伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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仮免試験、そしてビッグ3③

 

「いやー俺強くね?って所を見せつける場面なのに負けちゃったんだよね!」

 

 たはーっ!と笑いながら【円鹿】に治療されているミリオが呆気らかんと笑う中、A組の面々も天喰も波動も相澤も皆が驚愕していた。10分足らずで全滅させられたA組もミリオの強さをよく知る同級生2人と相澤からしてもこの結果は予想外だったのだ。

 

「伏黒くんさ!あの時、俺に何したのよさ!?」

 

「あの時、俺は大岩をぶつける為に貴方を誘い込んだんじゃなくてあの状況に持ち込む為に誘い込んだんです」

 

 そうして始まる伏黒のミリオを倒すまでの手順。ミリオの伏黒が岩山にたどり着く為に吹き飛んだという予想自体は当たっていた。しかし大岩をぶつける為に誘ったのではないと断言する。伏黒が望んだのはミリオが勝ちを確信する瞬間。故に伏黒は自身を巻き込むように大岩を投げるよう【虎葬】に指示を出した。予想通りミリオは難なく大岩を避けて残された伏黒だけが大岩に巻き込まれた。そして大岩を砕くべく必死の一撃を放って大きな隙を生み出したように見せたタイミングで圧縮訓練で考案した必殺技を放ったのだ。

 

「それは?」

 

「【超新星】って言うんです」

 

 伏黒はそう言いながら手のひらに圧縮した水を見せ、岩山目掛けて放つと散弾のように水の飛沫を飛ばした。あの時、伏黒はただ必死の一撃を放ったわけではない。拳の中で限界まで圧縮した水を握りしめていたのだ。そして、ミリオは伏黒が避けられないように限界まで距離を詰めたのを確認すると拳を緩めてビー玉サイズまで圧縮した水を放し、伏黒は自身とミリオが完全に重なったタイミングを見計らって【超新星】を放ったのだ。それを聞いたミリオは少し唸ったかと思うと質問する。

 

「避けられる、って思わなかったの?」

 

「だって、通形先輩。あの時、呼吸(・・)してましたよね?なら当てられますよ」

 

 それを聞いたミリオは手で顔を覆って天を仰いだ。それこそミリオの個性【透過】の弱点の一つ。全てを透過するミリオは透過状態の時に呼吸ができないから、隙を見て息継ぎをしないといけないのだ。透過中に呼吸ができない証拠として初めに放たれた緑谷の一撃を躱す時も地面に潜航する時も大きく息を吸ってから透過していたのを伏黒は目撃している。

 

「こんの、成長期ボーイめ!!」

 

「どういう褒め方ですか…」

 

 そこまで聞くとミリオは顔を覆うのを辞めて満足そうに大きく頷くと同時に伏黒の髪型が崩れるのを気にせず頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。するとそれに釣られるように波動は目を輝かせながら、天喰はおどおどとしながら寄ってくる。

 

「すごーい!!まさかミリオに勝つなんて本当にすごいねぇー!!」

 

「すまない。君のことをいつの間にか下に見てたようだ。……君は本当に凄い。俺とは偉い違いだ」

 

 片や明るく、片や自虐的にとベクトルこそ違えどミリオに加わるように2人してよくやったと伏黒を褒め称える。伏黒は褒められることに慣れていないことや生まれて初めて誰かに頭を撫でられたこともあって少しだけ胸が熱くなった。そしてひとしきり撫でまわし続けたミリオが立ち上がる。

 

「負けちゃってカッコつかないですけど、まァーこんな感じなんだよね」

 

「伏黒くん以外、訳もわからず全員腹パンされただけなんですが……」

 

 そしていつの間にか腹をさすりながら伏黒とミリオの戦闘に見惚れていたA組の面々と向き合う。そんな面々にミリオは笑みを維持したまま「俺の個性強かった?」と質問する。すると腹の痛みも忘れてみんなが一斉に声を上げる。

 

「強すぎッス!」「ズルイや!私のことも考えて!」「伏黒の言葉とすり抜けからして【透過】なのはわかるんですけど、ワープ出来るあたり轟みたいなハイブリッドですか~!?」

