ドールズフロントライン ~ドールズ・スクールライフ~   作:弱音御前

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大型トレーラーを駆り、ヨーロッパ中を駆け回り続ける今日この頃。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
・・・あ、ゲームの中の話なのであしからず。
どうも、弱音御前です。

ギャルゲ風味の今作ですが、少なからずお楽しみいただけてますでしょうか?
作品のボリュームから考えると来年の頭まで続く予定なので、もうしばらくお付き合いいただけたら超嬉しいです!
それでは、今回もごゆっくりとお楽しみください~


ドールズ・スクールライフ 4話

 10月3日(木) はれ

 

 

「いってきまーす」

 

 朝の心地よい空気を浴びながら、4人で家を出る。

 昨夜のヘコんだ気分を払拭してくれるかのような大快晴である。

 

「ん~、いつもより1人増えただけでまったく気分が違うわね」

 

「はい! これから指揮官さんとみんなで通学できるの嬉しいです!」

 

 先行する45と41は、小さくスキップするかのように足取りが軽い。

 自分が加わっただけでこれだけ喜んでくれるのなら、指揮官としてもそれは嬉しい限りである。

 

「あいつ、朝飯ですごい数のいなり寿司食べてたのに。なんであんな軽快に動けるんだ?」

 

「45姉はおいなりさん大好きなんだよ。あれくらいの量、別腹だから平気なんだってさ」

 

「別腹なんていうのは幻想だよ。太るぞ?」

 

「ふふ~ん。朝っていうのは、エネルギーの消費効率が良い時間帯だから、いくら食べたってすぐに消耗されるのよ。つまり、実質カロリーゼロ! っていうか、女の子に対して太るとか、

デリカシーの無い発言すんな!」

 

 殴り掛かってくる45をひょいとかわす。昨日、散々いいようにやられたので、これくらいの

仕返しをしてもバチは当たらないだろう。

 

「今日と明日頑張ったらお休みか~。指揮官は週末の予定ある? もしなかったら、みんなでどこかお出かけしようよ」

 

「それは嬉しい提案だね。まだこの街のこと分かってないから、廻りながら色々と教えてもらえると」

 

「ああぁぁぁあぁぁ~~~!」

 

 何の前触れもなく45が絶叫する。

 突然の事に会話を止めてビクリと驚く指揮官。傍にいた41なんか、驚きのあまり指揮官の脚に抱き付いてしまっている。

 

「ど、どうしたの、45姉?」

 

「今日、木曜日!? 3日の!?」

 

「うん、そう・・・だよ?」

 

 スマホでも日付を確認して、45の顔からみるみるうちに血の気が引いている。

 一体、彼女をこれほどまでに戦慄させる出来事とはなんなのか? 指揮官の緊張の糸が自然と

張り詰める。

 

「今日、日直当番だった」

 

「・・・へ?」

 

 日直当番といえば、朝、黒板を綺麗にして授業の準備をしたり、プリントの配布を手伝ったり、そんな、ちょっとした業務を日替わりで行う当番である。

 確かに、集団生活においてそういった決まり事を忘れるのはいけないことだが、とはいえ、そんな顔面蒼白で頭を抱えるほどの事なのだろうか? と指揮官は首を傾げる。

 

「ヤバい。今日すっぽかしたらドラ先にヤられる」

 

「あぁ~、45姉、前回も忘れて先生に怒られてたもんね。2度目はマズいよね、きっと」

 

「なるほど。あの先生、厳しそうだもんね」

 

 今の45を反面教師として、SVDは絶対に怒らせないようにしよう、と心に誓う指揮官である。

 

「でもこの時間なら、あと5分で学校に着けばドラ先が来る前に準備できる!」

 

「5分!? まだ家を出たばかりだぞ? それはさすがに・・・」

 

 通学路は普通の速度で歩いて15分をきるくらいの道程だ。全速力で走ったところで、信号や他の生徒達の波に引っ掛かることを想定すると、どうしたって間に合うヴィジョンは見えない。

 

「最速ショートカットを使う。9、41、悪いけど付いてきて。一緒に日直の仕事を手伝って

ちょうだい」

 

「えぇ! あのコースを使うの!? 他人の敷地をカットするから、学園で禁止されてるんでしょ?」

 

「先生に見つかったら全員怒られちゃいますよぉ~」

 

