ドールズフロントライン ~ドールズ・スクールライフ~   作:弱音御前

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寒くなりましたね。毛布に包まりながらお家で過ごす今日この頃、皆様、いかがお過ごしで
しょうか?
どうも、弱音御前です。

指揮官と人形達ののんびり学園生活、楽しんでいただけていますでしょうか?
まだまだ続くので、どうかゆっくりとお付き合いください~



ドールズ・スクールライフ 8話

 10月8日(火) はれ

 

 

 グリフィン女学院は立派な戦術人形を育てるための学校である。その為、授業内容は戦術知識や銃器の扱い、構造などの戦闘に特化した内容が大部分を占める。

 だが、戦術人形といっても精神は見た目相応、お年頃の女の子だ。時には戦闘から離れ、楽しみを交えた授業というのも必要である。

 

「はい、それじゃあ今日の体育はドッヂボールをやるよ」

 

 ドッヂボール? と、紫色の芋ジャーに身を包んだ30人あまりが一斉に小首を傾げる。

 全身黒タイツで人文字を作る方々がみせるような、そんな光景である。

 

「あ、あれ? みんなドッヂボール知らないの? えっと、ドッヂボールっていうのは、ボールを投げて相手に当てる競技でね。コートを2つに分けて・・・」

 

 体育教師グリズリーがみんなの前に立ち、競技のルールを説明していく。

 茶色いショートカットヘアーに競技用の半袖短パン、首にはホイッスルまで掛けて、とても快活な様子が一目で分かる爽やかな先生だ。

 

「指揮官はこの競技知ってる?」

 

「うん、知ってる。子供の頃に何回かやったこともあるよ」

 

 そう答えると、45はさも関心したような表情を浮かべている。

 ドッヂボール知ってるだけでこれだけ関心される事があろうとは、人生というのは本当に分からないものだと指揮官は内心で思う。

 

「1チーム8人で4チーム作るとちょうど良いかな。メンバー分けは文句言いっこなしってことで、私が行うからね」

 

 グリズリー先生が目についた生徒を手当たり次第に選別していく。運動能力を把握していて、

バランス良く分けている、という風ではなさそうだ。

 

「指揮官さんと一緒だと嬉しいです!」

 

「ルールを知ってる指揮官がいると心強いよ~!」

 

 9と41まで寄ってきて、いつものメンバー集合である。

 45姉妹の運動能力は先週の日直遅刻事件で良く把握している。一緒のチームになれれば、頼りになる事この上ないだろう。

 ・・・しかし、1クラス分の人数の中からランダムセレクトだ。そう上手くいくはずもない。

 

「はぁ~、敵になっちゃったらしょうがないわね。遠慮しないから、覚悟しなさいよ、指揮官」

 

「あぅ~・・・指揮官さんと敵同士。やりづらいですぅ」

 

「これはスポーツなんだから、そんな事気にしないで、いっぱい楽しもうよ。ね?」

 

「向こうはなかなかの曲者揃いだね。特に、指揮官は要警戒、かな?」

 

「初めてやるスポーツなので、どう動けばいいのでしょう? 私、自信ないです」

 

「それなら端っこの方で逃げ回ってればいいわ。その間に私が全部片づけるから」

 

 向こう側のコートには45姉妹とM14、G3、FALの6人。それと、初期外野の2人。

 そして、指揮官側はというと。

 

「ファマスさんは基本、私の傍にいて下さいまし。いざという時の盾代わりですわ」

 

「丁重にお断りします。ボールは指揮官かネゲヴに送って攻撃を任せますね」

 

「ええ、全部私に回しなさい。スペシャリストの私がいれば十分よ」

 

「まったく・・・ドッヂボールなんて、どうしてこんなことしなきゃいけないのよ」

 

「えっと、みなさん、よろしくお願いしますね。私、一生懸命やりますので!」

 

 タボール、ファマス、ネゲヴ、HK416、ガーランド。そして、外野さん2人という布陣である。

 M14が零した通り、曲者揃いなのは指揮官もよく理解しているつもりだ。

 

(ネゲヴ、タボール、ファマスは普段から一緒にいる3人組だけど、チームワークという意味ではまた話が別になりそうだな。5人を纏めあげようとするのは逆効果になりかねない・・・か)

 

 授業の一環とはいえ、これは競技である。競い合いであるのなら、勝ちを狙いに行くのは必然。無言ながら、指揮官は自分のチームを勝ちに導く為に思考を回す。

 

「はい、ボールの先手を決めるよ。私がセンターラインでボールを投げるから、両チームの代表者はそのボールを取って自チームに持ち込んでね。言うまでもない事だけど、背が高い方が有利

だよ」

 

 グリズリーの言葉を聞き、相手チームから出てきたのは45。41以外はどの娘もさほど身長が変わらないので、適当に選ばれたということなのだろう。

 

「指揮官、行ってきなさい。先手必勝が私の基本方針なんだから、ボール取れなかったら承知しないわよ」

 

