伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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仮免試験、そしてビッグ3②

 

 

 相澤の合図と共に入ってきた3人。

 

 1人は美人な女子生徒。パーマをかけているのか天然のくせ毛なのか、うねうねとねじれた水色の長い髪に思わず目を惹かれた。もう1人は鋭い眼つきにとがった耳、黒髪が特徴の男子生徒。一文字に結ばれた口元と四白眼から他の2人よりも陰気なイメージが出てくる。最後に一番先頭を歩いていたのは180㎝を越える長身に鍛え抜かれた筋肉と金髪、そしてパックマンみたいなつぶらな瞳をした特徴的な風貌の男。 というか伏黒が職場体験先でお世話になった通形ミリオだった。ヒーロー殺しとの戦闘でもお世話になったためか、緑谷と轟、飯田もその存在に気がつき「あっ!」という声を漏らしていた。

 

「じゃ手短に自己紹介よろしいか?まずは…天喰から」

 

 相澤は3人が壇上に揃ったのを確認すると一番近かったからか天喰という黒髪の男から自己紹介をするように促す。そうして一歩前に出た天喰は少し押し黙るとギンッ!という効果音がつきそうなほど四白眼を細めると同時にビリビリとした威圧感を放つ。皆がそれに気圧されている。しかし、

 

「──ダメだ、波動さん、ミリオっ……!ジャガイモだと思って臨んでも……頭部以外が人間のままで依然として人間にしか見えない…。どうしたらいい…!?言葉が、出てこないっ…!」

 

 その次の瞬間には聞いてるこっちが困惑するほど震えた声が飛び出してきた。そしてさっきまで鋭かった四白眼も震えていた。というか体全体が震えていた。

 

「頭が真っ白だっ…!辛いっ…!帰りたい……!」

 

 そして最終的に後ろを振り返って黒板に頭を押し付けるようになった。これには先ほどまで気圧されていた一同は困惑。そしてそれに反応したのは水色のウェーブのかかった髪が特徴的な女子生徒だった。

 

「あ!聞いて天喰君!そういうのをね、ノミの心臓って言うんだって!ね!人間なのにね~!不っ思議~!」

 

「まぁまぁ辛辣ですね」

 

「あ!今私にツッコミいれたのがミリオの言ってた伏黒恵くん?」

 

 しれっと明るくかつ楽し気な様子で辛辣なことを言ってくる女子生徒に思わずツッコミをいれる伏黒。それに対して通形から何か聞いていたのか伏黒の名前を言い当てると同時にそうなのか聞いてくる。

 

「まぁ、そうです」

 

「そっかぁー!私はね波動ねじれっていうの。気軽にねじれでいいよ!それでこっちが『ノミ』の天喰環。今日はインターンについてみんなにお話しして欲しいと頼まれてきました!」

 

 波動ねじれと名乗った女子生徒は自身の自己紹介のついでといった様子で未だに黒板に頭を押し付けている天喰の紹介も行う。すると少しウズウズしたかと思うと障子の方に駆け寄り、マスクのことを尋ねる。そして障子が言い切るよりも前に轟の火傷を聞く。そして次に蛙吹が何蛙なのかを聞くと次は芦戸、次は峰田とこちらの回答を待たず、本当に攻めの一辺倒。マシンガンの如き質問の連続は幼稚園生のような無邪気さも相待って「どんな子も皆気になる!不思議!」と言ってる彼女自体を不思議ちゃんに仕立て上げる。

 

「合理性に欠くね…」

 

「あ!イレイザーヘッド!?安心して下さい!大トリは俺なんだよね!―――それじゃあ、早速!」

 

 どんどんとぐだぐだになっていく光景に合理性の化身でもある相澤の機嫌がどんどんと下がっていく。そんな様子に焦ったのかミリオは宥めると先ほどの天喰同様に一歩前に出て「ン゛ン」と咳払いをする。

 

「前途ォ──ッ!?」

 

「「「「「…………?」」」」」…あー、多難?」

 

「うーーん!流石、伏黒くん。俺の後輩だなだけはあるね!反応できるのは嬉しいが、気遣われてしまったよ!掴みは大失敗だな!!」

 

