ゲームつよつよ系Vtuberはレティクルの向こうに何を見るのか【完結】   作:畑渚

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年末のアレのために東京に移動しながら初投稿です。遅くなってスマソ


大会直前

「ああ、こういうリングですか。だとしたら……こうですかね」

 

 いくつか用意した画像の中から一枚を表示させる。

 

<この画像あればチーム勝てるんじゃね?>

<それな。なんか言ったらダメかと思ってたけど>

 

「まあ、勝つ確率は格段に上がるでしょうね」

 

 ただ、予測だけで物事が進んでいれば何も困ることはないのだ。

 

「この地図には、最終リングまで全チームが残っていること前提で書き込んでいますよね?ですが実際、そんなことはほぼ起きないので、100%の予測はできてないんです」

 

 敵チーム同士が削り合い、ポジションが変異していく。バトロワとはそういうものだ。そのランダム性こそが、醍醐味なのである。

 

「それに、今回私が配信で公開したことで、本番に動きを変えてきかねないですし」

 

 私が他のチームのアーカイブを漁ったように、他の人も私の配信アーカイブを見ることができる。それを理解した上でこの予測図を公開したわけだから、対策してくるチームがいてもおかしくはない。

 

「ほら、言ってる間に既に1チーム、動きを変えてきましたよ」

 

 現プロと元プロの2人がいるチームが、歪な動きをし始めた。明らかに私の予測図を意識して、他のチームを狩りに行く動きだ。

 

<ほんまや>

<まあこんなの見せられたらなぁ>

<すぐに自分のものにできるあたりプロってヤベェな>

 

「あっでもそっちに向かったら……」

 

 件のチームが東側に向かう。そこはララちゃんたちの構えている場所だ。

 

「こっちが完全に有利な状態で戦えるんですよね」

 

<優勝候補チームを落とした!?>

<toreddoなぜ死なないw>

<2人のカバーもあったけぇんだ>

 

 教えた通りに場所を守り切り、時間によって安全地帯が縮小していく。

 

「この試合は運が良かったですね」

 

 最終安置がララちゃんたちのいる建物となった。ここまで来るとチャンピオンまであと僅かだ。

 

 継続する外での戦闘をよそに、建物内で盤石な守りを展開するチーム。最後に必死に突っ込んできたチームをドア前で押さえつつ、安置外での回復競争へと発展。

 

 結果、戦闘による疲弊と物資消費の差によって、ララちゃんたちのチームがチャンピオンとなった。

 

「はい。と言った感じでうちのチームは勝つこともできます。まあ今回は特に最終安置の場所が良かったおかげですけどね」

 

<うぉぉぉぉぉぉ!!!>

<GG!>

<初チャンピオンおめでとう!!!>

 

 コメント欄と同じように、チームの通話も大盛り上がりだった。私は『ナイスチャンピオンでした。GG』とだけチャットで送り、そっと通話を抜けた。

 

「それでは今日の練習カスタムはここまでのようですので私も配信を終わりますね。それではお疲れ様でした」

 

<おつ〜>

<おつかれ〜>

 

 配信を停止してふうと一息つく。まさか勝てるとは思っていなかったが、十分すぎる働きだろう。配信前半に見かけていた批判や指示のコメントも、後半ではほぼ見かけなくなっていた。

 あとは、今後の配信でも『私の枠以外』にそういったコメントが湧かないことを願うばかりだ。

 

 

❍✕△❑

 

 

 迎える本番の日。時刻は集合時間の30分前だった。

 

「あまりやり過ぎると疲れますよ」

 

「大丈夫、ここまでだから」

 

 私は射撃場でララちゃんのアップに付き合っていた。本当にこの1週間でララちゃんは強くなった。特にシールド際の撃ち合いでは、何回かに一回は私に勝つようになったほどだ。

 

「よし!ありがとうね筑紫ちゃん。これで本番も勝てそうだよ!」

 

「本当に頑張りましたね」

 

 敢えて大会に関しては触れないようにする。言ってはなんだが、私はララちゃんたちのチームが優勝するとは思ってないからだ。

 もちろん応援はする。応援はするのだが、この大会の参加選手はそれほどチーム間で差がある。なにより、『プロ選手がキルムーブをする』ことが可能なゲームシステムである以上、どうしてもプロを積んでるチームとそうでないチームに差が出てくるのだ。しかも、この大会においては『キルポイントの上限』が存在しない。

 つまり、たとえどんなに順位が悪かろうと、キル数を重ねたチームが強い。反してララちゃんたちのチームは『キルは諦めても順位を上げるムーブ』を教え込んでいる。元から私がコーチングに入った時点で、この大会の優勝を狙って教えることを諦めている。

 

「それじゃあ行ってくるね!筑紫ちゃんはどうするの?」

 

「基本的にはララちゃんの枠を見てようかと思ってます」

 

「わかった。じゃあより一層頑張らないとね!」

 

 私も頑張らないといけない。すでにtoreddoさんとハルさんのモデレーター権限も貰っておいた。コメント欄を監視しつつ、応援。これが大会本番中の私の仕事だ。

 

 試合には勝てなくとも『この3人のチーム』を応援して良かった。

 

 そう視聴者に言わせることが、私の勝利条件だから。

 

 

❍✕△❑

 

 

 筑紫ちゃんとの通話から抜けて、私こと鐡ララは大会用チャンネルに入る。

 

「toreddoさん、ハルちゃん、今日はよろしくお願いしますね!」

 

「よろしくっす!楽しい大会にするっす」

 

「頑張る」

 

 2人とも気合が入っている。あとは本番を迎えるだけだ。

 

「ララさん、緊張してるっすか?」

 

「えっ?全然そんなことないよ」

 

 嘘である。先ほどから、マウスを握る手が定まらない。背筋には冷や汗が絶えず流れている。

 

「……嘘下手だね、ララちゃん」

 

「ハルちゃん?」

 

「ホントっすね、声震えてるっすよ?」

 

「えっ嘘!そんなに!?」

 

「カマかけただけ。でも隠し事はなし。私も緊張してる」

 

「引っかかったっすね。ちなみに俺も緊張してるっすよ」

 

「なにそれ。つまりチーム全員緊張でガチガチってこと?」

 

 思わず笑いが溢れる。私だけじゃなくtoreddoさんもハルちゃんも笑っている。自然と手の震えは止まっていた。

 

「さあ、一戦目行くっすよ!」

 

「うん。GLHF」

 

「練習の成果を出し切ろう!」

 

 大会が幕を開けた。

 

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