球磨の薬指   作:vs どんぐり

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2020/02/28 ほんの少し加筆&ルビ振り


第77話 球磨争奪戦 ② カレンダーズ

 睦月型駆逐艦――通称カレンダーズに新たに与えられた任務は、遠征でも演習でもなく、全員が自転車に乗れるようになること(・・・・・・・・・・・・・・・・・)だった。

 

「だ、誰か他に……卯月以外の誰か……」

「なんでうーちゃんを信じないっぴょん!? 離さないぴょん! 絶対に離さないぴょん!」

「怒りたく、ないから……。卯月を本気で殴って『やっぱり弥生は怒ってる』って、言われたく、ないから……」

「本気で殴って『怒ってない』は無理があるぴょん! うーちゃんは弥生にケガしてほしくないぴょん……だから……」

「卯月……」

「だから1秒か2秒くらいしか離さないから弥生はただ安全に驚くだけボほォあォ!? ……お、お腹……は……」

 

 弥生はピカピカの自転車を放棄してプンスカと寮へ戻ってしまった。これで自転車練習任務から去ったのは3人目――腹を押さえてうずくまる卯月を含むと4人が脱落してしまった。

 1人目の脱落者は菊月だった。普通に転んで手足を擦り剥いて痛くて、涙を浮かべたのだった。

 

「じ、自転車など別に……グスッ……乗れずとも……」

 

 半べその菊月に水無月が付き添っていった、ということが先程あった。

 ほぼ使われることなく残された4台の自転車が虚しさを醸し出す。そしてそれ以上に虚しいのが、これからどうしたものか分からないまま残された8人と、1人呼吸で精一杯の卯月だった。

 卯月と菊月は、特殊なカーボンでできた制服を着ていたら結果は多少違ったのだろうが、今はカレンダーズ全員が普通の生地でできたジャージ姿である。だから転べば普通に怪我をする。ちょっと血が出る。傷はジンジンと痛むし水で洗浄しなければならない。

 

 言うまでもなく。砲弾や魚雷などの脅威に日々曝されて尚当然のように明日を生きる艦娘といえども、特殊なカーボンに守られていなければこんなものである。それは菊月であっても撃沈王であっても変わらない。そこに差があるとすれば、特殊なカーボン無しで怪我をした時にどれだけ我慢/痩せ我慢ができるかどうか程度である。

(時には水着や浴衣といった戦をナメているとしか思えない姿で出撃する艦娘も度々記録されて誤解を招いているが、心配は不要、あれら水着などの生地も特殊なカーボン100%である。露出度が過度に高かったとしても、特殊なカーボンだから制服を正しく着用しているのと変わらない。つまりは戦闘に何の問題もない、いいね?)

 

 誰だって怪我はしたくない。ましてやカレンダーズの誰かが自転車を求めたわけでもないのに、頑張ることに何の意味があるのか分からないまま課された練習任務で怪我をするなど、彼女らが理不尽と思って当然だった。体力作りのためのランニングで足を挫いて泣くほうがまだ納得できる、とまで言えた。

 

「あのさー」と切り出したのは望月だった。「やっぱ自転車って危なくない? この安全な鎮守府の中で転んだだけでも血が出るわけだし、外になんて出ていったら……車とかいっぱい走ってるしさー。というか、なんでわざわざ命令されてまで乗らないといけないの、自転車?」

 

 

◆――――◆

 

 

 そもそもの発端は、竹櫛提督と、カレンダーズの中で唯一の改二改造艦かつ働き者の睦月との、何気無い会話だった。

 

「ご苦労である。今日のカレンダーズの仕事は――うむ、少し早いがこれで終わりであるな」

「よすよす。じゃあ提督、睦月たちは今からお外にお出掛けしてもいいですか。駅の近くに、行ってみたいにゃーってみんなで言ってたお店があるんですよ。タピオカブームに乗り遅れた新しいお店でしょ~、それからお肉デザート食べ放題の焼肉屋さんでしょ~」