「バレなきゃイカサマじゃないのよ! 万が一、見つかっても私が全責任をとるから安心なさい!」

 

 バレなきゃ平気、とか考えているヤツが言う全責任をとる、は説得力ないよなと思った指揮官だが、今はそんなツッコミを入れている事態ではなさそうである。

 

「それに、指揮官はあのルートを通るのキツイんじゃないかな?」

 

「指揮官には私達の荷物を持ってもらうから、ゆっくり登校してちょうだい。ほら、あと4分30秒しかない! みんな、指揮官にカバン渡したらGO!」

 

 返答も待たずに放り投げられた45のカバンを上手くキャッチ。

 

「ゴメンね、指揮官。これも、45姉を助ける為と思って」

 

「私のもよろしくお願いします、指揮官さん」

 

 妹2人も指揮官にカバンを預けると、45の後に続く。

 自分よりも頭2つ分以上も高い塀に手を掛けると、一蹴りで塀に飛び乗り、そこから他人様の

屋根へと飛び移る。

 その華麗な動きは、古のジャパニーズアサシン〝ニンジャ〟を彷彿とさせるものであった。

 

「割と日常的にやってたんだろうな、アレ」

 

 あっという間に3人の姿が屋根の先に消えたところで、指揮官も学校へと向かう。

 計4つのカバンを所持というパシリスタイルだが、カバンの重量は大したことはない。

 身体への重量配分を考えて持ち直せば、歩き心地は普段と何ら変わらないものである。

 昨日の帰りと違い、一人なので周囲の景色を楽しむ事もできる。

 車の通りが少ない閑静な住宅街。この区画自体が整理されて間もないのだろう、道路に敷かれたアスファルトも立ち並ぶ家のどれもが真新しい。

 駅が近く、近隣には他の学園も幾つかあるので、朝のこの時間は多くの人々が行き交っている。

 犬の散歩をしているお爺様、スーツでビシリと決めた会社員に、スマホを片手に楽し気に笑い合う学生。

 そして、道端の電柱に寄りかかってしゃがみ込む女の子。

 

「・・・って、あれマズイよな!?」

 

 流してしまった視線を戻し、女の子のもとへ駆け寄る。

 

「大丈夫ですか?」

 

 声をかけると、女性が顔を上げてくれる。意識は無くしてないようなので、ひとまずは安心である。

 

「・・・」

 

 指揮官が通っている学園の制服に、薄い水色の長髪。左目の下に、まるで赤い涙の雫のような

ラインを引いた彼女は、つい昨日覚えたばかりのクラスメイトだ。

 

「たしか、HK416さん、だったよね?」

 

 力無く、コクリと416が頷く。

 苦しそうに肩で息をして、顔はついさっきの45に負けないくらい血の気が引いているような

色だ。

 

「調子悪いの? 救急車呼ぼうか?」

 

「いい・・・平気だから・・・」

 

 息をつきながら指揮官の申し出を断ると、416は電柱を支えにして立ち上がる。

 電柱から傍の塀に手をつき、おぼつかない足取りで歩く彼女を見て見ぬフリできるような指揮官ではない。

 

「無理しないで、もう少し休んでたら?」

 

「しつこいわね。もたもたしてたら・・・遅刻・・・するでしょ?」

 

 とはいえ、今の彼女の歩くスピードでは遅刻するのは明白である。

 

「それじゃあ、ほら、おぶって行くから乗って」

 

 言って、目の前でしゃがみ込む指揮官を見て目を丸くする416。

 何を言っているのかすぐに理解できなかったのか、しばし間を開けたのち

 

「んな!? 何を言ってるのよ! おんぶなんて、こんな・・・は、恥ずかしいことできるわけないでしょ!?」

 

「でも、このまま歩いたって遅刻確定なの、キミも分かるでしょ? 一時の恥をとるか、遅刻の

烙印をとるか」

 

「ぅ・・・くっ!」

 

 今、少し話しただけで頑固者だとわかったので、わざと断りづらいような状況と言い回しにもっていく。

 その効果は指揮官の期待していた通りで、416は葛藤する様子を見せた後、観念して指揮官の背中に身体を預けてくれた。

 

「アナタ、何でそんなにカバン持ってるの? そんなので私を背負って歩ける?」

 

