ドールズフロントライン ~ドールズ・スクールライフ~ 作:弱音御前
どうも、弱音御前です。
15週に渡って投稿してきましたドールズ・スクールライフ、今回が最終となります。
ネタ明かしというか、大した話でもないのですが最後まで楽しんでいただければ幸いです。
それでは、最後までごゆるりとどうぞ~
グリフィン基地 シミュレータールーム
「はぁ~・・・ヒドイ夢を見た気分だな」
夢というのは、支離滅裂で荒唐無稽。本来の自分なら絶対に疑うようなことを真面目にこなしているものだ。
目が覚めて、夢の内容をふと思い出して、その際の自分の行動に赤面するようなものなのである。
「RFB! ちょっと言わせてもらいたいことがあるんだけど!」
「私もついでに言わせてもらおうかしら、返答次第では只じゃあおかないわよ?」
起き上がるや、今回のレクリエーション〝シミュレーターでゲームの世界を楽しんじゃおう!〟を企画した張本人、RFBにくってかかったのは45と416。
「ああ、ちょうど良かったよ。私もみんなに言いたいことがあるんだ。はい、全員集合~」
RFBの号令を受け、室内に居る全員が集まる。
指揮官を除いた戦術人形総勢17名。夢・・・シミュレーターに出てきた面々である。
「まず私から言わせてもらっていいかしら? スペシャリストである私に対してのあの配役について聞きたい」
「ええ、それはもう。魔法少女ピーキー✮ピンキーさんのおっしゃる通りに」
「覚えてなさいよ、UMP45~~! うええぇえええぇぇ~~~~ん!」
耳まで真っ赤にして、ガチ泣きしながらシミュレータールームを出ていくネゲヴ。
可哀そうに。まだ記憶に新しいあの装いのせいで、ネゲヴはしばらくの間、45から酷く弄られることだろう。
そんな彼女にフォローを入れてあげるのも、指揮官の仕事である。ちょっとめんどくさいけど、仕事なので仕方がない。
「まず、あの終わり方は何? アルケミストって、NPCでしょ? それがなんで指揮官とエンディングなのよ?」
今回、シミュレーターのデータとなったゲームは、いわゆる美少女ゲームというもので、友好度を上げていき、最終的に一番友好度が高かったヒロインとエンディングを迎えるというのが基本ルールだ。参加した戦術人形たちが、主人公である指揮官とエンディングを迎える為に凌ぎを削る、まさにバトルロイヤルだったのである。
当然、鉄血のエリートたちが参加しているわけはないので、鉄血学院の面々は、データ上でだけ存在するキャラクターだった。
45は、そんな脇役が指揮官とエンディングを迎えたことにたいそうご立腹のようである。
「そりゃあそうだよ。だって、アルケミストがチェックポイントの時点で一番友好度が高かったんだもん」
「なんでよ? アイツ、大して出番なかったじゃない」
「あのさぁ、私、途中でアドバイスしたよね? 〝猫〟は逃さないようにって。覚えてる? もしも~し? お留守なんですか~?」
45の頭をコンコンとノックしながらRFBが捲し立てる。
ここまでやられたらブチギレ確定だろう45は、しかし、何も言い返せないでいる。状況は、
圧倒的にRFB優勢だ。
「今回、ベースになったゲームはフラグ管理がシビアっていうので有名で、四六時中主人公にくっついてコツコツとフラグを立てまくっても、それを一発でひっくり返すような核ミサイル級のフラグが存在するんだよ。それをNPCにとられたら終わりだから、あの時みんなにヒントで教えてあげたのに、誰も回収に向かわないんだもん。もう、呆れちゃったよ。私、ああいう中途半端エンドが一番嫌いなの。副官もさ、指揮官を傍で補佐する立ち場なんだから、仕事はしっかりと仕上げようって思うでしょ? それと同じ。こちとら、遊びでやってんじゃないんだからさぁ」
RFBにボロボロに言われ、45は目の端を潤ませている。
助け船は出せない。今のRFBに45共々噛みつかれるのはごめん被りたいところである。
「エンディングの話はもういいわ。それよりも、私が気に入らないのはあの配役よ。完璧なはずの私が、なぜあんな病弱娘を演じなければいけないのかしら?」
