球磨の薬指   作:vs どんぐり

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今年度もどうぞよろしくお付き合い頂けると嬉しいです。

自分などは新年早々パソコンを壊し、環境やデータを失いました。
こうしてハーメルンにログインできているだけラッキーな状態です。
球磨の改二実装を祝わずにおられようか! と何かしら投稿したくても、まともな入力機器や出力するものがない、話がどこまで進んでいたか覚えていない、それら以前に社会的にヤバい残り一週間を切ったっぽい?
ですが、ええ、去年の最後に「頑張る」と書いてしまったので、頑張ることと致します。


第85話 球磨争奪戦 ⑩ パラベラム -追- &2020年秋イベ実況

「頭を整理しましょう、叢雲さん。長月が注目を集めている今のうちに手分けをして情報を集めて、因果が見えてくるように並べるのがいいと思うのです」

「じゃあ電は――」

「じゃあ叢雲さんは『あの人』をお願いします」

 

 ……まあ私も押し付けようとしたし、なんて思ってしまった差で電に逃げられるわけで。

 

 

◆――――◆

 

 

 私たちの艦隊で何が起こったのか。起こっていたのか。

 

 不審陸軍人に侵入されたとか。その仲間なのかそうでないのか分からない男4人に侵入されたとか。

 

 売店で、大和をも巻き込んだ何らかのトラブルがあったとか。

 

 球磨――にしか見えなかった何者かが一ノ傘副司令官を襲い、これを阻むと次は当然のように竹櫛司令官を襲い、これもまた阻むと、何者かはまるで魔法のように姿を消した、とか。

 

 副司令官と司令官を、左手の薬指を切り落としてまで暗殺しようとしたのは本物の球磨ではない……とは私たちがそう思いたいだけで、確実なのは、

『左手に薬指がちゃんとあるボロボロの球磨が、売店のお姉さんに担がれてきて、腹部を刺された天龍と龍田の横に寝かされることになった』

ことだけ。つまり球磨の姿をした者が最低でも二人いた、とか。

 左手の薬指がない球磨と、ボロボロにされた球磨、どちらにもアリバイが……まともに受け取りたくない話だけれどある。前者(こっちが偽物だと思いたい)が傘姫司令官まで殺さんと分隊・北鎮守府に無鉄砲に突撃していた時、ここ本隊・南鎮守府のベッドには後者がいた。

 

 とか。とか。

 まだ事は終わらなかった。

 

 司令官を偽球磨から守ってくれた長月は、自分が普通の駆逐艦ではない――どころのレベルではないことを皆に明かさなければならなくなったとか。

 

 不審陸軍人その名を神州丸という輩が「本艦に様々な勘違いがあったことを、上司であるあきつ丸より詫びさせたい」とか言って、それから隠れたり隠れなかったりして天照大艦隊を探るようになったとか。

 

 とか。とか。

 

「もう全部、長月一人でいいんじゃないかな」

「提督と副提督はどれだけ怒らせるようなことしたんだ?」

 

 とか。とか。とか。

 

 昨日の真夜中のニュース……天照隊が絶対に無関係でいられないこととか。

 

 金剛や雷、分隊の斑鳩、いま冷静に動けそうなのは誰か見極めて動いてもらっている。

 私たちの艦隊に起こっていることの共通点が、超人長月の存在も含めて『原因不明』しか見当たらないっていうのはマズい。圧倒的に足りない。情報が。

 

 

◆――――◆

 

 

 鎮守府の外から覗いているカメラに誤解を招くような撮影をされないよう、不要な行動は控えること――と、鎮守府全体に慣れない伝達をした司令官が早くも疲れた顔をしていた。むしろ知りたい聞きたいのは私たちの方なのに、質問追及憶測意見苦情命令その他色々で第一執務室と第二執務室はとっくにパンクしていた。

 私も早くそっちを手伝いに行かないと。

 正門に立っているジャーナリストなのか迷惑系ユーチューバーなのかも分からない連中に、誰かが「野郎ォ……」と敵意を突き刺しに行くのも時間の問題だった。

 

 

◆――――◆

 

 

