エロゲ世界観に転生したのに、なんか俺が思ってたんと違う。   作:胡椒こしょこしょ

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3話

「うっしゃ!はい、またストライク~!おいおい、これじゃまったく歯ごたえがないぜ?もっと全力出してくれよダァァァーリィィン??」

 

「そんなこと言われたって!!苦手な物は苦手で.....ああっ!!」

 

ボウリングでストライクを決めて、愉快そうに声を上げる美女。

俺はそんな彼女に対して、若干縮こまりながらも弱音を吐きつつ球を転がし....ガターに落としていた。

電光スコア表に踊る0点。

それを見た瞬間、彼女は噴き出した。

 

「くっ...くひっ...アッハハハハ!!なんだよそれ!?フォルムも投げ方も普通なくせにどうやったらそんな下手くそに投げれるわけぇ?逆に出来ないわそんなの!ひーっ!お腹痛お腹痛い....。」

 

後ろで緑の魔女、上喰巴は愉快そうにお腹を抱えて笑っていた。

馬鹿にされてるのは分かるが、それでも害意を明確に向けられるよりも幾分マシなので甘んじてその嘲笑を受ける。

彼女に逆らうことも出来ずに、言われるがままに引き連れられてきたのはボウリングを主とした複合娯楽施設。

逆ナンなどと言われて連れていかれて人目に付かない山とかで処理されんのかなっとか考えていただけあって、ここに着いた時はホッと胸を撫で下ろしたものだ。

 

平日の昼だけあって、大人や暇を持て余した大学生が何人かまばらに見受けられた。

そんな中でも、彼女は注目を集めている。

それは彼女自身の美貌もあるが、もっぱらそのミスマッチなTHEコスプレといった感じのセーラー服が原因であろう。

好奇の視線が痛い....。

 

「もう一回、オネエサンがお手本って奴を見せてやるよ。しっかりと姿を目に焼き付けて格の違いって奴を感じてろよ?」

 

オレが周りの視線を気にしていると、彼女はボウリングの玉を持ってこちらに嫌な笑みを向けてくる。

なんだろう...マウント取るためにここに連れて来られたのだろうか?

彼女達魔女は時たまサバトと称してカラオケやこういう娯楽施設で反省会とは名ばかりの遊びに興じている時がある。

その時の彼女はもっぱら面倒見の良い諫め役だったりするので、そのキチゲでも俺に八つ当たりして晴らそうとしているのだろうか?

少なくとも俺は、なんとか彼女の機嫌を取ってこの事態をどうするか考えないといけない。

 

 

俺がそう考えている間も、彼女は玉を持って構える。

すると、ふとレールの前に立っていた彼女が振り向いてこちらに視線を向けた。

 

「...ここで、オレがお前の頭にこれをぶち当てたら...問答無用で脳漿ぶち負けて死んじまうんだよなぁ....。」

 

物騒な発言。

しかしさっきまでのこちらの様子を見て楽しむでも、脅したり威圧したるする様子でもない。

彼女の瞳と視線が合う。

無機質な冷たさ。

まるで爬虫類のように感情を伺えない目。

それが却って、客観的事実を述べているようでサッーと血の気が引く。

 

彼女の言う通り、不意に彼女が気まぐれを起こせば俺は再起不能になってしまう。

俺は教会勢力。

必要とあれば俺の命は確かではない。

こんな娯楽施設で、ボウリングというゲームに使う道具によって頭を潰される。

彼女の言葉でそんな解像度の高い想像が頭を過った。

 

また強張る身体。

見つめ合う眼。

蛇に睨まれた蛙のように動けない。

完全に、ブルってしまっていた。

当たり前だ。

どう足掻いても、勝てるはずのない相手。

そんな相手にこんなところに連れて来られて、遊ばされているにも関わらずいきなり相手側は纏う空気を剣呑な物へと変えたのだから。

 

すると、彼女は俺から視線を外す。

見えるのは後ろ姿、彼女の長い緑色の髪。

そして、綺麗なフォームで投げられた玉はこれまた綺麗な軌跡を描いてピンを全て薙ぎ倒した。

 

