伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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遅くなって申し訳ありません!レポートがあって少し遅れました。ですが、ペースをこれ以上落とす気はないので今後ともよろしくお願いします。




登校、そして試練

「実技総合成績出ました。」

 

 時は遡ること、一週間。場所はモニター室。前方の大画面に受験生の名前と成績が上位からズラリと並ぶ。それを見た教師陣から感嘆の声が複数上がった。ここでは全会場の実技試験の様子を映し出すことが出来、雄英の教師陣はそこから受験生を観察していた。教師陣がモニター室で試験の様子を見る目的として、どのような生徒がいるのか見極める為というのもあるが、それに加え救助Pの審査をしなければならないという理由もある。

 

「救助ポイント0点で同率(・・)2位とはなあ!」

 

「後半、他が鈍っていく中、派手な個性で敵を寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 

「もう一人の拳藤って子は純粋な戦闘能力もそうだが、協調性がいいなぁ。初対面の相手とここまで連携が取れるとは」

 

「対照的に敵ポイント0点で8位」

 

「アレに立ち向かったのは過去にも居たけど…ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

 

「思わず、YEAH!って言っちゃったからなー」

 

 ガヤガヤと特に目立った行動を取り続けた受験生の名をあげて話しを続ける。そして、

 

「にしても1位の子。確か伏黒恵だっけ?女の子みたいな名前してる割に男の子なのは驚いたなぁ。しかし取得ポイントが121って」

 

 次の注目が伏黒へと移った。

 

「三桁越えを見んのっていつ以来?」

 

「スタートって言った瞬間に動いてるわね彼。突然現れた仮想敵に対しても足元から現れた犬?にしっかりと迎撃させてる。そしてあえて固まらずに戦力と役割を分散させて効率的にポイントを取ってる」

 

「対応力、判断力、破壊力ともに良好ってか?」

 

「ああ、しかも」

 

 そう言いながら映像を巻き戻して伏黒がスクラップで一方的に仮想敵を打ちのめしながらポイントを稼ぐシーンが映し出される。

 

「本人の戦闘能力も高い」

 

「いーねぇ。こう言う個性ってどうしても本人が弱くなっちゃうからなぁ。弱点を潰してるところも高評価だ」

 

「初めは徒手空拳で挑んでるあたり実は素手の方が強かったりしてな」

 

「戦闘能力も重要だが。それ以上に」

 

 そう言うと今度は映像を早送りにして伏黒が個性を解除して蛙に似た風貌の少女を助けた後に0pヴィランに挑むシーンへと移る。

 

「他人を率先して助けるこの精神面よ」

 

「これ見た時よぉ俺一瞬固まっちまったもん。『え?そこで助けに戻る?』的な感じで」

 

「救助ポイントに気付いてたとか?」

 

「いや、終了の合図を聞いた瞬間にしゃがみ込んでため息をついてる。恐らく、というかほぼ間違いなく打算抜きだろ」

 

 稀に見る100ポイント越えの受験生の映像を見て大盛り上がりの雄英教師たちにふと教師の1人がとあることを口にする。

 

「ですが、伏黒恵は3年の序盤まで喧嘩三昧であった記録がございますが」

 

「え!?マジィ!?」

 

「資料をちゃんと見ろマイク」

 

 そう言うとマイクと言われた男性教師は伏黒恵のプロフィールが書かれた資料に目を通す。そこには確かに中学生時代の伏黒恵の活動に『不良達との喧嘩に明け暮れていた』と記されていた。それを見て軽く目を見開くマイクを見た男は同時に伏黒についての指摘に追撃を行う。

 

「いくらポイントが高くて人間性がよかろうと流石に我慢の効かない輩がヒーローになれますかね?」

 

 割ともっともな指摘に押し黙る雄英教師一同。すると、少し高くそれでいて少しだけ低く感じるような中性的な声が静まり返った空気の中で声を上げる。

 

「確かに彼の過去はお世辞にも良いとは言えない。けれど今回の試験でみんなも見た通り彼は自身の利益を捨ててでも誰かを助けようと思える心がある。それに『不良と喧嘩し続けた』って記録があったけれど、彼が喧嘩する時はいつも限って『いじめられていた学生がいた時』とも記されているじゃあないか」

 

 確かにそう書いてあった。これは並木先生自身が書いた文であり少しだけ本人によって書いたものかもしれない。しかし、同時に事実であるのだ。

 

「故に見定めよう彼のことを。公共の場でのみお人好しになるだけの男なのか、それともヒーローの卵なのかを。だから、頼めるかい?相澤くん?」

 

「元々そのつもりだったんでしょう?」

 

 無精髭を生やした男が気怠げにそう言うと中性的な声の持ち主はニコリと笑って答えた。それを見た男はため息を吐いて椅子に座った。

 

「それじゃあ特殊な事例だが、彼だけ先に相澤君の受け持つクラスA組に所属ってことでいいかな?」

 

 そう言うと周りな教師たちも『異議なし』と答えるとスクリーンはまた別の受験生を映すのだった。

 

