ほんの少しなのに。
これぞ、アンラッキースケベ!
歩き慣れない鎮守府の中を、雷はどこを目指すでもなくふらふらと歩いていた。両の目は開いていても道や建物を漠然と捉えているだけで、焦点が定まらない。危うく錆びた看板にぶつかりそうになっても注意する者はいない。無意識に人の声が聞こえない方へと足が動く。雷は考え事に没頭していた。
一ノ傘が元の調子を取り戻したことを雷は他の誰よりも喜んだ。電を竹櫛に奪われたショックで捨て鉢になり、もう艦隊の仕事などやめてやると、事実上つまり雷たちのことを放棄すると言い出した時は、有言実行を貫く性質の一ノ傘をできる限り側に縛り付けた。どんな手を使ってでも、たとえ一ノ傘が軍から抜けてしまったとしても絶対に手放さないと決意した。結局その決意は電と喧嘩しているうちに不要になってしまったが、この艦隊の副司令官として前のように艦娘たちをげっそり干からびさせるほど働けるようになったのだから、雷は満足だった。
満足していたはずだった。
「司令官」と、雷はぽつりと呟いた。
それだけで身体が一ノ傘とのことを思い出して疼いた。一度思い出してしまうと止まらなかった。一ノ傘の愛撫はいつも唇、そして左耳から始まる。雷は左耳を手で押さえた。しかし熱は首筋を這うように全身に広がっていった。
この鎮守府で真面目に働くようになってから一ノ傘は雷との時間を作らなくなってしまった。まるで雷のことなど忘れてしまったかのように。今日も自分ではない誰かが秘書艦に就いている。その誰かを毎日羨ましがった。ほんの少しでも構わない、一ノ傘との二人だけの時間が欲しかった。触れてもらいたかった。
「あ、あ……」
雷は自分でも気付かないうちに、両手を耳から離して制服の上に這わさせていた。一ノ傘に「されるがまま」である時の手を真似ていた。心悸は早まり、浅い呼吸を繰り返す。
スカートの下に手を伸ばしかけたところでようやく雷は、自分が変電所近くの電気室前にいることに気付いた。誰もいない場所でよかったと僅かに安堵するも、身体が言うことをきかない。この場にへたりこみそうになる。力が入らない足をなんとか動かして電気室の裏に回った。
電気室の裏側は茂みになっていて、誰にも見つかりそうにないと考えると雷は止まらなかった。左手は右の乳房を下から上へ撫で回し、右手で秘部を強くマッサージするようになぞりあげた。
「しれいかんっ」
一ノ傘にされる感覚を再現するように自分の弱い場所を慰めた。雷は自分で手を動かしているとは考えず「されるがまま」を妄想していた。
「んっ…………はぁ、っ……」
気持ちのよい所、強すぎる所はすべて知られている。雲の上に横たわるような浮遊感を味わいながら、より高い場所へ昇るために雷はあられもない声を繰り返し出す。しかし一ノ傘はいつも、何も考えられなくなった隙をつくように陰核を刺激する。
「いっ!? あ、ああっ……!!」
ぼんやりしていた頭の中が弾け、唐突に襲ってきた大きな波に飲まれるように腰が暴れる。まともな意識を取り戻すのにしばらく時間がかかる。そして、
「お願い、だからもうすこし優しく――」
と雷が懇願してようやく本当の遊戯が始まる。弱く撫でるだけだった秘部を指を巧みに使って陰核と合わせて強く擦る。
「あんっ!? いや、ああああっ!!」
地面に倒れても右手は止まらなかった。苦しいと感じるほどの快楽が絶え間なく、しかし絶対に慣れることのないようにリズムを変えながら身体と心を攻め続けた。
雷が悶えれば悶えるほど一ノ傘はそれを楽しみより強く弄ぶ。抵抗しようものならよりいっそう強い快感で雷の抵抗を跳ね除ける。一ノ傘に「されるがまま」になっていると錯覚した雷は暴れて逃げようとする秘部を陰核を押さえることで留めた。
「――――っ!! っはあっ、ああっ!」
自分の感覚を強烈に揺さぶり続ける右手に耐え切れず左手で抑えようとするが、意思に反して左手はやはり一ノ傘がそうするように乳首を転がしてしまう。
「いやっ、しれいかん、あっ――!」
