『禪院家の解体』。それはホークスがなんて事無さそうにしながら普段の話の延長線上のようなノリで今回他のヒーローたちを集めた理由を口にする。
「正気なのですか、ホークスさん…」
その言葉に真っ先に反応したのは新規精鋭で今最も熱いとされているヒーロー《シンリンカムイ》だった。震えた声でホークスに聞き返したのはシンリンカムイだけだったが、他のヒーロー達も十二分に驚いていた。普段は冷静沈着で有名なエッジショットは目を見開き、ミッドナイトは目を細めてホークスを見て、Mt.レディはいまだに情報が頭に追いついていないのか放心し、ミルコは先ほどまで退屈そうにしていたのを一変させて「いいぞ、生意気だッ」と嬉しそうに笑っていた。
「冗談言うために頑張っている有名どころの皆様を呼び出したりしませんよ」
シンリンカムイの質問に対して何を言ってんだと言わんばかりの態度でホークスは今回挙げた案件が全くの冗談ではないことを告げる。そうして今回のそういう考えが公安側から浮かんだ理由について説明していく。
何でも公安にとって禪院家は1000年以上にも渡り長いこと居座り続ける厄介な存在でしかないらしい。ただ一組織として起動しているのであればいいが、超常社会以前から見受けられた差別思考や犯罪と繋がっていると見受けられるような行動は正直な話、目に余るとのこと。それ故にさっさと解体してしまいたかったのだが伊達に1000年以上も続いている家ではない為、下手に挑むと負けこそしないが確実に痛手を負い、ヒーローを管理している組織としてあるまじき隙を見せることになる為、今の今まで見逃していたらしい。
「で、でも、何だって今更、禪院家に挑もうなんて強気なことを言うようになったんですか?」
「それに関しては脳無の襲来によって禪院家の中でもとりわけ厄介だった直毘人氏の死亡と伏黒恵が禪院家当主になったことが理由ですね」
おずおずと言った様子で情報処理を終えたMt.レディが手を挙げてホークスに質問する。その言葉に対してホークスが2つの要因を挙げると再度、会議室の中で驚愕が満ち溢れる。事情を知っていたミルコと常闇、拳藤、ミッドナイトを除いて。エッジショットの本当なのか?という質問に対して伏黒は首を縦に振ることで肯定する。それでも納得できなかったのか、最近よく一緒に行動しているところが見られるシンリンカムイとMt.レディは疑わしそうな目を向けてくる。これに関しては肯定だけじゃ納得出来ないよなと思い、伏黒は禪院家には実力を認められた者のみで構成された精鋭術師集団「炳」、個性は優れているが炳に入れる条件である実力がない者が所属する「灯」、武芸を叩き込まれた没個性、弱個性、無個性の男児で構成された下部組織「躯倶留隊」が存在することを教えると2人はマジかといった顔をしながら事実であると受け入れる。その様子を見たホークスが満足そうな顔をして頷くと話を続ける。
「さて、皆さんも納得してくれたようで何よりです。そこでお集まりの皆様にやって貰いたいのが、禪院家の罪状の発見です」
「ん?それは伏黒に調べさせればいい。当主の権限を使えば一発だろうに」
「すみません。直毘人って人が殺された際に重要な書類とやらは燃え尽きたらしいです。―――それに今の俺は
エッジショットの言葉に対して今までやってきたことが書かれているであろう書類が燃え尽きたと言うと、あからさまに舌打ちをする。そして続いて言った伏黒の言葉に会議室にいるメンバーは首を傾げる。これはホークスも意外だったのか、驚いた表情を見せている。伏黒はどういうことなのかミルコに説明するよう促される。
そうして伏黒は自身の立ち位置について説明する。まず初めに伏黒はあくまでも自身が当主の座に任命されただけで実際にはなっていない、いわゆる代理のような役割であることを言う。そして大体大体あと5日くらいに行われる『継宗の儀』という伏黒が禪院家当主の座を継ぐための式をもって真の意味で禪院家当主の座を引き継ぐのだと説明する。
「メチャクチャ面倒くさいな…」
「ま、古けりゃ座を継ぐだけでも大掛かりになるんでしょ。それで早めにやろうとしてる理由なんですが、このままだと伏黒君が禪院家の連中に殺される可能性が高いからなんですよね」
「「は?」」
ホークスの言葉に思わずと言った様子で常闇も拳藤が反応する。バッと勢いよく目線を伏黒に向けると伏黒は肯定すると2人は戦々恐々とする。
「マジかよ…」「そんなもの共食いと変わらんではないかッ」
「実際、任命され直後に一回、昨日の夕餉に毒盛られたので合わせれば計2回は殺されかけてるからな?俺」
あっけらかんと伏黒が告げると場が一気に戦慄する。しかし、伏黒としてはもはや慣れたもの。未だに2日程度しか接してないが忙殺しようとしたその日のうちに当主となる伏黒に胡麻擦りながらよってくる人間達を見て禪院家の連中は保身バカ、世襲バカ、高慢バカ、ただのバカと腐ったみかんのバーゲンセールも良いとこなのは充分に理解させられてるからだ。戦慄する場に伏黒はとある情報を漏らす。
「だけど今が1番の好機でもあるんです」
「へぇ、何でだい?」
「俺は今、引き続きの仕事で事務処理やってたんですが、金銭面の書面が素人の俺から見ても荒すぎる。完全に隠蔽しきれていないんです」