 

「い〜や!一つだけさ!」

 

 ミリオの言葉にA組の皆が驚く。そんな皆に伏黒と一緒にいた波動がいつの間にかミリオの隣にいて朗らかに笑いながら教えようとする。しかし、天喰から今はミリオの時間だと引き止められ、ふくれっ面になりながらミリオの体操着を引っ張る波動。それに対してゴメンと謝ると満を持して発表する。

 

「さっき言ってた子の【透過】が正解だよ」

 

 ミリオから種明かしされた緑谷達だったが、それでもまだピンときていない様子だった。それも無理もない話で【透過】だけでは謎ワープの原理の説明になってないからだ。当然そのことにも質問がいったのだがかつての伏黒を相手にするように柔らかく笑いながら答える。

 

「ワープの理屈は俺の体が物体に重なった状態で個性を解除すると、体が物体の外側へと瞬間的に弾かれるんだ。その際の姿勢や体の向きを調整することで弾かれる方向をコントロールして地面を伝ってあらゆる場所へと移動するってすんぽーさ!」

 

「だから、浮上する瞬間は実体化する必要があったってことか」

 

「そゆこと!」

 

「……?ゲームのバグみたい」

 

 一通り説明するとクラスメイト達が納得し、ワープの原理を知った膨れっ面の芦戸の言葉にイイエテミョー!と言いながら吹き出すミリオ。そんなミリオを見て蛙吹はやはり強い個性だと感嘆する。しかし、そんな蛙吹に対してミリオは首を横に振って否定すると静かに答える。

 

「強く見えるだけで本当は没個性もいいとこだったんだよね」

 

「え」

 

「俺の【透過】はどんなものでもすり抜けちゃうんだよね。それこそ鼓膜は振動を、網膜は光を透過する。あらゆるものがすり抜ける。それは何も感じることが出来ず、ただただ質量を持ったまま落下の感覚があるということなんだ。だから壁を通り抜けるにしてもかなり面倒な工程がいるんだよね」

 

 その言葉を聞いた上鳴と峰田は顔を見合わせて焦れば焦るほどドツボにハマる個性だと呟く。それに対してミリオも同じだったのか首を大きく縦に振るうと頭を指で連打する。

 

「案の定俺は遅れた。ビリッけつまであっという間に落っこちた。服も落ちた。この個性で上に行くためには遅れだけはとっちゃダメだったんだ。だからこそ予測!周囲よりも早く!時に欺く!何より予測が必要だった。そしてその予測を可能にするのは経験。経験則から予測を立てる。長くなったけどコレが手合わせの理由。言葉よりも経験で伝えたかった!」

 

「実際、職場体験先が通形先輩と同じだった時に何度か手合わせして貰った。通形先輩はめちゃくちゃ強い。今回の一勝をもぎ取る為に俺は50回以上も負けてる」

 

 伏黒が幾度となく負けていたことを教えると皆が絶句したようにミリオと伏黒を見る。今回勝てた理由はミリオ自体が様子見という名目で来ていたこともあって手を抜いていたのと伏黒が50回を超えるほどミリオと戦ったことで個性の癖や弱点を見抜いていたからこそである。未だに予測や経験面で伏黒はミリオに劣る。もう一度やって勝てと言われても次は勝てないと確信できるほどNo.1に一番近い男は凄まじい。

 

「インターンにおいて、我々はお客ではなく一人のサイドキック、プロとして扱われるんだよね。それはとても恐ろしいよ?プロの現場では時に人の死にも立ち会う。それでも、怖い思いもつらい思いも全て学校じゃ手に入らない一線級の経験!俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!怖くてもやるべきだと思うよ一年生!」

 

 最後に拳をグッと力強く握りしめて前に突き出すとそう締め括った。ミリオによる力強い熱弁に、聞き入っていたA組の生徒達は全員から始めにあった侮りは消え失せ、思わずといった様子で拍手を送る。相澤に教室に戻るよう指示をされながらミリオの話に感化され、生徒達がインターンへの参加意欲が高まっていく。

 

 

 そうしてビッグ3との邂逅でインターンというものに皆が一様に強い興味を持たされた次の日。ホームルームにて相澤から新たなインターンについての話題が上がった。

 