「そんなにプレッシャー掛けないでくれよ」

 

 この中でも抜きんでて背の高い指揮官が自動的に選ばれ、センターラインへ歩み出る。

 白線を挟み、向かい合う両者。その横にボールを持ったグリズリーが立つ。

 

「愚策ね。これは身長差じゃない。運動性能の差がモノをいうのよ」

 

 45の言う通り、背は指揮官の方が高いが、ジャンプ力は45の方が高いというのは明白。

 素直なボールの取り合いでは指揮官の分が悪い。グリズリーが何気なく言ったことを真に受け、ネゲヴ達は指揮官を送り出してしまったのだ。

 

「お互い、準備はオーケー?」

 

 軽く膝を曲げ、全力ジャンプの姿勢をとる45。

 予想通りの動きをしてくれそうだと判断した指揮官は、表情には出さず、心の内で静かに笑みを浮かべる。

 

「レディー・・・ゴー!」

 

 掛け声と共にセンターライン上に放り投げられるボール。それに、まるで猫のように反応した

45が跳ね上がる。

 指揮官はというと、ボールと45を眼で追うだけでジャンプの始動姿勢をとったまま動かない。

 

「何してるのよ、指揮官!?」

 

 背後から飛んでくるネゲヴのヤジを受けても、指揮官は微動だにしない。

 そうしている間に、45が空中のボールを両手で捕まえる。

 

「よっしゃあ! ボールゲット!」

 

 瞬間、指揮官がジャンプ。

 落下してくる45とのすれ違い際、両手で挟み込んでいたボールを掠め取った。

 

「は!?」

 

 きょとんとした表情の45を視認したのも束の間。空中で体を反転させると、自コートのネゲヴにボールを放り投げる。

 

「よくやったわ! そうこなくっちゃね!」

 

 さっきまでの非難はどこへやら、歓喜するネゲヴに苦笑しつつ着地する指揮官。

 

「ちょっとぉ! 私が取ったボールを盗むなんて汚いわよ!」

 

 ライン向こうで抗議の声をあげる45。他の5人も便乗してブーイングを浴びせてくるが、審判を務めるグリズリーは何も言ってこない。

 つまりは、そういうことである。

 

「コート上空はボールの所有権は発生しないって、先生が言ってただろ? キャッチしたままぼーっとしてたそっちが悪い」

 

 指で頭をつつきながら45に返してやる。

 

「くっ! よくも私をコケにしたなぁ~~~!」

 

 顔を赤らめ、怒りのオーラを身体から迸しらせる45。

 

「おぉ~、指揮官が45姉を煽ってる。珍しい事もあるもんだね」

 

「くだらない事言ってないで、戦闘態勢よ、9。絶っっ対に指揮官を潰してやるんだから!」

 

 センターラインから離れ、防衛態勢をとる敵チーム。

 まずは、ボールを持っているネゲヴが仕掛ける。

 

「アンタから血祭りにあげてやるわ、UMP45ぉ~~!」

 

 思いっきり振りかぶった腕からボールが放たれる。

 鋭い風切り音と共に襲い来る剛速球を、しかし、45は避けることはせず真正面から受け止めた。

 

「いった~・・・こぉんの、桃色ゴリラめ!」

 

 そう、悪口と共に45がボールを返すのはネゲヴ、と見せかけて416だ。

 

「っ!?」

 

 油断していた416だったが、瞬時に姿勢を整えるとボールを受け止める。

 腕と身体を使ってボールを抱え込むような、完璧なスタイルだ。

 

「ナイスキャッチ。よく今のボールに反応できたね」

 

「当然よ。私は完璧・・・ごふぅ!」

 

 澄まして言葉を返していた最中、416が吐血して崩れ落ちる。

 

「ちょ!? ど、どうしたの!!?」

 

 コートを血に染め、蹲る416に駆け寄る指揮官。

 だが、この惨状に慌てているのは指揮官だけで他の人達は、またか、といった様子であった。

 

「416は病弱だから、やっぱりキツかったかな。保健委員の子はいるかな? 悪いけど、416を保健室に連れてってくれるかな?」

 

「病弱って・・・こんな風になるもの?」

 

 ささやかな指揮官のツッコミだが、やはり、こんなのは日常茶飯事らしく、至ってすんなりと事が進んでいく。

 416が担架で運び出され、コート上にぶちまけられた血を慣らしたところで、何事もなかったかのようにドッヂボールが再開される。

 

「ほら、早くこっちによこしなさい」

 

 砲台と化したネゲヴに言われるまま、ボールを回す。

 

「死ねぇぇえぇぇぇ~~~!」

 

 雄叫びと共に打ち出されるボールが狙う先はやはり45。

 

「っと! こういうの、馬鹿の一つ覚えっていうの、よっ!」

 

 片や、45はネゲヴ以外のメンバーを狙ってボールを投げる。

 

「ふん、これくらいの弾で倒せると思わないで下さいまし」

 