「外出は構わんが、肉と一緒に酒を飲むのならくれぐれも注意するように。自転車であっても飲酒運転は厳禁である。酔って判断力が低下した、は言い訳にならんぞ」

「それなら全然、カレンダーズには関係にゃーいのだ」

「ぬう。よいか睦月。そのように他人事だとバイアスがかかっている状態が最も危険なのだぞ。日々の行動とは選択の連続であり、数多の選択の中に油断という因子がまるで――」

「バスで行くから大丈夫ですって。提督は心配性だにゃ~」

「今回はそれでよいだろう。しかしだな」

「それに睦月たちカレンダーズは、誰も自転車に乗れないから絶対に関係無いのだ! えっへん!」

「……なに?」

 

 竹櫛の、外出許可を出そうとしていた手が止まった。

 

「乗れないのか? 自転車に?」

「乗れないけど? 自転車に」

「その『乗れない』とは、自転車を持っていない、という意味か?」

「んーん」と睦月は頭を振った。「普通に、乗り方が分かんないだけだよ」

「普通ではないだろう。普通は乗れるだろう」

「そー言われましてもぉー。泳げる人もいれば泳げない人だっているのと同じだよ」

「いいや違う。得手不得手好き嫌いに関係無く、自転車には乗れなければならない。私のこの発言からサイクルレイシストだと批難が上がるかもしれんが考えを改めることは絶対にない」

 

 竹櫛は大学生だった頃に研究室の同期と同じ話をしたことを思い出していた。自転車を貸そうかと言ったら、その同期の男に「乗れないから」と断られた過去である。

 お前、ファッション雑誌を読み漁りブランド物の服や財布やらでキメようとする男が、まさか自転車に乗れないなど冗談だろうと外に連れ出し自転車を差し出すと――自転車に跨がる以前に、ハンドルを持って支えるという発想すらなく前輪がグリンッとなって自転車を倒してしまったのだ。その後の、まるで新車のバイクを倒してしまったかのような反応もおかしかった。1万幾らのママチャリが倒れたから何だというのか。オメーそんなアンバランスな認識でよく今までやってこれたな、ハンドルすら握れないヤツに触らせるバイクなんてねーよ、研究室でやってたドヤ顔バイク談義は何だったんだマジで? まかり間違って免許を取れたとしても奥多摩の景観をオメーのひしゃげたバイクで汚すんじゃあねえ。

 という、竹櫛がまだ社会を知らない頃の一幕だった。ただ同じ研究室にいただけの同期の男だったから話はこれでお終いになった。

 

 しかし睦月は違う。天照大艦隊に所属する艦娘たちは違う。

 

 提督とは決して艦娘たちの親ではない。縁をギリギリまで近づける妥協点には『カッコカリ』と必ず付く。四八の(仮)関係を結んだ提督が突然、艦隊指揮をゲームに例えてクソだと主張し出す現象は2007個もの根拠が明示されており怪談の域を超えた常識である。互いの立場を超えることはまったく推奨されない。『叢雲の薬指』とかいう大タイトルは一旦棚上げされた。

 

 それでも竹櫛は、今この時だけ仕事に私情を差し挟む自分を許した。

 天照大艦隊の艦娘たちを、睦月を、愛しい娘のように見よう。

 カタチある愛情を与えよう。

 確実にカタチとして残る、技術を身に着けさせよう。

 自分の娘に自転車の乗り方を覚えさせるのは保護者の義務である!

 

「睦月、今日のところはいい。外で好きなものを食べてきなさい。ほら、ここに名前と外出理由を書くんだ」

「あ、はい。どうしたのかにゃ提督は? なんだか――とつぜん眼差しが優しくなったような?」

「気のせいだ」

 

 睦月が外出許可願を書いている間、竹櫛は隣室の副提督に内線電話をかけた。

 

「竹櫛だ。緊急に話し合うべき問題ができた。

 ――ああ今すぐにだ。ところで一ノ傘、念の為に確認しておくが、お前は当然自転車に乗れる大人であるな?