 

 あれから二ヶ月ほど経ち、4月になり桜が舞い散る季節となった。伏黒は仏壇の前で手を合わせて「いってきます」と言うと雄英の制服に着替える。鏡の前で着なれない服の身だしなみを整えて家を出る。

 

「よ、伏黒」

 

 家を出てすぐに出迎えた幼馴染の新たな制服姿を見て本当に自身が高校生になったことを自覚する。

 

「おう、拳藤」

 

「お、普段通り無愛想に無視か、ぞんざいに返されると思ったら普通に挨拶を返すとはね。それに伏黒、制服姿スゲー似合ってるよ」

 

「そりゃあどうも」

 

 普段通りの何気ない会話を拳藤と伏黒はし続ける。両者ともにいつもと違う点があるとするならば共通して新しいヒーローとしての第一歩を踏み出せたことに対する胸の高鳴りがあることだろう。

 

「伏黒は何組?」

 

「A組」

 

「ありゃあー、私はB組だ。残念。違うクラスだね。あ、そうそう、伏黒さぁ。大丈夫?友達できる?」

 

「お袋かお前は。余計なお世話だ」

 

 拳藤の心配事に伏黒は苛立ちながらそう返す。雄英に到着しても互いに他愛のない会話を続けていく。すると、『1ーB』と大きく書かれてあるドアの教室に着いた。

 

「それじゃあ、私はここで」

 

「おう、じゃあな」

 

 「問題起こすなよ〜」と言い、手を振りながら拳藤はB組の教室のドアを開ける。それを見た届けた伏黒は1ーAへと向かうすると歩いて数分もしないうちに目的の場所に到着する。そこには伏黒を縦に三つ以上重ねても余るほどの巨大なドアが存在していた。

 

「バリアフリーか?」

 

 ふとそんなことを言いながらドアを開ける。大きさに見合わず思った以上に軽かったためドアの開け方が粗くなり少々申し訳なくなった伏黒だった。教室に目をやると広いクラスには誰一人としていなかった。早く来すぎたと内心ぼやきながら黒板に貼られている書類を見て指定の席に着席する。すると、扉を開く音が聞こえて来る。目線を向けるとそこにはあの日同じ会場にいた蛙顔の女子生がそこにはいた。

 

「あなた、あの時の」

 

「……おう」

 

 相手も予想外だったのか軽く目を見開きながらこちらを見て来る。伏黒自身も少しだけ驚いたがそれ以上にどう接すれば良いのかがわからなかった。これで相手があの時会場で見た委員長風の男なら、植蘭で見たチンピラのような男なら適当に流すか、睨み返して対応するか出来たのだが流石に明らかに大人しめの女子相手にはどうすれば良いのか分からず思わず素っ気なく返事をしてしまった。それでも相手は気にしなかったのか自身の席に荷物を置いた後に伏黒の席へと足を運ぶ。

 

「ケロケロ、あの時は本当にありがとう。あなたのおかげで足を捻挫した程度ですんだわ。そしてごめんなさい。私のせいで最後の最後でポイントを取れなかったでしょう……」

 

 礼を言った後に俯きながら申し訳なさそうにそう言う相手を見て流石に気まずくなった伏黒はため息を吐きながら言葉を返す。

 

「……別に良い。あの時は俺が勝手に助けることを選んだんだ。その行動に悔いはねぇ。それにヒーロー目指してるんだ。人を助けて当然だろ?」

 

「あなた、本当に優しいのね。私、蛙吹梅雨(あすいつゆ)って言うの。梅雨ちゃんって呼んでほしいわ」

 

 伏黒の言葉を聞いて顔を上げると——わかりにくいが——軽く笑みを浮かべながら握手するためか手を差し出す。伏黒は拳藤を除けばここまでフランクに接する相手は初めてだったため少し戸惑いながら差し出された手を握り返す。

 

「おう、よろしく頼む。蛙すっ……梅雨ちゃん。俺は伏黒。伏黒恵だ」

 

「ケロ、自分のペースで良いのよ。それに可愛いくて良い名前ね伏黒ちゃん」

 

 そう言うと蛙吹は自分の席に帰っていった。蛙吹も伏黒もそこまで饒舌な人間ではないため教室に静寂が保たれたまま時間が経つ。その間、沢山のクラスメートが教室に入ってきた。ピンク色の肌をして触角を生やした女子生や葡萄に似た紫色の玉のようなものを頭につけた男子生、伏黒に迫るほどの高身長の髪を後ろにまとめた女子生、入試説明の際に委員長のようだと思えたメガネも入ってきた。その中でも特に伏黒が印象を覚えた男がいる。それは、

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の制作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ、てめー!どこ中だよ端役が!」

 

 伏黒の目の前の席で委員長メガネと口論をしている爆発したかのように跳ねた薄い金髪に赤目の三白眼が特徴的な男だった。見た目といい発言内容といい明らかに伏黒がボコってきたチンピラのそれだった。よくこんなのが受かったな、と内心ある意味で感心している。そんなことを考えている間に教室に人が集まってきてそれに比例するように騒がしくなっていった。すると、