 HAHAHA!と滑り倒したにも関わらず豪快に胸を張って笑い飛ばすミリオ。周りは困惑しているが、伏黒としてはこの感覚がほんの1カ月程度前だというのに懐かしく感じた。しかし、それ以外の面々からはぐだぐだなことも相待って胡散臭く感じてるのか怪しい空気が教室を満たしていく。

 

「まァ、何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでもないインターンの説明に突如として現れた3年生だもの」

 

「困惑しているきっかけは3人の自己紹介ですがね」

 

「よぉ〜し、伏黒くんは黙ろうねー。今の俺に正論のナイフを持ち出されても反論という対処は出来ないから。―――さてと、確か皆は1年の段階で仮免取ってんだよね…」

 

 そんな空気の中でミリオはふむふむと考え込む。その様子を察したのか尾白の尻尾に興味を持っていた波動と黒板と睨めっこしてた天喰の目線が通形へと向かう。

 

「とりあえず君たちみんな! まとめて俺と戦ってみようか!」

 

 そんな2人の視線を他所に通形は元気よく拳を振り上げながら宣言した。

 

 

 通形の戦おう宣言から少しして謹慎中の爆豪を除いたA組の面々は体育館γにいた。あの後、ミリオの提案にクラスメイト達は驚いた。その提案は相澤あたりに断られると思っていたが、何を思ったのか許可がおりた。

 

「あの……マジすか?」

 

「マジだよね!」

 

 瀬呂くんがおずおずと声をかけるが、柔軟体操をしているミリオは見るからにやる気満々であった。しかしそんなミリオに戦闘をやめさせようとしたのは残りの2人の三年生だった。天喰はあいも変わらず遠くから形式を伝えるだけで十分だと言い、芦戸の頭の触覚をいじってた波動は挫折させないように考えなきゃダメだと言う。2人がA組の面々を案じているのはわかるが捉え方によってはA組の全員を見くびっているとも思える言葉であり、実際にそれで好戦的なメンバーの導火線には火が付いた様子だった。

 

「待ってください…。我々はハンデありとはいえプロとも戦っている」

 

「常闇の言う通りですよ!それに俺たちはヴィランとの戦闘もこなしてます!…それとも心配されるほどザコく見えますか?」

 

「うん、いつでもどこからでも来て良いよね。一番手は誰かなぁ!?」

 

 普段よりも少し顔を険しくさせながら言葉に棘を含めた常闇と切島の言い分に対しても通形は気にする様子もなく出たかを伺っている。その様子に切島が初陣を切ろうとするが珍しく緑谷が自主的に挑もうとしていた。すると、ミリオは少し嬉しそうに笑った。

 

「問題児!!いいね君やっぱり元気があるなぁ!」

 

 ミリオの言葉と共に緑谷は《フルカウル》を発動させる。その他のメンバーも自然と近接型、中距離型、遠距離型と陣形を取る。こうして謹慎中の爆豪、仮免をとってない轟、どういうわけか後でと言われた伏黒を除いたA組チームvs 通形ミリオの戦いが始まる。

 

「近接隊は一斉に囲んだろうぜ!よっしゃ先輩!そんじゃあせっかくのご厚意ですんで、ご指導のほどォ」

 

「「「「「よろしくお願いしまぁぁぁぁすッッ!!!」」」」」

 

 勢いよく挨拶すると同時にA組の面々はいつでも迎撃できるように個性を発動させる。そしてその直後、ミリオの体操服が落ちた(・・・)

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!?」「あれ?服も透かせましたっけ?」

 

「ああ、ごめん…って伏黒くんもなに驚いてんのさー!俺の個性知ってんでしょ、もー!」

 

 突如としてフルチンになったミリオに意外と純情な耳郎は絶叫する。伏黒は思わぬ現象に思わず呟く。それに対して通形は自身に迫る蹴りも気にせず(・・・・・・・・・・・・)、全裸になったことを謝ったり、伏黒の反応に対して戯けて見せる。そして通り抜けた緑谷に笑いながら「顔面かよ」と言う。すると間髪入れずに酸やテープ、ビームが通形に襲いかかる。ビームや酸が土煙が巻き上げたところを見た瞬間、これはマズイと伏黒は思わされる。

 

「まずは遠距離持ちだよね!!」

 