 ――ふざけてなどいない。問題はシリアスだ」

 

 聞き取り調査の結果、竹櫛の想像以上に――今まで気付かなかっただけなのだが――天照大艦隊の艦娘たちは自転車に乗れなかった。カレンダーズのみならず小型艦から大型艦まで全体の半数以上が「乗れない。乗る必要もない」と回答した。

 戦艦たちの回答を回収して持ってきた今月の戦艦寮長、山城も“自転車に乗る”という具体を天命で紛失したらしく否定的だった。

 

「え……だって、1回使う度にタイヤがパンクする欠陥乗り物なんて、誰が好き好んで乗りたいと思うんです?」

「山城。いつか戦争が終わり鎮守府を離れることになっても強く生きるのだぞ。だが運転免許だけは取ろうなどと絶対に考えるな」

「は? なんで阿呆提督が扶桑姉さまとのドライブに口出しするの?」

「いくら入念に保険を掛けてもな、1つしかない命は帰ってこないのだ」

 

 そこで竹櫛は試験的に、まずカレンダーズに自転車練習任務を与えた。自転車の数をそろえるのも、駆逐艦たちの間で使い回せることを考慮すれば痛い出費ではない。

 練習に集中できるように、これまでカレンダーズをメインに任せていた遠征などの任務も一時的に編成を見直した。

 燃費に優れるカレンダーズ不在という艦隊能力に空いた穴は決して小さくない。それでも竹櫛は愛しい娘たちにカタチある愛情を与えることを優先した。

 

 

◆――――◆

 

 

 ……のだが、『親の心子知らず』ということわざがある。

 

「というか、なんでわざわざ命令されてまで乗らないといけないの、自転車?」

 

 望月がこう言ったとおり、竹櫛の愛情はカレンダーズにまったく届いていなかった。

 

三日月「……私、分かっちゃったかも」

皐月「なにが?」

三日月「カレンダーズが自転車に乗れるようになったら……陸上にもおつかい任務に行けちゃう……」

長月「ま、まさか。一ノ傘副司令官なら考えそうなことだが、命令したのは竹櫛司令官の方だし……」

文月「でも、あたし聞いたことあるよ。ピザは配達よりお持ち帰りのほうがおトクだから、って」

(誰にでも間違いはある。これを言ったのは分隊の傘姫提督だ)

如月「司令官のピザのために、菊月ちゃんが怪我をしたってことなの?」

卯月「うぅ……ちゃんも……おな、か……」

睦月「そんなの、ちょっと許せない」

皐月「決まりだね」

睦月「うん。みんな行くよ。提督をお説教しに」

 

 自転車(と卯月)を置いて、いざ行かん第一執務室へとカレンダーズが歩き出したその時だった。

 

「貴様た……コホン、君たちは駆逐艦だな。訓練中だったか? 邪魔をしてすまないがひとつ聞きたいことがある」

 

 

◆――――◆

 

 

 睦月たちが知らない艦娘だった。入場許可証を首から下げているということは余所の艦隊か何かからの客人らしい。

 客人が来ることは特に珍しいことでもない。鎮守府の友軍対応機能に今更説明など不要だろう。ただひとつ、特殊なカーボン製の制服にフードが付いていて、それを雨天でもないのに被っているのは珍しかった。羨ましかった。

 

 ずるい。かわいい。そのかわいいデザインはずるい。少しでも映画を見る男子には必ず刺さる。睦月の改二の上着にもフードは付いているが、被ったら雨合羽か人目を避ける家出少女にしか見えなくなってしまうのは違う。中途半端な家出少女になるくらいならばいっそ暗黒面にまで堕ちた方がエモい。もっと、こう……そう、まさに客人のもののような被っても良しのかわいいのがよかった。

 

 提督にガツンと言ってやろうと意気込んでいた睦月は、表情をコロッと無害なものに変えた。

 

「はい、なんでしょう」

 

 他のカレンダーズの面々は睦月の後ろから、この人は軽巡洋艦? 重巡洋艦? ついジロジロと見てしまう。1人練度が高い――というより仕事の腕をバリバリ磨いてきた睦月とはこういったところで差が出る。

 

「ワタクシは強襲艦、ゴッドランドだ」

「睦月です。変わったお名前ですけど……」

「よくつっこまれるが見た目通り日の本の艦だ。色々あってな」

 