 店番の磯風が立つカウンターの裏の裏、六畳ほどのお茶の間で私は――炬燵に入れられ、冷凍フライドポテト2袋分をオーブンでチンしたヤツを振る舞われていた。ケチャップと塩も勝手に使え、ときた。

 

「我も聞きたいことがあってな、総旗艦1号」とお姉さんも炬燵に入りながら言った。「大和と球磨はこの部屋に突撃してくるやいなや、我を殺そうとした。磯風も我の目の前でよだれ垂らして居眠りできるようになったのは、たぶん少し前くらいからだ。それと、いつの事か忘れたが、麻婆だか春雨だかは有ろう事か主砲を我と店に向けやがった」

 

 春雨が? ……今はたぶん無関係だろうし聞き流そう。

 

「と、言うと?」

「お前ら艦娘は、我のことをいったい何だと思ってる? この戦艦極楽が、そりゃあお前らどころか長月よりは強いとマイクパフォーマンスしてやろう。だがな。炉辺話もできない猛獣だと誰が言った?」

「私は……寮は磯風と相部屋だし、お姉さんのことだって色々聞いてる。でも球磨は『会話のドッジボール』にしかならないって」

「店でジュース1本だけ買って無駄話しに来るヤツ、くっそ多いぞ。つーかお前もまさか自覚無しか? お前がいままで垂らしてきた愚痴こそドッジボールの投げる側だったんだがなあ総旗艦1号。ところで磯風は我のことをどう言ってる? 興味あるな」

「それは後で磯風本人に聞いて。今は――じゃなくて今も、私は無駄話をしたい気分なのよ」

「無駄話、なあ」

 

 お姉さんは細くカットされたポテトを2本ずつ食べる派だった。

 

「愚痴じゃあなければ好きに話せ。見ての通り我も暇でな」

「じゃあ、球磨のことで。昨日のニュースのせいで見送られたのよ、せっかくの改二改装が」

「磯風に聞いた。もったいないな。ブラウン系とブラックの2トーン制服、あの色使いはいかにも球磨好みだ」

「ほとぼりが冷めるまではタマの改二丁ってことにするけどね」

「ふーん」

「ところでお姉さんは……何か、その、知らない? 球磨のことで」

「無駄話が下手すぎるだろぉよぉ。総旗艦1号さんよぉ」

 

 ごもっとも。

 

「ああ、さっきお前が言った通りだ。今ほど暇じゃあなかったらドッジボールの球ぶつけて追い返してた」

「球磨のためなのよ。それと……お姉さんのためにも」

「うっははは。脅しかそれ? この我を脅すか。つまり脅せるだけの材料を集めたか。おー怖い怖い。それは聞いておかないとなぁ」

 

 ポテトの1本も食べる余裕がない。でも総旗艦として……1号って何? ……とにかく負けてられない。

 

「偽球磨が現れて司令官たちを暗殺しようとした日、事件の直前、普通だった球磨は『何かの拍子』に超人長月のような普通でない存在になった。その証拠としては弱いけれど言わせて。長月も、山城も、分隊の斑鳩も、その時には猫が寄ってきたらしいわ。そして球磨にも、あの日からずっと猫――タマがそばにいる」

「姉妹艦がそばにいることに何の不思議がある」

「お姉さんも普通じゃあない、つまり洞観者という存在、なんでしょう?」

「もっと素直に艦娘らしく、こう、深海棲艦になってしまった! とかの方がスルッと飲み込みやすいだろうに。面倒なことを考えるもんだな」

「長月は猛烈な強さを手に入れた。山城はほぼ無害な人魂を作れる。斑鳩は鉄でも水でも空気でも、なんでも装備できる。お姉さんに何ができるかは私は知らない。じゃあ球磨には何ができるようになったのかと想像せずにはいられない。例えば――もうひとりの自分を生み出せるようになった、とか」

「こんな風にか?」

 

 お姉さんがポテトをつまむ指を止めて、パチンと鳴らした、その次の瞬間。

 事前に磯風に「死ぬほど驚かされるだろうが、お姉さんの茶目っ気に過ぎない」と警告されていたからよかったものの――青色の爆炎は「これ死んだわ私」と諦観するには十二分だった。でも肌で感じたのは扇風機の強風程度の、ひんやり冷たくて、磯風が言った通りなんでもなくて、目で見たものとのギャップに頭をグルグルにされた。