 受け止めたボールが再び砲台に装填され、45を狙い撃つ。

 そんなリレーを数巡繰り返したところで、突然に均衡を崩したのは45達のチームだった。

 45がボールをFALにパスする。

 

「ふっ!」

 

 短く、鋭い息遣い。しなやかなフォームを以って高速弾が射出される。

 狙いはタボールだ。

 

「きゃあ!?」

 

 45のものとは比べ物にならない速度のボールに驚き、キャッチを諦めて回避行動をとる

タボール。

 

「不意を突いたつもりでしょうが、残念でしたわね」

 

 FALの強襲をかわし、タボールが得意げに言い放つ。

 今、自分の傍を通り過ぎた球がどこに行ったかなんて、全く考えていない様子だ。

 

「タボール! 後ろです!」

 

「はい?」

 

 傍に居るファマスの声で振り返るタボール。その先には、FALから飛んできた球をリターン

せんとする外野さんの姿。

 

「そ、そういう事でしたわね!」

 

 外野さんからの速球が、咄嗟にしゃがみ込んだタボールの頭上を通り過ぎる。

 その球をキャッチしたFALが再びタボールを狙う。

 

「ちょっと!」

 

 尻もちをつきながらもギリギリで回避するタボールを。

 

「なんで私ばかり!」

 

 FALと外野さんの挟み撃ちで容赦なく囲い込む。

 

「誰か、助けていただけますこと~!」

 

 四つん這い状態でコートを逃げ回るタボールを、けれども、誰も助ける事はできない。

 

「助けたいのは山々ですが・・・」

 

「ボールの主導権が完全に向こうだし。無理よね」

 

 自分が被弾するリスクを冒してまでタボールを助ける価値があるかと言われれば、そうでもないというのが、ファマスとネゲヴの本心であるらしかった。

 

「み、みなさんが行けないのなら、私が」

 

 タボールを助けようと、勇気を振り絞るガーランド。

 今まさに駆け出さんとする彼女の左腕を指揮官が掴んだ。

 

「指揮官さん。どうして・・・」

 

 無言で首を横に振る指揮官を見て、全てを察したガーランドの顔に悲しみが浮かぶ。

 残された5人にできるのは、タボールがじっくりコトコト煮込まれていくのを見守る事だけ。

 

「はぁ~・・・仕方ありませんね。私が割り込んで、タボールが逃げる隙を作りますよ」

 

 だというのに、そんなリスキーな中に飛び込もうというのだから、ファマスは本当に仲間想いの娘だなと指揮官は心底思う。

 慌てふためいているタボールのもとへファマスが駆け寄る。

 思惑通り、ファマスという新たなターゲットが割り込んできた事で、FALと外野さんの攻撃

パターンが乱れ、包囲に隙が生まれた。

 

「タボール! 隙を見て抜けて下さい!」

 

「ファマスさん! やはり、持つべきものは大親友ですわ~!」

 

 ファマスの助けで態勢を立て直すタボール。

 これで状況は好転・・・するかに思われた。

 

「ふふ、良いカモね」

 

 その様子を見て、FALがそう呟いたのを指揮官は見逃さなかった。

 

「っ! 2人とも、気を付けて!」

 

 ファマスとタボールに注意を促すが、すでに手遅れだった。

 FALの放った球がタボールに襲い掛かる。

 軌道を読み、身体を逸らすタボール。しかし、直進していた球が、まるでタボールを追いかけるかのように軌道を曲げたのだ。

 

「きゃん!?」

 

 投げる際に回転をかけた事によるカーブシュートが、タボールの腕に直撃。

 それだけにとどまらず、タボールの腕を跳ねた球が、今度は傍に居たファマスへと襲い掛かる。

 

「え?」

 

 球がファマスの肩に当たり、コートへと落ちる。

 予想外のバウンドに、ファマスは何が起きたのか分からず呆気に取られている。

 

「ダブルヒット。タボールとファマスは外野へ」

 

 キレの良いホイッスルの音と共にグリズリーが2人の脱落を宣言する。

 

「んもぉ! なにやってんのよアンタ達ぃ!」

 

 ネゲヴは2人に向かって吠えているが、それはお門違いである。

 ラリーの中で自然とタボールだけを囲い込んだ画策に、意図してカーブシュートを繰り出す

技術力。もしかしたら、ファマスが助けに来ることすらも見越していたのかもしれない、FALの底知れぬ実力が故の結果だ。

 決して、学校の体育の授業で見られるような業ではない。

 

「あ~あ、残念でしたわね。さぁ、仲良く外野へと参りましょう」

 

「むぅ・・・もっと指揮官殿と戦っていたかったのに。申しわけありません。あとは頼みます」

 

 コート外へ出ていく2人を見送り、足元に転がってきていたボールを拾い上げる。

 

(3人ビハインドはさすがにマズイな。そろそろ本格的に攻撃を始めないと)

 

 まずは誰から狙うのが適切か。相手コートに目を向ける指揮官。

 

「こっちにボールよこしなさい!」

 

 そんな中でも、やはりネゲヴの催促は変わらない。

 