 お互い、一応は艦娘らしくラフに敬礼を交わそうとして――ほんの一瞬、ゴッドランドが睦月の仕草を観察するように眼を光らせて――。

 ――その後のさらに一瞬、睦月とゴッドランドが右手を上げ切るより早く、長月が割り込んだ。両手を胸の前で合わせ、上体を45度倒した。古事記の解説図として描かれても恥ずかしくない『オジギ』だ。

 

「ドーモはじめまして、ゴッドランド=サン。長月です」

 

 ゴッドランドはまったく反応できず、中途半端な姿勢で固まってしまった。

 

「こ、こら長月ちゃん。お客さんが驚いちゃうよ。失礼しましたゴッドランドさん」

「……あ、ああ。大丈夫だ。気にしていない。よろしく長月」

「……よろしく」とだけ言って長月は睦月の後ろに下がった。

「ボクは皐月だよ!」

「あたし文月~」

 

 結局この場にいる全員が「う……うーちゃ……ぴょん」挨拶をしてから、睦月が聞き直した。

 

「ところで、お聞きしたいことってなんでしょう」

「艦を探しているんだ。軽巡洋艦の球磨という艦はいるか」

「球磨ちゃんなら今日は――」

「『ちゃん』?」

「意外に優秀な球磨ちゃん、って、よく言われますから」

「成る程、違いない。ワタクシも第二次南方作戦で世話になった(・・・・・・・・・・・・・・)球磨に改めて礼を言いたいんだ」

「…………そうだったんですか!」

 

 睦月はニコッと微笑んで両手を後ろで組んだ。

 

「でもすみません。球磨ちゃんなら今朝から遠くの海域に出撃しちゃったはずです」

 

 睦月が後ろで組んだ手は『待て』を示していた。

 

「そうか…………ふむ、タイミングが悪かったな。帰投予定はいつか、までは聞かれても困らせてしまうか」

「ごめんなさい」

「いや、君たちの邪魔をしたのはワタクシだ。協力に感謝する。この艦隊には他にも用事があるし、そちらを回るとしよう。ではワタクシは行く。皆、またの機会に」

「はい。またお会いしましょう」

 

 

◆――――◆

 

 

 睦月たちから姿を見られないところまで移動した神州丸は、他の誰にも見られていないことを確認して建物が作る死角に入った。

 

《君は2つの失態をしでかしたぞ、神州丸》

 

 右耳の通信装置の向こうにいる男からは、開口一番の駄目出し。

 神州丸は、2つあるらしい失態の1つについては既に考え終えていて、さして問題無いだろうと結論付けている。

 

「一応、再確認する。球磨が今この鎮守府の中にいるのは間違い無いんだな?」

《今日の球磨のスケジュールに海に出る予定がないのは調べが付いているし、もしも鎮守府から外に出る姿が確認されていたら? 僕は無駄が嫌いなんだ。とっくにプランBに切り替えている》

「ああ本艦が悪かった。あんな小童に警戒されて嘘の情報を握らされた。反省はこれでいいか?」

《警戒された原因は何だったんだ》

「恐らく球磨に関するこちらの認識だろうが、ならば今後は球磨について余計な会話を避ければいいだけだ。再びあの駆逐艦たちに出会す場面があっても『勘違いがあった』とでも言っておけば問題ないだろう。まあ、その場面が訪れる前に球磨を確保してここを出ているがな」

《現場対応は君の仕事だ。任せるとも》

「で? 早く言え、もう1つの失態とやらは? 下らない揚げ足取りだったらアサシンブレードの錆にするぞ」

《君とあの少女たちのリーダー格の子が敬礼していた時、そこに割って入って来た子がいただろう。あの顔をどこかで見た覚えがあってデータベースを漁ったら――何が出て来たと思う?》

「さっさと言えと言っている」

《『ハングド・キャット』だ》

「なに?」

《あの子はハングド・キャットで働いたことがある。それも1度や2度ではない》

「…………だとしても、何か問題あるか? ハングド・キャットは大和型2番艦がマスターで、艦娘だけをアルバイトとして雇い、撃沈王が頻繁に足を運ぶ、一風変わってはいるがそれだけの猫カフェだという結論なのだろう」

