伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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今回の話は反省もしてなければ後悔もしてません


拳藤一佳:ライジング

 

 

 奇襲をもって動揺することで禪院家の場がガタガタになったところに更なる追い打ちをかけるべく、伏黒が突っ込んで行った瞬間、空から大量の巨大な拳が迫ってくるのがわかった。

 

「巨大な拳、甚壱か!」

 

 伏黒の言葉の通り巨大の拳の前には大きく腕を振りかぶっている甚壱がおり、甚壱が振り下ろした瞬間、背後に浮かぶ拳の動きが本人の拳と連動するように動き始める。幾つもの巨大な拳はミルコやシンリンカムイ、Mt.レディ目掛けて一斉に墜落してくる。そして発生する絨毯爆撃と見紛うほどの衝撃。降り注ぐ拳が一発一発着弾するごとに禪院家の美しい庭にクレーターが出来上がって行く。

 

「舐めてんじゃねぇぞ、おっさんッ!【 踵月輪(ルナリング)】ッッ!!」

 

 それでもヒーロー側もただやられているわけではなく、土と血で顔面を汚したミルコが甚壱の作り上げた巨大な拳を足場に駆け上がると空中で開脚してからの前方胴回し回転蹴りを放つ。甚壱は先ほどのように巨大な拳を放つのではなく防壁のように何重にも重ねてミルコの攻撃を防いで弾こうとするが、威力は甚大だったのと空中ということもあって吹き飛ばされる。しかし、残していた巨大な拳が開くとミルコを掴んで地面に向けて落下していった。

 

「ミルコさんッ!」

 

「お前の相手は私だ小娘」

 

 ミルコの安否を気にして叫んだ拳藤に扇が切り掛かる。これに対して拳藤は個性を発動させて拳を巨大化させると器用に刀を避けて扇を掴むと向いの建物目掛けて投擲する。そしてミルコに目線を向けると立ち上がったミルコに扇を仕留めるように命じられると投擲した方へと駆け出した。

 

「そんじゃ、残った君は俺とやろか」

 

「直哉ッ」

 

 そして伏黒には立て直した直哉が飛びかかってきた。飛びかかると同時に直哉は伏黒目掛けて回転することで2度蹴飛ばすが伏黒は難なくそれを捌き切りると着地した直哉目掛けて殴り掛かる。すると、直哉の体が加速し始めると伏黒の攻撃を難なく回避するとすれ違い様に伏黒の体に触れると後ろに回り込む。伏黒は咄嗟に振り返ろうとした時、次の瞬間には拳を振り切った直哉と腹のあたりに強い衝撃が走った自分がいた。まるで時間が1秒飛んだかのように感じたような感覚に混乱こそしたが、【嵌合纏】による強化された肉体によってなんとか堪える。

 

「場所を移すぞ」

 

 そうして逃げようとする直哉の胸ぐらを掴んでここでの戦闘で互いに巻き込まないことも考慮して扇と拳藤がいた場所とは別の方向に投げ飛ばす。そして飛んでいく直哉を伏黒は追いかけるとそれぞれ戦いの舞台が三つに分けられた。

 

 

「何だここ…」

 

 禪院扇を吹き飛ばしたことで壁に開いた大穴から入った拳藤は思わずといった様子で呟く。そこは途中までは外側の和風様式と同様に木造建築であった。しかし、そこから先の通路が異質だった。地下へと向かうその通路はまるで無理矢理掘り進めて作ったかのような通路に通路の一定間隔で支えとして使われていると思われるコの字型の木の枠。そしてその木の枠に吊り下げられたランタンは現代のような電力式ではなく、オイルランタンとかなり古臭いものだった。初めは戸惑いこそしたが、通路から負傷でもしたのか血の跡がてんてんと見て取れる。

 

「虎穴に入らずんば何とやら、だ。ビビんな私」

 

 一瞬、罠の可能性も頭に浮かんだが、伏黒からあらかじめ聞かされていた扇の個性は【逆境】。少なくともブラドのような血を操るタイプの個性とは違うこともあって顔を何度か叩いて前に進むことを選択した。凸凹な道に急な坂と少なくとも使用者の考慮を一切筈いた作りに辟易していると、急に明るくなる。そして降りた先にはこれまた想像もつかないようなコンクリート張りの通路だった。

 

「どうなってんだよ、この家…」

 