伏黒の言葉に反応したホークスに対して理由を述べるとホークスは口元に手を持っていき何やらぶつぶつも呟いたかと思うと顔あげて指示を出す。
「禪院家は一箇所にしか拠点を置かない為、監視は楽ですが、今は家自体の監視はいりませんので証拠探しに勤しみましょう!」
「ならば警察の手でも借りるべきだ」
「そりゃあ無駄だ。昨日、ヴィランをボコって警察に引き渡そうとしてわかった。ありゃあ、ゴリッゴリに癒着してるわ」
常闇が警察にも手を貸すように頼むべきだと声を上げるが、昨日の出来事を知っているミルコが警察では当てにならないと言うことを告げる。その事実に目を見開く常闇。それに対してホークスが少数精鋭で挑むわけは大規模だと誰が繋がっているのかが分かり難くなるからだと説明する。そして伏黒が完全に当主と任命されるのをタイムリミットとして設定することで作戦を立てる。
「まず初めにエッジショットさんとミルコさんは情報収集をお願いします。そこには俺と常闇くんも参加しますのでよろしくお願いします」
「おう、わかったッ!」「心得た」
「ミッドナイトさんとシンリンカムイ、Mt.レディはヒーロー活動を派手に行うことで目線をそちらに向けてください」
「我が校の生徒の命がかかってるんですもの、言われずともわかってるわ」「了解した」「うーッ、全力で頑張ります」
ホークスがここにいるヒーロー達に役割分担を言い渡すと後ろにあるモニターに京都内でかつて禪院家が裏取引を行っているとされている場所をリストアップし、ポイントとして表す。そしてこの辺りを調べまることをエッジショットとミルコの2人に勧める。
「今回の一件は禪院家であるのもそうですが、警察、府長などを巻き込んだオールマイトが台頭して以降、最大規模の犯罪となります。可能な限り確度を高め、早期解決を目指します。ご協力よろしくお願いします」
先ほどまでのヘラヘラとした表情を消して真面目な顔をしたホークスがそう言って締めると、会議は終了した。
◇
「そういやさ、何で禪院家の当主に選ばれたのかわかったか?シャドシュピ」
ホークスが締め括ったと同時に各自、指示に従い各々の役割を果たすべく会議室から出ようとした時、ミルコが思い出したかのように質問してくる。他のヒーロー達も気になったのか、Mt.レディが確かに…と言いながら立ち止まったのをきっかけに聞く体制をとる。それを見た伏黒は「あー…」といって言いにくそうな顔をすると明かした。
「何でも俺が【十種影法】とかいうのを引き継いだらしいからって言ってましたね」
「とく…何?」
「【十種影法】ですよミルコさん。影ってついてるから伏黒の個性のことよね?何だってそんなややこしい名前に…それに引き継ぐって何?」
伏黒の言葉から出た突拍子もない話に誰もが首を傾げる。伏黒に関しては引き継ぐという単語に【OFA】の文字が頭をよぎるが、やはり名前の由来がわからず頭を悩ませていた。そんな中で唯一、常闇だけは何か思い当たる節でもあるのか考え込んでいた。
「
「何それ」
「日本神話における十種類の宝のことです、ホークス。剣とか鏡とか。まぁ、見てもらえればわかりやすいですね」
そう言って常闇は懐にしまっていたスマホを取り出して何かを検索したかと思うと表示された画面を皆に見せる。
「見てください」
「あん?何だシャドシュピ」
「【玉犬・黒】の額にある紋様。これ死反玉じゃないですか?」
その言葉に今度は【玉犬】の額に視線が注がれる。そうして常闇のスマホにある死反玉の紋様と見比べると瓜二つどころかまんま同じであることがわかる。流石に偶然ではないかと言う声も上がったが、サイズ的に顕現させるのが不可能【満象】を除いたどの式神にも十種神宝の紋様と一致するものが発見されると誰もが押し黙る。それを見た伏黒はあることを話題に出す。
「これは家を調べてるうちにわかったことなんですが…」
「何で言わねぇんだッ」
「突拍子も無さ過ぎたからですよ。禪院家の文献では個性が発見されたのは平安時代からだとされているんです」
「はぁ!?」
突然の伏黒の発言にほとんどの人間が何言ってんだこいつみたいな視線を向ける。「だから言わなかったんですよ…」と言って目線を逸らす。しかし、ホークスとエッジショットだけは何か考えるような仕草を取るとあり得ない話ではないと伏黒の言葉を肯定した。
「何でですか、エッジショットさん」
「個性は未だに何が起源なのかすら不明だということもあるが、禪院家が1000年以上も衰えることなく栄華を極めていること自体おかしいんだ。何せ国を収めた者でさえ最も長く続いたので400年程度だからな。一組織にそこまでの力があるとするならば超常的な力が働いているという可能性はかなり高い」
思い当たる節でもあるかのように語るエッジショットといまだに考え込んでいるホークスにシンリンカムイはマジですか…と呟く。場に微妙な空気が漂い始めた時、突如ダンッ!という強い音が鳴り響く。その音に誰もが驚き、目線を辿るとイラついているミルコがいた。
「個性の起源がいつとか今どーでもいいだろうがッ!相手は禪院家でどうぶっ飛ばそうって集まりだったんだろ!?わかりもしねぇことをウジウジと考えてんじゃあねぇ!」
ミルコの言葉に皆がポカンとして少しするとそれもそうだと笑う。そしてこの話題は全てが終わった後にでもしようとホークスが言うと今度こそ皆は解散した。