次回はifストーリーになります
文化祭まで秒読みという事もあってかすでにゲートを筆頭に様々な露店なども出来上がっていた。色とりどりの出し物が並ぶ中で禪院家で培った敵意を判断する感覚がひりついた。禪院家で味わってきた嫉妬や殺意などとは雲泥の差だが、確かに伏黒は敵意を感じた。アゴとリーゼントが特徴的な男に敵意を向けられる覚えがなかった為、訝しみこそしたが気にする必要はないと思いスルーすることにした。
そうして歩いているとサポート科では男心をくすぐられるようなロボットが並ぶ技術展示会が完成しつつあった。サポート科では体育祭ではヒーロー科に対する副次的なアピールチャンスの場でしかなかったが、文化祭では自身の傑作を披露してプレゼンをし、会社に売り込むことも出来るのからか皆の気合の入り用が尋常じゃなかった。伏黒は体育祭で緑谷と組んでいたピンクの髪とゴーグルが特徴的な女子が「ベイビー!?」と叫ぶと同時に作成していた機械から小爆破していくのを見届けるとその場から去っていく。普通科ではどうやらお化け屋敷をするらしい。それは部屋の塗装とばったり出会した体育祭で騎馬戦のペアだった心操から聞いた。意外とクオリティが高く、出来たら通うことを伝えると伏黒はその場から去る。
クレープ屋が、看板が、S◯SUKEみたいなアトラクションが、何一つとして被らずにそのクラスの個性を押し出した店舗が伏黒の目に映っては過ぎていく。それを見ているうちに伏黒はB組が発表する場所として指定されたエリアに辿り着く。
「そう言えば劇やるって言ってたな…」
自身がまさかのバンドのボーカルを務めることになったが、幼馴染である拳藤は一体どんな配役となったのか気になりはする。しかし、相手側にも事情はあるし閉まってるドアを開けて押しかけた挙句、セッティング中の備品がネタバレするのもなんとなくだが萎える。そう思い伏黒はその場から離れようとする。すると、
「あれ?拳藤の彼氏じゃん。拳藤ならここにいないよ」
後ろから聞こえてくる声に引き止められる。振り返るとそこには 肩より長い艶のあるウェーブがかった黒髪と尖った目つきと喋る時に見え隠れする長い舌とギザギザに尖った歯が特徴的などことなく爬虫類を思わせる外見をしている女子生徒がそこにはいた。伏黒はその女子生徒を知っていた。何せ彼女はB組で雄英に入って間もない頃に拳藤と出かけた際に写真で見せられたのだから。確か名前は
「取蔭切奈、だったか?別に拳藤に用があったわけじゃねぇよ」
「おっ!一年生どころか雄英で一番有名な伏黒に覚えられるなんて嬉しいね。拳藤に用がないならどうしたの?」
「お前らの劇に興味があったんだが、邪魔しちゃ悪いと思ってな。お前こそどうした?話した感じ1人で行動するタイプでもないだろ」
「買い物だよ。ホラ」
伏黒の言葉に取蔭は両手に持っていたビニールを持ち上げて見せつける。何でもすでにセリフとか配役とかも終わって今は通し稽古まで行ったらしい。しかし、物間からもう少し備品を調整できるという声が上がった為、急遽、比較的手の空いている取蔭が買い物に行くことになったとのこと。物間は普段の敵対的な言葉をしていて隠れがちだが、勝ちを狙いに行くと決めたら全霊でやるらしい。そのことを聞いて伏黒は少しだけ物間を見直した。
「で、劇は何やんだ?」
「【ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人〜王の帰還〜】」
「何だそのラーメンにカレーぶっかけた後、カツを乗っけたみたいなタイトル」
取蔭から飛び出したタイトルに伏黒は思わずツッコム。取蔭は「何それウケる」と言いながら笑っているがタイトルから内容が全然想像できない。仮にタイトル通り想像するならロミオとジュリエットにハリーポッターを足して、その上にロード・オブ・ザ・リングを足した作品となる。贔屓目に言っても混沌。美味いもんに美味いもん混ぜとけばさらに美味いでしょ理論はあくまでも食事にのみ通じるのであって作品には決して通用しないのが常である。伏黒が混乱していると先ほどまでケラケラと笑っていた取蔭が笑うのを止めると一応は舞台セットから衣装制服、脚本に至るまで全てがB組お手製と説明する。超が付くレベルのスペクタクルファンタジーを前に伏黒は地雷臭がしつつも逆に興味が湧いた。