『Strike!!』と電光スコア表に踊っている。

やかましさすら覚えるようなファンファーレの音声。

それが耳をつんざく中、彼女は振り返る。

 

「どうだよ!えぇ?ちゃぁ~~んと見ててくれたかぁ?ダァァリン?ほら、Congratulation!って画面に表示されてるぜ?オレを褒めるくらい....なんだよお前。またっビビっちまったのかぁ?ただの戯れじゃねぇーか、あぁん?」

 

さっきとは打って変わって上機嫌で、軽やかな足取りで俺の横へと座る。

反射的に、横の彼女から距離を取るように仰け反るもがっしりと肩を組まれて傍らに引き寄せられてしまう、

密着する身体。

腕に柔らかな感触を感じる。

...いや、これ押し付けられている....っ!?

困惑していると、彼女は馴れ馴れしく言葉を掛けてくる。

 

「そんなビクビクしてよぉ?勿体ないぜぇ?こぉ~んな美人なオネエサンに逆ナンされてデートしてるんだ。楽しまないと。だって....。」

 

人好きのする笑顔を浮かべていた彼女。

しかし、そんな中更に顔を近づける。

視界の隅には、彼女の髪。

耳に感じるのは彼女の吐息。

そして、鼓膜を震わせたのは...彼女の囁きだった。

 

「これがお前の人生最後の『遊び』になるかもしれねぇんだから。」

 

まるで機械音声のように感情の抑揚がない声。

息を詰まらせて、首を彼女から遠ざけて彼女の顔を見る。

 

目を細めて、微かな笑みを口元に浮かべている。

しかし、その視線はまるで迷路を歩くモルモットを見ている研究者のような好奇心を感じさせた。

なにか...返さないと。

少なくとも、ここで反応を示さないのはあまりよろしくない。

確か彼女のシーンで、自分が声を掛けたらのに朱音ちゃんのことで悩んでて反応を示さない白夜君に怒っていた記憶がある。

なんとか言葉を絞り出さないと....。

 

強張る筋肉とは対照的に脳をフル稼働。

そして、なんとか喉を震わせて言葉を絞り出した。

 

「わ、わぁ~...た、楽しいなぁ~。生まれて初めてのデートなんすよ...う、嬉しいなぁ~!」

 

無茶苦茶棒読みになってしまった。

そもそも俺は生前の時点で女性と二人きりで遊びに行ったこともなかったのだ。

それどころかこの世界でも教会で訓練漬け。

そんな気の利いた返しなんかできるわけなかった。

しかし、それがお気に召したのか分からないが彼女は微笑を崩した。

 

「ボウリング下手なら取り繕うのも下手糞なんだな、お前。」

 

心底おかしいと言った様子で笑うと、彼女は俺の頭を乱雑に撫で散らかした。

ボサボサになって崩れる髪型。

そして俺の頭を撫でた手で押さえつけるようにして立ち上がる。

 

「ど、どうしたんすか....わわっ!!」

 

急に立ち上がった彼女に尋ねようとすると、後ろの襟元を掴まれて身体を持ち上げられる。

そして無理やり立ち上がらせると、俺の肩を抱き寄せた。

 

「ボウリング飽きた。下のゲーセンか他の面白そうな場所に行くぞ。」

 

「そ、そうっすか...ちょっ、歩調合わせて..転ぶんじゃいますから!!」

 

肩を抱かれ、引きずられるように力任せに引き連れられる。

歩調の食い違いから体制を崩し、小脇に首を抱えられてヘッドロックされたような姿勢になっていた。

首が締ま....!