「プロヒーローの職場に出向き、その活動に協力する職場体験の本格版『ヒーローインターン』ですが、昨日職員会議で協議した結果、校長始め多くの先生が……"やめとけ”という意見でした」

 

「「「ええええええええええ!!??」」」

 

 まさかまさかの多数の教員からのヒーローインターンの参加の反対という事実が告げられた。それもその筈、昨日腹パンされてまで聞いた内容は自身の将来に強い影響を残すのは明確だからだ。実際、昨日は何名かのクラスメイト達は職場体験のツテを伝ってヒーローインターンに参加できないか話題に上がったほどだ。当然のように何名かはブーイングを送るが、同時に今の自身達が全寮制に至った理由を考えると仕方のないことかと納得してしまう。因みに今日になって謹慎明けとなった爆豪は経緯だけは知っていた為、自身が参加できないこともあって「ザマァ!!!」と喜んでいた。しかし、相澤の話は続いていたようで、

 

「話は最後まで聞け。…今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、方針としてインターン受け入れ実績が多い事務所に限り一年生の実施を許可する、という結論に至りました」

 

「クソがッッ!!!」

 

 まさかのどんでん返しに仮免のこともあって参加できない爆豪は悪態を吐く。相澤の言葉に麗日は職場体験でお世話になったガンヘッドのところはどうなのかと考え、蛙吹は同じく職場体験めお世話になったセルキーの元に連絡を視野に入れていた。そして伏黒なのだが、実はあの授業の後にミリオがA組の寮に押しかけてきたのだ。内容はナイトアイが伏黒をインターンに呼びたがっているというもので伏黒のほうで都合が悪くなければ受けてみないか、というものだった。伏黒としてもナイトアイにはお世話になっていた為、この授業が終わったら受けようとする。すると、

 

「伏黒。お前に対してお客さんだ」

 

「俺にですか?」

 

「ああ、なんでもお前の父親の関係者らしいんだが…」

 

 伏黒は相澤の言葉に思わず訝しむ。相澤は言い切らなかったが、伏黒は天涯孤独の身だ。自身を産んだ直後に逝った母と伏黒を置いてどこぞに消え失せ、今や生死不明となった父を筆頭にその他の関係者にはここ10年以上は会ってない。というか、父以外の関係者とは会ったことがない。

 

「安心しろ。万全を期す為にも俺も会話に参加する」

 

「……わかりました」

 

 伏黒は会ったこともない人間と会うというリスクを考慮して流石に面会を拒絶しようかと思った。しかし、個性を無効化出来るだけでなく、個性抜きの純粋な近接戦ならば雄英でも上澄に位置付けられる相澤もその場に参加するということもあって取り敢えずその父親の関係者を名乗る男と会ってみようと決意した。

 

 

 そうして時間は過ぎて放課後。英語やヒーロー基礎学、実技など全ての授業が終わって今は放課後。伏黒は相澤と共に仮眠室へと向かっていた。そして到着すると相澤が始めに仮眠室のドアを開けて入り、伏黒もそれに続く形で部屋へと入る。中にいたのは黒スーツに身を包んだ丸メガネの男がそこにはいた。

 

「本日は御時間をいただきありがとうございます、伏黒恵様。私めフルダテというものでございます」

 

「そんなに改まらずに要件だけを言ってください。今のコイツは次のステップへと移行しようとしてる。それの邪魔をしたくないんです」

 

 伏黒に対して恭しく頭を下げる男に相澤はいつでも個性を発動できるよう身構える。何せ相手はいるかもわからなかった自称伏黒甚爾の関係者。疑いたくなるのも無理はない。相澤の言葉にそれもそうですね、と呟くと本題に切り掛かる。

 

「この度、26代目禪院家当主の禪院直毘人様がお亡くなりになりました。そしてその遺言状をお伝えする為に伏黒恵様には京都にある禪院家邸へと御足労願いたく存じ上げます」

 

 相澤と伏黒の目が驚愕に見開かれる。A組の生徒達がヒーローインターンに望もうとする中、伏黒は自身の血縁と向き合う時が来た。

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