伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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I・アイランド、そして林間合宿①

 

 

「雄英校は一学期を終え、現在夏休み期間中に入っている。だが、ヒーローを目指す諸君らに安息の日々は訪れない。この林間合宿でさらなる高みへ、Plus Ultraを目指してもらう!」 

 

「「「「はい!!」」」」

 

 あの《I・アイランド》での一件からしばらく経った後に伏黒は購入した水着を着て常闇や蛙吹、拳藤と共に海に行ったりとかなり夏休みをエンジョイしていると夏休みも終わりあっという間に八月中盤に差し掛かった。そしてA組生徒全員がバスロータリーで相澤の話を聞いていた。すでに林間合宿が楽しみなのか芦戸や上鳴あたりはニッコニコである。何気にこの手のイベント(集団での旅行)が初めてなこともあって伏黒も浮ついていた。すると、

 

「え?あれ?あれあれあれあれ!?A組補習いるの!?それって期末で赤点取った人がいるってこと?えぇ!?おかしくない!?おかしくない!?A組はB組よりずっと優秀なはずなのに!?あれれれれぇぇぇ!?」

 

 もはや隠す気がさらさらないのか「ど」が付くレベルで直球にB組の物間がA組を馬鹿にしてくる。順応能力が高いA組は見慣れて来たのかこれといって反応を見せなかったものの、流石にB組の面々は許容できなかったようで。

 

「ゴメンな~」

 

 拳藤は物間の首筋に手刀をかまして気絶させると物間を引きずりながらA組に謝る。そんな物間にB組男子は特に反応しなかったが女子は見慣れてない者もいたのか口々に反応を溢したりする。

 

「物間怖…」「体育祭じゃなんやかんやあったけど、ま、よろしくねA組!」「ん」

 

 そう言い残すと「ホラ行くぞー」という拳藤の指示に従ってバスに乗り込んでいくB組の生徒達。そんな様子を見た峰田が入学時より悪化したのか「よりどりみどりかよぉ〜」と涎を垂らしながらそう言うと流石に見兼ねたのか切島がツッコミを入れる。そんな2人を他所にA組も飯田の指示に従ってバスに乗り込んでいく。そして全員がバスに乗り込むとバスは発車した。

 

「1時間後に一回止まる。その後、しばらくは……聞いてるのか?」

 

「席を立つべからず!立つべからずなんだ皆んな!!」「音楽流そうぜ!夏っぽいの!チューブだチューブ!」「バッカ!夏といえばキャロルの夏の終わりだぜ!」「終わるのかよ」「ポッキー頂戴!」「いいよー、ホレ」「伏黒ちゃん、常闇ちゃん、お茶子ちゃん、しりとりしましょう」「乗った。では、しりとりの『り』」「リンカーン大統領の『う』」「うん十万、あ!円!」「「終わったな」」「終わったわね」

 

 林間合宿ということもあって皆の気分が最高潮へと向かい続けている。委員長の飯田でさえも相澤が話しているのが聞こえなかったのか話している内容は伝えずにバス内で立とうとしている人間に注意するだけだった。そんな様子を見た相澤は軽くため息を吐くだけで此れと言って突っ込まずに前を向き直した。

 

 それを見ていた伏黒は普段注意するタイミングで注意しなかったことに一瞬だけ不思議に思ったもののすぐに話しかけてきた葉隠に意識がいってその思考ははるか彼方へと飛んでいった。

 

 

 そうしてバスに揺られること約1時間。相澤の宣言通りバスが止まるとA組の面々は座りっぱなしの体を伸ばすため、飲み物を購入するため、手洗いに行くためなど様々な理由で下車する。

 

 しかし、止まった場所はパーキングなどではなく。

 

「休憩だー…って、あれ?」「何処ここ?」「ねぇアレ?B組は?」「お、おしっこ…」

 

 どこの山にもありそうな展望所だった。聞いてた話と違う事態に困惑するA組生徒達。

 

「まあ、何の目的もなくでは意味が薄いからな…」

 

 そんな彼ら彼女らを見ながら相澤はそんな不穏なことを呟く。伏黒の脳内には先ほどの騒ぎで注意しなかったことと今の呟きが組み合わさって嫌な予感が脳内でアラームのようにけたたましく鳴り響く。

 

「よーうイレイザー!!」

 

「ご無沙汰してます」

 