一瞬わざとかと疑ったが、彼女がこちらを顧みることなく進んでいることから意図したものではないということが分かった。

 

 

 

 

 

首を極められながら来たのは1階。

娯楽複合施設だけあって、ゲームセンターも併設されているようだ。

クレーンゲームなどのライト層向け?というのだろうか、そういう類のゲームがこの階を占めているらしい。

エスカレーターの下を眺めると、地下一階は格闘ゲームだったりアーケードの麻雀だったりとどちらかと言えばディープ層向けのゲームが並んでいた。

 

それにしたってゲームセンターか、懐かしいな。

生前はよくここに来たものである。

どちらかと言えば、俺はここでいう地下1階に用がある部類の人間だった。

ただこの世界のゲームについては全くと言って良いほど分からないので、彼女が1階の方に関心を向けてくれたのは素直にありがたい。

 

しかし、それでも今現在俺はどこか居づらさのようなものを感じていた。

それはこの階自体にではなく....。

 

「まっ、取り敢えず今日の記念?っつー奴を残しておかないとなぁ?教会暮らしのションベン垂らし犬っころとの散歩なんて、中々経験できることじゃねぇーからなぁ?どうせ、こういうのしたことねぇんだろ?」

 

その一帯だけはどこかキラキラと輝いて見えた。

所謂プリクラコーナー。

彼女の言う通り、ゲーセンの中で一番縁のなかった場所である。

どこか疎外感というか、苦手意識のようなものが心に渦巻く。

しかし、そんなこと知ったことではないと言うように彼女はプリクラ機の中に俺を引き入れていく。

 

カメラを見てねとのたまう機械。

確か幼い頃に一度家族で取った時もこんな感じだったか。

...どちらかと言えば検定などで必要だった分、証明写真機みたいだなと思うのだが。

 

「おらっ、もっと近くに寄れよ。映んねぇだろ?おらっ、おめぇもポーズ取れ。オレだけポーズ取ってたらおかしいだろ。」

 

「あっ...はい.....。い、イエーイ....。」

 

正直、横の彼女には魅力以前に恐怖を感じているので出来れば近くに寄りたくない。

しかしそう言われた以上は言う通りにした方が良いだろう。

しっかりと肩を抱き寄せて、裏ピースって奴か?それをしている。

彼女は俺にもポーズを要求するので、言われるがままに彼女の真似をした。

なんというかこの年で、しかも隣にいい歳扱いてパツパツのセーラー服着てる女性と一緒にプリクラを取っている絵面はなんともシュールだった。

 

写真撮影はつつがなく終わる。

数枚撮ると、さっさと出ろと俺に促すので撮影機から出た。

...捕虜か、俺?

....捕虜みたいなものか。

なんなら捕虜は身の安全がある程度保障されていそうだけど、今の俺はそれ以上に酷い状況か。

 

そして、プリクラ特有の加工タイムである。

俺が画面を覗き込むと、彼女はこちらを睨みつけた。

 

「これはオレのプリクラだ。...そこで待ってろ。」

 

「...はい。」

 

プリクラの写真に誰の物かなんてないと思うんだけど....。

俺も映っている写真なのに、俺は関われない。

少し理不尽だった。

いや、まぁ加工したかったか聞かれたら別にどうでもいいが。

それはそうとして、端から関わる選択肢がないというのも少しもやもやとするものだ。

...まぁ。彼女にそんなこと言えるわけがないのだが。

 

待つこと暫く。

加工が終わったのか、印刷機の方が完了の胸を知らせた。

彼女はしゃがんで写真を取り出す。

そして、こちらに歩いてくる。

 

「おら、ダーリン。お前の分だ。」

 

笑みを浮かべながら渡してきた。

写真には彼女と俺が写っている。

美白効果など色々やっているのだろうが...なんだろう、俺の目とか異常に大きく加工されてるし、肌も白くて正直気持ち悪いことになっている。

文字も『2回目もビビってチビりました❤』『この後、夜に執行予定❤』と書かれていた。

...まぁ、分かってはいたが俺のことを虚仮にしている感じだ。

まぁ、敵相手で目の前でチビったり、怯えたりしたのだから軽んじられても当然なのだけれど。

 

というか、やっぱり今まで機嫌を取っていたが許されないらしい。

夜に執行とは一体何をされるのか。

少なくとも危機を迎えつつあるということは分かる。

嫌だなぁ.....。

 