 

 

「お友達ごっこがしたいなら余所へ行け。ここは…ヒーロー科だぞ」

 

 寝袋に入ったままの人間がゼリー飲料を一瞬で飲み干しながら、そう言い切った。小汚い上に怪しい。それにそれなりに場数を潜り抜けてきた伏黒が気を抜いていたとは言え察知できないほどの隠密能力。不審者かと考えた伏黒は咄嗟にスマホを取り出そうとするが、次の一言でその行動を中止した。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね……担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 なんと担任とのことだった。見た目完璧に不審者であるにも関わらず担任の教師、しかもここの教師は一人残らずプロヒーローのため目の前にいる男もその1人だと知った時、伏黒は、というかクラスメートは内心で『先生!?しかも担任!?』と思ったに違いないだろう。驚きながらも担任の教師の話は続く。

 

「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」

 

 そう言うと戸惑う生徒たちを残し教室を出た担任——相澤は、言葉通りグラウンドに向かっていった。クラスメートも置いていかれる訳にもいかず慌てて更衣室に向かい着替えてグラウンドに向かう。

 

「「「個性把握テストォォ!?」」」

 

 いきなりの発言にグラウンドに集まったばかりの生徒たちは声を揃えてざわめく。

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

 赤いほっぺたとショートボブにした茶髪の女子は困惑を含めた声を出して問い詰める。

 

「ヒーローになるんならそんな悠長なことしてる暇はないよ」

 

「なるほど。この学校の謳い文句は"自由"。なら、教師側も然りってことですか?」

 

「そう言うこと。理解が早くて助かるよ、伏黒恵」

 

 考えていた中でも最悪の答えに伏黒は頭を抱えた。目の前の男の言葉が正しければ生徒手帳に記載されている一切合切の予定表はもしかしたら意味をなさないかもしれないからだ。この授業が終わったら伏黒は予定を組み直すことを決意した。

 

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト。俺はあれが非合理的に思えて仕方がない。文部科学省の怠慢だよ。そうだなぁ、誰にやってもらおうか。ああ、そうだ。実技一位の伏黒。お前からやってみろ」

 

「なっ!?」

 

「はい、わかりました」

 

 チンピラ擬きが驚愕しているところを見て少し疑問に思いながらも相澤から渡されたボールを受け取り線の中に入る伏黒。

 

「中学時代は?」

 

「……確か67〜70ぐらいだった気がします」

 

「じゃあ個性を使ってやってみろ。円からでなきゃ何しても良い。早よ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、伏黒は。

 

「《鵺》」

 

 影の中を媒介に手で影絵を作ることで、対応した生き物鵺を呼び出した。

 

「ボールを持って旋回しろ」

 

 そう言うと鵺と呼ばれた巨大な怪鳥は足でボールを掴むと一気に上空へと登っていきある程度登るとそのまま円を描くように飛び続けた。

 

「伏黒」

 

「はい」

 

「あれはいつまで飛べる」

 

「維持したままなら日が落ちてもいけます。でも、射程距離は1キロなのでそれ以上離れれば強制的に解除されます」

 

「……わかった」

 

 そう言うと相澤は手にあった機材を伏黒とクラスメートたちが見えるように見せつける。そこには『測定不能』の文字が書かれていた。

 

「「「「うおーーーーー!!!!」」」」

 

「測定不能ってお前!」

 

「なにこれ!?すごいおもしろそう!!」

 

「個性思いっきりつかえんだ!?流石ヒーロー科!!!」

 

「……面白そう、ね」

 

 伏黒の結果を見て口々に楽しそうに『面白い』と告げるクラスメート。それを相澤が聞き見た瞬間、伏黒は相澤から感じる温度が数度ほど低くなったような錯覚に襲われた。

 

「お前らヒーローになる三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのか?……そうかよしわかった。今回のトータル成績最下位のものは強制的に除籍処分とさせてもらおう」

 

 まるでさも当たり前のように新入生を除籍すると告げる相澤。その言葉に周りの人間が全員固まるとすぐに悲鳴があがった。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

「そんなん有りぃ!?」

 

 口々に叫ぶ生徒を冷ややかな視線で見る相澤。そんな様を見て伏黒が何度目かわからないため息を吐く。相澤の声は先程と大差ないにもかかわらずよく響いたように感じられた。

 

「生徒の如何は教師(おれたち)の自由」

 

 絶句する生徒達に構わず、相澤は不気味な笑みを浮かべたまま愉快そうに愉しそうな告げる。

 

「ようこそ。これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 今日この日、伏黒恵の初めの試練が始まった。




近いうち、というか今日明日には投稿します。

UA 11,920、お気に入り518件。ここまでたくさんの方に読んでいただいて作者感無量です。

修正しました。読んでうちに今後の展開であんまり意味ないと思えたのとやはり相澤先生らしくないと思えたのが理由です。節操なしに変えてしまい申し訳ありません。
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