「拳藤の役ってなんだ?ガンダルフか?ダンブルドアか?」
「なんでその役になんのよ。拳藤は参加しないわ」
「は?」
取蔭の言葉に伏黒は意味がわからなかった。裏方なのかと聞くもこれまた違うらしく、B組なのにB組の出し物に参加しないのは何故なのかと聞く。すると、キョトンとしながら取蔭はとある部屋に行けばわかると言うとB組の出し物が行われる部屋へと戻っていった。そして伏黒は取蔭に指定された備品室へと向かう。
「え、なんで伏黒がここに?」
「マジでミスコン出んのかよ…」
そこにはI・アイランドで来ていたドレスを着こなす拳藤がそこにはいた。伏黒はミスコンなんてある事も知らなかったし、もっと言えば拳藤がそういうのに出るタイプだとは思わなかった事もあってかなり意外だった。伏黒の反応に拳藤はミスコン参加の理由を言い始める。何でも初めはB組の出し物に出る予定だったらしいのだが、物間がメディアへの露出が激しい拳藤ならミスコンで優勝できる可能性が高いと踏んだらしく、勝手に応募したらしい。
「にしても随分と気合入ってるな」
「んー、まぁね。出るからには優勝したいし、何よりもサポート科で毎年連続で優勝してる人がいるらしいから警戒してんだよね」
「サポート科で?それは凄いな。なんて言うんだ」
「絢爛崎美々美っていうの。あ、この人ね」
そういって拳藤が見せる写真にはピンクのドレスに金髪をドリルみたいな形に変え、自前なのかそれとも弄ってるのか分からないが、えげつないほど飛び出たまつ毛の女性が写っていた。想像の斜め上をいく風貌に伏黒はミスコンでの採点の材料がなんなのか気になっていると珍しく拳藤の口数が少ないことに気がつく。
「やっぱ、緊張はすんのか?」
「はははは…わかる?」
伏黒の指摘に拳藤は乾いた笑みを浮かべる。確かに職場体験のCMとインターンのテレビ出演を通して拳藤が人前に出ることは増えてきた。しかし、男勝りで頼もしいとされている拳藤も女の子なわけで。流石にこういった慣れないイベントでは少しばかり緊張するようだ。ミスコンに出て何をすればいいのか少しだけ悩んでいるらしい。
「まぁ、好きにやればいいんじゃねぇか?」
「そうか?」
「派手に魅せようとか、そういうのは後回しにして如何に自分らしさを見せつけることが出来ればお前だって充分に優勝を狙えるだろ」
「そっかー…。うん、そうだね」
伏黒の言葉に拳藤は嬉しそうに微笑むと肩から力が抜けてリラックスしていくのがわかる。いつものような勝気な笑みを見るとこれ以上、かける言葉がないと判断して伏黒は練習に戻った。
「あ、余裕があったらでいいからA組の出し物を観にこいよ」
「バンドだっけ?伏黒の配役は?」
「ボーカル」
「何それ超見たい」
軽い対話を残して。
◇
いよいよ文化祭当日。時刻は午前8時45分。A組生徒達はもうすぐ行なわれるライブの準備を進めていた。皆が一様に落ち着かない様子でいる。バンド隊や演出隊は『A』と書かれたTシャツを着て、ダンス隊は専用の衣装を着用していた。同じく伏黒もクラスTシャツを着て皆と一緒に演奏で使う小道具を体育館へと運んでいた。そしてあることに気がつく。
「緑谷遅ぇな。上鳴、お前の言ってたホームセンターってそんなに遠いのか?」
「いや、そんな筈はねぇと思うけど…」
伏黒は午前7時50分頃に出て行ってから一時間ほど経っても帰ってこない緑谷に疑問を抱く。後一時間程度は余裕があるから問題はまぁないが、それにしたって遅い。伏黒が最後の荷物を運び終わりA組生徒達の下へ戻ると、突然学校中にプレゼントマイクの声が響き渡った。
《グッモーニング!ヘイガイズ!準備はここまで!いよいよだ!今日は1日無礼講!学年学科は忘れてはしゃげ!そんじゃ皆さんご唱和ください!雄英文化祭開催!!!》