「かなり圧されてるんだぞ? 少し慎重に攻撃していかないと」

 

「私の仲間が2人揃ってやられたのよ!? そんな悠長なことやってらんないわ!」

 

 傍から見て分かるくらいネゲヴは頭に血が上っている状態だ。かなり頑固そうな性格なので、

こうなったら、いくら説得したところで聞いてはくれないだろう。

 

「分かった。攻撃は頼んだよ」

 

「そうそう。大人しく私の言う事は聞きなさいね」

 

 指揮官が放ったボールをネゲヴは満足そうに受け取る。

 

「あの世で私に詫び続けろ! UMP45ぉぉぉ~~!」

 

 罵声がさっきよりも3割増しならば、球の勢いもそれに比例して45へと襲い掛かる。

 

「あれはちょい強すぎ」

 

 キャッチが難しいと判断した45が身をかわす。

 大気を根こそぎ巻き込みながら45の傍を通過した球は・・・

 

「あうっ!?」

 

 45の背後、影に隠れていた41の背中に直撃。

 ボスン! と、球の勢い通りの良い音が響いた。

 

「ヒット。41、外野に出てちょうだいね」

 

 球は45チームのコートに転がり、攻守交替。指揮官達はすぐさま守備位置に着いて攻撃に備える。

 ・・・しかし

 

「うえぇぇぇ~~ん。痛いですぅ~~~~」

 

 41がその場に座り込み、泣き出してしまった事でコート中が戦慄する。

 確かに、今のが直撃したらきっと指揮官でも涙ぐむだろうくらいの速球だ。41が泣いちゃうのも不思議な事ではない。

 

「え? そ、そんな、泣き出すことないじゃない・・・」

 

 いくらスポーツであるとはいえ、ちびっ子を泣かせてしまったことに、さすがのネゲヴも罪悪感を覚えているようだ。ヘコんでいるのが声色からもよく分かる。

 

「こっちおいで、41ちゃん。は~い、いたいのいたいの~とんでけ~」

 

 41の身体をさすりながら宥めてあげる9。

 

「うちの妹に何してくれてんのよ! キズモノにしてお嫁に行けなくなったらどう責任とるつもり!? ええ!?」

 

 怒りの形相でネゲヴに向けて凄む45。

 

「だから、悪かったって言ってるじゃない。ごめんなさい」

 

 45が相手だというのに、完全に下手に回っているネゲヴがとても新鮮に見えてしまう今日この頃である。

 

「そんな遠くで謝罪するヤツがある? 土下座しろとまでは言わないから、もっと近くに来て

しっかりと頭下げなさいよ!」

 

「わ、分かったわよ」

 

 45に言われるがまま、とぼとぼとセンターラインへ近づいていくネゲヴ。

 この後、ネゲヴがどんな目に遭うか。指揮官はもとより、賢明な読者の方であれば想像に容易いはずである。

 しかし、ワガママな彼女に灸を据えるという意味で、指揮官は敢えて口を噤んでおくことを選んだ。

 

「痛くしてしまってごめんなさい」

 

 ラインぎりぎりまで歩み出てきたところでネゲヴが頭を下げる。

 そんな彼女に向け、45が球を放り投げた。

 緩やかな弧を描き、球はネゲヴの後ろ首にポスン、と着地。そのまま指揮官側のコートへ転がる。

 

「ヒット。油断しすぎたね、ネゲヴ。外野へ」

 

「・・・・・・あ」

 

 ここで、〝ハメられた〟ことに気が付いたネゲヴが顔を上げる。

 

「いえ~い。ネゲヴざまぁ~」

 

「見たか~、私たちの演技力!」

 

「ごめんなさい、ネゲヴさん。これも作戦なので」

 

 左手人差し指と親指で形作ったL字を額に当て、小躍りするUMP姉妹。

 敗者を煽る為の踊りを見せつけられ、ネゲヴがその場に崩れ落ちる。

 

「はぁ~~~・・・・・・もう、スペシャリスト引退かしら」

 

 自分が悪かったことを全面的に受け入れたのだろう、ネゲヴが肩を落としながらコート外へ

とぼとぼと歩いていく。

 そうして、コート内に残されたのは指揮官とガーランドの2人だけ。片や、相手はまだ5人も残っている。

 比べるまでもなく、圧倒的不利である。

 

「し、指揮官さん、どうしましょう? これだけ差が開いてしまっては」

 

 今まで、目立たない位置で密かに生き残っていたガーランドが指揮官に駆け寄ってくる。

 もう、不安いっぱいで仕方がない、といった様子だ。

 

「いや、まだ焦るような時間じゃないさ」

 

 そんなガーランドに向け、指揮官は微笑みを交えながら返す。

 

「でも・・・相手はUMP姉妹にFAL、G3、M14、三大バトルライフルの方々なんですよ? どう考えても、私には勝ち目が見えないです」

 

 世界三大バトルライフル。フルサイズ弾を使用する、いわゆる、バトルライフルは歴史上、数多く存在する。その中でも名実共に優秀と謳われたのが、相手コートに立つ3人である。