 

「総旗艦1号、お前が想像したのはこんなのだろ」と、もうひとりのお姉さんは私の驚く顔を満足気に見下ろしていた。

 お姉さん……違う、そうじゃない。私は自分が灰になったか灰すら残らず消し飛んだかをイメージさせられたのであって、その後で分身程度なんて見せられても驚けない。せめて100人くらいに増えてないと、お姉さんのご期待に沿えない。

 これは後日聞いた全然関係の無いことだけど、斑鳩の場合(第61話)はちゃんと分身の方で驚けたらしい。これ以上ないレベルの艦同士でやっと通じる悪巫山戯だそうな。

 

「洞観者には何ができる、と、お前は言ったな。まあ手段が増えるというのは間違いでは――」

「……………………は」

「いつまでひっくり返ってんだ。ちゃんと炬燵に入れ、中に風が入って寒いだろうが」

 

 私は分身に強引に元の位置に戻らされた。

 本物の方のお姉さんが再び指を鳴らすと、今度はずいぶんと呆気なく、分身は青い火の粉のように薄れ、そのまま消えていった。……ああ、本当に茶目っ気だけでこんなことができる怪人なのね。

 とりあえず私はポテトを1本取って、ケチャップをちょいと付けて、食べて……思ったことをまんま言ってみた。

 

「偽球磨は、お姉さんが作り出した?」

「そっちか? 我の能力の方を言い当てたか?」

「そうなの? ……つまり」

「いやいやいやいや。待て待て待て待て。結論を急ぐな。確かに我は球磨のコピーを作ろうとはしたが、できなかった。もしできていたとしても、今お前が少し考えたように偽球磨にどっかの提督を殺させて、我に何の得がある? ない。鐚一文ない。どうせ殺すなら狙いはネオサイタマのアカシマートの二人の明石だろうが、それもそう単純な話じゃあない」

「本物の球磨とは別の偽球磨は確かに存在する。そこは間違ってないのね」

「ああ」

「じゃあ、球磨の分身、それとも分裂したとか?」

「球磨本人はアレを【善性ドッペルゲンガー】と呼んでいた。意味とか性質は知らん」

 

 善性ドッペルゲンガーと『呼んでいた』。

 私には『そこ』が引っかかった。

 だって球磨は、偽球磨――ドッペルゲンガーが現れた日からずっと、少なくとも私には、一言さえくれていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆――◆――◆――◆――◆

ここから本編と関係ないヤツ

◆――◆――◆――◆――◆

 

 

 

 

 

 

 

 

◆― 2020年秋イベント攻略開始! (ほぼFGO雑談) ―◆

 

 

けっこう本気の艦これゲーム実況です。

最初の壁『イベント海域にヒャッハーして識別札もらう』を乗り越えよう、というゲーム実況です。

つまり一歩も進まないのですが……そういうゲームだと思っているので、そういうゲーム実況です。

 

 

Fate/Grand Order 2部5章後半7節までのネタバレを含みます。

 

 

◆――――◆

 

 

「マスター竹櫛! サブマスター一ノ傘! 大至急応答願う! こちら天照大艦隊総旗艦、叢雲よ! 繰り返――」

《聞こえた! おお、その声は確かに叢雲ではないか!》

 

 マイクに向かって叫び続けること数日。喉も痛いし、金剛は「もう諦めるネー」と言うし、といったところでやっと通信が繋がってくれた。

 現在、我ら天照隊の状況はとても……まあ、この通信を聞いてくれると分かると思う。

 

「マスター……いや司令官! あんた自分がこの艦隊の司令官ってこと忘れてないでしょうね!?」

《悪い、今それどころではない!》

「はあ!? なに、寝ぼけながら戦ってるの!? あんたがオリュンポスから帰らないなら、もうこっちは勝手に地中海に行くわよ! というか大和がついに催促をやめて直に指揮するって言ってんのよ! 今、私の隣で!」

 