 そしてそんな伏黒の予想は的中した。土煙に紛れることで地面の中へと透過させたことを悟られずに、個性を応用したワープで一気に後ろまで回り込むと全裸となったミリオはA組の遠距離持ち全員を5秒程度で完封した。

 

「おまえら、良い機会だからしっかり揉んでもらえ。その人…通形ミリオは俺の知る限り最もナンバーワンに近い男だ。プロを、含めてな」

 

 遅まきながらそう宣言する相澤と同時にミリオは「POWEEEEER!!」と叫びながら不敵な笑みを浮かべる。一瞬で半数を削られたという事実に伏黒はキレッキレだなと感心し、轟は息を呑んでいた。

 

「さぁて、遠距離は潰した。あとは近接主体ばかりだよね」

 

 ふーっと大きく息を吐きながらズレたズボンを直すミリオ。そんな様子を見て先ほどまで多数で叩けばどうにかなるという浅い考えは残りのA組の面々の頭から消え失せていた。

 

「クソっ、何したのかさっぱりわかんねぇ!」

 

「すり抜けるだけでも強ェのに、ワープとか……! それってもう……無敵じゃないですかぁ!」

 

「よせやい!」

 

 少々というかかなり自慢気にポーズを決めながら褒め言葉を受け取るミリオ。それを聞いた伏黒はアドバイスは無粋だということもあってそれではダメだと思うことしか出来ない。強い、と思うのではなく、なぜ強いのか?と思わなければミリオには決して勝てないと知っているからだ。しかし、

 

「何かからくりがあると思うよ!」

 

 皆がお手上げムードな中で緑谷だけは声を上げて否定した。そして、わからなくてもわかってる範囲から仮説立てて、とにかく勝ち筋を探っていこうと提案する。緑谷の言葉で戦意喪失とまではいかないが混乱していた場が落ち着く。

 

「探れるものなら、探ってみなよ!」

 

 それを見たミリオは笑みを深めると同時に走り込むべく一歩踏み込むとズボンを置き去りにして再度、地面に溶け込む。そしてどこから飛び出てくるのか探る為、一時的に場を静寂が包み込む。そして先ほどと同様にいきなりミリオが地面から飛び出してくる。誰もが反応できないと思っていると、緑谷だけは違った。

 

「っ!!」

 

「おっ!?」

 

 後ろから現れたミリオ目掛けて後ろ蹴りを放つ。それに対して目を見開くミリオ。緑谷がしたのは至極単純。勘によるものでも反応出来たからでもなく、単純に後ろにくると予測しただけのことだった。しかし、相手はミリオ(雄英最強)。それに対しても容易く対処し、あっさりと緑谷の鳩尾に一撃入れるとすぐに地中へ消えてしまう。そして一瞬で地上に現れては生徒達の腹部に的確に、力強く攻撃を入れていくを何度も繰り返していくうちに生徒達は全員地面に伸されていた。

 

「さて、と。次は君が相手だ伏黒くん!」

 

「お手柔らかにお願いしますよ」

 

 名指しで呼ばれた伏黒が相澤の元から離れると全裸のミリオと相対する。久々のミリオとの戦闘ということもあって少しだけ浮ついた気持ちになりながら伏黒は【嵌合纏】を発動させて【玉犬】を纏うとミリオの後ろに一瞬で回り込むと側頭部目掛けて殴りかかる。

 

「見ない内に随分と速くなったねぇ!」

 

 しかし、回り込まれたことを想定していたミリオは頭部だけ透過させることで伏黒の攻撃を躱すと今度はこちらの番だと言わんばかりに伏黒の鳩尾目掛けて回し蹴りを放つ。しかし伏黒は鳩尾にくっつけるように手を添えるとそのまま蹴り飛ばすのではなく透過して通り過ぎると同時に地面の中に潜航する。すると、伏黒の後ろを取ったミリオがアームハンマーの要領で伏黒の脳天目掛けて攻撃する。

 

 パァンッッ!!