 自信屋のFAL。お気楽M14。おどおどG3。性格はまちまちな3人だが、共に学問、戦闘において優秀な成績を残すエリート達だ。

 UMP姉妹だけでも苦労するに決まっているこの状況に、エリート三人組。勝ち目が薄いというガーランドの意見も尤もである。

 

「なぜ、指揮官さんはそんなに落ち着いていられるのですか?」

 

「だって、こっちには〝最も偉大な功績を残したライフル〟がいるんだ。負けてなんかいないよ」

 

 指揮官がそういった途端、ガーランドは表情を曇らせ俯いてしまう。

 

「その呼び名は・・・過大評価です。私なんて、大したことのない存在ですから」

 

 そう呼ばれることを彼女が好んでいないのは噂で聞いていた。

 でも、あえてそう呼んだのは彼女に自信をもってもらいたいと、指揮官がそう思ったからだ。

 

「じゃあ、そんなことはないっていう事を俺と一緒に証明しよう」

 

 言って、ボールを持った指揮官がガーランドに歩み寄り、耳元に口を寄せる。

 

「俺が・・・から、そうしたら・・・て、・・・・・・って感じでできるかな?」

 

「え? え? そんな難しい事、私にできるでしょうか?」

 

「できるかどうかじゃなくて、ヤル気があるかどうか、だよ?」

 

 その言葉を聞き、ガーランドの表情が微かに引き締まる。

 

「そろそろ始めないと、ペナルティをとっちゃうわよ~?」

 

「どんだけ作戦を練ったところで、この差はもう覆せやしないわよ」

 

 これ以上、試合を止めているわけにも行かなくなってきたので、ボールを持っている指揮官がガーランドの傍を離れる。

 返答は聞くまでもない。今のガーランドの表情が何よりも雄弁に物語っているのだから。

 

「そう決めつけるのは良くないな。勝負において、絶対というのは信用しちゃいけない言葉だ」

 

「指揮官っていうのは、口だけ達者なものなのかしら? ちゃんと、行動で示してもらわないと

分からないわね」

 

 FALの嫌味に苦笑を返し、ガーランドをチラリと見やる。

 視線だけで、準備完了の意を汲み取ると大きく一息。

 

「よし、行くぞ、ガーランド!」

 

「はい!」

 

 掛け声と共に、2人してセンターラインへ駆け出す。指揮官を先頭に、その後ろにガーランドがピッタリと続くカタチだ。

 

「特攻するつもり? 返り討ちにしてやるわよ、9」

 

「おっけ~」

 

 向かう先、45姉妹が身構える。

 コートの端から助走を始め、もうセンターライン目前だというのに、指揮官とガーランドは足を止める素振りをみせない。

 もう、シュートの態勢に入っていてもいい段階のはずである。

 

「え? 何する気?」

 

 困惑する45の目の前で、指揮官が地面を蹴飛ばす。

 センターラインを飛び越え、45達に向けて飛び掛かる指揮官が、空中でシュート態勢をとる。

 

「ちょ、これ反則じゃあ?」

 

「ボール持ったままライン越えてきてる!?」

 

 抗議の声をあげるも、グリズリーのホイッスルは鳴らない。

 着地ギリギリまで溜めて、45との距離をギリギリまで縮める。

 そうして、限界だと判断した刹那、足元を狙ってボールを射出。

 お目当ての45とは1メートルもない距離だ。

 

「くそっ!」

 

 これだけの近距離ではさしもの45もシュートに対応できない。

 足首に当たったボールが勢いよく跳ね返る。

 その先には・・・

 

「うそぉ!?」

 

 指揮官に続いて飛び掛かってきていたガーランドの姿。

 跳ね返ったボールを空中でキャッチすると、間髪入れずに9に向けてシュート。

 虚を突かれた9も45同様に対応が間に合わず、足に被弾する。

 

「ダブルヒット。45と9、外野へ」

 

「何よあれ! あんな距離まで近づくなんて絶対反則じゃん!」

 

「まぁまぁ、先生が反則をとってないんだから、大人しく従おうよ」

 

 9に当たったボールは、勢いで指揮官側のコートへと転がり戻ってきている。

 まだ、指揮官の反撃は継続中だ。

 自コートへと戻りボールを拾うと、再びセンターラインへ向けて駆ける。

 指揮官の背後には同じくガーランドが続き、今度は三大バトルライフルに狙いを定める。

 

「ちっ! 何を仕掛けてくるのか分からない。十分に警戒なさい」

 

「さすが、指揮官って肩書を持つだけのことはあるね」

 

「わ、私は少しさがっておきますね」

 

 45姉妹があっけなくやられた事に、さしもの3人も強く警戒している事が伺える。

 それでも、指揮官は先ほどと同じく、センターライン直前で跳躍。シュート態勢のまま飛び掛かる。

 自らに向けて真っすぐ飛んでくる指揮官を前に、万全の態勢で待ち構えるFAL。

 どんなに近かろうが、どこにボールが飛んでこようが、私には通用しない。そんな自信が彼女の表情からも伺うことができる。

 ・・・だから、指揮官はFALに攻撃はしない。

 シュートすると見せかけて、指揮官が空中でボールを後方へと放る。

 