 そう。私の顔のすぐ隣、2センチくらい隣に大和のふくよかな胸がある。たぶん男性だって喜ばないシチュエーションだと思う。だって圧がすごい。「指揮権(アカウント)をよこせ」っていう圧が。

 

《いや私の方は目下戦闘中だが戦闘どころではないのだ。状況は非常にマズい》

「なんで? 『応急修理女神6人分に匹敵するリソースが大量に手に入った』って言ってたじゃない。逆にどうやったら苦戦するのよ」

《巨大な丸い機械神が相手なのだが……詰んでいる! 詰みなのだ!》

「リソース使い切ってでも削り切ればいい話でしょうに。またいつものラストエリクサー症候群?」

《機械神の防御と回復が尋常ではないのだ。私の戦力が出し得る火力が絶対的に不足しているし、頼みのフレンド枠にも妨害が入っている。削った以上に回復されてはリソースを回したところで意味がない!》

「人権キャスターがいるから大丈夫とか甘えてたツケを今、払わされてるってことね。もうアレしたら? カンストしてるQPを全部渡して見逃してもらったら?」

《こともあろうに食糧の無限供給が可能な神を相手にその賄賂は――いや、それでも全QPを投じてフワッフワのクロワッサンを焼けば……だが、あの丸い機械がクロワッサンを喜ぶだろうか? そもそも食べる口らしき器官が見当たらないような……?》

 

 金剛の言った通り、もう諸々諦めなさいと言おうとしたその時、別の声が通信に割り込んできた。

 

《あー、あー、もしもーし。こちらサブマスター一ノ傘。マシュ風のオルテナウスを追加改造して神様を倒す用意ができた》

《マシュ風だと!?》と過剰反応するマスター司令官。《オリュンポスからついに……こんなことを言いたくないが、戦力としては逆に邪魔になってしまった! その座をポール・バニヤンと入れ替えた私の苦悩が分かるか!》

 

 知らんがな。と一ノ傘副司令官の台詞を奪ってしまった私。

 

《マシュ風は編成はせんでいいけん。でも『ブラックバレル』が使えるようになる。それで神様は死ぬ》

《おお! アレか!》

《いや残念やけど、ワタシと竹櫛が知っとるブラックバレルと微妙に違う。狙撃銃でも拳銃でもない、マシュ風の盾が変形する感じのめっちゃゴツいもんやし。それと一発撃つのにマスターが死ぬほど何か注ぎ込まんといかんらしいし、というか竹櫛は死ぬ》

《なぜ死なねばならん。アークドライブの一発や二発、好きなだけ使えばよかろう》

《あの例の画像一枚でメルブラはもう黒歴史やろ。まーそれ言ったらシオンもアレんなるけど、とにかく神様倒すためには竹櫛に死んでもらわんと》

 

「それは好都合です」

 

 司令官と副司令官がなんやかんや言い合っているうちに、私は大和にマイクを奪われていた。

 

「現時刻をもって天照大艦隊の指揮はこの大和が引き継ぎます。ですので竹櫛提督はそこで後顧の憂いなく燃え尽きて下さい。以上」

《待て! 冗談だと気づいているだろう、ブラックバレルの名が出た時点で戦闘はとうに終りょ――!》

 

 大和の無慈悲なチョップが通信機を破壊し、鎮守府とオリュンポスを繋ぐ線は断たれた。

 これだから戦は恐ろしい。人と人との繋がりがこうも呆気なく終了される、とか知った風なことを言ってみる。

 

「では天照隊に命令です。まず、さっさと地中海に行きなさい」

「で、でも、まだ情報収集すら――」

「行きなさい」

「はい」

 

 マシュ風だけは帰ってきてもらうとして、難易度は……どうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆― マシュかz……あなた誰? (イベント実況と多少のFGO雑談) ―◆

 

 

再び艦これゲーム実況です。

RTAでもなく編成縛りなども何ひとつない艦これ実況なんて、こんなものです。

 

 

Fate/Grand Order 2部5章後半のネタバレを含みます。

 

 

◆――――◆

 

 

