球磨の薬指   作:vs どんぐり

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第57話 極楽とは程遠い極楽 ⑤

 天照大艦隊の分隊は北鎮守府を拠点としています。本隊のある南鎮守府から陸路で三時間、海路で一時間の場所です。

 分隊を構成するメンバーは本隊と違って非常に少ないです。僕こと空母斑鳩、潜水艦イムヤ、ゴーヤ、イク、ハチ、シオイ、妖怪猫吊さん、そして――現在、姿をくらましている傘姫提督。

 この泊地は工業地帯の安全を確保するための重要な拠点であり、人員の少なさを天照隊の本隊から人手を借りることで補っています。北鎮守府と南鎮守府、わりと近いところに艦隊を割いて置いているのは無駄だ無駄だと言われ続けていますが、そのあたりは……まあ、色々と事情があったんです。ちゃんと意味があって分隊は今日も動いているんです。

 

「とは言ったものの、提督がいないんじゃあ……はあ」

 

 北鎮守府内を隅から隅まで探し尽した僕は、『提督代理』の腕章を左腕に付けてはいるものの、仕事が捗りません。

 

「オマエ、ボーッとしすぎクマ……はあ」

 

 そう言う球磨さん、助っ人秘書艦もだらけきり、ボールペンを分解しては組み立てるを繰り返しています。

 

「球磨さん、本隊の方はどんな様子なんですか? できれば竹櫛提督か一ノ傘副提督にこちらに来ていただいて……っていうお願いをスルーされ続けてるんですけど」

「てーとく達は仲良く働いてるクマ」

「あっはい。仲が良いのは結構なことですね」

「第一と第二執務室を行ったり来たりし合ってることがめっちゃ増えたクマ。だから効率が……上がったクマ」

「上がっちゃいましたかぁ……。下がったなら陳情もしやすいんですけどねー」

「ねークマ。今までが悪すぎたクマ」

「お二人の身を固める宣言の時、分隊は一ノ傘副提督が面倒を見るって話もあったんですよね?」

「あー……。身を固める宣言が強烈すぎて、たぶん提督たちも含めてみんな忘れてるクマ」

「いやいや忘れたとしてもですよ。僕からのSOSを無視し続けるって分隊軽視もアレ過ぎませんか」

「クマと他何人かを送れば今のとこ十分と思ってるんじゃあないクマ?」

「でも球磨さん、秘書艦はあんまりやるタイプではないですよね」

「最近、クマはちょっと疲れ気味クマ。だからここ分隊で休憩させてもらうクマ」

「球磨さんまで分隊軽視……」

 

 でも確かに、球磨さんの疲労は目に見えて溜まっていました。いつもの、僕をむやみに脅して楽しむ姿が見え……なくて喜ばしいんですけどね、それはそれ、とにかく元気がありません。

 提督たちと艦娘たちを結ぶ総旗艦、叢雲さんと電さんもまだ回復しそうにないと聞いています。なんでも、嘔吐するくらいだとか。

 天照大艦隊には疲弊が蔓延しています。それもこれもすべて――言っちゃっていいですよね、提督たちのせいです。

 かく言う僕も疲れてます。単純な多忙からの疲労ではありません。メンタル的なものです。

 提督代理の腕章も、本当は付けたくないんですけどね。

 

 

◆――――◆

 

 

 本隊のような混乱を避けるために、武蔵さんと大和の他には誰にも言っていないことがあります。

 僕は傘姫提督に、別れの挨拶をされました。

「バイバイ、元気でね」と。

 あまりに突然、一方的に別れを告げた傘姫提督は、青い炎となって、青い火の粉となって、僕の前から姿を消しました。

 鎮守府内を探せるだけ探してはみましたが――僕と提督は短い付き合いではありません。あの別れの挨拶は、本当に最後のものだと分かってしまっていました。

 もう、きっと、あのオカッパ提督と会うことはないのでしょう。

 姿どころか悲しみすら残さないのが、あの阿呆、傘姫提督っぽいです。

 

「うおーい、聞いてるクマ?」と言われて僕は、自分が考え込んでいたことに気づきました。

「あ、はい。何でしょう」

「ここの工廠をこっそり使いたいクマ」

「ええ、使うのは別に構いませんが、なぜこっそり?」

「ちょっと内緒で作りたいものがあるクマ」

「ほうほう。何を作るんです?」

「だから内緒だっつってるクマ」

「それは隠すの難しいと思いますよ。うちの潜水艦たちがしょっちゅう兵器開発で出入りしてますから」

 

 イムヤ達が開発したトルピードランチャーは改良に改良を重ね、今では海中・海上はおろか対空攻撃にも使えるよう進化しています。ものすごく非効率的ですが。

 それと僕が大和に殺されそうになった時にお披露目されたローテク振動魚雷。あれから進歩して、条件と運がととのえばエグいダメージを出すことに成功しています。

 

「僕が潜水艦たちに言付けてもいいですが、隠していると余計に覗き見されるでしょうね。それでもよければ」

「……ピストル用カービンコンバージョンキットのDIYクマ」

「ピストル? の何ですって?」

「えーと……ピストルの改造パーツ、クマ」

「球磨さん。アサシンブレードはギリギリ納得しましたけど、ついに鉄砲ですか。艦娘的にそれはどうでしょう」

「長月を助けるためクマ」

 

 僕がカレンダーズに甘いと知……いえ思って長月ちゃんの名前を出したのでしょうか。

 

「下手な嘘はつかないクマ。いま長月に電話で確認してもいいクマ」

「でも――球磨さんは長月ちゃんや僕ら洞観者の事情を知ってますよね。じゃあ鉄砲なんて長月ちゃんには意味がないこともご存知では?」

「フクザツナジジョウがあるクマ」

「――まあ、分かりませんが分かりました。工廠は自由に使ってください。イムヤ達にも一応、僕から言っておきます」

「助かるクマ」

「でも資材節約でお願いしますよ」

「大丈夫クマ。どうせ簡単なものしか作れないクマ」

「それと球磨さん。僕、いま大変なことに気付きました」

「クマ?」

「僕たち、今日まだ何一つ仕事してません」

「いや、クマは休憩しに来たってさっき言ったクマ」

「ダメです。労働しましょう」

 




かつてないペースで投稿しているからか、文章がゲシュタルト崩壊して読み書きがつらくなってきています。
ので、ちょっと休憩が必要そうです。
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