 代わる代わる造りの違う家の有り様を見せられる。まるでこの歪さこそが禪院家の有り様であると見せつけられるように。そうして嫌な予感が過った拳藤は早足になって駆けつけると思わず見上げてしまうほど大きな黒塗りの鉄扉が開いていた。そこを潜るとそこには

 

「逃げるのは辞めたのか?禪院扇」

 

「逃げたのではない。お前がここに誘い込まれたのだ。小娘よ」

 

 無傷の扇がそこにはいた。血の跡はブラフかと思ったが、服に血のシミが見て取れるあたり決してブラフではない。ならば何故なのか?拳藤が様子見していると扇の刀が変わっていることに気がつく。そして、理解した。

 

「組屋蹂造の個性武器か」

 

「個性武器?…ああ、これのことか。我々はこれを呪具と呼んでいる」

 

 その言葉に扇の眉がぴくりと動くのが見て取れるのと同時に組屋蹂造の作品の正式名称を述べる。思いの外感情豊かなんだな、と拳藤が言う。すると、その言葉に対してなのか機嫌を損ねたように不機嫌そうな声で扇は話始める。そして深々と腰を落として片手を刀の方に添えると居合の構えを取る。それを見た拳藤も同じく構えを取る。

 

「小娘。何故前当主が私ではなく直毘人だったか知ってるか?」

 

「知らねぇよ。お前らのお家事情なんて微塵も知らないからな」

 

 扇の質問に拳藤が答えると同時に扇は詰め寄ると構えから刀を握りしめて拳藤の腰目掛けて抜刀する。それに対して拳藤は長物相手には間合いを詰めることを知っていた為、扇が駆けるのと同時に拳藤も間合いを詰めると腰目掛けて迫り来る斬撃を拳で叩いて弾くと互いにすれ違う。そして振り向きざまに片手から両手に持ち直した扇が下段から切り上げようとするも加速し切るよりも前に瞬間的に個性を発動させて加速させた拳藤の拳が刀をへし折る。それに驚いた扇の隙をついて再度拳を拡大させて振るうと勢いよく扇の後ろに回り込むと勢いを利用したアッパーを放つ。

 

 すでにこちら側に振り返って獲物を構えているが、獲物はへし折れた以上は防ぎようが無い。仕留めた。その思考が拳藤の頭によぎるのと同時に本当に防ぐ手立てがないのかという考えが過ぎる。瞬間、情報集めが完了してからひたすら行い続けた鍛錬でのミルコの言葉が頭を過ぎる。

 

『戦う時は相手の目から絶対に逸らすんじゃねぇぞ!目は口ほどものを言う!追い詰められたフリをしても目の奥にあるギラつきは隠しきれねぇもんだからなッ!』

 

 その言葉を思い出した拳藤は扇の目を見る。扇の目には敗北は愚か負けの考えなど微塵も見てとれなかった。それを理解した瞬間、もう片方の手を無理矢理大きくすることで自重によって体勢を崩させる。そして扇にあてる筈だったアッパーを無理矢理そらして振り切ると同時に個性を発動させて勢いのままくるくると回ってその場から回避する。

 

「…よく避けたな」

 

「避けれてねぇよッ」

 

「殺す気だったのに殺せなかった。ならばハズレだよ」

 

 するとそこには刀を振り切った様子の扇がいた。扇は拳藤が逃げた場所に目線を向けると素直に感心した様子で褒める。そんな様子に拳藤は睨みつけながら吠える。そして吠えると同時に拳藤の足元に向けて血が勢いよく垂れ流れ始める。血が流れ出ている起点を見ると、拳藤の指が6本になっていた。

 

「チクショウ…完全に増強系だとおもってたッ…」

 

「?…ああ、なるほど伏黒恵から私の個性について聞いてたのか。それで追い詰められれば追い詰められるほど身体能力が増す、個性だと。残念ながらハズレだ」

 

 痛みに対して必死に堪えながらそう呟く。扇は拳藤の言動に訝しむがすぐに拳藤の想像していた自身の個性の内容を否定すると拳藤によってへし折られた刀を見せつける。そこにはへし折れた先を補うように炎で刃を形成していた。これこそが禪院扇の個性【逆境】の真の姿。追い詰められれば追い詰められるほど()の火力が増していく。追い詰められなければマッチ一本分にも満たない程度の火力。しかし、ある程度追い詰められれば人の体を焼き切るほどの威力へと変貌を遂げる。

