そうして色々とあった仮免試験から次の日、雄英高校は新学期を迎えた。実は1年以上はとっくに経過しているのではないかと錯覚しそうになるほどのイベントがあったものの、今回の新学期を迎えたことでどこか自身達が未だに学生なのだという事実を再確認させられる。すると、そんな天気にも恵まれて晴れやかな新学期の初日に2人の馬鹿がやらかした事を相澤の口から発表される。その内容とは、
「「喧嘩して謹慎〜〜〜〜〜!?」」
爆豪と緑谷による私闘であった。どうやら仮免試験があったその日の晩に学生寮"ハイツアライアンス"から抜け出して喧嘩をしたとのことだ。しかも個性を用いての喧嘩だったらしく、合理性と規律を重んじるタイプの相澤は当然のように怒髪天をついた。そして緑谷は3日の爆豪は4日の謹慎処分を言い渡されたらしい。その事実にクラスメイト達は呆れて口々に「馬鹿じゃん!!」やら「ナンセンス!」やら「馬鹿かよ!」やら「骨頂――!」やらと騒ぎ立てる。普段であればいい返してくる筈の爆豪も図星だったのかグヌヌ…と唸るだけでおとなしく掃除機をかけていた。
「なんでそうなった…」
「その…バレてしまって…」
「は?冗談だろ?」
一体全体何がどうすればそうなったの気になった伏黒が緑谷に聞くとすごい微妙そうな顔をしてカタコトになりながら言外にワン・フォー・オールの件がバレた事を告げる。これには伏黒も思わず驚愕し、爆豪に目線を向ける。するとその視線に気がついたのか爆豪が伏黒の方を向いて目線がかち合う。伏黒のマジ?みたいな目線を見て察したのか、一度舌打ちをするとすぐに掃除に戻った。それだけで緑谷の言っていることが事実であると知ると伏黒は頭を痛そうに抑える。
「ええ……。それで仲直りしたの?」
「仲直り……っていうものでも……うーん……言語化が難しい……」
「よく謹慎で済んだものだ!!では君ら、これからの始業式は欠席ということだな!!」
「爆豪、仮免の補習どうすんだ」
「うるせェ…テメェには関係ねぇだろ」
伏黒が考え込んでいる間に緑谷と爆豪はいたたまれ無さそうに掃除を続けていると緑谷には麗日と飯田が、爆豪には切島と轟が話しかける。
そして考えをまとめた伏黒はある結論に至る。それは恐らくだが2人の喧嘩の原因が理想の食い違いであったということだ。個性を譲渡された緑谷に対してならば自身が抱いていた情景は間違っていたのかと憤った爆豪から仕掛けた結果、緑谷もそれに乗ってしまいこの様な結果となったのではないかと伏黒は推測する。
「轟の言う通りだな。マジで仮免の補習どうすんだ。ただでさえ落ちた理由が馬鹿みてぇなのに」
「なんじゃテメェ、影野郎、そのボキャブラリーはよォォ!!マジでぶっ殺してやろうァ、アアァァンン!?」
ふと思った伏黒が思わず声に出して爆豪に聞くと目つきの悪さが悪化していく爆豪が掃除機を掃除機片手に飛び掛かろうとする。それに対して切島が爆豪を宥め、上鳴は伏黒に「煽るなよ…」と呆れながら忠告する。伏黒としては煽ったつもりはなく、マジでどうするのか純粋に気になったのだ。爆豪が仮免試験を落とされた原因が要救助者相手に毎度お馴染みの罵詈雑言を吐き散らかしたと言う馬鹿の所業。それだけでも恥ずかしいと言うのにその晩に謹慎を食らうような真似までやらかした。流石に相澤あたりが対策してるだろうが、最悪の場合補習に参加できない可能性すらあるのだ。
「愚の骨頂だな」
「上ーー等だァァァ↑↑、影野郎ォォォ!!!その喧嘩ァ、利子つけて買ってやるよォォォォー!!」