「平気平気。悪いけど、自分のカバンは持ったまま腕を回しててね・・・っと」

 

 絶妙な重量配分のおかげですんなりと立ち上がる。

 周りから見れば、フルアーマー指揮官、出撃! といった風体である。

 

「このまま保健室に連れていくから。担任にはキミと一緒に来た事を話して、出席をとってもらうよ」

 

「ん・・・それでいい」

 

 か細い声が返ってきたことに頷き、学園に向けて歩き出す。

 緊急事態という事もあり、周囲の人目をひいてしまっていても今は全く気にならない。とにかく、416が大事にならないことを願いつつ、慎重かつ早足に学園へ向かう事だけを考える。

 

「辛かったら、目を閉じてるだけで少しは楽になると思うよ。ぶつけたり落としたりしないから

安心して」

 

 冗談めかして言うが、背後から笑い声は返ってこない。

 もしかしたらかなり辛いのか、と不安になる指揮官だが。

 

「・・・ありがとう、指揮官」

 

 小さくても、ハッキリとした答えを聞いてほっと一息。

 周囲の人も、指揮官の状況を察してくれたこともあって、予想よりも早く学園に到着することができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうことだから、今日は1人で先にお昼ご飯食べてて」

 

「了解。お勤め頑張って」

 

 指揮官の言葉に笑顔で頷くと、9は早足に教室から出ていく。

 廊下を覗いてみれば、職員室に向かって歩いていく3姉妹と、担任のSVDの後姿。結局、朝の日直業務は間に合わなかったようで、そのペナルティとしてSVDの手伝いをさせられることになったようである。

 3人とも、大量のプリントを両手で抱え、特に、41なんかはフラフラと危なっかしい足取りだ。

 連行されるプリズナーさながらの45達の姿を遠目に、指揮官は確信をもって思う。やはり、

全責任は俺がとる! というのは信用してはいけない言葉だと。

 だって、誰に責任を課すのか、というのは責任を課す側が決めることなのだし。

 

「さて、昼食はどこでとるか?」

 

 編入2日目。大抵、こういう場は学園生活を過ごす中で、誰とどこで食べるのかが決まってくるものだが、指揮官にはまだそれが無い。自由度が高いと言えば聞こえが良いが、高すぎるのも悩みものだ。

 2階廊下の窓から見下ろすと、中庭に設けられたテーブルスペースにはそれなりに学生の姿が

見える。

 食堂も、昨日の様子からすると、満員御礼といったところだろう。

 そんな中に、ポツンと1人きりというのも寂しさを感じてしまう。

 

「・・・屋上。探索がてら行ってみるのも良いか」

 

 爽やかな蒼天の下、穏やかに食事をとるのもいいだろう。

 そう決めるや、すぐに行動開始。

 食堂に降りると、併設されている購買でおにぎりと飲み物を購入。階段を登りに登り、4階屋上に足を踏み入れる。

 

「おぉ? 思ったより綺麗だな。人もあまり多くない」

 

 休憩するためのスペースこそ無いが、床は一面が真っ白で清潔感のある屋上は、涼やかな風が

そよいでいるのも相まってとても清々しい。

 床にそのまま座っていたり、外縁のフェンスに寄りかかっていたり、休み時間を思い思い過ごす生徒達を遠目に、ちょうどいいスペースを探して歩き回る。

 すると・・・

 

(あれ、416か?)

 

 フロアの隅っこ。フェンスに背中を預け、1人で座っている416の姿を見つける。

 彼女の憩いの時間を邪魔したら悪いかな、と思いつつも、今朝の一件もあったので、思い切って声をかけてみる事に。

 歩み寄っていくと、最中、気付いた416が指揮官に視線を向ける。

 

「もう体調は大丈夫なの?」

 

「保健室から出てきているんだもの。見れば分かるでしょ?」

 

 言う通り、顔色は朝とは比べるまでもなく良いし、口調の刺々しさもよりシャープである。

 

「・・・あれは一過性のものだから、今は平気。面倒をかけてごめんなさいね」

 

「困ってるときはお互い様だよ。クラスメイトなんだし」

 

 しばし俯いた後、そう言い直してくれた416に返す。

 午前中、416は教室に戻ってこなかったので、どうなったか心配していた指揮官だったが、

それは杞憂に終わってくれたようだ。

 