 すると展望所に置いてあった軽自動車から2人の猫を模したメイド服風のコスチュームと猫の手型グローブを着用した女性とツノのような突起物が生えた帽子を被る少年が姿を現す。その2人に対して相澤は深く頭を下げる。すると2人はいきなりテンションを上げてポーズを決めながら自己紹介を始める。

 

「煌めく眼で~ロックオン!」「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

「「「「……」」」」

 

 途中下車といい現れた直後のハイテンション振り。これらのいきなりのことに皆が唖然としてしまう。そんな全員を他所に相澤が紹介する。

 

「今回お世話になるプロヒーロ-、プッシーキャッツの皆さんだ」

 

「ワ、ワイプシだぁ〜〜!!」

 

「ワイプシ?今いるヒーローの略称かなんかか?」

 

「うん!そういえば伏黒君はこの手の話題に疎かったね。ワイプシはね?」

 

 そうやって始まる緑谷のヒーロー講座。ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツことワイプシはマンダレイ、ピクシーボブ、虎、ラグドールの4名で構成されているベテランヒーローチームでランキングも数ある中でも30番代に乗るほどの有名ヒーローとのことだ。活躍は戦闘よりも山岳救助などの陸で起こる災害などが目立つらしい。

 

 因みに今目の前にいるのは赤を主体としたコスチュームに黒髪ボブカットの女性がマンダレイで青を主体としたコスチュームに金髪でメカメカしいゴーグルつけた女性がピクシーボブとのことだ。

 

「そしてキャリアは今年で12年にもな…ムグ!」

 

「心は18!!」

 

 ボフッという音共に緑谷の言葉を遮るピクシーボブ。割と気にしているのか心は18と緑谷に復唱させる。それを見た伏黒は必死かよ、と思わされているとマンダレイが柵の方へと足を運ぶ。

 

「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」

 

「「「遠っ!!」」」

 

 そうして指を指した方向に皆が目線を向けるが薄らと建物らしきものが言われてみればたいうレベルでしか見えなかった。高いところから見てこれならばどう考えても5km、最悪10k m近くの距離があると考えられる。あまりの距離に思わずA組の面々は叫ぶと同時に浮かれた気分が少しずつ冷めていく。

 

「え?じゃあなんでこんな半端な所に?」「やっぱりこうなったか……」「いやいや~…」「ハハ、ハハハ…バス戻ろうか。な?早く…」

 

 厄介ごとの匂いを感じ取ったのか、クラスメイト達は皆バスに戻ろうとするが無駄だと何となく察していた伏黒は目に諦観を浮かべる。しかしそんな様子を気にせずにマンダレイは構わず言葉を続ける。

 

「今は午前9時30分。早ければ…12時前後かしら」

 

「おい!ダメだ…!全員引け!」「戻るよ!!」「バスに戻れ!!早く!!」

 

「12時半までかかったキティはお昼抜きね~」

 

 育ち盛りの若者達には死刑宣告と同義な事をしれっと言うマンダレイにクラスメイト達の予感が確定に変わった瞬間、全員が一斉にバスの出入り口目掛けて殺到する。しかしその足掻きも虚しく。

 

「悪いな諸君。言い忘れてたよ」

 

 相澤が言葉を発すると同時に地面がぬかるみ始める。そして地面に手をつけたピクシーボブを起点に波のように揺れ動くとまるで津波のようにクラスメイト達目掛けて襲いかかる。

 

「すでに合宿は始まっている」

 

 そうして土砂で出来た津波に巻き込まれたA組の面々が冊を越えて崖下に落とされていく。

 

「さてと―――何サラッと逃げてんだ伏黒」

 

「あんなんされたら誰だって回避しようと思いますよ」

 

 たった1人伏黒を除いて。伏黒がやったのは簡単。山津波と見紛うほどの土砂を前に咄嗟に【嵌合纏】を発動させ【虎葬】を纏う。そして土砂の中でも比較的薄い場所を見つけてそこに一撃を見舞い、風穴を開けるとそのまま脱出し今に至る。

 

「へぇ、やるじゃんあの子」

 

「雑にやったとはいえあれを避けるなんてやるじゃないの!将来有望だわ!今のうちに唾でも「ピクシーボブ」はいはいわかったわ。回避できたところ悪いんだけど降りてくれない?安心して多少高いけど私の個性でクッション作ってあるから」

 

「わかりました」

 

 そう言いながら崖へと向かうと伏黒は一瞬だけ目に映った子供が下らなさそうに自身を見ているのに気づくと何やら訳ありなことを察する。今はそれを気にしてる場合じゃないなと崖まで辿り着くと伏黒はそのまま飛び降りる。

