球磨の薬指   作:vs どんぐり

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第51話 任務:続・ネオサイタマ鎮守府との交流を深めよ!

<<前回のあらすじ>>

 ネオサイタマ鎮守府所属の戦艦クイーン・エリザベスとウォースパイトから恐れ多くも招待賜った山城。

 ネオサイタマ、暗黒サイバーディストピア都市といえば、そう! 映画『ブレードランナー』!

 竹櫛提督よりTSUTAYAで速やかにレンタル・鑑賞を済ませてから交流任務に当たれとの命令が下されたのだが、残念ながら山城の興味はB級サメ映画の方が勝ってしまった!

 山城、彼女が戦艦寮でサメ映画の鑑賞会を開いていた間、一ノ傘副提督がネオサイタマ観光へと向かってしまった!

 どうする山城!? サメ映画を観ている暇が彼女にあるのだろうか!!

 

 

◆――――◆

 

 

 どうするもこうするもなく、私は提督の呼び出しを無視し続けた。誰だって怒られるために呼び出されたくはないでしょ。私だってそう。だから無視し続けた。

 

「二足歩行のサメってもう逆に哺乳類的にかわいいというか、サメじゃあないって思うんだけど」

 

 なんてことを伊勢とのんきに話してると、今月の戦艦寮長、霧島がやってきて言った。

 

「いくら提督から逃げ続けても構わないけれど、山城に外からの来客よ。お客様を無視はしないわよね。101応接室よ」

「来客? ……――扶桑姉さま!?」

「ではなくて残念だったわね。戦艦のウォースパイトという方よ」

「……帰ってもらって」

「ダメです。今すぐ応接室に行きなさい」

「じゃあ長月は? 今日いないの?」

 

 少しウカツ発言をしてしまう私。

 

「長月がいなかったから山城に声がかかった、って分かってるのね。ふむ、山城と長月って珍しい組み合わせね。何かあるのかしら」

「分かりました分かりました。行けばいいんでしょ行けば」

 

 

◆――――◆

 

 

 101応接室で待っていたお客様は、私の想像よりもずっと小さかった。

 いえ待って、言い訳をさせて欲しい。山城さんは初対面の人を見て『チビ』と思ってしまうような礼を知らない艦娘ではないと。だって霧島が『戦艦の』お客様だって言うから、どんな超弩級フォーリナーが威圧してくるのかと警戒してしまうのも仕方のないことでしょうよ? ねえ? 例えば玉座のような艤装に腰掛けて紅茶を飲んでいるような戦艦を、普通は想像すると思う。でも違った。

 お客様はどちらかと言うと、駆逐艦アトモスフィアすらあるカワイイ系だった。

 

「ドーモ、はじめまして」椅子から立ち上がった彼女はそう言って手を合わせ、オジギをした。「ウォースパイトです」

【ウォースパイト:from アズールレーン】

 

「……ドーモ、ウォースパイト=サン。山城です」

 

 長月、斑鳩、それと武蔵の他の洞観者とやらに合うのは実際これが初めてだった。だからアイサツするのも初めてで、私は洞観者たちがほんとうに面倒くさい連中であることを痛感した。助けて扶桑姉さま、山城は変なのに絡まれています。

 

「あなた、見たところ洞観者になって間があまりないようね」

「そんなこと分かるの?」

「アイサツで分かるわ。さて、陛下の招待に応じなかった理由を聞こうかしら。長月は? あの子にまで無視されたとは思えないのだけど」

「長月なら遠征に出てるから。ええと、長月の知り合いで?」

「『あの作戦』に加わった仲間に長月の炎を覚えてない者はいないわ」

 

 一瞬、遠い目を見せたウォースパイトは確かに、戦艦としての矜持を持つ、そんな風格があった。ちっこさとのギャップがそう――これが今や死語となった『萌え要素』ってやつか知らん。なんて口に出したらプライドにつけた傷を10倍にして返されそうな雰囲気がある。

 とにかく目の前の人は小柄でも戦艦は戦艦。少なくともウチの日向なんかよりずっと戦艦。

 

 

◆――――◆

 

 

「陛下、クイーン・エリザベスは洞観者たちの炎を蒐集しはじめたの」

 

 それが前日に私らをネオサイタマ鎮守府に集めようとして、今日ここに来た理由らしい。

 私は「はあ。へえ」と言った。言ったというか他の言葉が出なかった。

 向かいに座るウォースパイトは勝手に話を続けた。

 

「陛下の炎の特性がようやく判明したの。炎の燃料となる炎――陛下の能力下にある炎は記憶・保存されて、一度は消えた炎でも陛下の能力で再び点火できる。ロイヤルネイビーを統べる陛下らしい能力だわ。そして、『この世界には深海の闇ですら消せない炎が存在する』。まさに洞観者を象徴するかのような能力でもあるわね」