45を助けた、というわけでもないのだろう。痺れを切らせた416がRFBのお説教に果敢にも切り込んでいく。
「配役は自動割り振りにしたから、みんなのメンタルを参照して違和感が無い配役にしてるはずだよ。ログを見た感じ、416さんの役はピッタリに思えるけど」
「馬鹿な事を。私、あんなひ弱な感じに見えるのかしら?」
416の問いに、室内にいる全員が頷く。
それで話はおしまい。苦い顔をしながら、416は引っ込まざるを得なくなる。
「では、私の配役もメンタルを参照した結果、ということなのかしらね」
そして、満を持して登場するスプリングフィールド。
彼女を前にして、ここまではイケイケだったRFBも、やや委縮した様子を見せる。
「あ~・・・え~と・・・そうですねぇ・・・配役に関してはそういう事になりますけど、あれはどちらかというと、ベースになったゲームが原因というか」
「ふむ? その言い方だと、まだ何か事情がありそうですね」
ずい、とスプリングフィールドが笑顔を張り付けたまま踏み出すと、RFBがその分だけさがる。完全に形勢逆転だ。
「実は、別のゲームから少しずつデータを持ってきて、ベースのゲームにくっつけるっていうのを試してみたんだ。スプリングフィールドさんの〝アレ〟はその継ぎ接ぎしたゲームの方のイベントでして・・・」
「なるほどなるほど。それは、どんなゲームなのかしら?」
「この場ではとても言えないようなタイトルです、はい」
そういうことなら、シミュレーター内でのスプリングフィールドとの一件も納得がいく。どんな状況だったかは、もうあまり思い出したくないものではあるが。
「だって、そういうのもあった方が指揮官も嬉しいかなって思ったんだもん。毎回、45副官じゃあ指揮官だって飽きちゃってるかな、って」
「そこで俺を巻き込まないでくれるかな!?」
45からの冷たい視線は気になるが、今は彼女もヒドイ痛手を負っているので、あえて反撃はしない方向でひとつ。
「はぁ~・・・仕方ありませんね。夢の中の出来事だった、という風に考えておきましょう。ここに居る皆様も、このことは他言無用で、是非ともお願いしますね?」
うふふ、と、秋風のように爽やかな笑顔で言われては、一同、YESと返すしかない。彼女を敵に回して生きていける者など、この基地には居やしないのだ。
「・・・とはいえ、今のシミュレーターは各々のメンタルの奥底を反映している、という事実には変わりないんだ」
そんな中で発言したのは、ショットガンの戦術人形、KSG。RFBとはゲーム仲間で、シミュレーター内では別モードでお楽しみだった、基地内でもう1人のゲームマスターである。
「人間だろうが人形だろうが例外なく、ゲームの中では素が出る。それがゲームの良いところだと私は思う。普段は抑圧された感情を発散させ、楽しむ場。みんなはどうだろう? 大小はあれど、少なくとも、楽しいと感じてくれたかな?」
楽しむ。そもそも、これはレクリエーションの一環として企画されたことだ。その根本の目標を達成できていなければ、大失敗となってしまうのだが・・・
「私はとても楽しかったです。楽しいだけじゃなくて、ちょっとだけ自分に自信が持てたような気になれたので、とても・・・嬉しかった」
「ああ、ドッヂボールの時だね? あの時はFALの本心が聞けたから、私も嬉しかったな~。ねぇ、G3?」
「は、はい。やっぱり、FALさんはとても仲間思いだなって感じましたぁ」
「ふん、あれはレクリエーションだから、一時の気の迷いよ」
ガーランドたちから笑みが零れて。
「私は、指揮官さんと銃の話ができて楽しかったな。あれじゃあ物足りないくらいだよ」
「次はレースゲームの要素をもっと増やしてくれない? 世界に名だたる名車をもっと体験してみたいな」
「やはり、私には教員など似合わん。次はもっと暴れさせてくれよ?」
スパス、グリズリー、SVDの教員3人組も次に思いを馳せて。
「私も45姉と41ちゃんみたいにお耳と尻尾が欲しかったよ~」
「それじゃあ、次は3人でお揃いです~!」
9と41は無邪気にじゃれ合っていて。
「45はどう? 楽しかった?」
「そんなの、聞くまでもないでしょ? ねえ、416?」