「っ!? フェイク?」

 

 指揮官の影から現れたガーランドがボールをキャッチ。

 猛禽のように鋭い眼光が狙う先にいるのは、指揮官に目を向けているM14だ。

 

「あ、ヤバ・・・」

 

 気が付いた時にはもう手遅れ。ガーランドのシュートがM14の腕に直撃する。

 

「ヒット。魅せてくれるね、2人とも。M14は外野へ」

 

 おぉ~、と周りから関心の声が漏れる中、2人して自コートへと戻る。

 

「正直、ここまで上手く合わせてくれるとは思わなかった。流石だね」

 

「いいえ、私は大したことをしていませんよ。指揮官さんのお膳立てが良かったからです」

 

 大体の動きしか伝えていなかったのに、ガーランドは指揮官の後ろに付いてコンビネーションを確実に繋いだ。それこそ、地力が無ければ絶対に出来ないことである。

 

「さて、俺がさっき言った言葉。理解してくれたかな?」

 

 足元に転がっていたボールを拾い、指揮官はFALに向けて言い放つ。

 

「そうね、少しみくびっていたというのは認めるわ。その勢いで、どうぞ攻撃を続けてみたらいいんじゃないかしら」

 

 落ち着いた様子で返すFALのその言葉は明らかな挑発だ。

 

「指揮官さん、FALはああ言っていますけど・・・」

 

 その事にガーランドも気が付いているのだろう、表情は硬い。

 

「もう通用しないだろうね。強襲だったから効果があった手だし」

 

 用心しておくに越したことはない。相手は、その自信満々な態度の通り、計り知れない実力をもつFALなのだから。

 後方で待機しているG3も同様に、どこで牙を剥いてくるか分かったものではない。

 

「ファマス!」

 

 外野で待機していたファマスにボールをパスする。

 ボールがまわってくるとは思っていなかったのだろう、ファマスはやや驚きながらも上手くキャッチしてくれる。

 

「外野と内野でFAL達を囲い込もう。いけると判断したら迷わず攻撃にでていいからね」

 

「はい! お任せください、指揮官殿!」

 

「なんでファマスにパスするのよ! ここは私が率いる場面でしょう!」

 

「さっきの有様を見れば、当然のことですわよ。ファマスさ~ん、こちらは準備オーケーでして

よ~」

 

 外野三面にファマス、タボール、ネゲヴが着き、互いにボールを回しあう。

 ボールが3人の間を行き来する度に、FALとG3は距離をとる為にコート内を移動する羽目になる。広くはないコートといえども、何度も繰り返していればその分だけ体力を消耗し、集中力も散漫になる。

 

「体育の授業では少々やり過ぎな気もしますが・・・」

 

 鳥かご、とも呼ばれるこの戦術は狩猟の場や戦場にも応用のきくものである。

 実際にプロの競技でも使われるれっきとした戦術なので、後ろめたい事などなにもない。

 それよりも問題なのは・・・

 

「そこ! いただき!」

 

 どれだけ良い戦術でも、使う側の練度が足りなければ要を成さないというところである。

 G3が逃げ遅れたと見たネゲヴが、パス回しをキャンセルして攻撃を仕掛けた。

 しかし、それは攻撃を誘うためのブラフ。咄嗟に態勢を立て直したG3がボールをキャッチ

する。

 

「やった! ボールとれましたよ、FAL」

 

「今のはシュートじゃなくて、パスしてくれたんじゃないのかしら? ありがとうね敵チームの

ネゲヴさん」

 

 せっかくの攻撃チャンスがすぐに終わってしまい、指揮官とガーランド共にガクリと肩を落とす。

 でも、戦犯のネゲヴはその場で膝を抱えて蹲り、ショック大なのが一目で分かるので責める事もできないのである。

 

「UMP姉妹、今のネゲヴのザマを見てたでしょ? アンタ達はそんなことはないわよね」

 

 そう煽りつつ、FALが外野の45にボールをパスする。

 

「あんなおバカと一緒にしないでくれる? さっきの恨み、存分に晴らさせてもらうわよ」

 

 戦況が一転。攻められる側に立たされ、緊張の糸が一気に張り詰める。

 

「ボールの軌道をしっかりと追って。移動と回避は落ち着いて、最小限に」

 

「わかりました、指揮官さん」

 

 そうガーランドに助言をしたものの、緩急をつけたパス回しとシュートに翻弄され、2人とも

ギリギリの状態に追い詰められてしまう。

 ボールをキャッチして攻守交替を狙いたいところだが、そんな余裕すらも見いだせない。

 

「てやっ!」

 