 

 

 一名を除いてA組が悲鳴を上げながら落とされた先に広がっていたのはどこか薄暗く広大で鬱蒼とした森だった。すると柵から身を乗り出してマンダレイが皆に伝わるように大きな声で伝える。

 

「ここは私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間、自分の足で施設までおいでませ!この…"魔獣の森"を抜けて!」

 

 毎度お馴染みのエンタメ要素を全面に押し出したかのような名前にまた何かあるなと確信する伏黒。そんな伏黒は先ほどまで堪えていた峰田が解放されたように駆け出すのを見て服の裾を掴んで止める。

 

「何だよぅ伏黒ぉ!止めんだったらお前の前で漏らすぞ!いいのかぁ!?」

 

「小便するならそこの木陰でしろ。『魔獣』なんてドラクエめいた名前があんだ十中八九、何かしけてるだろ」

 

 裾を離した伏黒を睨みつけながらそう言う峰田に伏黒は諭すようにそう言うと指を指した方で用をたせという一瞬迷っていたが堪えるのは不可能だと判断したのかそのまま木陰へと峰田は姿を消す。

 

 そして間をおかずして草木をかき分けて、まさしく下顎から生えた図太い牙と体を持つ眼のない顔、そして伏黒と同等の体高を誇るまさに〝魔獣〟と呼ぶにふさわしい巨大なモンスターが2体同時に現れた。

 

「「マジューだぁぁぁぁーーー!!」」 

 

「おお、真に迫ってるな」

 

「口田!」

 

『静まりなさい獣よ!下がるのです!』

 

 叫ぶ切島と瀬呂の2人と思っていたよりクオリティが高かったことに驚嘆する伏黒に対して芦戸がすぐさま口田をけしかける。動物と対話して操る個性を持つ口田はすぐさま個性の使用に踏み切るが一向に従う様子が見られない。むしろ上体をあげて口田目掛けて前脚を振り下ろそうとする。

 

 その時、体からボロボロと土塊が溢れていくのが確認される。生き物ではなくピクシーボブの個性由来のものだと知ると右から現れた魔獣を飯田が【エンジン】で加速させて蹴りと緑谷が《フルカウル》で強化した拳と轟が氷結で砕く。そして左から現れた個体は爆豪は爆破と伏黒が【嵌合纏】で【玉犬】を纏った爪で土でできた魔獣を砕く。

 

「ふいースッキリしたー…って!何じゃこりゃあ!!」

 

「説明は後だ!八百万!作戦の考案!【鵺】を飛ばしたから俺が空から索敵する。障子は個性を使って地上の索敵を頼む!」

 

「わかったやってみよう」

 

「わかりましたわ!爆豪さん…って、ああ!?爆豪さんがいない!ああもう!切島さん爆豪さんの後を追ってください!」

 

「おう!わかった!」

 

 八百万が咄嗟に指示を出そうと爆豪の名を呼ぶも爆豪が爆煙を残していないことに気づく。それに少し憤ると切島に爆豪を追って追いつくまでは共に行動するように指示する。切島を見送った八百万は大きく息を吸うと一気に陣形を発表する。

 

「索敵は庄司さんそのままお願いします!緑谷さんと飯田さんは前衛で敵を蹴散らし続けてください!左翼側は青山さん、上鳴さん、尾白さんが担当を!瀬呂さん、梅雨ちゃん、麗日さん、峰田さんは足止めを兼ねた殿を!右翼側は常闇さん、芦戸さん、葉隠さんが担当を!残りの広範囲を攻撃、あるいは行動できる私と轟さんと伏黒さんで全体の空いた部分のカバーを行います!」

 

「おい!ざっくりとこの森を把握したが明らかに3桁近い土魔獣がいるぞ!」

 

「【鵺】を通してわかったがどう飛んでんのかしらねぇけど滞空型の奴もいる。かなり骨が折れるぞこれは…」

 

「わかりましたわ!各自指示通りの陣形を組んでください!皆さん全力でいきますわよ!」

 

「「「「「「おう!!」」」」」」

 

 こうして急遽始まった"魔獣の森"の攻略。それぞれの個性を活かして次々と押し寄せる魔獣を走りつつ仲間と連携していくことで破壊していく。そして指を指されただけで場所すら曖昧な宿泊場を目指し突き進み始めた。

 

 