自分自身に催眠術をかけるように、どれほど苦しく悲しくても、雷は空想した一ノ傘との自慰を止めようとはしなかった。
一方、みだらな声が響く変電所近くの電気室の裏手、鬱蒼とした茂みの中には、ダウジング用の棒を持った一人の阿呆が潜んでいた。
◆――――◆
これには理由がある。いや別に言い訳とかではないけれど、私がここにいる理由くらい考え直しても不思議なことはない。
あんまりにも扶桑姉さまが見つからないものだから、私は探す方法をより多様な視点で考えてみた。例えばテレビのリモコンを失くした時どうやって探すか。普通は部屋をしらみつぶしに探すけれど、それでも見つからない時があるから「妖怪リモコン隠し」なる新種の怪異が現代に生まれることになる。よく耳にする「妖怪リモコン隠し」の話だと案外近くにあって驚いたってオチが多いけれど、私は「妖怪リモコン隠し」のせいで既にリモコンを3つ再購入している(ローテーションでどれかが無くなったりテレビ付属のものが見つかったりする)。
きっと扶桑姉さまも「妖怪扶桑姉さま隠し」の魔の手によって行方をくらまされているに違いない(そういうのを普通に「神隠し」と呼ぶのかもしれないけど、似たようなものだからどうでもいい)。
そこで思いついたのがダウジングだ。L字形の棒や振り子を持って歩き回ったりするやつ。エセ科学的だと言う人もいるだろう。というか私もそう思う。棒を持って歩くだけで水道管の場所が分かるなら対潜水艦用ソナーは何なんだって話になる。でも私は敢えてそこに目を付けた。
扶桑姉さまの見つからなさは科学的にあり得ないと言ってもいい。ボウリングでバンパーまで出したのに0点を取るくらいの奇跡的なあり得なさだ。迷惑な奇跡もあったものよ。このあり得なさを「妖怪扶桑姉さま隠し」と定義付け、そして真っ向からの対策として同じくエセ科学的な「ダウジング」を対抗策とするのである。
工廠で作ってもらったL形棒を両手に持ち、導かれるまま私は鎮守府内を歩き回った。部屋から出て30分くらいは同じ所をグルグル回ったりすれ違う人たちに異様なもののように見られたけど、慣らし運転中では仕方のないことだと私は耐えた。
二本の棒がようやく寮の外に私を連れ出した時、私は扶桑姉さまの振動だか電波だかそれ系のものを掴んだと確信した。L形棒が示す先には変電所がある。なるほど考えてみれば探したことのない場所だ。エセ科学に導かれるまま歩いていき、変電所に近づいたところでL形棒はクイッと曲がった。電気室の向こう側を指していた。これはもう近い、間違いなく運命の瞬間が迫っていると、電気室裏手の茂みに入った。
何もなかった。木々が生い茂る中を枝に服を引っ掛けたり芋虫が落ちてくるのも我慢しながら一通り探し回ったけれど、強いて見つけたものといえば百年以上前からずっとそこにいるような風化したお地蔵さんだけだった。このお地蔵さんに扶桑姉さまに繋がるご利益があるということだろうか、どうせ他には何もないしと、手を合わせて「どうか扶桑姉さまに会えますように」とお願いした。
再びL形棒を二丁拳銃のように構えてダウジングの旅を再会しようとすると、すごい勢いでL形棒が電気室の方を指した。引っ張られたと言ってもよかったくらいだ。反応が露骨過ぎてちょっと怖かったけど、どの道電気室の横を通らなければここからは出られないのだし、ビリビリ反応する方向へ歩いていくと、甲高い声が聞こえてきた。
「いっ!? あ、ああっ……!!」
まあ、うん。
生で他人の声を聞いたことなんてないのだけれど(私自身? 何のことやら)一発であの声だと分かった。混じりっけ無しの淫欲が音波となって木の葉を震わせた。樹幹に身を隠しながら近づき覗くと、電気室の壁に寄りかかった雷が一人で自身を慰めていた。
「お願い、だからもうすこし優しく――」
オーケー。何も問題ない。私は理解ある女です。誰だってしますよ。むしろ男を連れ込んでいなくて安堵したくらい。うん。だからそりゃあ、健全な女子なら一人でやるか大井と北上みたいに仲良くやるかの二択になりますよ。可愛い子はたくさんいるけどもし男なんて作って、それを理由に艦娘やめちゃったら処分されますからね。何かシチュエーションを想像しているみたいだけど、妄想をきちんと人気のない場所まで移して処分する雷はえらい。流石、練度が叢雲を超えているだけのことはある。
