ゲームつよつよ系Vtuberはレティクルの向こうに何を見るのか【完結】   作:畑渚

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5分だけの発見

「はい、皆さんこんにちは。画面と音声、問題ないでしょうか?」

 

<こん~>

<わこつ>

<大丈夫やで>

 

「ありがとうございます。それでは今日も始めていきましょう」

 

 今日もまた、筑紫みやの配信が始まる。私は一度飲み物を飲んで、喉を潤す。Vtuberになってから、明らかに家での飲み物の消費が増えた。その分トイレも近くなるのであまり配信中はいきたくないのだが、たくさん酷使される喉のためにも、結局は若干の諦念を抱きながら飲み物に口をつけるのであった。

 

「さて、今回なんですが……最近はFPSが多かったので、趣向を変えていこうと思います」

 

 そう言いながら起動するのは、横スクロール2Dアクションゲームだ。

 

<えっ……このゲームやってくれるとか神か?>

<普通にバトロワ見たかった>

<このゲーム全然知らん!でもおもしろそう!>

 

 コメントの反応は3:2くらいで賛成:反対といった感じだ。まあ、FPSゲームを見たい層がいるのも仕方がないが、今日はこのゲームだと決めていた。

 

「実はこのゲーム、とても思い出深いゲームでして」

 

 私は幼少期を思い出しながら話を続ける。

 

「親に怒られるまでやっていたら、最終的にボス撃破手前で電源を切られたんですよね。ああ、今は親に対しては何も思ってないですよ?ただ、当時の私はそれはもう荒れに荒れたらしく……、以降親は絶対に電源をぶち切ることはしなくなったんですよね」

 

<普通、ゲームをさせなくなったとかそういう話なのでは>

<何やったら親が折れるんや……>

<筑紫ちゃん、もしかして意外とリアルだと尖ってる?>

 

「別に尖ってるわけじゃないと思いますよ。たぶん、親もゲーマーってのはあるのかもしれませんね」

 

 私がこうしてゲーム三昧の人生を送れているのも、両親のおかげだ。結果を出すという制約はあったものの、大会のための援助だってしてくれたわけで、私は両親に頭が上がらない。

 

「とにかく、やっていきますね」

 

<よーいスタート>

<た、タイマーが右上に見えるんですが>

<もしや……>

 

「えっと、じゃあゲームスタートしますね。まずは名前を入力して設定を変更して……。よし、それじゃあ始めます」

 

 ゲーム開始のボタンを押すと同時に、配信上に映しているタイマーも動かす。

 

「ここはこう」

 

「ここで連続ジャンプ」

 

「ここの壁抜け、解析される前に見つけた人がいたらしいですね」

 

<ってオーイ!>

<何食わぬ顔でRTAを始めるなwww>

<今のところ世界記録と同ペースなんですけど>

 

「実は一時期、RTAにハマってまして。その時の影響ですね」

 

<ハマってたの次元じゃないけど?>

<雑談しながら高難易度技決めるな>

<もしかして記録持ってる?>

 

「一位は取れたことないですけど、10位圏内に入ってたことならありますよ。そのあと大きな短縮ルートが見つかったのですぐに消えましたけど」

 

<なるほど納得>

<fpsもあれだけできて横スクでもこの腕前?>

<多分だけど1日が30時間くらいある人だこれ>

 

「何を言ってるんですか、1日はたったの24時間ですよ」

 

<そのうちゲームに費やすのは?>

 

「20じか……おっと、ここは難しいので集中しますね」

 

<睡眠時間4時間以下>

<早死しそう>

<ここでミスか、人間アピール上手いね>

 

 あまりにシビアな判定に、数回苦戦する。ここの短縮は私がこのゲームを触らなくなった頃に発見された場所なので、練習不足なのだ。

 

「いけました。記録を出すのは厳しいですが、今日は通しでこのままやります」

 

<一応ゲーム配信だからね!>

<RTA配信は地獄すぎるんよ>

<VeG内に新たな風……>

 

「よほどじゃない限りはオススメはしませんね……やはり辛い時の方が多いので」

 

 そしてゲームは終盤へと差し掛かる。

 

「ここ、短縮まだできないんですよね」

 

 短縮不可能なギミックステージが、私の行く手を阻む。

 

「ここで上、そして右のスイッチからの下」

 

<あっ>

<間違えたね>

<そこ下じゃなくて左や>

 

「……間違えましたね。セーブ元まで戻りますか」

 

<あれ?>

<ゲームオーバーにならない?>

<ミスったらデスだったよねここ>

 

「あれ、たしかにそうですね。なにかおかしいです」

 

 ゲーム画面では、まだわたわたと動き続けるキャラクターが映し出されている。

 

「えっと……とりあえず操作を続けますね」

 

 入力通りに動く。変なちらつきや判定のバグもない。

 

「よ、よくわかりませんが生きてます。なんででしょう」

 

<新ルート発見きた?>

<ここからラストまで計測してみよう>

<どうせ途中でデスルーラするでしょ>

 

「そうですね、せっかくなのでこのまま進めましょう」

 

 ゲームはその後も安定して動き続け、気がつけばあっというまにラスボスの手前。そのままいつもどおりの手順でラスボスを倒せば、タイマーストップだ。

 

「えっと……5分の短縮ですかね」

 

<やばくて草>

<世界とっちゃったよ>

<どうするんこれ>

 

「なぜあのルートに行けたかわからないので、記録としては公表できないですね。あとはガチ勢の方たちがきっと条件をみつけだしてくれるでしょう」

 

 RTAのガチの方たちは、本当に無限の時間を費やす。特に今回は5分という大きなタイム差の出る短縮ルートだから、死にものぐるいで条件を特定するだろう。

 

「あっ、きっと切り抜かれるので言っておきますが、この件に関してのDMや問い合わせには受け答えできません。本当に私もどうやってやったかわからないので、唯一の手がかりであるアーカイブから解析してくださいね」

 

 筑紫の名義でRTAの世界に身を置く予定はないので、先にそう断っておく。私はさまざまなゲームを多種多様な楽しみ方でプレイするのが好きなだけなのだ。

 

「それでは、今日はここらへんにしておきます。よければ高評価チャンネル登録もよろしくおねがいしますね。それでは、失礼します」

 

 配信を閉じ、アプリケーションを落とし切る。しかし、その間ずっと、スマホのバイブレーションが鳴り続けていることに、私は顔をしかめた。

 開いてみれば、案の定さきほどのプレイについての質問の山だ。どうやら、大きすぎる発見をしてしまったらしい。

 

 マナーが悪いとは言わない。そもそも、よく見る私のリスナー層ではないところからのDMだ。

 

 私はマネージャーさんに一報を入れてから、通知をオフにして布団に潜り込んだ。

 

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