伏黒のヒーローアカデミア   作:アーロニーロ

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インターン、そして模擬戦

 

 いつの間にか9月も終わり10月を迎え、夏の気配はすっかり消え去り寒暖の差も激しくなってきた。あれから伏黒を含めたインターン組はオールマイト、相澤引率のもとナイトアイの葬式へ参列した。伏黒が初めてナイトアイ訃報を聞かされた時はなんの冗談かと、タチが悪すぎる冗談だと思い緑谷に聞き返した。しかし冗談ではなかった。おまけにミリオの個性が死穢八斎會の一件で完全に使えなくなっていることを本人から直々に見せつけられた時は恩人が2人も再起不能になっている事実に泣きそうになった。

 

 今回、葬式に参列できたのは伏黒が職場体験先で選んでいた事や元々インターン先がナイトアイの事務所であった事、そして何よりナイトアイとミリオ、センチピーダーにバブルガールが伏黒のことを気に入っていて参列出来たならと言ってきたからだ。伏黒は参列した際にナイトアイの顔を見ることができた。初めて見る死体を前に伏黒はナイトアイも酷く穏かやな顔が出来るのだと的外れなことを思えた。葬式を終えて後に聞いた話なのだが、インターンは学校とヒーロー事務所の話し合いの末 しばらく様子を見ることになり、ナイトアイの事務所はサイドキックのセンチピーダーが引き継ぎ、ミリオの帰りを待つことになった。そして慌ただしくはあったが、禪院家を犠牲なく終えた。にも関わらず、他の場所で知った人間が死んだという事実に伏黒がショックを受けながらでも平穏な日常へと戻っていく。

 

「アマリ美シイ問イデハナイガ コノ定積分ヲ計算セヨ。正解ノ分カル者ハ挙手ヲ」

 

 4限目に受けることとなった数学で担当はエクトプラズム。エクトプラズムは数学を得意としている。その上、好きであるが故に独りよがりな授業をせず万人に分かるように授業を進行する。しかし、そんな彼にも悪癖がある。それはたまに問題を出す際に自身の趣味に走ることだ。「明らかに今の一年坊に解けるわけないだろ」みたいな難問や、「え?その問題ってそうなんの?」みたいなトリッキーな問題など様々だ。因みに今回は前者の方。エクトプラズムの出した定積分の応用問題に頭を悩ませる生徒達。難易度はかなり高く。個性の都合もあってA組どころか1〜3年生を含めてもなお、頭の良さが上澄に位置づけられる八百万が計算の手を一時的に止めるほどだった。他にも上鳴のように戦意喪失しているものもいれば、緑谷のように懸命にペンを動かしているものもいる。伏黒はというと禪院家にいた間にも勉強を欠かしたことはないが、それでも出てきた難題ぶりに頭を悩ませていた。すると、近くでブツブツと呟きながらペンを動かし続けていた緑谷がペンを置いて元気よく手を上げる。

 

「緑谷!」

 

「107/14です!!」

 

 珍しく気合の入った答え方に伏黒は驚きつつも緑谷が自身と同じ答えに至ったことを知る。結果的にこの場でエクトプラズムが緑谷の答えをあっているか間違っているの判断で伏黒の正否も決まる。そして結果は

 

「不正解!」

 

 残念なことに不正解。残念そうな顔をして座る緑谷を見送ると伏黒は自身の計算式を見つめ直す。そしてある部分に間違いを見つけるのと八百万が答えを導き出すのは全く同時だった。

 

「107/28ですわ!」

 

「正解!デハ、次ノページへ行クゾ」

 

 どうやら八百万の答えは正解だったらしく、エクトプラズムは元気よく八百万の答えに正解を言い渡す。そして次のページへと移行する。その後はこれといって奇抜な問題が出ることはなく、4限目も終わって昼食の時間となる。それ以降はこれといって特筆すべきイベントが起こらずにその日は終わった。

 

 

 そして次の日、緑谷が珍しく遅刻しかけたことを除けばいつも通りの日常、というわけにもいかなかった。伏黒が登校した時から目線は伏黒へと注がれていた。その目には一人先んじたことに対する嫉妬や誰よりも早く大々的にテレビに出ることになった(・・・・・・・・・・・・)伏黒に対する好奇の視線だった。そしてミッドナイトの授業が終わって休み時間が訪れると峰田と蛙吹が寄ってきた。

 

「おいおい見ろよ伏黒ぉ!!テレビに映っちまってるぜ!」

 

「ケロ。伏黒ちゃんは前もクリエイターを捕縛したことでテレビには出てるわ。でも、今回は話題が話題だけにおもっきしテレビの主題として出されてわね」

 

