ゲームつよつよ系Vtuberはレティクルの向こうに何を見るのか【完結】   作:畑渚

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私が行っても

[ひこうにん]VeGamerについて語りたい#377

35:名無しのVeG民

  悲報、耐久配信が30時間を超え、さすがに運営ストップが入る

 

36:名無しのVeG民

  エグいって

 

37:名無しのVeG民

  ストップはいったあと一戦して、それで仮眠とったら再開予定らしい

 

38:名無しのVeG民

  耐久企画は愚か……

 

39:名無しのVeG民

  誰か救ってくれ

 

40:名無しのVeG民

  すでにファンらしき数人がキルポ捧げにいってるもよう

 

41:名無しのVeG民

  今北産業

 

42:名無しのVeG民

  我らがVeG代表姉妹の妹の方、某弱キャラで電撃バッジ耐久開始

  3時間経過、ちょっと匂い立つ方々がちらほら見える

  30時間経過、さすがに休憩といって仮眠に入る。なお枠はつけたまま

 

43:名無しのVeG民

  枠つけっぱって大丈夫なんか

 

44:名無しのVeG民

  一応隣の部屋に姉が待機してるから事故はなさそう

 

45:名無しのVeG民

  【速報】寝言で「お姉ちゃん……それは食べ物じゃないよ……」と言う

 

46:名無しのVeG民

  コメント欄に姉さまが来て必死に弁明しているものの、効力なし

 

47:名無しのVeG民

  寝言かわいすぎて録音したわ

 

48:名無しのVeG民

  うわぁ!アラームの音か、びっくりした

 

49:名無しのVeG民

  仮眠はいって1時間とちょっとくらい?はやくない?

 

50:名無しのVeG民

  寝ぼけながらご飯食べてるのかわいい

 

51:名無しのVeG民

  やはり姉の方は世話焼きだなぁ

 

52:名無しのVeG民

  こうしてゲーム漬けの妹ができあがっていくんやなって

 

53:名無しのVeG民

  俺もこういう世話してくれる姉が欲しい人生だった

 

54:名無しのVeG民

  さすがに体調を鑑みて40時間までとする模様

 

55:名無しのVeG民

  それでも多いが

 

56:名無しのVeG民

  す、少し寝てくるわ……

 

57:名無しのVeG民

  おう、仮眠と言わずしっかり寝てこい

 

58:名無しのVeG民

  いのちだいじに

 

59:名無しのVeG民

  プロとか呼んでもいいからはよ救ってくれ……

 

 

❍✕△❑

 

 

「うう、また負けた……」

 

<どんまいナイファイ!>

<惜しかった!>

<次はいけるよ!>

 

 温かいコメントを読みながら、次の試合へと進む。

 

 はあ、やっぱりこんなことしなければ良かった

 

 元はといえば、うちの新人の筑紫ちゃんことezに憧れて始めた配信だった。電撃バッジ自体は私もとったことがあるし、長くても6時間もかからないと高を括っていた。

 

 しかし、蓋を開けて見れば地獄の始まりだった。初期の頃に比べて明らかに強くなった一般プレイヤーたちにより、何度も阻止され続ける。

 いや、それだけならまだ良かったのかもしれない。明らかに怪しい動きをするものが増えた。私の降下に3人で被せてきたり、戦った瞬間に別チームが参戦してくることが多すぎたり……。確実とまでは言わないが、こう何度も続いては疑ってしまうのも仕方がないというものだ。

 

「今回も、初動落ち……」

 

 仮眠は取ったものの、それでも眠いものは眠い。ただ今は、眠気よりも諦めたくないという意志が勝ってるだけだ。

 

<誰か来てくれー>

<無理はしないでね>

<視聴者の中にプロのお方はいませんか?>

 

 誰かに手伝ってもらえという声が聞こえる。しかし、プロの知り合いなんていなければ、VeG内にすら、気軽に誘える友達もいない。お姉ちゃんは今は寝てるから呼べない。

 

 八方塞がりだった。

 

<<私、いつでも行けます>>

 

 コメント欄に流れる、特殊アイコン付きのコメント。いわゆるモデレーター権限持ちのアカウントによるコメント。

 それは、筑紫ちゃんからのコメントだった。

 

 

❍✕△❑

 

 

 レポートが忙しくて配信ができない日、私は作業の傍らで先輩の配信を開いていた。どうやら電撃バッジ取得耐久をするとのこと。一応下調べのときに先輩の配信を見たことがあるが、普通に強いので早ければ5~6戦くらいで終わるだろう。そう思っていた。

 

 うーん、これはやられてるな……

 

 明らかに先輩の位置がわかった状態で動く敵が多い。初動ならまだしも、中盤以降だってずっとそうだ。先輩のチームだけ、不利な戦いを強いられ続けている。

 

 そうこうしているうちに、一日が終わった。先輩の配信をつけながら、その日は眠りについた。

 

 

 

 

「うわっ、まだやってる」

 

 起きて画面を見て、思わずそう口にしてしまった。どうやら、あの後も沼りに沼ってひたすら試合を続けていたらしい。時間を見れば、配信開始から24時間は経っていた。

 