 

「そういえばまだ何で私が前当主になれなかったのか言ってなかったな」

 

「それはどうして何で?」

 

「何故私が当主になれなかったか…。それは私の子供が出来損ないだったからだ…!!」

 

 自己愛と自己憐憫をこれでもかと詰めた言葉を放つと同時に自分の為に本気で涙を流していた。その様子に拳藤は一瞬、焼き切られた自身の手のことを忘れるほど驚く。

 

 そしてそんな拳藤の隙を扇が見逃すはずも無く、個性武器によって強化された五体を用いて拳藤の負傷した掌を蹴り飛ばして痛みによって身動きを封じるとすぐさま両の足を地面につけると上段から袈裟懸けに斬ろうとする。しかしそれに対して拳藤はもう一度個性を発動させて刀と自身の間に拳を挟み込むことで無理矢理防ぐ。しかし、命の引き換えに得た代償はあまりにも大きく個性の起点でもある拳藤の個性がほぼ封じられた状態となった。それと同時に刃の形を保っていた炎が鎮火するの扇が見届けると拳藤の腹に蹴りを叩き込んで出入り口に〆縄が施された地下室へと叩き込んだ。

 

「カハッ…!」

 

「私と直毘人との間に差はなかった。個性の性能もそれを扱う力量も兄に遅れをとったことなどなかった。唯一、子供の出来を除いて。私の種から生まれたのが双子の女。女だけでも許せんというのに挙句凶兆を知らせる双子ときた。それでも私は寛容だった。せめて個性がまともならまだ許そうと思った。にも関わらず判明したのは片や没個性で片や無個性と何の生産性も産まない穀潰しだった」

 

「ツッッ…。それでッ…ご自慢のお子さん達はッ、どこに?」

 

「そこにいるだろう」

 

 地下室の仕掛けを利用して新しい刀を取り出すと拳藤の後ろへと指を指す。そして痛みに耐え抜いていた拳藤の頭があり得てはならない答えへと行き着く。まさかと思いながら振り返る。そこには小さな子供ほどの大きさの白骨死体が転がっていた。

 

「――――――――」

 

 それを見た拳藤の思考が真っ白に染まる。そんな拳藤を気にすることなくそこに転がっている死体の経緯を説明し始める。何でも最後の情けで殺し合ってどちらか片方が生き残れば生かしてやろうと言ったらしい。それでも双子は殺し合うことができなかったのか、2人仲良く逝ったのだと言う。それに対して扇はまさに出来損ないの極みと吐き捨てる。それを聞いた拳藤の頭からブツっという何かが千切れるような音が聞こえる。

 

「ああ、よくわかったよ」

 

「わかってくれたか?」

 

「テメェが当主になれなかったのはテメェが自分の娘を平気で殺せるクソ野郎だったからって気付いたんだよ」

 

 そう断言し切る拳藤の言葉に対して扇は呆れたようにため息を吐くと刀を抜いて近づいていくと大きく振り上げる。

 

「せめてもの情けだ一太刀で逝かせてやる」

 

 そう言うと同時に扇は拳藤の脳天目掛けて刀を勢いよく振り下ろした。それに対して拳藤は手の痛みなど忘れて手を巨大化させて受けた後に目の前の扇をどう倒すかだけを考える。すると、一向に手から感じるはずの痛みがこない。切り落とされたかと思ったが、それだったら自身が未だに死んでいないことがおかしいと思わされる。

 

「なんだ、それは…」

 

 扇の皺がれた声が聞こえてくる。それに対して拳藤が顔を上げると自身の手が巨大化していないことに気がつく。その代わりに自身の手の周りを覆う黒縁のオレンジ色のオーラが現れていた。

 

「はっ?」

 

 これには拳藤も唖然とする。どんな個性にも理屈は存在している。例えば八百万百、彼女の個性は【創造】である。しかし、何もノーリスクで想像できるわけではない。創造するにあたって自身の資質を消費するという面が存在している。例えば爆豪勝己、彼の個性は【爆破】である。彼の爆破もまた何の理屈もなしに掌から爆破を放てているわけではない。彼の汗腺から滲み出る汗はかなり特殊でニトロとよく似た成分を有しており、それを用いて爆破しているのだ。ならば拳藤一佳ならばどうだろう。一体どうやって【大拳】が発動しているというのか。それは彼女が個性を発動させるのと同時に彼女の手を広げるべく、個性因子がエネルギー体に変換されるのを用いて拡大するとされている。しかし、この考えは間違っていた。彼女の手を拡大していたエネルギーこそが彼女の個性そのものだったのだ。掌という固い蛹から扇の付けた傷を通して揺籃から解き放たれたエネルギーは拳藤の真の個性となって顕現した。