《君はレポートを都合のいい部分しか読まない人間か? あの猫カフェはいま君が言ったこと以上(・・・・・・・・・・・)の情報が何一つ手に入らない(・・・・・・・・・・・・・)んだ。自分たちを敢えて警戒させて、近寄るなと言わんばかりにね》

「調査チームがハリボテの艦艇をどう沈めるかで悩んでいるのなら、この任務が終わった後でひとつ手本を見せてやろう」

《君からはお気持ちだけで充分さ。まあ、ハングド・キャットについては今は横に置いておくとして》

「貴様から言っておいてか?」

《ちょうど君の近くを、間の抜けた顔をした軽巡クラス2人組が歩いている。跡をつければ他の軽巡クラス、あわよくば球磨の近くに案内してもらえるんじゃないか》

「はぁ……了解だ。尾行に移る」

 

 

◆――――◆

 

 

 種を明かすほどのことでもない、簡単な話である。

 

 神州丸たちは、球磨を高評価するあまり素人にもできる調査を怠った。大規模作戦での球磨の活躍を勝手に想像し、作戦後も変わりなく五体満足でいることだけを確認したら、きっと彼女は獅子奮迅――いや熊奮迅の活躍をしたに違いないと自分たちの想像を補強した。

 

 だが実際のところ。

 

 第二次南方作戦時、球磨は前段作戦の開始と同時に風邪をこじらせてずっと布団の中にいた。後段作戦開始ごろになってようやく症状は治まったものの、病み上がりの艦娘に任せられるのは鎮守府の近海・航路の草むしり程度である。

 南方作戦に深く関与する天照大艦隊を、球磨は日常の任務で後方から支えた。――つまり作戦に直接は関わっていないし、ゴッドランドから礼を言われるほどの(・・・・・・・・・・・・・・・・・)何かをした事など有り得ない(・・・・・・・・・・・・・)

 

「ちょっと電話してくる」と長月は皆から離れた。

 

 嘘を見抜いて嘘で返した睦月を、底の見えない暗い不安が襲った。寒気が襲った。怖気が襲った。

 こんな『駆け引き』をしたのは初めてだった。叢雲や雷電姉妹のような熟練艦が嫌でも通ってきた道に、この少女は今、初めて足を踏み入れた。

 

「睦月ちゃん?」

「如月ちゃん……。どうしよう、私、あの人を騙せなくて、騙された振りでお返事されて……球磨ちゃんが……!」

「大丈夫よ睦月ちゃん。みんなここにいる。カレンダーズはいつもみんな一緒だから。菊月ちゃんと水無月ちゃんと弥生ちゃんと長月ちゃんはいないけれど、『心は繋がってる』とかキングダムハーツみたいなことを適当に言っておけば何とかなるから。さあ、お話を聞かせて」

「うん、ありがとう如月ちゃん……! みんな、実はかくかくしかじかで」

 

皐月「言われてみれば……あの人、雰囲気が球磨ちゃんに似てたよね。悪い意味で」

卯月「うーちゃん復活ぴょん!」

睦月「ゴッドランドっていうお名前も怪しいよ。金剛さんの英国設定くらい怪しい」

三日月「これ言っていいのかな? 球磨ちゃんが狙われるのって……逆に安心しない?」

如月「たし」

望月「かに」

文月「返り討ちだもんね、ふつ~に」

睦月「でも、もしゴッドランドさんが球磨ちゃんより強かったら……」

卯月「カレンダーズじゃあどうしようもないっぴょん」

皐月「11人がかりで球磨ちゃん1人に負けたんだよ、ボクら」

如月「ああ、あのトレーニング体験の時ね」

 

※第40話【わらしべ任務(中)】でキレた球磨が「長月も含めたカレンダーズ全員、トレーニングに参加したことがあったが? すぐに飽きて十一本のゴムナイフが無駄になったが?」と言った事である。11対1で負ければ誰だってやる気を失って当然である。

 