 撃沈王・大和に「行きなさい」と言われた我ら天照大艦隊は「はい」としか返事できなかった。

 できない。ノーと言えるはずがない。

 この叢雲が天照隊の総旗艦なら、だって、大和は世界の総旗艦のような立場の人なわけだし。

 

「で、でも待って大和。今回の作戦については私たち、本当にあんまり知らないの。なんとなく欧州方面でなにかするとしか」

「問題ありません。私たち艦娘は導きのままに進み、戦えばよいのです」

「導き? ってそんなフワッとしたものを――」

「聖典【ぜ○ましねっと】の導きのまま進めば海路は拓かれるでしょう」

「あ、はい」

 

 オリュンポスの地にて黒い弾丸となって散った司令官に代わり、今は私が司令官代理の腕章を付けて椅子に座っている。椅子の座り心地は……いや秘書艦のモノとは高さが違うだけだし調整すれば何も違わないし、比叡のゲーミングチェアには遠く及ばない。

 で、大和はというと、秘書艦の席で私を監視しながら、

 

「特効艦の確認よし。ふむ……司令官代理、補強増設枠で運用可能な対空装備はどれだけ用意できますか。対空噴進弾幕用ロケット弾は後まで温存することになりますが」

 

 あれこれと横槍――もとい指示をくれている。聖典を見るだけなら私のスマートフォンで事足りるというのに、なんという大和型戦艦の無駄使いかしらねえコレ。

 

「噴進弾幕……? ああ、対空ロケットランチャーなら腐るほどあるわよ。捨てるのは勿体なさそうだったから今日の今日まで溜め込んでたもの。それ用ロケット弾は、あー、まあ、保管はちゃんとしていたはずだし後で確認しましょ」

「……念の為に聞きますが、12cm30連装噴進砲を改二にまで改修した物はいくつありますか?」

「ロケットランチャーの改二? なにそれ、ランカー褒賞?」

「…………さらに念の為に、ですが。この艦隊の補強増設改修された者のリストはありますか」

「リスト化する程は人数いないわよ。ええと――ほら、スクショしておいた部隊、この12人がそう。懐かしいわー。PT小鬼群に発狂させられて勝手にスロット増設して、まあそれで勝ったから結果良かったのだけど」

 

 私たちの中の対PT小鬼群精鋭12名を見て溜め息をつく、あまりに失礼な撃沈王。だったら今すぐ売店に行って、満足のいく数を買ってきて欲しい。

 

「ケッコンカッコカリ一人ひとりに15,700円も出す艦隊が、やれやれケチるところがおかしいなと思わざるを得ません」

 

 第70話【プラチナ】でプラチナムセットの導入を決めた(磯風に乗せられた)司令官自身も、たしか、同じことをぼやいてた。

 

 

◆――――◆

 

 

「ふうむ。今回の作戦は輸送船団の護衛がメインなのね。それなら天照大艦隊の最も得意とするところよ」

「この艦隊にそんなイメージ、まったく無かったのですけど」

 

 秘書艦大和はどうしても私たち天照隊にケチをつけたいらしい。……いえ、もしかしたら、今は亡き司令官の目には、この叢雲もこんな風に見えていたのかもしれない。それでもアイツは私の忠言に耳を傾けてくれて――。

 

「護衛が得意だったとは、その艦隊能力を具体的に聞きたいですね」

「私たちにはマシュ風がいるもの。防御は鉄壁よ」

「はあ、マシュ風さん。護衛駆逐艦のような?」

「いいえ。唯一無二のシールダー」

「シールダー。……とは?」

「マシュ風の大盾を傷付けられる兵器はこの世に存在しないと断言できるわ」

「いくら個人の装甲ばかり優れていても艦隊の戦力としては――」

「もちろん、それくらいの常識を超えるからこそのクラス:シールダーなのよ」

 

 大和の口が「ドーカンシャといいシールダーといい、こいつらまた変なものを」みたいなことを言いそうになるのを私は遮った。

 

「マシュ風がね、『かばう』と言った時は絶対にかばってくれるのよ。マシュ風自身が大破していても、艦隊陣形が崩れていても、『かばう』と言ったら絶対に、砲弾からも爆弾からも」