 45のシュートが指揮官に襲い掛かる。

 風切り音を纏って突っ込んでくるボールをステップで回避。すぐさま反転し、ボールが飛んで行った先、41のいる方に視線を向ける。

 矢継ぎ早に攻撃か、と思われたボールを41は回避。その行く先に待ち構える、FALの姿。

 今まで傍観を決め込んでいたFALがボールを受け取り、間髪入れずに指揮官を狙い撃つ。

 スラリと伸びた手脚で魅せるシュートフォームは、スロー動画で見たら溜め息が出てしまうくらいに美しいに違いない。

 鋭いシュートだが、軌道は見えている。

 これも最小限の動きで回避・・・できると指揮官は思っていた。

 

(マズイ! FALのシュートは)

 

 思い出した時にはもう手遅れだ。

 射線から身体を逸らせた指揮官を追いかけるように軌道を曲げ、ボールが指揮官の腹部に直撃する。

 FALがカーブシュートを使える事を失念していた、指揮官のミステイクである。

 

「Bang!」

 

 指鉄砲で指揮官を撃ち抜く真似をするFAL。勢いが乗っていた事もあり、ボールは大きく

跳ね、コート外へ向かって飛んでいく。

 そのボールが地面に落ちれば、ヒット判定で指揮官は外野行きである。

 放っておいてもいい事なので、UMP姉妹は誰もボールを追っていない。

 ・・・そこにチャンスを見出したガーランドが駆け出す。

 

「ふっ!」

 

 コートの白線を越えたボールを追いかけ、地面を蹴飛ばした。

 空中に自身を投げ出し、身体を一杯に伸ばす。

 反応は良かった。運動能力も勇気も十分。その甲斐あって、虚空を漂っていた両手がボールを

掴む。

 

「指揮官さん!」

 

 空中では態勢を直せない。彼がボールをとってくれると信じ、腕の勢いだけでボールを後方へと放り投げる。

 両手が自由になったので、着地の受け身が間に合った。

 砂ぼこりを撒き上げながら地面をコロリと一回転。すぐさま、背後、ボールを放った先に視線を向ける。

 

「す、すごいな。超ファインプレーじゃないか」

 

 ちゃんとボールを受け取ってくれた指揮官が、目を丸くしながらガーランドを見ている。

 気が付いてみれば、指揮官だけではなく、他のクラスメイトも同じような視線をガーランドへと向けていた。

 

「あ・・・あの、えっと」

 

 自分は目立たないから、地味な存在だからと、ガーランドは今まではあまり前に出ず静かに学園生活を送っていた。

 周りからの視線を集めるのなんて、ここ数年は記憶にない事である。

 どうリアクションしたらいいか分からず、その場に座ったまま狼狽えてしまう。

 

「なによ、ようやく貴女らしいところを見せられたっていうのに、なんでそんな浮かない顔してるの?」

 

 そう偉そうに言うFALは、指揮官へのヒットを阻止されたというのにどこか嬉しそうな様子だ。

 困りに困り、指揮官へと視線を流してきたガーランド。

 そんな彼女に、指揮官は助け船を出してあげる。

 

「FALはガーランドにもっと自信をもってほしいんだってさ。張り合いのある相手がもっと増えて欲しいから、って説明でどうかな?」

 

「まぁ、そんなところ。それが、最も偉大な功績を残したといわれる娘なら、不足なしかしらね」

 

 ガーランドはその呼び名を嫌っている。

 数千、数万とある銃の中で最も偉大な功績などと、あまりにも穿った表現である。

 だから、そんな窮屈な自分を偽る為に、ガーランドは目立たない存在でいようと努めてきた。

 日陰の優等生というのは作られた殻であり、本来の彼女は勇猛果敢で闘争心に満ちた戦士。

 その証拠に、指揮官との連携攻撃とこぼれ球のキャッチをこなした今の彼女の胸は、熱く高鳴っている。

 そんな今の自分すらもガーランドは偽り、隠そうと必死になっていたのだ。

 結果として、それはもう隠しきれるようなレベルではなく、FALにしっかりと見破られてしまっていたわけだが。

 

「周りから期待されるっていうのはすごい重圧だよね。指揮官っていう立場上、その気持ちはよく分かる」

 

 嚙みしめるように言う指揮官。説得力は折り紙付きなので、コート周りにいる全員が納得したような表情を浮かべている。

 

「でもその分、期待に応えられたときっというのはとても気持ちが良いものだと思うんだ。キミの場合はどうだったかな?」

 

「・・・はい。指揮官さんと一緒に連携が取れて、それで上手くいって。すごくすごく達成感が

ありました」

 

 ガーランドの心からの答えを受け取り、指揮官が満足そうに頷く。

 FALも小さく頷いたのに気づいたのは、傍に居たG3だけである。

 

「少しずつ、みんなと協力して自分を変えていくのもいいんじゃないかな。ね?」

 

 コート際まで歩み寄ってきた指揮官が手を差し出す。

 

「ありがとうございます。どこまでできるか・・・いえ、ご期待に応えられるよう、全力を尽くします。この、ガーランドの名にかけまして」

 