もはや聞き慣れてしまった騒がしいプレゼントマイクの合図と共に雄英文化祭が開幕した。それでも9時になっても緑谷は戻ってこなかった。
「は?緑谷が?」
「買い出し一つで何やってんだあいつ!」
「もー!」
現在の時刻は午前9時25分。そろそろ本番の時間だというのに朝早くに買い出しに行った緑谷はまだ戻ってきていなかった。口々に文句を言うものもいるが、少なくとも緑谷がこういう重要な日に寄り道したりするようなタイプではないことを知っている為、さすがに遅すぎる緑谷の帰還に不安そうな様子を見せる生徒達。皆は何かあったのではないかという声が上がる。取り敢えず、今は緑谷よりも自身のことをと皆は本番に向けて完全に気持ちを切り替えた。そうこうしている内に気付けば時刻は開演直前まで迫っていた。舞台袖から館内を覗くと予想より遙かに多い人が体育館に集まっていた。
「思ったより、というかメッチャ人来てね?」「コールに伏黒の名前がチラホラ聞こえるな」「デク君はまだ!?」「軟派影野郎は後でしばくとして、この期に及んで何してんのじゃ!スットロが!」
そして時刻は午前10時を指し示す。それと同時にステージの幕が上がった。そして打ち合わせ通り、伏黒が前に出る。
「キタキタキタ〜〜〜〜!!!」「1年頑張れー!」「どんなもんだ〜1年!!」「キャー!伏黒君ー!!」「ヤオヨロズー!!」「「「フシグローー!!!」」」「「ヤオヨロズー!!」」
A組生徒達が姿を現すと館内のボルテージも上がっていく。職業体験の時のCM効果化が原因なのか男性客からは八百万人気が、凄まじく八百万コールが館内に響き渡る。逆に女性客からは職場体験、インターン、テレビ出演など学生でありながらすでにプロの枠組みに入っている伏黒の人気が高く、伏黒に対する黄色い声援が館内を飛び交っていた。そんな伏黒が前に出ると女性客からの声援が増す。そして、
「領域展開――――【
伏黒が必殺技である【嵌合暗翳庭】で体育館の外側だけを影で覆うことで皆を影の世界へと誘う。客や、歌い手、機材などを残して体育館内の全てが異空間へと変わっていく。巨大な脊髄骨が浮かぶ液状化した影で埋め尽くされた空間を前に観客達は興奮からかざわめき始める。伏黒の展開した領域に目を奪われる中で爆豪の怒号にも似たかけ声が不意打ちのように館内全体に響き渡った。
「いくぞコラァァァァ!!」
ボォォォォォォン!!!
掴みはド派手に、雄英全員を音で殺る。その意思を誰よりも強く表した爆豪の爆破と共にA組生徒達による演奏が始まった。騒めきも止まって誰も彼もが音のする方へと息を飲み干し、見守っている。
「よろしくお願いしまぁぁぁぁぁぁす!!!!」
ボーカルの耳郎が高らかに叫び上げる。それと同時に芦戸、緑谷、麗日、蛙吹、葉隠、尾白、砂藤、障子、峰田、青山の11人で構成されたダンス隊が一斉に踊り出す。一緒に踊っていた青山に緑谷が近寄ると服を掴んで天井目掛けてぶん投げる。そして天井近くまでいった青山が人間花火よろしくレーザーを四方にばら撒くと周りから歓声が上がる。青山を尾白がキャッチするのと同時に伏黒の男性パートに移行する。周りから黄色い歓声が漏れる中、伏黒を除いた演出隊である青山、口田、切島、瀬呂とダンス隊である飯田、芦戸、緑谷、麗日、蛙吹、葉隠、尾白、砂藤、障子、峰田、そして演奏中だった八百万が一斉に個性を発動させて空中目掛けて放つ。
「サビだ!ここで全員、ブッ殺せェ!!!」
瞬間、爆豪の言葉と共に放たれた個性が氷漬けになり、上鳴と照明によってもたらされる光と伏黒が生み出した影が入り乱れる空間に氷のアーチが出来上がる。そしてダンス隊が氷のアーチに飛び乗ると観客を巻き込み始める。
「おおおおおおぉぉぉぉ!!!!何だこいつらぁぁぁ!!??」
ワアァァァァァ!!!という歓声と共に伏黒と耳郎によるデュエットが始まる。音と音が交じり合い、混ざり合い、一つの音となって皆の心を震わせると会場のボルテージが今までで最高潮にまで登り詰める。こうしてライブは予想を遙かに上回る大盛況となった。最初はA組に不満を抱いていた生徒達も曲の終盤にはノリノリでダンスを踊っている者もいるという大成功という形で幕を下ろした。