「へえ」

「さらに、これはマシュ風にあまりに負荷がかかり過ぎるから注意しないとだけど。船団全体を覆うほどの幻想、キャメロット城を展開して、ありとあらゆる災厄から護ってくれる。加えて最近は『ブラックバレル』っていう――」

「いえ、いえ、分かりました、もう十分です。つまり今回の護衛作戦に欠かせないメンバー、超特効艦なのですね。ではバレンツ海においてはマシュ風さんを主軸とした作戦を展開しましょう。個人的に聞きたいこともあるので、マシュ風さんをこの執務室に呼んでもらえますか」

「それがまたねえ。マシュ風も今はオリュンポス――大西洋に空いた穴の中にいて、つまり偶然私たちより作戦海域に近いところにいるのよ。これはもう、逆に、マシュ風が活躍するために作戦があるって気がしない?」

「気がするかどうかは本人に話を聞いてから……と言っていると作戦がまったく進まないので、ええもう感覚と聖典に任せるがままパパッと出撃してもらいましょうか」

 

 

◆――――◆

 

 

 識別札について、触れておかないといけないでしょうね。

 私も大和も、もちろん識別札のことが頭から抜けているわけじゃあない。聖典【ぜか○しねっと】でもありがたくも用心を促してくれている。

 

「大本営にもいましたよ。輸送船団Aが運んだ物資を用いて輸送船団Aがその足で輸送作戦をして、それを繰り返せば理論上、輸送船団Aとその護衛部隊ひとつでどこまでも進めると言った人が。ちなみにその人の渾名は『インパール牟田口』でした」

 

 じゃあ、どうする?

 風の便りに聞くところによると、船団輸送作戦(E-1からE-3まで)はヌルいらしいから全力(甲作戦)で当たるとして、どうやって唯一無二のマシュ風に、

『地中海艦隊』

『護衛R部隊』

『PQ17船団』

 さらに、

『オリュンポス破神同盟』

 これら4つもの識別札を付与するのか?

 

 私はこう考える。

 現場エラー猫はどう頭をひねって管理しても駆除できないのに、どうして札たったの一枚で事故が防げると思うのか。

 事故が発生する可能性があるのなら動力源を切りなさい。上位の動力源を切った時は複数の現場が停止するから、それぞれの現場責任猫が札をかけに来なさい。すると動力源には必然、たくさんの「私がヨシ! と言うまで触るな」という札が付与される。一枚だけの札ならば現場エラー猫が無視する可能性が高まるけれど、複数の現場責任猫の名が「触るな」と威圧すれば、そこに気付かずにはいられない注意が発生する。同時に、他の――(省略)――。

 つまり、札とはそもそも何枚も付与されるものなのよ。たぶん。

 

「これからはインパール叢雲と呼んでもいいですか」

「過去現在未来、異世界、異次元をも旅するマシュ風の足を識別札で縛るなんて、それこそ侮辱や悪しき妨害に他ならないわ」

 

 

◆――――◆

 

 

 こうして我ら天照大艦隊はサクッと欧州船団輸送作戦を完遂した。

 聖典【ぜかま○ねっと】の導きに従いポチポチしていたら結果的に勝っていた、とも言う。

 

「インパール叢雲さん。他の情報によるとE-3には装甲破砕ギミックがあったらしいのですが」

「その呼び方やめて。――うそ、聖典を読み飛ばしちゃってた?」

「そのようです。どうします?」

「うーん……って、いやいや終わった後でどうもこうもないでしょ。それより、12cm30連装噴進砲の改二のやつが1基、工廠の奥の奥で見つかったわ。どうする?」

「終わった後でどうもこうも――いえまあ、多号作戦が一応まだ残ってはいるので適当に活用してください」

 

 

◆――――◆

 

 

「じゃあ残りの作戦は死なない程度にアレしておいてください」と雑に言い捨てて撃沈王・大和は帰ってしまった。「そうだ言い忘れてましたが、メリークリスマス。それと、これも先に言っておきましょう。あけましておめでたくなるはずなので、よろしくおねがいします」

 