 そしてあれから指定されたPM12:30を過ぎて何時間も経過し、現在PM4:00。途中で合流した爆豪、切島コンビを含めて何とか進むスピードも増した。しかし、コスチューム無しというのもあったが、慣れない土地であるが故に索敵に時間と労力がかかり、整備されてない凸凹な道に足を取られて体力を必要以上に削られるなどの足止めがあった。

 

 それが理由で今現在、全1年A組の生徒全員が個性の使用的な意味でも体力の上限的な意味でも限界に到達し肩で息をしていた。

 

「――とりあえず、お昼は抜くまでもなかったねぇ」

 

 宿泊施設の前でA組の面々の出迎えをしているマンダレイの言葉通り、確かにお昼を抜くとかどうとかの次元ではなかった。何せ現時刻はPM4:00と魔獣の森の攻略スタートから6時間半もかかったのだから。

 

「何が『3時間』ですか……」「腹減った…死ぬ……」

 

「いやー悪いね。あれはあくまでも私たちなら(・・・・・)って意味よ、アレは」

 

 切島と瀬呂の2人が思わず泣き言を言う中、少しだけ申し訳なさそうな顔をしつつもマンダレイはあっけらかんと答える。それを聞いた砂藤は思わず「実力差自慢の為か…?やらしいな……」と個性の影響からかふらつきつつそう呟く。

 

「ねこねこねこねこ……それでももっとかかると思ってた。土魔獣を問題なく攻略した皆も凄かったけど…頭抜けてんのは君たちかなぁ?」

 

 コテージのような宿泊場所から現れたピクシーボブは予想より早かったと告げると順番に伏黒、爆豪、緑谷、轟、飯田を特徴的なグローブを纏った指で差す。

 

「伏黒くん?って子は1番初めの私の土津波を避けてたからわかったけど他の4人も判断が早い。躊躇の無さは経験値からかな?んー!将来有望!三年後が楽しみ!!よーし今のうちにツバ付けとこー!!!」

 

 ピクシーボブが暴挙に出る。彼女はプロヒーローらしい驚異的な俊敏さを無駄に活かして五人との距離を詰め切ると青少年めがけて唾を吐き始めた。一部の人間にはご褒美であったのだろうがここにいる人間は――若干一名は知らないが――基本ノーマルである。故に緑谷も爆豪も飯田も伏黒も普段あまり表情の変わらない轟でさえも顔を顰めた。

 

「『マンダレイ』…。あの人あんなでしたっけ?」

 

「彼女焦ってるの。その…適齢期的なアレで」

 

 『強く人気なプロヒーローは婚期を逃す』。相澤とマンダレイの会話を聞いた伏黒は思わずそんな言葉が頭をよぎる。そうして唾を飛ばされていた緑谷がふと後ろにいる少年に目線がいく。

 

「あ!適齢期と言えばあの…ゴフッ!」

 

「『と言えば』って!!」

 

「ず…ずっと気になってたんですが、その子はどなたかのお子さんですか?」

 

 アラサーに差し掛かった人間相手に適齢期という愚策を犯した緑谷は再度ピクシーボブに猫の手を模したグローブで顔面を抑えられる。それを何とかズラしてマンダレイの横に立っている少年を指さして質問した。

 

「ああ、違う。この子は私の従甥だよ。ホラ!浩汰!挨拶しな。これから1週間は一緒に過ごすんだから」

 

 その質問に対してマンダレイが答えると浩汰と呼ばれた少年を手招きして呼び出す。それに応じるように近づくと緑谷も近づくと不慣れながら屈んでよろしくね、と言いながら握手しようとする。それに対して少年は

 

「フンッ!」

 

「――――――――コヒュ」

 

 迷うことなく腰の入った右ストレートで緑谷のキ◯タマをぶち抜いた。世の中には金的を食らっても大丈夫な位置と大丈夫じゃ済まない位置があるのだが、鶏の首を絞めたような切ない掠れた悲鳴を上げながら緑谷は膝から崩れ落ちた。

 

 一部始終を眺めていた男子たちから何とも言えない悲鳴が上がり、あの爆豪でさえも一瞬、想像による痛みからか顔を顰めた。それを見ていた飯田が緑谷に駆け寄り安否を問うが一向に返事がなく、「おのれ従甥!! 何故緑谷くんの陰嚢を!!!」と叫ぶ。それに対して従甥は振り返る。

 

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇよ!」

 

「つるむ!?いくつだ君は!?」

 

 目を血走らせながら出てきた言葉に飯田は思わず叫ぶ。そんな様子を見た爆豪は一度鼻で笑う。

 