「アッハハハハ!ヒッ―!やっぱオレってセンスあんなぁ。いつ見ても面白くて嗤っちまうぜ、なんだこの間抜け面ぁ!イヒッ、ヒヒっ...ハハハ!!」

 

プリクラを見て、馬鹿笑いする上喰。

すると、不意に彼女のポケットが鳴動する。

それに気づくと、ポケットに手を突っ込む。

そこから携帯電話を取り出して耳に当てた。

 

「あっ、もしもし。おぉ...遅かったじゃん。あ~山ぁ?あー、そういう。丁度いいじゃん。こっちも教会の犬っころが近くに居て。処理とか楽そう。うん、そっち行く。じゃ、よろしく~またな~。」

 

一通り電話の主と話すと、電話を切ってポケットに戻す。

そして、こちらに視線を向けた。

 

「時間が来た。一緒に来い...。別に断ったって良いぜ。...終わりの時間が早くなるだけだが。」

 

どうやら、時は来てしまったらしい。

それは事実上の死刑宣告だった。

 

 

 

 

 

 

森の中。

既に時刻は7時を回っており、辺りは日が落ちてまっ暗になっている。

山の中、正座させられている俺。

 

目の前には上喰巴が立っている。

さっきまでの痛いコスプレ姿ではなく緑の魔女の異名の通り、深緑で蛇の意匠が入った魔女服に身を包んでいた。

そしてその傍らにはもう一人の少女が立っていた。

 

麦わら帽子のような幅広の黄色がかった魔女帽子に突き出た猫耳。

目からは快活そうな光を見出し、お尻から黒い尻尾が伸びている。

彼女も、7人居る魔女の一人『黄色の魔女』ことシャルル・シュレディンガー。

性格は気まぐれでだらけ気味。

ちなみに本名は猫村シャルルで、かっこ悪いという理由で苗字をシュレディンガーと名乗っているという痛い設定があったりする。

そんな彼女が俺を見下ろして立っていた。

 

「で?アタシがこの街に来るまで暇つぶしにコイツ弄ってたのか?」

 

「あぁ。割と退屈しなかったぜ。楽しめたしな。」

 

どうやら俺は彼女がこの街に来るまでの時間潰しとして生かされていたらしい。

そう考えると、なんだか複雑な気分だ。

少なくとも、時間潰しの為にカフェで大人しくしていた俺を連れて行ったのかと考えるとやっぱり理不尽な話である。

 

「ふ~ん、でも教会勢力なんだろ?てことはここで解散、はい終わりってことは....。」

 

「当然ない。少なくとも、お前に会わせたのはそういう意味さ。ここで帰らせたらみすみすお前という魔女がこの街に入ったことを連中に知らせることになるからなぁ。」

 

二人はこちらに視線を向けずに、そう話している。

まぁ、ごもっともな話だ。

少なくとも、ここで返す道理はない。

 

「どちらにせよこの後のこと考えると、別に姿を見られるからどうでも良いんだにゃぁ...」

 

ぐでーっとした様子で伸びをする彼女。

その仕草はどこか猫を彷彿とさせた。

...しかし、この後姿を見られることはどうでも良いというのはどういうことなのだろう?

疑問に思っていると、巴が口を開く。

 

「なんだっけ?隣街に逃げた白ガキの周りに教会が大勢人出して魔女狩りしてるって?」

 

「そーそー。ここに来た瞬間、潜薫からメールが入ってねぇ~。猫使いが荒い奴らだにゃ~。」

 

潜薫。

それも知っている名前だ。

7人いる魔女の一人で青の魔女と呼ばれている少女だ。

しかし、そんなことよりも頭に残ったのは白ガキの周りに教会が大勢で魔女狩りと言った部分。

 

白ガキというのは巴の白夜君への初期の呼称だ。

そして、確か朱音ちゃんに連れられていた。

それに、巴の発言から今は隣町に居ると考えられる。

カフェでした推測通り、現在は朱音ちゃんが白夜君を遠ざけようとしているイベントであろう。

 

そして....そのイベントでは彼女たちは襲撃されない。

青の魔女である潜薫に出会って、白夜君の内側に眠る白の魔女について教えてもらうだけである。

つまりは、端から戦闘なんかないはずだ。

 

寧ろ、白夜君たちが魔女狩りにあるのは中盤。

遠ざけイベントからかなり時間が経ってからだ。

つまりは....ミーシャの時と同じく何かがおかしいということである。

 

何故今、教会が魔女狩りなんて大規模な行動に出た?