◇
爆豪から一部の生徒達からヒーロー科という存在自体に不評を抱いていた人間もいたらしく、その辺りはどうなるのかとA組全員が不安視していた。しかし、それは杞憂に終わった。どの人間の前評判を覆して皆が笑うという考えうる限りで最高の結果で幕を閉じた。そして現在、ライブ演奏を終えたA組生徒達は撤収作業に移っており、生徒達はライブで使ったセットや演出で作られた轟の氷結の片付けに勤しんでいた。すると、
「ごめん!」
「こき下ろすつもりで見てた!ホントにすまん!」
帰る観客の中にあの日、伏黒を睨んでいたリーゼントの男とそのクラスメイトと思しきツインテールの女が現れるとそう言い放つ。それを聞いたクラスメイトは笑って手を振ったり、「言わなきゃいいのに」といって呆れたり、何故か勝ち誇った笑みを浮かべたりなど様々だった。そして、謝罪の言葉と共になぜか逃げ去るようにこの場を去って行く。それを見た切島はポツリとつぶやく。
「先生が言ってたストレスを感じてる人だったんかな?だったら飯田!通じたってことだな!」
「しかし理由はどうあれ見てくれたからこそ!見てない人もいるはずだ!今日で終わらせず気持ちを…!」
切島の言葉に飯田はそう言うと周りではいいんじゃないかと言う声が上がる。伏黒達がどういう思いで企画したか聞いていて、その思いが自身らには伝わったらしい。故に今度は自身達から聞かなかった者たちにA組の思いを伝えていくと言う。
「なんて言うか、くるもんがあるな…」
「確かに~!!」
「ご厚意痛み入ります!」
「スカッとしねぇ…!見なかったヤツ炙り出して連れてこい!」
「いい。やめろ。やめろもう」
1人を除いて周囲の人達の言葉に胸を打たれる飯田達。その言葉だけで自身らのやってきたことが無駄ではなかったのだと思うと酷く胸が熱くなる。するとそこへ氷を抱えた峰田がかなりイライラした様子でこちらに走って向かってきた。珍しく苛立っていることに疑問を抱いていると片付けが終わって向かった場所を見て納得することになる。
◇
ワアァァァァァァァァァァァァ!!!!
場所は変わってミスコン会場。会場は主に男達の熱気によって大盛り上がりを見せていた。様々な人が今舞台に上がっていく中、出番がB組の拳藤へと移る。
「ケンドー!」「シュシュっと一吹きケンドー!」「禪院家の見たぞー!」
皆の歓声に手を振るって答える拳藤。服装は胸から上の肩や背中が見えるベアトップだが同色のオーガンジーを首元まで重ねて、胸元と背中が透けているアメリカンスリーブと呼ばれるノースリーブの一種になっている。上半身はぴったりと体のラインを出しつつ、ミモレ丈のスカート部分はオーガンジーを重ねてふんわりと可愛らしい格好をしている。
何を披露するのか待っていると拳藤の両隣にあるデカいコンクリートの塊に目が入る。
「シッ!」
すると拳藤は手から黒縁のオレンジ色のオーラを滲み出させて手の形を模ると両方ともコンクリートの塊を持ち上げて上空に投擲する。同時に拳藤も個性を用いて跳躍するとかたどられた手の指先部分を鋭い刃物のような形に変性させて直方体や立方体、円錐や三角錐など様々な形の10個のコンクリートを作り上げる。そして終いには落ちていくコンクリート塊目掛けて指先から手の形をしたオーラを伸ばすと掴んで一つ一つ丁寧に積み重ねていく。そして全てが積み重なり、着地すると手を前に回して一礼する。
瞬間、ドッという音ともに万雷の拍手と喝采が沸く。
《華麗なドレスをひらめかせながら強さと美しさの共存!素晴らしいパフォーマンスです!》
「ふぅ〜ッ……」
拳藤は大きく息を吐いた後、見に来ていた伏黒と目線が合う。そしてニカッと笑うとVサインを送る。その表情にさらに場が湧く。そんな中、A組の面々は拳藤の演舞では無くて個性の方に目がいく。
「拳藤さんの個性は【大拳】だった筈です。なのに個性が変わった?」
「正確にはあれが拳藤の本来の個性だ」