改めて爆豪のやらかしたことをまとめると伏黒の口から思わずといった様子で感想が漏れ出る。それを聞いた爆豪は過去最大級の角度をした目つきと共に掃除機を放り投げると伏黒目掛けて殴りかかる。「落ち着けバクゴー!!」という叫び声と「煽るのは良くないわ」という諌める声が寮内で響き渡りながら、緑谷と爆豪を寮に残したままA組のクラスメイト達は始業式へ向かった。
◇
「皆いいか!列は乱さずそれでいて迅速に!グランドへ向かうんだ!」
「いや、オメーが乱れてるよ」
新学期早々にクラスメイトが揃わずに19人のまま、始業式に参加しなければいけないという異例の事態。しかしそんな中でもA組の皆んなはへこたれず、飯田のかけ声とそれに対するツッコミを入れながらA組生徒達は教室から始業式へと向かっていく。入学式に出られなかったこともあって今期も相澤が何かやらかすのかと思ったが、4月とは流石に事情が異なるため参加できるようだ。
「―――聞いたよ、A組ィィィィ!」
すると、A組達から見て前方の方から声が聞こえてくる。声からして誰なのかは容易くわかったが、目線を向けるとそこには壁に肘をつけて寄りかかって物間がいた。物間はA組の全員の視線がこちらを向いたことを理解した瞬間、二本の指を立てながら高笑いを決め始めてこちらとの距離を詰め寄る。
「二名!!そちら仮免落ちが二名も出たんだってぇぇぇ!!?」
「相変わらずだな」
「ああ、相変わらず気が触れてやがる」
爆豪と轟が落ちた段階でなんとなくこうなることは予想していたこともあって上鳴と伏黒は物間の様子に対して動揺することなく感想を述べる。そして切島は林間合宿のことを思い出して物間だけ落ちたのでは?と問うと唐突に腹を抱えて笑いだすと振り返って後ろに戻る。そして後ろにいたB組の元に行くと再度、A組のほうを振り返り大きく手を広げ、ドヤ顔しながら自信満々に宣言する。
「こちとら全員合格さ。水があいたね、A組」
これには伏黒も驚いた。物間のあの反応から誰か1人くらいは落ちていたのではないのかと思っていたのもあるが、物間の個性自体、時間制限ありきの使い所に困るものだからだ。伏黒が素直に驚いていると大きな2本の角が特徴的な女性が歩み寄ってくると外国の人だからか片言の日本語と英語がごっちゃになりながらある情報を開示する。
「ブラドティーチャーによるゥと、後期ィはクラストゥゲザージュギョーあるデスミタイ。楽シミしテマス!」
その情報を教えてくれたことに皆が感謝していると何やら物間に吹き込まれたかと思うと「ボゴォボコォにィ、ウチノメシテヤァ…ンヨ?」と意味がわかってなさそうな顔しながら辛辣なことを言ってくる。吹き込んだ張本人は首を掻っ切るポーズを連続でしながら高笑いを決めていた。しかし、それを聞いて黙っているA組ではなかった。今度は仮免試験でクラス最高得点をとった伏黒を芦戸が自慢気に紹介し始める。それに対抗するように物間は拳藤を挙げると、クラス対抗の自慢合戦が勃発する。後ろから普通科の面々が来ていたのと純粋に恥ずかしいということもあって伏黒と拳藤は顔を赤くしながら自慢合戦をしている2人を引き留めると始業式へ向かった。
「やあ!皆んな大好き!小型哺乳類の校長さ!」
一年から三年のヒーロー科、普通科、経営科、サポート科と全雄英生徒が校庭に集まると壇上に上がった根津校長が元気よく挨拶をする。そしてそこから話されていく内容が自身が毛並みを気遣ってることや睡眠のことなど心底どうでもいい上にあり得ないほど長かった。この話がまだ続くのかと辟易し始めた時、
「
話している校長の空気がガラリと変わった。そうして話される内容は柱の喪失からくる社会に対する大きな困難が訪れるという内容だった。そしてその中でも1年のヒーロー科の興味を引いたのは2、3年生が取り組んでいるとされている校外活動ことインターンというものだった。その後も先ほどとは異なり励ますような言葉を続ける根津。