目の前の彼女に要求されてマナーモードでバイブも切っていたがもしかしたら連絡が入っていたかもしれない。

そうなれば、今頃ミーシャもいつまでも来ない俺に苛立ちを見せているだろう。

なんだろう...仮にこの場を切り抜けたとしても、俺に待っているのは苦難なんだが....。

 

「まぁ、取り敢えずさっさとコレ片付けて森らへんに放置しておけば自然な感じで隠蔽出来るって算段だにゃ?」

 

「そーゆこと。じゃ、そういうわけだからこれ吸わせてさっさと終わらせるか。ほら、割と楽しませてもらった分、苦しまなくて済むぞ。喜べよワンコロ?」

 

巴はそう言うと、掌にブルーベリーソースのような色をした何かが充満している小瓶を出現させる。

それは本編中にも使っていた薬品、それと少しデザインが違うがよく似た物。

彼女たちは殺る気だ。

苦しまなくて済むとか言っているのが逆に怖い。

 

彼女は小瓶を地面に放ろうと振りかぶる。

このままでは彼女の思惑通り、俺は処理されてしまうだろう。

もしかすれば、命を落とすかもしれない。

せっかく、二度目の人生を得たと言うのに。

必死に孤児とかいう境遇でも腐ることなく、ミーシャのパワハラにも耐えてきたのに。

その結末がこれ....?

 

.....冗談じゃない。

俺はここで終わりたくない。

考えろ、考えろ考えろ。

きっと彼女たちは俺の生半可な言葉には聞き耳を持たない。

俺は教会勢力であるし、そもそも何故か魔女狩りに遭っている白夜君たちを助けるためにも彼女達は急ごうとしている。

 

しかし、さっきの巴と1対1でもまず勝てないと推測するほどだ。

一人魔女が増えれば、実力行使に出ても意味はないだろう。

であれば、どうするか?

 

なんとかして、彼女達を想い留める必要がある。

なにか、そんな言葉を俺は持ち得ているか?

何か......!

 

「俺は....っ!」

 

彼女が瓶を放ろうとする様がゆっくりに見える。

もはや勢いだ。

後の説明や理屈づけなんかまったくこれっぽっちも考えてない。

後のことは後で考える。

とにかく、今を切り抜けるんだ...!

 

「俺は!アンタらが本当は正しいことを知っていて、俺の居る組織が実は魔女がトップをやっていることを知っている!!それに、その魔女が黒の魔女で、ヘクセンナハトを起こそうとしていることもっ!!!」

 

俺は精一杯の早口でそう叫ぶ。

俺の叫びは辺りへと響き、空気を震わせる。

包まれる静寂。

そしてそんな静寂を切り裂く二人の声。

 

「あっ....?」

 

「にゃっ...!?」

 

巴は呆気に取られた顔をして、シュレディンガーはあからさまに驚いた声を発する。

小瓶を地面に放ろうとした巴の腕がピタッと止まる。

 

生前の原作知識に基づく言葉。

そりゃ呆気に取られるはずだ。

こんな情報は、教会の下っ端である俺が知りようもない。

なんなら教会は魔女の討滅を掲げた組織だ。

それのトップが魔女だなんて言い出したら正気とは思えないだろう。

 

唯一、それが真実だと知っている彼女らを除いて。

整合性やら何やら全部度外視した発言。

後でなぜ知っているのか尋ねられれば、返答に困ってしまうのは確実だ。

しかし...それでも、この言葉は俺をこの窮地から救い出したのだった。

 

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