 手を掴み、立ち上がる。

 彼女が讃える笑顔はこれまでと変わらず優しいものだが、その裏に力強さが秘められたことに気付いたのは、きっと指揮官だけではないはずである。

 

「はい。随分と余談に花が咲いちゃったけど、そろそろ試合再開していいかしらね」

 

「そうだね。授業の時間も限られてるし・・・っと」

 

 会話の最中、指揮官が身を翻す。

 

「ちっ、気付いてたか」

 

 コート際の指揮官からボールをスティールしようと忍び寄っていた45だったが、しっかりと

バレていたことに悪態をつく。

 

「ほんと、セコイことばっかり考えるよな」

 

「うっさい! たとえ授業とはいえ、勝つためにはなんでもする女よ、私は!」

 

「45姉、とーとーい!」

 

「と~と~い、です」

 

 カッコイイんだかなんだか分からない発言に声援が飛ぶ。

 そんな姉妹のやり取りに溜め息だけ返し、指揮官が相手コートへ目を向ける。

 

「それじゃあ、ここからはガーランド主導ってことで、どうかな?」

 

「はい、任せください。指揮官さんとなら、FAL達に遅れはとりません」

 

 そうハッキリと返すガーランドは頼もしい限りである。

 

「あらあら、随分と大きく出てくれたわね。G3、こっちもここから本気でいくわ。脱落したら、M14共々承知しないから」

 

「え? わ、私はもうずっと本気でやっていましたよ~」

 

 FALに付き合わされる2人に軽く同情はしつつも、攻撃に容赦はしない。

 ネゲヴ達も要領を掴んでくれたおかげで、その後はしばらく、脱落者を出さずに一進一退の攻防が展開される。

 しかし、相手は聴くに勝りし三大バトルライフル。連携においては、指揮官達の一歩上をいっていた。

 

「G3!」

 

「はい~!」

 

 センターライン際に構えたG3目掛け、ボールを携えたFALが駆け出す。

 今までに見せなかった行動に、指揮官とガーランドの間に緊張が奔る。

 

「ウノ!」

 

 1の掛け声でFALがジャンプ。G3が組んだ両手に足を掛ける。

 

「ツヴァイ!」

 

 2の掛け声でG3がFALを打ち上げる。

 FALの脚力とG3の腕力を以って、FALの身体はセンターラインを遥かに越えて指揮官側コート上空へ。

 指揮官達がみせた連携ジャンプシュートの応用なのだろう。

 だが、あれは先を読まれてしまっては効果が激減する攻撃である。

 タイミングを合わせて回避。その後、コート内に着地したFALを討つ。

 愚策だなと・・・指揮官がそう思っていたのは、コート上に視線を移すまでの事だった。

 

「っ!?」

 

「きゃあ、眩しっ!」

 

 本日は快晴なり。絶好の体育日和である。

 燦燦と降り注ぐ陽光を背負ったFALを、指揮官とガーランドは直視することができない。

 

「トレス!」

 

 3の掛け声でFALがシュートを放つ。

 真下へと急降下するボールは、目が眩んでいるガーランドに命中。

 跳ねたボールはそのままコート外に向けて跳ね飛んでいく。

 

(間に合えっ!)

 

 今度は自分の番だとばかりに、指揮官がボールを追いかける。

 何が何でもガーランドを助ける気な指揮官。

 しかし、その想いは外野からコート内に飛び込んできたM14に破られることとなった。

 

「マジ!?」

 

「マジもマジ! 大マジだよっと!」

 

 指揮官よりも早くボールを空中キャッチすると、M14はそのままシュート態勢に移行する。

 

「クアドラ!」

 

 4の掛け声でM14の近距離シュートが炸裂する。

 不意を突かれた、文句なしの強襲を前に指揮官が被弾する。

 そうして、跳ねたボールは無情にもコート外へポトリ。

 

「はい、試合終了。いやぁ、息詰まる戦いだったね。いいもの見せてもらったよ」

 

 ホイッスルの音と共に身体から力が抜ける。

 

「はぁ~、負けちったな」

 

「はい、負けちゃいましたね」

 

 という割には、ガーランドは嬉しそうな様子だ。

 その理由は指揮官にも分かる。

 

「でも、全力で戦っての負けですから。なんだか、清々しいですね」

 

 指揮官も、ガーランドと同じ気分である。

 多分、授業を始める前に彼女だったら、こんな言葉は出なかっただろう。

 ほんの少しだけ前に進めたクラスメイトと健闘を讃え合う。これも、座学では体験できない、

実技授業ならではの醍醐味というものである。

 




ふと思いついたドッヂボールネタで作ってみました。
FAL,G3,M14のバトルライフル組は原作ではあまり絡みはなさそうですが、銃擬人化の某マンガでは大活躍している3人組なので、いつか使ってみたいと思っていたんですよね。
出来はどうあれ、楽しかったんで良しとします。

例の如く来週も更新しますので、どうかお楽しみに。
以上、弱音御前でした~
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