望月「ナイフが本物だったら球磨ちゃん無傷であたしら全員死んでたもんな」

三日月「いーえ! あの時のもっち、何もしなかったでしょ!」

望月「何かはしたかったよ、でもできなかったんだよ! 一番最初に狙われて!」

睦月「カレンダーズがあと100人くらいいたらにゃぁ」

皐月「追加した100人分の名前、どうするのさ。お月さまは1個しかないよ」

卯月「世界には175姉妹がいるぴょん。名前くらいなんとかなるぴょん」

如月「さすがに無理だと思うわぁ」

睦月「じゃあ吹雪型とか他みんなを名誉カレンダーズにして……何するんだっけ?」

望月「おい言い出しっぺ」

文月「あ~っ、いいこと思いついた~!」

皐月「100人分の名前の心当たり?」

三日月「それはもういいから」

文月「あっち見て。ほら、暇そうな戦艦の人がいるよ~」

睦月「いるにゃー」

卯月「いるぴょん」

如月「いるかいないかで言えば、いるわね」

皐月「確かにいるね。それから?」

文月「? 戦艦の人だから、強いよ?」

望月「あれ? 概念と概念のマウント争いとか、そっち方向の話?」

睦月「うん。睦月たちよりはもちろん強いと思う。腕相撲とかなら」

如月「でも練度は? 睦月ちゃんの何分の一?」

一同「「う~ん……」」

 

 

◆――――◆

 

 

「天照隊所属、長月だ。いま話せるか?

 ――あ、そ、そうかすまん。

 ――うん、頼む。待っている」

 

 ……

 …………

 ………………

 

「もしもし。悪いな忙しい時に。

 ――え、今日1人もいないのか、バイト!? 言ってくれよ、私は今日暇だったのに。

 ――言った?

 ――あ、本当に悪い、見てなかった。でも丁度よかった。この電話が、今からハングド・キャットに行ってもいいかって話なんだ。私の艦隊に、洞観者でもないのに超能力めいた何かを使える軽巡がいるって

 ――そうそう球磨。もしかしたら炎は持たないがダメコンは発動しない、みたいな中途半端で悪いとこ取りの存在かもって相談したよな。その球磨を今からハングド・キャットに連れて行くから見てもらいたいんだ。私もバイトに入れるし小遣い稼……いやなんでも。とにかく丁度いいな。

 ――それが実はさっき、とんでもなく怪しい奴が鎮守府の中にまで、球磨を探しに来たんだ。ゴッドランドって名前でフード被ってる奴なんだが、武蔵はそういう奴に心当たりあるか?

 ――いや見た感じ海外艦ではない。あと多分そいつの仲間が飛ばしてるドローンが離れたところから偵察してた。一応アイサツしてみたが反応はなかったから大した脅威ではないはずだが、少なくともよからぬことをしようとしているのは多分まちが

 ――あー。

 ……うん。その通りだ。すまない。ハッキリ感じたことを言うとだな、ゴッドランドは球磨を殺しに来たか、拉致しに来たか、それくらいのことを実行するつもりでこの鎮守府に入ってきてる。もう調べたり様子見する段階は終わってて、あとはヤるのみって眼をしてた。1度だけ戦ったことある深海棲艦のレ級より闇が深い眼だった。だから頼む。ハングド・キャットで武蔵と猫たちに見てもらって、ついでにしばらく匿まえないか?

 ――いやでもほら、何れにせよ、まず武蔵に話さないと始まらないし

 ――あー、誰だっけ目利きが得意なの? もうそれか、ネオサイタマから陛下を呼んだほうが手っ取り早

 ――まあそうだな、都合よく来てはくれないよな。だから今日アルバイトが1人もいないんだし。でもせめてゴッドランドをなんとかするまで

 ――え? そりゃあ……殴って分からせるとか?

 ――いま面倒臭くなって言っただろ。でも言ったからには頼らせてもらう。とにかく私は球磨を連れてそっちに行くぞ。

 ――さあ? まあ、皿洗いくらいは最低できるんじゃあないか?」

 




うーむ。
ルビ振り機能の文字数制限を100文字くらいに伸ばしてほしいところ。
あと多機能フォームがめっちゃ使いづらい。

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