「え、待って待って。話についていけない」

「なら今からついてきなさい。あなたも日が浅くても洞観者なのだから」

 

 私をおいてけぼりにしたまま、ウォースパイトはポーチからシルバーのZippoオイルライターを3つ取り出した。

 

「このライターは一度、陛下の炎を灯したライターよ。これで陛下以外の洞観者の炎を保存しておけるってわけ。便利でしょ」

「ん? んん?」

「鈍いわねえ」と煽ってくるウォースパイト=サン。「まさかとは思うけど、炎の『引火』を知らないわけではないわよね」

「……悪かったわね。いや、私は悪くないと思うけど」

「まあいいわ、教えてあげる。百聞は一見にしかず。山城、ちょっと炎を出してみなさい」

 

 ちょっと炎を出す。

 こんな言葉がサラッと出てくるあたりも、私が洞観者なるものを未だ受け入れられない理由のひとつだった。まあ、出せちゃうんだけど。炎。

 前にも披露したことがあるけど(『ラックレッサー山城 6』でやってるので読んで下さいおねがいします)私は青い人魂を生み出せる。生み出せちゃうのよこれが。草木も眠るウシミツ・アワーの墓地を漂っていそうなやつが。触ると熱くもなく逆に少しヒヤッとする。これが私の能力なわけ。こんな程度のが。長月や斑鳩と比べると恥ずかしいくらいショボくて泣きたくなってくる。

 ポッと指先からひとつ人魂を作ってみせると、ショボさを知らないウォースパイトにはウケがよかったらしく少し関心した様子だった。「綺麗な炎じゃない」とも言ってくれた。

 

「じゃあライター1個に炎を移して頂戴」

「こう?」Zippoひとつに人魂を付けると、冷たい火なのに燃え移った。「はい。これでいいの?」

「ありがとう。これであなたの性質を持った炎はこのライターに保存されたわ」

「へー」

 

 ウォースパイトに火が付いたままのライターを渡すと、彼女はふたをパチンと閉じた。一度でも火を付けたらそれでオーケーらしい。

 

「そのライターで私の能力が誰にでも使えるようになるの?」

「陛下以外の洞観者は僅かしか使えないわ。永続的にコレクションできるのは陛下の燃料の能力あってこそなの」

「ふうん。能力のコレクションってなんかカッコイイわね。――いや待って。その陛下さん、クイーン・エリザベスってとんでもなく凄くならない? 例えば長月の炎を持っておくだけでも無敵じゃあないの」

「ようやく理解してくれたようね。ま、能力の何割を保存して発揮できるかはまだ不明だけど、そういうことよ。洞観者たちをネオサイタマ鎮守府に呼集める理由も、意義も、わかってくれたかしら」

「それはわからない」

「……なぜここまできて否定されるの?」

「だってネオサイタマだし。噂だとディストピアなんでしょ? そうだ、このあと戦艦寮で『ブレードランナー』っていう映画の鑑賞会やるんだけど、一緒にどう?」

「お誘いに感謝するけど遠慮するわ。洞観者が誰も招待に応じないせいで、この私が各泊地をまわってるの。次は舞鶴ね。もし私の苦労を心配してくれるのなら、ここの艦隊のあと2人の洞観者の炎も同じようにライターに保存して頂戴。特に長月の炎は是が非でも手に入れなきゃだわ。ああそれと、普通の配送業者じゃあなく、ちゃんと伝書猫で送ってね」

 

 

◆――――◆

 

 

 この鎮守府を去るときに「オタッシャデー」と言ったことを除けば、ウォースパイトは思っていたよりは常識的な戦艦だったと認めてあげなくちゃあいけない。ネオサイタマがディストピアだと私が言ったことに否定も肯定もしなかったことが気になったけど。

 そうそう。ウォースパイトが去ったあとでブレードランナーの鑑賞会をやったのだけど、残念ながら私には――芸術的センス? 感性? が合わなかった。映画を最後までちゃんと(寝落ちせず)観たにもかかわらず何が何だか色々と理解できず、ただ『強力わかもと』だけが頭に残った。ストーリーはまるで頭に入ってこなかったのに。強いて感想を言えば、ウォースパイトはよくもまあ、あれに雰囲気が近いらしい都市に住んでいても頭がおかしくならないなあ、ってところだった。

 最後にひとつ。今回ネオサイタマ鎮守府との交流ができたかどうかはさておき、ネオサイタマに観光に行っていた一ノ傘副提督は無事(?)帰ってこれはしたものの、しばらく「アイエエエ……」と言いながら何かに怯えるようになってしまっていた。どうやら何かがフラッシュバックするらしい。それを面白がってしまった白露が副提督を背後から脅かして……いえ、この事件は忘れましょう。副提督の自業自得とはいえ、粗相はね……ええ、みんな忘れるべきよ。

 

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