掛けて突っ込むオールマイト。しかしその拳が当たる直前に身体が縛り上げられて動きを止められてしまう。
「この程度…!!ぐお……っ!?」
「観念しろだと?そりゃお前だオールマイト!」
縛り上げられた状態から脱出しようとした時、ヴィランがオールマイトの首を締め上げる。それを気にせず脱出しようとした瞬間、いきなりオールマイトの首にかかる圧力が強くなった。あまりの力にオールマイトの動きが止まる。
すると突然、ヴィランの肌が赤く染まり腕が生ゴムを詰めたかのように何倍にも膨れ上がる。この変化にその場にいた全員が驚愕する。何せ相手の個性は見た限りでは【金属操作】。間違っても増強系の個性ではない。その考えに至った瞬間、
「「「まさか…!?」」」
オールマイトと伏黒、緑谷の頭にある一つの単語が浮かぶ。かつてオールマイトを死の淵に追いやってみせた巨悪の名前を。
「うぐ…っ!?ぐ、ぐがあああああああああああああああ!!??」
オールマイトの苦痛にもだえる声が戦場に響き渡る。まるで知っているかのようにヴィランはオールマイトの左脇腹を強化された筋肉を用いて握りしめる。事情を知っている2人が駆け寄ろうとするも緑谷は個性の反動からか痛みに思わず顔を歪め、伏黒も迫り来る金属塊に手一杯でそれどころではなかった。
「気付いたようで何よりだ。この強奪計画を練っているときあの方から連絡が来た。是非とも協力したいと言った。なぜかと聞いたらあの方はこう言ったよ!『オールマイトの親友が悪に手を染めるというのなら是が非でもそれを手伝いたい。その事実を知ったときのオールマイトの苦痛に歪む顔が見られないのが残念だけれどね。』とな!」
「オール、フォーワン…!!!」
「ああ、よかった…。やった甲斐があったよ…。何せそのにやけヅラが取れたようだからなぁ!!」
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
オールマイトの顔から笑みが消えるのと激昂するのはほぼ同時だった。その怒りに身を任せて拳を振り抜こうとするも、逆に金属の塊をぶつけられ後方に吹っ飛ばされてしまう。そして間髪入れずに大小様々ないくつもの立方体型の金属の塊が同時に迫り、オールマイトを押し潰した。
「トドメだ」
纏って一つになった金属の塊目掛けて槍のように変形させた金属を突き刺す。それを見た誰もが動きを止めた。
しかしその沈黙は1人の
「SMAAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!!」
いつの間にか装着していた赤いガントレットを纏った拳を巨大な金属塊に叩きつけて砕き割る。遠くからで伏黒は聞き取ることはできなかったがオールマイトの笑い声が聞こえたことからなんとか立て直すことはできたらしい。
「くたばり損ないとガキ共が…!ゴミの分際で…!!往生際が悪ィんだよ!!!!」
「そりゃあテメェだァァ!!!」
ヴィランが叫び声を上げながら敵が金属の塊を一斉に放つ。それに対して爆豪が手の痛みに一瞬だけ顔を顰めるとすぐさま両手から最大火力の爆破で飛んでくる金属を吹き飛ばす。
「行け!緑谷!オールマイト!」
そして触手のような形状をした金属が伸びてくるのを轟が白い息を吐きながら巨大な氷の壁を作り上げ攻撃の進行を止める。こうして2人の尽力で生まれた隙をついて2人は伸びている金属に飛び乗るって本体へと突き進む。オールマイトが拳で敵の攻撃を粉砕すると緑谷は蹴りで鉄塊を破壊していく。視覚の外で放たれる攻撃は飯田と拳藤が壊していくことで道を作る。
緑谷とオールマイト、二人が金属の道を駆け上がり敵まで一気に迫っていくと突如敵が雄叫びを上げる。
「くっ、クソがァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!うおおおおおおおおおおお!!!!」
敵は迫り来る2人の気迫にありったけの金属を一点に集中させて超巨大な立方体の金属塊を形成する。周りが唖然とし見上げるのを見たヴィランは勝ちを確信するとオールマイトと緑谷を置き去りにしてオールマイトほどの大きさを誇る何かが巨大な立方体の金属塊を半壊させる。
「はあぁぁぁぁぁ!!??」
「チッ!全壊とはいかねぇか」
それは伏黒の現在持つ中でも最強の式神、【虎葬】と【鵺】を組み合わせて生まれた【雷跳虎臥】。そしてその状態で放たれる《迅雷》は音を置き去りにしたまま拳を金属塊に叩き込んだのだ。
「グゥぅぁゥゥ!!!クソがァァァァァァァァ!!!」
それを見たヴィランは狼狽えながらもヤケクソになりながら手を振りおろすと半壊になった金属塊を2人目掛けて振り下ろす。しかし
「「W・DETROIT SMASH!!!!」」
脆くなった盾で防げるほど2人の一撃は柔ではない。下から登る白い流星が容易くヴィランの一撃を粉砕するとその勢いのまま天高く駆け上がる。
「行けぇぇぇぇぇぇ!!!」
「「オールマイト!!!」」
「「「「緑谷!!」」」」
「「「ブチかませ!!!!」」」
皆が一様に声援を送ると、それを受けた2人は最後の攻撃に移る。
「さらに!」「向こうへ!!」
「「Plus Ultra!!!!!」」
そしてオールマイトと緑谷の渾身の拳が敵の身体に直撃した。
◇
「いやー楽しかったねー」
「どこがだ。最終的に建物含めて全員まとめてボロッボロだろうが」
「それも込みで楽しかったって言ってるの」
手を頭の後ろで組みながら笑ってそう言う拳藤に伏黒は思わずため息を吐く。あの後、2人の一撃で動かなくなったヴィランを見た皆んなは一斉に喜ぶと同時に倒れ込んだ。無理もない話で何せ全員が全員、全力を超えての戦闘だったため限界が来たのだ。
伏黒にとって緑谷と右半身だけを見せながらだったがオールマイトが伏黒に向けてぐっと親指を突き出していたのが思い出深かった。
その後は他のエキスポに訪れていたヒーローたちがなんとかした。倒れているヴィラン達を捕縛し倒れた雄英生全員を担架で運んだ。そのまま次の日になっていざ観光、とはならずにあんなことがあったこともあってそのまま帰宅となった。
「でもまぁ正装を貰ったんだしいいじゃない?」
「それは喜ぶことなのか?」
少し的外れなことを言い拳藤に対して伏黒はそう言うと自身の紙袋の中を見る。中身は今回あったことに対する賠償金とレンタルした筈の正装が中に入っていた。
「別に金に関しては要らなかったんだけどなー」
「貰えるなら貰っとけ。それに正装はよかったのか?」
「いいの!だってああいうの着るのって女の子にとってはとても幸せなんだよ?」
そう言いながら拳藤は袋から正装を取り出すと自分の体に重ねるように翳すとニッと夕陽が映えるように笑う。それを見た伏黒は少しだけフッと息を吐くと少しだけ笑った。
「それじゃあここまでだな」
そうして別れ道に差し掛かると伏黒と拳藤は帰り道がちがう事もあって別れる。
「次は林間合宿で」
「おう!」
そして長く感じたが短い《I・アイランド》での出来事は忘れられない思い出となって終わった。
かなり駆け足でしたが、これにてI・アイランド編は終了です。