ドーモ。天照隊、分隊の社畜もとい艦畜、斑鳩です。
突然ですが僕の恋愛エピソードを紹介しましょう。皆さん聞きたいですよね。聞きたくない? 聞け。
酔ってますか? 僕? 酔ってますとも。みんなも酔ってます。クリスマスに酔って何が悪いんですか。
◆――――◆
あれは僕がまだ深海棲艦になりかける前のことです。何年前でしたっけね。
クリスマスを二週間後に控えて、まわりがソワソワし始めるくらいの日でした。
僕のソワソワっぷりは人一倍のもので、頭の中で悶絶するような苦しみと甘ったるい期待が激しくぶつかり合い桃色の火花を散らしていまいた。そう、つまりは『好きな人に告白すると覚悟した日』です。
「気合入りすぎ~!」と誰かが言いました。
「仕方ないでしょ、僕の人生初の告白だったんですから」
ひゅ~ひゅ~と無駄に煽ってくる巡洋艦共。ウザいです。
さて僕は意中の彼――A君を、夜の九時ごろ、公園に呼び出すことに成功しました。
正直、この段階ですでに勝った気でいました。だって十二月の夜ですよ。けっこう寒いですし、そんな時間に公園にただ呼び出してただ遊ぶ、なんてワケがありませんよね? A君もそれを承知で、九時ぴったりにやって来たわけですよ。
「A君ってイケメン? イケメン?」
「あー、まあ、イケメンとはちょっと違ったと思います。いやでも、ふとした瞬間に見るとカッコ良かった……ように見えたって感じですかね」
でもまあ、そう簡単には言い出せないじゃあないですか。やっぱり。
寒いね、そうだね、とか言いながら、そういう雰囲気とかタイミングを計りました。これがなかなか難しくて、たぶん三十分くらい無駄話をしましたね。A君がどうだったかは分かりませんでしたが、僕はもう、いつだ、いつ言えばいいんだって自分と神様に聞いてました。
「A君かわいそーう」
「いやA君だって悪いと僕は思いますね。だって『それで、何か用?』って言ってくれるのに三十分もかかったんですから。十二月の夜に三十分ですよ。ちょっと心が折れかけてましたからね」
どうにか話をそういう流れにできて、ようやく僕は……シンプルに、「付き合ってください」と言えたわけです。オーケー貰えたわけです。
パチパチパチ。どうもどうも。
任務達成した僕とA君は、寒い寒いって言いつつ照れ照れしながら帰りましたと。
「手ぇ繋ぎながら?」
「いえ。A君には一度も触れてません」
「その日はまだ恥ずかしかった、でしょ?」
そうじゃあないんだ天津風ちゃん。
僕は過去に一度もA君に触れたことがないんです。
「はあ?」
普通ここからですよね。恋人はここからスタートですよね。でも僕は違った。違ったんです!
最初の一週間は毎日SNSのやりとりをしてましたよ。でもそれも本当に最初の一週間だけで――
「待って待って斑鳩。デートとかは?」
「瑞鶴、それな。でもね、付き合ってからデートどころか顔すら一度も合わせてないんです」
遠距離恋愛でもないのにSNSだけで済まされて、しかもですよ。二週間目からは返事すらなくなったんです。僕の方からは毎日連絡を取ろうとしたけどですよ。
で、やっと返事が来たと思ったら『俺たち今、付き合ってる? じゃあごめん、別れよう』だってさ! だってさ!
「うわぁ……」
僕は僕なりにいろいろ頑張ったつもりだったけど、二週間でA君とバイバイでしたとさ!
ちゃんちゃん♪
「どこが恋愛エピソードだった?」
「山城の不幸エピソードみたいだったね」
「鬼怒、一緒にしないで」
まあまあ皆、まだ聞いて。実はですね、この話には続きがあるんです。続きがさっきできたんです。
「さっき?」
ただの失恋話だったら面白くもないし、しませんよ。
なんとついさっき、本当についさっき、そのA君からメールが届きました! これを晒しましょう!
青葉、ちょっとこのメールを声に出して読んでくれる?
「了解です。えー……『久しぶり。元気? いま何してる? いやその前に俺のこと覚えててくれたら嬉しいんだけど。久しぶりに会えないかなってふと思って。もし今暇だったら二人で食事でもどう? 店は予約してあるから』……以上です」
僕は今から、このクソ勘違い野郎をここに呼びつけようと思う!
僕をクリスマスぼっち扱いしたクソ野郎を!
半深海棲艦、練度カンスト航空母艦、斑鳩ノ誇リニカケテ!
「やっちゃえやっちゃえ!」
「祭りだ、晒し上げだ!」
「殺せ! 殺せ!」
「ランボー怒りの元カレ召喚!」
「V8を讃えよ!」
「「「 V8! V8! V8! 」」」
僕ハ一人ジャアナイ! 仲間ガイルッ!
皆ノ前デコノクソ野郎ニ「死ネ!」ト言ッテヤルッ!
メリークリスマス、天照大艦隊!