 

 拳藤は今このエネルギー体が何なのかわからない。しかし、これだけは本能でハッキリとわかる。このエネルギー体は自身の体の一部(個性)であるということを。それを理解した瞬間、いつものように手を拡大させる感覚でエネルギー体を操ろうとする。すると、手を覆っていたエネルギー体は大きな掌へと姿を変える。それを見た扇は咄嗟に離れようとするものそれよりも早くエネルギーの掌が扇をガッチリと掴むと残った手で扇を殴り飛ばした。

 

「ぐおッッッッ!?」

 

 突然の事態にも関わらず咄嗟に個性武器の能力である硬化を発動させるも凄まじい威力は衝撃を完全に消すことが出来なかった。

 

「なるほど、ね」

 

 突如として湧いてきたエネルギー体と固いものを殴った感覚はあっても一切手を痛めなかったという事実に拳藤の頭は興奮からエンドルフィンを分泌し痛みを消していく。試しに離れた扇に向けて大きく手を振りかぶる。そして振り下ろす瞬間、今まで出来なかったほど拡大出来た大きな手となった。手のひらは扇目掛けて襲いかかるも相手は候補者とはいえ名だたる禪院家の中から3人のみに引き絞られ当主に選ばれるはずだった扇。驚きこそしたが、回避すると刀を起点に今までで最高潮の炎を噴き出す。

 

「個性解放、【焦眉之赳(しょうびのきゅう)】!!!」

 

 荒々しく燃え盛る炎は扇の身の丈と同等かそれ以上の長さの炎の刃を形成する。

 

「来い!!小娘ぇぇ!!!!」

 

 形成させた炎の刃を持って今度こそトドメを刺すべく突撃する。それに対して拳藤は両手のエネルギーを今まで以上に大きな手に変えると胸を大きく逸らしてのけ反ると接触まで残り3メートルを切ったあたりで大きく柏手を打つ。そうして生じた風圧は剣先から放たれようとしていた炎をあらぬ方向へと飛ばし、生じた音圧は扇の鼓膜をいとも容易く破壊した。猫騙しのように目の前で拍手をされた影響で扇は麻痺して動けなくなるほどの衝撃を与えられる。そうして生まれた隙を拳藤は見逃さず、エネルギーで形成された大きな手を扇にぶつけると凄まじい勢いで飛んでいき、柱を何本かぶち抜くと扇の体は奥の壁にぶつかったところで止まった。

 

「ふーっ…終わっ、たぁ…」

 

 意識がなくなったのを見た拳藤は思わずといった様子で大きく息を吐くとエンドルフィンが切れた影響で思い出したかのように手が痛み始める。それでもまた復活されて暴れられては困ると学校側から支給されている様々な耐性を持つとされている捕縛布で扇を捕縛すると今度こそその場に崩れ落ちて仰向けになる。

 

「要、検証だな…」

 

 大きく切れた自身の掌を眺めてそう呟くと拳藤は少しだけ休むことを決めた。

 

 ――――禪院扇vs 拳藤一佳

 

 勝者、拳藤一佳。

 

 

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拳藤一佳
個性【大拳】→【オーラフィスト】

 手自体を大きくするのではなく、手から滲み出るオーラを手の形を模って大きさを自由に調整できるというもの。利点は膂力が増しているにも関わらず、重さが無く常時大きいままでぶん回しても筋力の負担がない点が挙げられる。勢いは変わっていないどころか上がっているため、手を動かした衝撃を用いての高速移動は今でも出来る。大きくすればするほど力が強くなるのは【大拳】と同じだが、大きくしすぎると壊れやすいというデメリットもある。イメージ的には七つの大罪に登場するメリオダスが序盤に暴走した時に見せた闇を手に変えるあれ。完全に独自解釈で生まれた産物です。批判も何もかも受け入れる覚悟はあります。
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