 

 体育館γに乾いた音が鳴り響く。それはミリオの攻撃を伏黒が防いだという証拠でもあった。驚くミリオに対して伏黒はこのまま手を握り潰してやろうと力を込める。しかしそれよりも早くミリオは透過すると、伏黒をサッカーボールのように蹴り飛ばそうとする。それに対して伏黒はその場から飛び退いてコンクリートで出来た岩山まで跳んでいく。いつの間にか復活したA組の面々から「おお〜!」という歓声が上がり、相対するミリオは満足そうに頷いていた。

 

「うんうん!予測も演算もここまで上手くなってるとは!おまけに俺相手の防御も考えてたなんて!」

 

「通形先輩相手にノープランで挑むほど馬鹿じゃないですよ」

 

 伏黒がミリオ相手にここまで反応出来ていたのは確かに予測が出来ていたのもあるが、それと同時に【玉犬】の五感が飛び出してきたミリオの気配を逃さないのだ。そして防御に関しての対策は酷く単純。ただ、防御しても容易く透かされて殴り飛ばされるのがオチだ。故に伏黒は攻撃される場所と防御を完全にくっつけることにした。その状態にもならば透かすことしか出来ない。透過を解除すれば伏黒の防御によって攻撃したミリオ自身が致命的な怪我を負うからだ。

 

 しかし、完全に防げるというわけでもない。何せミリオの一撃はクラス1の耐久力を誇る切島を一撃で仕留めるほどだ。それを防御と体の間を開けずに受ければ10のダメージを7か8のダメージ程度に減らせるだけ。今の攻撃だけでも伏黒にはしっかりと効いていた。

 

 そうして今度は機嫌を良くしたミリオが仕掛けてくる。走り出しながら地面に潜航する。伏黒が身構えているといつの間にか伏黒の真後ろに移動していたミリオは壁を腕と顔だけ出すと羽交締めしようとする。しかし、それに気づいた伏黒はその場から回避する。そうして相澤のいたところまで戻るとミリオも伏黒目掛けて走り出す。ミリオは伏黒とぶつかる寸前に防御が間に合わないほどに惑わしてからカウンターを決めようとすると、コンクリートで出来た岩山から伏黒よりも大きな大岩がミリオと伏黒目掛けて落ちていく。

 

「―――なるほど。さっきのアレは回避じゃなくてこうする為だったのね」

 

 ミリオは迫りくる大岩を眺めながらそう呟く。恐らくミリオの考えていることと伏黒の考えていた作戦は同じだ。伏黒はミリオにサッカーボールのように蹴り飛ばされかけた時に開始したのではなくこの岩山に辿り着くことこそが目的だったのだ。岩山にたどり着けば障害物の多い時にこそ個性の真価を発揮するミリオは確実に地面に潜行すると確信していた。故にミリオが地面に消えると同時に伏黒は【虎葬】を呼び出すと影を伝って岩山の頂点を目指すように指示、そしてミリオが見切られていると確信して真正面での戦闘に移行した場合はすぐに大岩を投げるように指示したのだ。

 

「うんうんいい判断だ!でもさ―――俺相手にそれはちょっと下策が過ぎない?」

 

 そういうと同時にミリオは大岩の中へと潜航した(・・・・・・・・・・)。そしてただ一人残された伏黒は【嵌合纏】を【満象】に切り替えると大岩目掛けて全力の一撃を放つ。そして砕けた岩の中から拳を振りかぶった全裸のミリオが飛び出してくる。伏黒は全身を使って拳を放った為、体勢を立て直せず防げないのは目に見えている。ミリオの頭に『勝利』の2文字が浮かんだ瞬間、

 

 ドパァァァァァァァンンンンッッ!!!

 

「づぅッッ〜〜〜〜!!!」

 

「何っ!?」「うそぉ〜〜!?」

 

 ミリオの背後から凄まじい衝撃が走り、体操服とミリオの背が若干だが抉れる。突如の衝撃に大きくのけ反りながら身を固めるミリオ。それを見た伏黒はミリオのある部分を注視してとある行動(・・・・・)をしていることを確認すると【満象】の力でミリオの腹を殴りつけて吹き飛ばした。凄まじい勢いで飛んでいくミリオが地面に背中から着地したが、力無く上体を起こすことしか出来ずにいる。そして、ゆっくり息を吐き出したかと思うと観念したように答えた。

 

「参った、降参だ」

 

 そうして通形ミリオvs 伏黒恵の戦闘は伏黒の勝利で終わった。

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