「マセガキ」

 

「お前に似てねぇか?」

 

「実は生き別れの兄弟だったりしてな」

 

「あァん!?似てねぇし、そんな訳あるかァァ、ボケ共!!ぶっ殺すぞテメェら!!」

 

 そんな爆豪に対して伏黒と轟が茶々を入れるといつもなら手を爆破させるところ疲れからかせずにキレ散らかす。

 

「茶番はいい。バスから荷物を降ろせ。部屋に荷物を運んだら食堂にて夕食。その後就寝だ。本格的なスタートは明日からだ。さ、早くしろ」

 

 2組の対話を茶番と言って切り捨てると荷物を持って早く宿泊場に入って休むように指示を出す。こうして相澤の指示の下、生徒達は宿舎に入っていった。

 

 

 誰も彼もが男女問わずに目の前に並べられた飯をかっ喰らう。食堂に並べられた数々の大皿料理は疲れ切った生徒たちにとってのオアシスとなり、多少変なテンションになった者もいたがそれでも提供された飯を一つ残らず食い尽くした。

 

 そして訪れる入浴タイム。ここで1人の問題児が行動を起こす。

 

「まァまァ…飯とかねぶっちゃけいいんスよ。求められてるのはそこじゃあないんスよ。その辺わかってるんスよ、オイラぁ……」

 

 ワイプシに案内された先にあったのは天然の露天風呂を加工して作った風呂場だった。この事実に男女問わず歓声が上がった。何せ今日一日の疲れを癒すのは勿論のこと。明日から始まる訓練に向けて英気を養うにはあまりにも良過ぎたのだ。

 

 そうして男女別に別れた温泉に入ると男同士で裸になり鍛え抜かれた体を褒める者もいればただひたすらに温泉を楽しむ者もいた。そんな中で1人の男が立ち上がると木で作られた区切りようの柵に近づいたかと思うとそう呟く峰田に緑谷は思わず「1人で何言ってんの峰田くん…」と言う。それを無視して峰田は女湯に面する壁に耳を当てる。

 

「ホラ、いるんスよ」

 

「は?嘘だろ相澤先生。ズラさなかったのか?」

 

「今日日入浴時間をズラさないなんて事故なんスよ…」

 

 まさかの入浴時間が被っているという事実に伏黒は性獣がいるにも関わらずその判断は下策すぎると思わず言葉が漏れる。そして峰田は興奮からかトリップ寸前みたいな顔をしながらA組女子の風呂場での会話を楽しむ。そしてそれに待ったをかけたのは飯田だった。しかし峰田はそれを「やかましいんスよ…」の一言で一蹴すると個性を用いて壁を登り始める。

 

「壁とは常に超えるためにある!!『Puls Ultra』!!!」

 

「はやっ!!校訓を穢すんじゃない!!」

 

 あまりの速さに伏黒は帰りにも同じようなこと(魔獣の森攻略)があったら峰田を斥候にしようと決意するとこれ以上は犯罪行為だと思った伏黒は頭に巻いていた布をすぐに丸めると峰田目掛けて投擲の準備をする。

 

「ん?」

 

「ヒーロー以前にヒトのあれこれを学び直せ」

 

 それよりも早く壁にあった隙間で待機していた浩汰が現れると峰田を突き落とした。峰田は「クソガキィィィ!!」と言いながら落下していくとケツが下にいた飯田の顔面にぶつかる。すると女風呂から声が聞こえてきたこともあって反応した浩汰は振り返ると一瞬だけ固まって落下していく。それを咄嗟に『フルカウル』を発動させた緑谷が受け止めて腰にタオルを巻いたままワイプシに届けに行った。何やってんだと伏黒が思っていると、

 

「まあ!伏黒さん!本当にご立派ですわね!」

 

「「「「ちょっと何やってんのヤオモモォォォォォ!!!!!」」」」

 

「は?」

 

「「「「「「キャアァァァァァァァァァ!!!??」」」」」

 

 八百万がトップレスでこちらを覗き込んでいた。タオルがはだけて下半身を露出させ、全裸になった伏黒を涎を垂れ流しながらガン見している。これに対して伏黒はフリーズし、女性陣はすぐに八百万を女湯に引き戻し、男どもは野太い悲鳴をあげる。

 

 そして後は峰田と八百万が相澤に反省文の提出を言い渡された事を除けばこれといって何もなく林間合宿の1日目が終了した。

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