 小説(Word 2013)の中の戦艦大和。

 現実(Firefox)の中の戦艦大和。

 どちらも扱いづr……お互い気持ち良く付き合いたいものね、うん。

 

 さて。

 邪魔もn……えーなんと言うか……そう、私のプライベートな時間と空間ができたことで、ようやっと本題に入れるようになった。

 

《欧州船団輸送作戦、成功です》

 

 作戦の主軸であった彼女は、現地からそう報告してくれた。

 

《私も地中海(ローマ)で必要分の浪漫(ローマ)の確保に成功しています。では私はまたオリュンポスに戻りますので。全ての道はローマに通ず、と言います。逆に言えば、空間次元が万華鏡のごとく我々(ローマ)を乱そうとも、ここにローマがある限り道も必ずあるのです》

「ご高説おっしゃってるところ悪いのだけど、多号作戦――台湾方面の作戦は別部隊がもう第二段階まで終わらせてるのよ」

《作戦が順調なのは何よりかと。ですが叢雲が言いたいことは分かりますので、こちらから先に言います。『掘り』までは知りません》

「そこをなんとか」

《護衛すべき船団がいないのであれば盾は不要、いいえむしろ邪魔でしょう。……叢雲には分かりますか。戦闘開始のラッパと同時に「必要な犠牲」とか言われて自爆させられる私が……どんな気持ちで……》

「そ、そんな外道、この総旗艦叢雲が許さないわよ。だから、ね?」

《イヤです。オリュンポスが片付いたらカルデアベースでクリスマスを祝うんです。今年のサンタクロースが誰になるか楽しみなんです。――そうでした、陽炎たちに伝言をお願いします。メリークリスマス、と》

 

 この世界の住人は季節感が滅茶苦茶すぎる。

 

「作戦の主軸として頑張ってもらったのだし、これ以上の無理強いはできないか。うん。お疲れさまでした。余裕があればでいいけれど、ブラックバレルとやらの弾丸となって燃え尽きた司令官の骨か遺品かを――」

《マスター提督なら普通に生きてますが》

「えっ? でも、無限の機械神を破壊するのに相応のリソースが必要だったとか何とか聞いてるけど」

《それなら、なぜか2020年内限定で使える『霊脈石』なる謎の青いキューブ状リソースが、これまたなぜか10個も入手できたので、それを代用しました。しかしブラックバレル本体の方は3発でダメになってしまったので、対深海棲艦兵器としては期待しないでくださいね》

「なんだそうなの。じゃあブラックバレルがどうのこうのと聞いた後からずっと喪に服していた電は、普通にクリスマスとお正月を楽しんでいいのね」

《私は第14話あたりの叢雲(告白mode)と今の叢雲とのギャップに驚いています》

「その第14話でも言ったでしょう。人は変わるのよ」

《一万数千年も停滞していたオリュンポスの全知性体に聞かせたい言葉です》

「あなただって随分と……ねえ、ひとつ尋ねていいかしら。確認してもいいかしら」

《なんでしょう》

「その……マシュかz……あなた誰?」

《 は? 》

「いや、ほら。天照隊って基本的にミュートで運営されているじゃあないの。だからこうして久しぶりにマシュ風の声を聞くと、ぜんぜん違う顔が頭に浮か――」

 

 ガブッヂュン! という酷い音を最後に残して通信が切れてしまった。

 これだから戦は恐ろしい。人と人との繋がりがこうも呆気なく終了される、とか知った風なことを再び言ってみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆― ブッダはサディスト (イベント実況・終) ―◆

 

 

テレビを見ない人間は、テレビを見ることができない。

 

 

◆――――◆

 

 

 山城は何個目か(最低5個)のリモコンを紛失して、スマートスピーカーのようなAIが助けてくれそう系デバイスを導入しようとした。一度は使ってみたいけれど安くはないものだし、その機能を聞く限り「別にいらなくない?」と思うものなわけだから他の誰かが買わないかなー試しに使わせてくれないかなーと山城の背中を押す空気もあった。のに、山城を除く戦艦寮のみんなだけは「それ山城がぜったいに使っちゃあ駄目なヤツだから」と説得した。

 