 実は昨日の放課後に相澤がテレビ局から伏黒を雄英高校からでいいから出演できないかと言う話があがったのだ。なんでも禪院家の主要人物である禪院直哉を捉えたことやホークスとミルコから告げられた禪院家崩壊の立役者としてインタビューをしたいのだとか。これに対して伏黒では無くA組の皆は大盛り上がり。クラスメイトの一人が誰よりも早くテレビ出演することを一人除いて歓迎していた。伏黒としても断る理由もない為、受けることにした。そして寮の応接間で一時間半にも登るインタビューを3本違う会社から行われた。

 

「お前の幼馴染もノリノリじゃねぇか!」

 

 スマホを見せつけてくる峰田に対して伏黒はスマホに流れるニュースに目を通す。どうやらテレビ出演を頼まれていたのは伏黒だけではないらしく、同じく禪院家において主要人物であった禪院扇をひっ捕えた拳藤にも声が掛かっていた。内容は禪院家との戦闘を通して何を得たのかや、幼馴染らしいがクラスは違っても仲はいいのかなどそこそこ多岐に渡った。その中でも伏黒のとある発言が話題となった。

 

「なーにが『その人に揺るぎない人間性があればそれ以上は求めません』だ!えぇ!?イケ黒君よぉ〜!」

 

「とってもカッコよかったわ、伏黒ちゃん」

 

「イケ黒はやめろ。あと、ありがとう梅雨ちゃん」

 

 目を血走らせながら詰め寄ってくる峰田に対して伏黒は顔を背け、ケロケロと笑いながら褒めてくれた蛙吹に対しては素直に礼を言った。一番初めに来た取材の人に最後あたりになって二人の好みのタイプの人について聞かれたのだが、拳藤は『強く、芯の一本通った泥臭い男』と答えた。そして伏黒はというと少し悩んだ末に取り敢えずといった様子でそう答えた。するとこのセリフが女性陣に対してかなり好印象だったらしい。元々雄英体育祭やクリエイターの事件、そして何より伏黒のルックスも相まってそこそこあった伏黒の女性人気が上がった。そして伏黒の男性人気が下がって拳藤の男性人気が上がった。

 

 やいのやいのと盛り上がっていると今度は上鳴の禪院家の一件をきっかけにエッジショット、Mt.レディ、シンリンカムイの3人が『ラーカーズ』という名のチームを組んだらしい。それを通して芦戸からプロになったらチームを作ろうという話題が出ながら必殺技の特訓があるのでコスチューム等の準備をして体育館γへと向かった。

 

 

 そして体育館γへと訪れるとすでに待機していたセメントスから今回の課題をだされる。それは以前課せられた『最低でも二つ必殺技を作る』が出来ていない人間は必殺技の開発に尽力し、出来ているものは更なる発展を行うように指示が下される。

 

安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)!!」

 

 すると切島がいの一番に必殺技を公開する。使用と同時に全身から軋むような重低音が響き渡り、同時に激しく火花を散らし続ける。 そして全身が普段の硬化時よりもさらに刺々しい形状となり、その姿は正に全身凶器と呼ぶのに相応しい姿となった。

 

「おっ!」

 

「それが言ってた新必殺技か?」

 

「応よ!ところで伏黒!おまえに余裕があればでいいんだが、硬度を高める為にも俺のことをしこたまぶん殴ってくんねぇか!?」

 

「字面がヤベェがよくわかった。だが、俺の訓練と並行でいいか?」

 

 伏黒は切島の訓練の参加に対して自身の訓練と並行ならと条件をつけてOKを出した。それに対して切島も問題無さそうに了承する。そして伏黒はコミュ強である芦戸と切島に皆を集めてくれないかと頼む。その言葉に二人は不思議そうにしていたが、断る理由もないため皆を集め始める。二人に声をかけられたクラスメイトが一人また一人と増えていく。そして最後の一人に具合を悪くした青山を保健室へと運んでいった緑谷が来ると青山を除いたA組の皆が伏黒の前に出揃った。

 

「で?俺たちの訓練の手を止めてまで、なんのようだ影野郎ォ?」

 

「単刀直入に言おう。お前ら全員と俺とでバトってくれないか?」

 

「オイオイオイ、人気者になった反動でアホになったんか、アアァン!?」

 

 伏黒の言葉にメンチをきってくる爆豪を筆頭に他の面々からも困惑の雰囲気が流れ出してくる。それに対して伏黒は説明をする。自身は格下相手であれば多対一を経験したことはあっても拮抗した人間との多対一を経験したことがない。そこでその経験をするのと同時に自身の考案した新必殺技の調整をしたいのだと頼み込む。

 

「無茶よ伏黒ちゃん。あれから私達も強くなったのよ」

 

「蛙女の言う通りだ。テメェが負けちまっても俺は慰めてやんねぇからなぁ!」

 

「そんなこと一言も言ってないわ、爆豪ちゃん」

 

「それに関しては問題ない。負けたら負けたで課題が見つかる。スタートは俺が必殺技を使ってからでいいか?」

 

 構わねぇよ、という爆豪の言葉と共に他のクラスメイト達も自然と近接型、中距離型、遠距離型と陣形を取りはじめる。それを見た伏黒はクラスメイト達の陣形が完成すると共に乗仏教における如来の一尊で、夜叉の武将集団「十二神将」を従える薬師如来の印を結ぶと必殺技を起動する。