 しかし、それでも先輩はめげずにやり続けるらしい。しばらくすれば、健康のためにも一度休んで欲しいというメンバーからのコメントも、だんだんと流れるようになった。

 

「お姉さんと同居だから大丈夫とか言ってたけど」

 

 他人がサポートしてくれたとて、ゲームをこれほど長時間やり続けるのはあまり良くないことだ。健康被害もそうだが、なによりそのゲームのことが嫌になってきてしまう。ゲームが嫌いな状態でやり続ければ、実力が発揮できないのも仕方がない。

 

「まあ、私が行っても断られそうだし」

 

 むしろ、私に対してのゴースティングまで連れて行きかねないので、今回は参加を見送るつもりだ。

 

「しかし……本当に酷い」

 

 先程から同じ名前の敵をよく見るし、たまにあたる酷い人は屈伸煽りをした後に自殺までしている。粘着し続ける気なのだろう。泣きそうな声を出しながらも、先輩はずっとゲームを回し続けていた。

 

 

 

 そして時は過ぎ……48時間というリミットまで残り3時間というところ。先輩はもはや半分寝てるような動きをするようになってきた。今はコメント欄と会話しながら、簡単なご飯を食べているところらしい。

 

<誰か来てくれー>

<無理はしないでね>

<視聴者の中にプロのお方はいませんか?>

 

 コメント欄も、この挑戦に否定的になってきた。確かに、このままでは何も得ず40時間配信をしただけになってしまう。これで体調まで崩すようだったら、本当に無意味な挑戦になる。

 

 なにか私にもできないか、しかし特に何も思い浮かばない。

 

 そんなときだった。

 

 ピコピコ

 

 スマホの通知音が鳴る。姉の方の先輩からのメッセージだった。

 

『筑紫ちゃん。もしよかったらだけどうちの妹をお願いできない?』

 

『突然どうしましたか?』

 

『言葉の通りなんだけど。正直、見ててつらいの』

 

『まあ、そうですよね』

 

 つらい気持ちは伝染る。配信者がつらいだけでなく、それを見ている視聴者もつらい気持ちになっていくのが配信というものだ。

 

『おねがい。筑紫ちゃんならなんとかなるでしょ?』

 

『私は今はプロでもなんでもないですよ』

 

『プロだったとかそんなことはどうでもいいの』

 

 その言葉に私は驚きをかくせなくなる。あの姉妹はやたらとezにこだわりがあるようだったからだ。

 

『うちの箱の中で最もゲームが上手いから頼みたいの』

 

『そうは言ってもですね……私が行っても改善しませんよ?』

 

 むしろ、私に粘着しているアンチを連れていったという悪影響しかない気もしてくる。

 

『……ごめん。正直に話すね』

 

『はい』

 

『私、もうこの企画は無理だろうって思ってるの。ただ、うちの妹は目標達成できませんってなると相当落ち込むから……。せめて筑紫ちゃんとコラボできたっていう思い出だけでもあったらなって』

 

『でも、それって私である意味はないですよね』

 

 少し冷たいかなと思いつつも、そう聞いてみる。

 

『じゃあ筑紫ちゃん!ゲームの上手い人を紹介してよ!』

 

『うっ……』

 

 知り合い?そんなものはとうの昔に縁を切ってしまった。ゲーム内のフレンドなんて、ボイチャすらしたことない人が大半である。

 

『お願い。今度なんでも言うこと聞くから』

 

『……本当になんでもですか?』

 

『えっと、そこは筑紫ちゃんの良識的な判断に任せるかな……』

 

『……わかりました』

 

 私は、コメントを打ち込む。

 

<<私、いつでも行けます>>

 

 そのコメントに対しての反応を見ている余裕はなかった。返事も聞かぬままにゲームを立ち上げて、SNSの個人チャットで先輩にIDだけ送る。

 

「へぇ……意外と早かったな」

 

 フレンド申請は、そう待たずに来た。もう少しソロじゃなくなることに葛藤すると思っていたが、先輩もいろいろと限界を感じていたらしい。

 ゲームに参加してすぐに、個人VCの着信が来た。

 

「先輩、いちおう表では初めましてですね」

 

「つ、筑紫ちゃん……」

 

「先輩のリスナーの皆さんも初めまして。つい先日デビューした筑紫みやです。以後お見知りおきを」

 

<筑紫ちゃん来た!これで勝つる!>

<メシアよ……>

<でも電撃バッジの手伝いって可能なのか?>

 

「あー、えっと。そうなんですよね」

 

「えっ?なになに?」

 

「一応、手伝いにきたつもりではあるんですけど、あのバッジって自分のキルをカウントするものなので、結局は先輩にかかってるってことです」

 

「うん、チームで話せる人がいるだけで全然楽なんだけど」

 

「……ど?」

 

「つ、筑紫ちゃんだとキルとられそうで」

 

「否定はできませんね」

 

 乾いた笑いを浮かべる先輩は、でもなんだか肩の荷が降りたような声の軽さを感じた。

 

「じゃあ、終わらせに行きましょうか」

 

「うん、よろしくね」

 

 マッチ開始のカウントダウンが始まった。

 

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