「経営科も普通科もサポート科もヒーロー科も、皆が社会の後継者であることを忘れないでくれ」
そう締めくくると同時に話が終わる。そして最後に生徒指導を担当しているハウンドドックが人語を忘れるレベルでキレ散らかしながら昨晩起こった喧嘩についての注意がバウバウと吠えて言い渡される。名前こそ出されなかったが、問題児扱いされたこの場にはいない緑谷と爆豪のことを知らしめられたことを最後に始業式は幕を閉じた。
◇
「じゃあ、まあ…。今日から通常通り授業を続けていく」
始業式が終わってA組がクラスに戻る。皆が着席したことを確認すると相澤が教壇で話し始めた。これといって話す話題がないのかありきたりなことを話す相澤に蛙吹が挙手をして始業式で言っていたインターンについての説明を求めた。他のクラスメイト達も気になっていたのか蛙吹の質問の後を追うように次々と質問する。それに対して相澤は頭をガシガシと掻くと後日説明するはずだった説明を合理的ということもあって今日することとなった。今回知らされた
「体育祭での頑張りは何だったんですかぁぁぁ!?」
突然立ち上がると鬼気迫る様子でそう叫ぶ。砂藤に宥められる麗日だが、麗日の言い分にも一理あった。何せそんなシステムがあるのだとしたら雄英体育祭で必死こいた理由がない。なんだったら手の内を誰よりも多くかつ早く晒した分、デメリットがデカイくらいだ。すると、そこに関しては質問されると予想していたのか相澤はすんなりと答える。
なんでも
「一年生での仮免取得はあまり例がないこと。敵の活性化も相まってお前らの参加は慎重に考えてるのが現状だ。まぁ体験談なども含め、後日ちゃんとした説明と今後の方針を話す。こっちも都合があるんでな。―――じゃ…待たせて悪かったマイク」
『英語だーー!!即ち、俺の時間!!久々登場 俺の壇上 待ったかブラ!!!今日は詰めて行くぜーー!!!アガってけー!!イエアア!!』
説明を終えた相澤と入れ替わるようにガラッ!と教室のドアが開くとプレゼントマイクは教室に入ってくるといつものように大きな声で喋り始めた。そうして久々の勉強ということもあって当然のように習ってない文法が飛び出してきたなど以外と勉強面では遅れをとりそうになりつつ、3日が経過する。これは
「ご迷惑おかけしましたぁぁ!!」
「デクくん。オツトメご苦労様!!」
緑谷出久の謹慎生活が終了したことを意味していた。相澤の指示のもと、授業内容などの伝達を禁止されていたこともあって置いていかれていくという自覚があったからか、鼻から大きく息を吐きながら「この3日間でついた差を取り戻すんだ!!」と息巻いていた。因みに爆豪は4日な為、明日から復帰する模様。
気合いが空回りしかねないレベルで入っていた緑谷だったが相澤の一言を聞くと静かに席に着いた。全員が席に着いたことを確認すると、相澤は話し始めた。
「おはよう。じゃあ緑谷も戻ったところで本格的にインターンの話をしていこう。―――入っておいで」
「「「「「?」」」」」
相澤の合図にクラスメイト達は不思議そうな顔をすると共に教室のドアが開かれる。そして三人の雄英生生徒が教室の中にゆっくりと入ってきた。
「職場体験とどういう違いがあるのか。直に体験している人間から話してもらおう。心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名―――……。通称”ビッグ3”の皆だ」
相澤がそう宣言すると同時に意気揚々と3人の生徒達が一年A組のクラスに入ってきた。