「文句言った手前もあるんだから、言わせないでちょうだい」
結局、2人もしっかり楽しんでくれていたようなので、つまりは、今回のレクリエーションも
成功と指揮官は判断する。
「よしよし、流石は私とKSGのチョイスってところだね。今度はシンプルにゾンビ殲滅戦なんてどうかな? これだけエース揃いなら超難易度も行けちゃうかもよ?」
「そうだな。じゃあ、私がお手上げだったあの問題作を引っ張り出すとしようか」
そんな2人の話を聞いていると、次が不安に思えてしまうが、まぁ、今回これだけの成果を上げてくれた2人である。いちおう、信用して待っていようと思う指揮官なのであった。
追伸
「ふと思ったんだけどさ、ベースになったゲームに他のゲームのイベントを継ぎ接ぎしたって言ってたけど、どの辺りまでがベースだったの?」
「お? そこが気になっちゃう? さすが指揮官。すっかりゲーマーが板に付いてきたね」
今回のレクリエーションに関しての報告書を受け取りがてら、指揮官がRFBに尋ねる。
ゲーマーどうこうというより、ちょっとした興味である。あのシナリオはあまりにもメチャ
クチャすぎて、ゲームマスターを自称する彼女が持ち込むようなものとは思えなかったのだ。
「ベースになったゲームのお話はね、引っ越してきた街で主人公怪異に遭遇するっていうもので、クラスメイトの魔法少女、同じくクラスメイトで居候先の妖狐、あと、クラスメイトの病弱娘の
3人がヒロインなの。さっきのシミュレーターだと、ネゲヴさんと416さんと45副官だね」
「あの3人が同じシナリオに出てるの? ・・・それ、シナリオとして成立する?」
「まぁ、一見して大地雷の作品なんだけど、これは、その昔ギャルゲー黄金期に発売された、いわゆる〝泣きゲー〟の最高峰って言われてる作品でさ。いやぁ、私もKSGもこのシナリオには泣かされたものだよ」
「へぇ~、キミたち2人が泣くって、そんなに難易度が高いゲームなの?」
「そういう意味の泣くじゃなくて、感動って意味の泣くだよ。今の端末OSに対応してるゲームデータ貸してあげるから、指揮官もやってみてよ。私が行ってる意味、絶対に分かるからさ」
「そうだね・・・じゃあ、暇があったらやってみようかな」
「えへへ~、暇があったら、なんて余裕言ってられるのも今の内だよ。一度始めたら止まらなくなるんだから」
報告を済ませ、退室するRFB。
それから程なくして、彼女からゲームデータ付きのメールが指揮官のもとへ送られてくる。
~3日後~
「ふぁあぁぁ~~~」
「随分とおねむみたいね。最近、随分と夜更かししてるみたいだけど、何してんの?」
「ん・・・ちょっとね~・・・」
赤くなった目をこすりながら執務に戻る指揮官。
そこへ
「やっほ~、指揮官」
ノックもせずに執務室の扉を開け、上機嫌そうなRFBが乱入してくる。
割といつもの事なので、45も溜息をつくだけで特に咎めることはしない。
「なんか、最近ずいぶんと寝不足っぽいって噂を聞いてさ。もしかして、アレに嵌っちゃったクチかな~?」
「いやぁ・・・悔しいけど君の言う通りだよ。ちょうど昨夜、真エンディングまでいってさ。すっげぇ良い話だった」
「でしょでしょ? って、指揮官、目ぇ真っ赤だよ!? あはは~! それ、絶対に泣き腫らしたやつでしょ? だよねだよね~。私は、お狐様への恩返しが一番グッてきたかな」
「あぁ~、それダメなヤツだって。また涙がジワってくるから思い出させないで」
「・・・・・・何やってんの、アンタ達。キモっ」
凍てつくような45の視線を傍から浴びつつ、ゲーマー2人のよもやま話は1時間くらい続いたとか。
END
とまぁ、こんなオチでございました。
やりたいネタを何でもかんでも詰め込んでいくと、こんな風にガタガタな内容になってしまうので、皆さんも気を付けましょうね。
改めまして、ドールズ・スクールライフをさいごまで読んでいただいてありがとうございました。
こんな作品でも、皆様のほんの暇つぶしになってくれていたら嬉しいです。
次回作は2~3週後に投稿予定なので、また皆様にお会いできるのを楽しみにしています。
以上、弱音御前でした~