「で? 私の調子を探る為にわざわざここまで追いかけてきたのかしら?」

 

「いや、お昼をどこで食べようかうろついてたら、キミの事を見かけたから。声をかけてみた」

 

「あっそ」

 

 指揮官から視線を外し、口を尖らせる416。けれど、指揮官はそんな彼女の仕草には気が付いていない。

 

「キミさえよければ、一緒にお昼食べてもいいかな? まだ食べる場所見つかってないんだ」

 

「・・・お好きにどうぞ。断ろうとしたって、今朝みたいに上手く丸め込もうとするつもりなんでしょうし」

 

「いやいや、この場じゃあそこまでしないよ。あれは緊急事態だから仕方なくやっただけだし」

 

 しっかりとバレていたことを笑って誤魔化し、416の横に腰を降ろす。

 416のひざ掛けの上には彩り豊かな中身のお弁当箱が乗せられている。

 指揮官が遠目に彼女の姿を確認して、今に至るまで、お弁当の蓋を開けたまま手付かずなのは

なぜか? 指揮官はつい勘繰ってしまう。

 

「昨日はUMP姉妹と一緒に食べてたんでしょ? 今日は違うの?」

 

「45が今朝の日直の仕事を忘れちゃって。それでペナルティとして、SVD先生の手伝いをしてる」

 

「忘れてた? ふん、アイツの事だから、すっとぼけていただけじゃないのかしら」

 

 鼻で笑いながら416が言う。

 表情が希薄だった彼女が、この時、初めて笑顔を浮かべている。

 

「45と仲が良いの?」

 

「小さいころから今まで、ずっと同じ学校同じクラスよ。腐れ縁ってやつね」

 

 でも、それもほんの一瞬のこと。416の表情はすぐに色を失ってしまう。

 一晩しか咲かないサボテンの華が至上の美しさを誇るように、彼女が見せた刹那の笑顔は指揮官の脳裏にくっきりと焼き付く。

 

「その割には仲が良さそうに見えない、かしら?」

 

「ん、幼馴染とはいえ、いつでもどこでも仲良しってものでもないんじゃないかな」

 

「説明の手間が省けて助かるわ」

 

 416の笑顔に見惚れてしまっていた事がバレていなくて一安心。

 安心ついでにおにぎりの封を開けてひと齧り。半分近く齧ったというのに、具のシャケは少しも見えてきやしない。やたらと売れ残っているわけである。

 

「でも、通学は1人きりだと危ないんじゃないかな? 今朝みたいなこと、1回や2回じゃないんでしょ?」

 

「お構いなく。コレは昔からの付き合いだから、やり過ごすのも慣れたものよ。これでも、最近はかなりマシになってきたくらいだし」

 

 そう返して、416がお弁当に箸をつける。

 唐揚げを口にほうりこんでご飯をぱくり。卵焼きをぱくり。真っ赤なタコさんウィンナーを

ほうりこんでご飯をぱくり。

 やっぱり、食欲はちゃんとあるようでなによりだ。

 

「半年ほど前までは、月に2、3日くらいしか学校に来れなかったの。だから、私なんかと一緒にいたって、つまらないわよ」

 

 指揮官の事を突き放すような言葉。

 でもそれは、指揮官の事が嫌いだからという意味ではなく、指揮官の事を気遣っての言葉に聞こえる。

 自意識過剰だと言われたらそこまでだが、それくらいに思える度胸がなければ指揮官やってられないのである。

 

「大丈夫。今は話していて楽しいって思えてるから」

 

「強がり言って。・・・せめて、ご飯くらいは美味しかったらよかったのにね。購買のおにぎり、マズいでしょ?」

 

「うん、次は違うのを買う事にする」

 

 昨日とは全く正反対の、静かで落ち着いた心地よい時間が過ぎてゆく。

 午後は416も授業に戻ってくれて、指揮官は416と過ごしたお昼休みに関して、45達から根掘り葉掘り質問をされるのだった。




ヒロイン416の回でしたね。
よくあるクール系ヒロインということで、416は原作の中でも結構好きなキャラだったりします。
とはいえ、当方の作品での出場頻度が低めなのは扱いが難しいからです。
基本、はしゃぐキャラを好んで作品に使う当方なもので。

それでは、次回投稿もどうぞお楽しみに。
以上、弱音御前でした~
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