「あんっ!? いや、ああああっ!!」
でもあえて言わせてもらえるならば、ちょっと盛り上がりが過ぎるんじゃあないか。だって私から見ればまだまだお若いですよ。なのに意識がはっきりしてるのかしてないのか分からないような顔をして、悲鳴みたいな喘ぎ声を上げて、全身を痙攣させるなんて許していいの? 自分の指だけで失神してしまいそうですよ。若いからって道具も無しにこれはちょっと飛ばし過ぎですよ。この鎮守府に移ってきたばかりだけど将来が心配になりましたよ。
出るに出れず、結局私は雷の自慰を最後まで覗き見してしまった。地面に身体を投げ出したまま手を動かしていた雷は急に動きを止めて、痙攣する他は動かなくなってしまった。
そんな意識が朦朧としているらしい雷に向かって、運悪く茂みから白い蛇が這い出てきた。この鎮守府では蛇が出ると聞いたことはあったけど、なにも今このタイミングで出なくてもいいでしょうに! 危険が眼前に迫っているのに雷は魂を抜かれたような顔のままだ。
私は迷った。すごく迷った。雷の安全か尊厳、どちらを守るべきか。そして「今の雷の前なら出ていっても気付かれないんじゃないか」と考え、茂みから出た。雷の方を目指していた蛇の尻尾(どの部分が尻尾か分からないけど後端部分)を摘んで放り投げた。深海棲艦を相手に奮闘する私にとって蛇なんてどうってことはない。そしてこの山城はクールに去る――はずだった。
蛇を放り投げた方向からバン! と破裂音がした。何事かと見た方向には変電所があった。そして煙を噴き出している細長い物体。やってしまった。ただでさえ運に恵まれないのに蛇殺しはよくない。そしてさっきの大きな音はもっとよくない。
「う…………え? え?」
雷の涙でふやけたような目の焦点が私に合った。
「や……ま、しろ?」
私と雷の鬼ごっこが始まった。
◆――――◆
まず山城の外出届けが出ていないことを確認した雷は竹櫛と一ノ傘に、山城を見かけたらすぐ電話するよう頼んだ。そして12.7cm連装砲を持った。錨も勿論忘れない。
「あれ、雷って今日海に出る予定あったっけ?」
「ないわよ。ちょっと山城狩りに」
「ふーん。――――――ん゙!?」
それから数人に聞いて回ったが、予想通り山城を見かけた者はいなかった。やはり隠れたかと雷は舌打ちした。この鎮守府には来たばかりなので地の利は山城にある。それでも逃げ続けることはできまいと、雷は山城の部屋がある寮へ向かった。
◆――――◆
「おい、もう行ったぞ」
「本当に? 嘘じゃない?」
「いいからさっさと出ろ」
提督の机の下から引っぱり出され、身構えたけど確かに雷はいなくなっていた。ホッと一安心、しかけて提督がさっき私を見つけたら雷に連絡すると言ったのを思い出した。
「黙っておくからどこかに行け。私は忙しいのだ」
「山城さん、雷に何したんです? あんな顔した雷なんて初めて見ました」
付き合いの長い電が言うくらいだからよほどの顔だったのだろう。
「どんな顔してた?」
「一応笑顔でしたけど、死にたくなるような恥辱と脳の血管が切れそうな怒りを辛うじて押し殺したような顔でした。あと休日ゴロゴロする時しか着ないジャージ姿でしたけど」
「ではお邪魔しました」
執務室を出て、とにかく真っ直ぐ寮に戻った。ほとぼりが冷めるまで籠城していればいいと考えたのだけど、自室に戻ると扉の鍵が破壊されていた。こじ開けたとかではなく鍵のあった位置に穴が空いていて、鍵だったらしき破片が床に散らばっている。あと少しここに来るのが早かったら私もこの鍵のように粉砕されていたんだ、うわぁ。
本気で隠れ場所を考えないと。一度この部屋に来たのだからもう安全では? いや、こんな鍵穴が風穴になったような部屋にいて目立たないはずがない。どこか雑然とした場所――工廠はどうだろう?