戸惑う八百万に対して伏黒が答える。伏黒は禪院扇との戦闘で蛹から蝶へと羽化したように拳藤の個性が本来の姿へと至ったことを説明する。それに対して皆は驚きを隠せず、特にヒーロー兼、個性オタクな緑谷はブツブツと呟きながら持っていた手帳に伏黒の説明と自身の考察をまとめていく。
そして次にピンクのドレスに身を包んだ金髪の女性が見たこともない機械と共に舞台へと躍り出た。あの日、拳藤から教えられた絢爛崎美々美である。
「やるわね拳藤さん!ミスコンでは魅せる為に派手であろうとして本質を見失う人もいるのです!なのにあなたは最後まであなたらしくあった!これは私からの返答よ!いざ仰ぎなさい!絢爛豪華こそ美の終着点であると!」
《3年サポート科ミスコン女王!高い技術で顔面力アピール!圧巻のパフォーマンス!》
「オ〜ッホッホッホッホッホッホッホッホ!」
紹介と共に高笑いを決めた絢爛崎美々美は機械に乗り、コマのようにくるくる回る。そしてしばらくして機械が変形し始めたところで舞台裏に引っ込む。拳藤といい絢爛崎美々美といいミスコンってこんなんだっけとツッコミたくなったが、おおとりに波動ねじれが登場する。すると、個性で波動を生み出しながら青い空を優雅に舞う。それは見る者全員を魅了し、絶えず笑顔で楽しいそうに舞うねじれの姿は純真無垢な妖精のようにも見えた。
《幻想的な空の舞!引き込まれました!》
美しい舞を披露し終えたねじれは静かにステージに降り立ち、一礼すると再度会場が沸いた。感性が包まれるのと同時にミスコンのアピールタイムは終了した。
《投票はこちらへ!結果発表は夕方5時!締めのイベントです!》
投票のアナウンスが終わるとミスコンは一旦解散となった。そして伏黒はクラスメイト達と共に文化祭を見て周った。途中で合流したエリという少女とミスコン終わりで疲れていた拳藤と共に文化祭を満喫した。
◇
「いやー、超楽しかった!」
「ああ、悪くなかったな」
楽しかった文化祭もあっという間に時間が過ぎ、あたりはもうすぐ日が暮れそうな時刻になっていた。文化祭もそろそろ閉幕ということで舞台を畳んで片付けの時間となっていく。拳藤は満足げに体を伸ばし、伏黒も笑みを浮かべながら感慨深そうにそう呟く。
「ああ、拳藤。ミスコン準優勝おめでとう」
「いい線いってたと思ったんだけどなぁ…」
今更ながら伏黒は拳藤のミスコンでの結果を祝う。それに対して拳藤は自信があったのか少し凹んだように肩を落とす。ミスコンの結果はどんでん返しのねじれが優勝を果たした。どうやら個性を用いた舞が皆の心を掴んだらしい。そして2位だったのだが、何とビックリ同率だった。これには絢爛崎美々美も驚いていた。しかし、すぐに立て直すと優勝したねじれと同率だった拳藤を讃えていた。
「それにしても、お前とこうやって学校を巡るのは初めてで凄い新鮮だったなぁ」
「それに関しては同意見だ」
感慨深そうにそう言う拳藤に伏黒も同意する。何せ伏黒は過去の学校生活のほとんどをバイトやらにあてていたからこういったイベントには不参加だったのだ。だからこそ、今回の文化祭は伏黒にとってかけがえの無い思い出たり得た。伏黒は終わってしまうことに少しだけ寂しさを感じていると拳藤が立ち止まり、葉隠に頼み込んでギターの一つを借り受けると伏黒に渡してきた。
「なんだ?」
「いや、お前の歌を聞きそびれてたの思い出してな?嫌だったらいいんだけど…」
「いや、流石にクラスメイトが片付けてるのを見逃す「大丈夫だよ、2人とも!私達が伏黒の分もやっておくからさ!ね!?麗日ちゃん!?」
「うん!透ちゃんの言う通りだから気にしないでねー!」
そう言うと荷物を抱えていた葉隠と一緒に行動していた麗日が全力疾走でその場を後にする。伏黒は戸惑いながらも大きくため息を吐いて覚悟する。
「一曲だけでいいか?」
「ッ!充分!」
伏黒の言葉に表情を明るくさせた拳藤は大きく頷く。そして伏黒はギターを鳴らす。音に合わせて手を叩く拳藤の顔には今日一番の笑みがうつる。それを見た伏黒も少し微笑んだかと思うと歌を歌う。夕暮れに伏黒の歌が響くなか、雄英高校の文化祭は幕を閉じた。