「それを言うなら私、スマホすら持てない人間ってこと? リモコンアプリをダウンロードしたらどうせ今度はスマホも失くすだろ、って?」

 

 余計なことを言わなければいいのに……山城のスマートフォンは紛失を免れる代わりに翌日、水没した。

 

 そんな山城でさえテレビは見れる。だって、自室のテレビを諦めて他の誰かの部屋にお邪魔すればいいのだし。というか見たい番組がある子らは普通、集まって見る。その方が楽しい――のではなく、逆に、

 

「ついさっき終わっちゃったよ、岸辺露伴は動かない。でも今日の第3話で最後だったし、え、叢雲ちゃんも見たかったの? ご、ごめん私が一声かけなくて! 昨日と一昨日もみんな(特Ⅰ型)集まってたから、てっきり――!」

 

 吹雪お姉ちゃんが謝ることじゃあない。

 そう、この場合は逆に、みんなと【当然】集まらなかった私が悪い。気を遣わせてしまう私が悪い。

 

「いや少し気になってただけよ。どうだった? 高橋一生が『ヘブンズ・ドアーッ!』ってやったの?」

「その顔は。……ウソをついてる『顔』だよ……。高橋一生が演じる岸辺露伴を自分で確かめたいって、顔のページに書いてある」

「…………うん」

「お仕事してたせいでドラマを3日連続で見逃したってこと、また私に気遣わせないようにしてる。前にも言ったよね。もっと。私に。荷物を預けなさい、この阿呆。って」

「…………はい」

 

 あの日はさすがに忘れられない。「あんたみたいな姉がいるから私は総旗艦だなんて胸を張っていられるのよ!」と素面で言わされたあの日は。寮の同室だった吹雪が磯風に変わったのって、ずいぶんと前の話(第24話)なのだけどね。

 

「それはそれとして。でもドラマなら見逃しても後からどうとでもなるって、おねがい!鎮守府目安箱の3巻あたりにそういう話があったし大丈夫だよ。今日のところはもう叢雲ちゃん、後は私が代わるから」

「ありがとう。でも今日はもうメール1通を大和に送って終わるから。『掘り』まで終わらせたぞー、ってね」

「出撃したみんながやってくれたんだ! 叢雲ちゃんもまた少し素直になれたし、うん、二重三重の意味で良かった」

 

 

◆――――◆

 

 

 話を最初に戻しましょうか――良くないわよ。

 なに? ブッダはサディストなの? テレビすら見させてくれないの?

 一昨日のドラマが放送されていた時間はシェフィールド掘りに成功した達成感しか頭になかった。テレビのテの字も頭になかった。

 昨日のドラマが放送されていた時間はシロッコ掘り部隊の修復を待っていて、だからといって執務室のテレビをつけっぱなしにする習慣は私には無い。「今日の節電が明日のおやつになる」と啓蒙して回るより天照隊の電気料金を実際に見せたほうがテレビつけっぱ対策に効果的だと分かってはいるけれど、言っている私は食堂にひとつ設置されているテレビは情報ある照明くらいにしか思わないし、そういえば朝昼晩の番組を誰が決めているのかも知らない。

 今日が岸辺露伴は動かないの最終日だったということは、大和に作戦完了を何と言って伝えようか考えていたらポッと唐突に思い出した。多号作戦を敗北撤退無しボス装甲破砕せずS勝利、つまり手を抜けるだけ抜いて(丁作戦で)作戦成功としたことは当然もう大和の耳には入っている。重要なのは、この事実を天照大艦隊から正式にどうカッコ良く報告したらみんなの体面を保てるか。

 

「フタサンマルマルまでには連絡したいけど、うーん……あれ? 今夜10時って何か他にやることがあった、ような………………あっ、あーぁ……」

 

 テレビを見る人にとって『テレビを見る』は『何かをやる』ではないのでしょうね。うん、わかるわかる。

 忘れそうならメモしておけって? うん、わかるわかる。

 

 それでも、ブッダよ言わせてください。もう今年は閉店してしまったの? あるいは今年をモヤッとした気分で終わらせてやろうとするサディストなの?

 来年は、明日からは、本当にお願いよ?

 私も頑張るから。

 

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