◆――――◆
竹櫛と一ノ傘の艦隊が統合してまだ日が浅いため、工廠は整理しきれていない物で溢れていた。置き場のない装備はスクラップのように積み重ねられ、整理されたスペースのほうが少ないくらいだった。
しかし人が隠れる場所こそ多いが隙間も多い。山城に行動を見られている可能性も考慮し、雷は足早に工廠内を回った。
工廠の中にはおらず目撃証言も得られなかったため雷は外に出た。日陰になっている工廠の裏に回ると、失敗ペンギンが見上げるほどの山を形作っていた。一ノ傘と竹櫛が徹甲弾と三式弾を大量生産しようとしたため発生したものだ。とてつもない量への呆れと、ついでに山城が見つからない苛立ちをぶつけるために主砲を一発発射した。失敗ペンギン山の五合目から上がバラバラに吹っ飛んだ。
次の探し場所を考えているとスマホが鳴った。期待して電話に出たが竹櫛からの鎮守府内で撃つなという叱責だった。雷は肩を落として、言われた通り装備を工廠に置きに向かった。
◆――――◆
こうして伏せていなかったら死んでいた。肝を冷やすどころじゃない、幽体離脱しかけた。雷的には私さえ見つかれば、例え首から上が無くなっててもいいということか。そりゃあ確かに口封じにはなる。死人に口なし。山城に幸なし。
第二射が来るかもしれずペンギンの山から一か八か飛び出ると、雷は姿を消していた。さっきの一発を工廠探しの〆にしたらしい。死ぬかと思ったけど運が良い。これでじっくり、ここで次の作戦を考えられそうだと、工廠の表まで出ると、同時に工廠の出入口から雷が出てきた。
コンマ5秒見つめ合う。
「見つけたっ!」
死の追いかけっこが始まった。全力で走った。航空戦艦の鍛え方をナメるなよ!
「ハッ、ハッ!」
ちらりと振り返ると雷はぴったりついて来ている。何故か艤装を外しているのは幸いだけど、そのせいで普通に走っている。しかもあっちは何故かジャージに着替えていて対する私は、もう何なのこの振り袖! ジャマ!
「待ちなさいっ!」
息が上がってきて引き離せそうもなくなり、咄嗟に思いついた最後の賭けに出ることにした。建物に入って階段を駆け上がり、第二執務室に飛び込んだ。
「山城ちゃん!?」
「山城!?」
声を揃えて驚く一ノ傘副提督と叢雲。そして雷が飛び込んでくるのと同時に私は一ノ傘副提督の後ろに回り、盾のように突き出した。
「え!? なん、なにごと!?」
「はぁ、はぁ――! ど、どうする雷。ここ、で、大人しく、引き、下がれば、私は、こ、けほっ! ……ここで、何も言わないけど?」
「はぁっ、はぁっ」
作戦通り雷は入り口で固まったままだ。雷は電気室裏で自慰していた時「司令官」と言っていた。それは紛らわしいが旧艦隊の一ノ傘副提督のことで、だったら副提督本人をこちらの味方(盾)にしてしまえば雷は手が出せないって寸法よ。これが大人の鬼ごっこってものですよ!