 

「領域展開――――【嵌合暗翳庭(かんごうあんえいてい)】」

 

 その言葉と共に伏黒とクラスメイト達を取り巻く世界が巨大な腰椎が浮かぶ液状化した影で埋め尽くされる。

 

「嘘だろぉ!?」「何これー!?」「伏黒君、こんな事もできたのか!?」「これは、凄まじいわ…」「影の、王国」

 

 皆が一様に伏黒から放たれた【嵌合暗翳庭】を前に驚きを隠せないでいた。すると伏黒はそんな様子を気にする事なく【玉犬】、【鵺】、【満象】、【蝦蟇】、【虎葬】、【脱兎】、【円鹿】と伏黒の持つ全式神を呼び出す。伏黒から聞かされていた一度に呼び出せる式神は2体までというルールを逸脱した光景に皆が驚く。すると、【円鹿】を除いた【玉犬】、【鵺】、【満象】、【蝦蟇】、【虎葬】、【脱兎】がクラスメイト達目掛けて一斉に襲い掛かり始めた。

 

「皆さん、構えてください!確かに伏黒さんの能力は圧倒的ですが、手数の多さでは未だにこちらが上です!」

 

「んなこと、わかってらァァァ!!!」

 

 異様な世界に皆が飲まれかけていると立て直した八百万が大きな声を出して皆の正気を取り戻させる。すると、それと同時に爆豪が自身の個性を用いて伏黒に突っ込む。【玉犬】、【鵺】、【満象】、【蝦蟇】、【虎葬】、【脱兎】の突撃を漕ぎように隙間を縫うようにして回避していくとガラ空きになった伏黒目掛けて飛びかかる。

 

「派手な技ァ、撃ってハイになったのかァ!?式神全部使うとかアホの極みだなァ、オイ!!」

 

 守る式神も回復特化で特に戦闘能力の無い【円鹿】。防ぐ手立てのない伏黒目掛けて好戦的な笑みを浮かべた爆豪は爆破で回転させる事で加速し始める。

 

爆破式(エクス)バンカーッ!!」

 

 技名を言い放つと同時に小規模の榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)とも言える大振りの一撃を伏黒目掛けて放つ。しかし、伏黒はいつの間にか発動させていた【嵌合纏】で強化されていた五体を用いて爆豪の手首を的確に蹴り飛ばす事で弾くと呆然とする爆豪目掛けて伏黒の足元から現れたもう一人の伏黒が空中で飛んでいる爆豪の足を掴むと投げ飛ばす。爆豪は影で出来た液体状の地面を数回バウンドするもすぐに爆破で体勢を立て直すと信じられないといった顔で伏黒を見ると同時にあることに気がつく。それは一向に他のクラスメイト達が来ないという事だ。すると後ろから聞こえてくる凄まじい音に爆豪は振り返った。

 

「どうなってやがる…なんだってテメェの同じ式神が何体もいやがるッッ!!」

 

 そこには上から落ちてきた【満象】を支える切島、突っ込んでくる【満象】を支える障子と砂藤、電撃を一斉に放ってくる10羽の【鵺】の攻撃を捌く上鳴と八百万、5匹ほどの【蝦蟇】によって縛り上げられる峰田や葉隠、15匹の【玉犬】によって気絶させられた多数のクラスメイトとそれに抗う緑谷、3匹の【虎葬】の攻撃をなんとか防ぎ続ける轟の姿があった。それを見た爆豪は思わずといった様子で叫ぶ。

 

「これが【嵌合暗翳庭】の能力。影絵を作らずに影を無尽蔵に式神を呼び出し、変化させて攻撃したり、影で自分自身の分身や囮を作って自在に撹乱を可能とした姿だ」

 

 爆豪は伏黒の言葉と共に自身が相手を前に目線を外していたことに気がつくと伏黒が消えていることに気がつく。すると自身の側頭部を高速で迫ってきた何かが殴り飛ばしてくる。なんとか目で追うとそれは影から影へ。360°ありとあらゆる方向から高速移動を繰り返しながら目にも止まらぬ連打を爆豪に叩き込んでいく。途中までは何とか捌けたものの最後に足元から飛び出してきた【蝦蟇】によって両腕を縛られ動きを封じられると伏黒は爆豪の顎を的確に捉える。

 

「なんちゃって『ファントムメナス』。俺は影から影へ移動できるからな、こういうことも出来るんだ」

 

 伏黒の言葉と共に爆豪は崩れ落ちていく。それを見届けた伏黒は残る面々を仕留めるべく足を運んだ。そして伏黒は5分程度でA組の面々を仕留めることに成功した。

 

 そうして全てが終わった後に皆から新必殺技のことを問い詰められたりリベンジを望むものにもう一度やるように言われたりなどして1日は過ぎて行った。

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