「ねえ山城、私は関係無さそうだから出てっていい?」
「あ、はいどうぞ」
「ちょっ!? 見捨てんでよ叢雲ちゃん!」
「休憩に入ります。一時間くらいしたら戻りますので」
まだ息が整わない雷の隣を華麗に避けていく叢雲。クールだ。
「さあ、これで残るは私たちだけ。これでもまだ私のことを追い――」
「ぐすっ……」
汗ではなく涙。嗚咽とともに、雷は泣き出してしまった。
「うわあああああああああああああん……!」
一ノ傘副提督の視線が痛かった。
◆――――◆
「……だって、今日も叢雲だったし、司令官、全然私を頼ってくれないし」
秘書艦用の席に座って、やっと落ち着いた雷はぽつりぽつりと語った。
「前はこうじゃなかったじゃない。電ばっかりの時もあったけど、一緒に仕事したりご飯食べたり――構ってくれたり、してくれたのに。もう私なんかいらなくなったの?」
「違う違う」と一ノ傘副提督は手をぶんぶん振った。
「雷がおらんと困るし寂しいに決まっとるやん。こっちに来てから何日かはずっと雷に励ましてもらっとったやろ」
雷はダメ人間化を促進するというのが常識だけど……。
「でもそれからずっと他の誰かとだけ一緒だったじゃない。叢雲なの? 今度は叢雲なの?」
「そうじゃなくてやね……あー、いろいろ恥ずい理由があるんよ」
「私だって山城に恥ずかしいところ見られたんだから! ほら言いたきゃ言えばいいじゃない山城!」
「いや、何が楽しくてしゃべるのよ」
「分かった分かった。あのね、前までトップで仕事しとったからって、じゃあこっちの仕事もできるかっつーと、そうもいかんのよ。やり方が軍全体で決まっとる部分とか、元々竹櫛のやり方と似とる部分もあるけど、ぜんぜん違う部分のほうが多いんよ。港の位置がちょこっと変わったくらいに思っとったけどね。細かい数字とか今まで使えたものが使えんようになったり、今までどおり使うためにまだまだ色々せんといかんし」
「……みんなそんなこと気にしてない」
「そう? なら苦労した甲斐あった。私の艦隊のみんなが、な~んも気にせんで今までどおり戦えるようにするのが最優先やったからね」
「…………」
「ずっと叢雲ちゃんに迷惑かけとったけど、そういう理由。竹櫛の艦隊のことを一番良く知っとるのが叢雲ちゃんやしね」
その後、取って付けたように「あー、あと球磨ちゃんも一応」と言った。
「つまり私の仕事が下手やったって話。ごめんね。前と一緒みたいにって言っときながら雷にそうできんかった」
雷は頭を振った。
「私こそ、ごめんなさい……わがまま言って」
「なに言っとるんよ。雷は頼りにしとるんやから、その分ガンガンわがまま言ってくれんと」
「ホント!?」
ようやく雷の表情が輝いた。明るいイメージしかなかった雷なのに、今日はこの顔を見るまで本当に長かった。やっぱり人間、笑顔が一番です。なんてもっともらしいことを考えてみる。
「私、頼りになる!?」
「なるなる」
「私無しじゃ成り立たない!?」
「成り立たん成り立たん」
「わがまま……言ってもいい?」
「いいよ。何でも言って」
「じゃあ」
ガシッ、と雷は私の手首を掴んだ。捕まえた、というよりも逃げたら骨折る、といった風の掴み方だった。
「あ、あの、痛いんですけど」
「さっきね、山城に見られたの。その――一人でしてるとこ。最近ずっとしてくれなかったから我慢できなくて、でもまだ足りなくて、今近くに司令官がいてもう……はぁっ……我慢、できないから、山城を混ぜてしよう?」
「なぜ私を混ぜる!?」
どうしてわざわざ異物を混入させようとするのこの子ちょっと意味が分からない!
「あ、あはは。まあ山城とはあんま交流なかったし、こういう形で親睦を深めるのも、ね」
「ないです! そんなの聞いたことないです! いや聞いたことはあるけどそれ乱○パーティ!」
「そんなのじゃなくて」と言いつつ雷の手が服の中に滑りこんできた。
「ひいっ!?」
「見られたのは嫌だったけど――ちょっと、ドキドキした」
逃げる間もなく絡みつかれ、ソファに押し倒されてしまった。頭ひとつ小さな子に。
「だ、誰かンッ――!?」
助けを呼ぶ声を雷の口で遮られた。舌を入れられた。
これが私のファースト・キスですよははは……。
副提督も加わり、完全に抵抗する気力を奪われた私は二人が満足するまでいろんなことをされたりさせられたりした。叢雲はずっと帰って来なかった。
ごめんなさい扶桑姉さま。山城は……汚れてしまいました。