ゲームつよつよ系Vtuberはレティクルの向こうに何を見るのか【完結】   作:畑渚

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多忙につき予約投稿にて失礼


大会本番

「うわぁ!負けたっす!完敗っす!」

 

「ごめん私が敵に気づけなかったから」

 

「いや、ララちゃんは悪くない。索敵は私の仕事」

 

 遅延のついた配信を見ながら、私は労いのコメントを残しておく。

 

<<1戦目ナイスファイトでした。次も頑張ってください!>>

 

<筑紫ちゃんもよう見とる>

<コーチきた!これで勝つる!>

<ほんとナイファイだったわ>

 

 1戦目の戦績は守りに徹底した成果もあり8位くらい。しかしキルポイントは2つしか取れてない。作戦通りに行ったが、ただ作戦通りでは勝てないのが大会というものだ。

 実力、事前の準備……そしてそれを覆す本番の運の全てが必要である。

 

 

 数分経てば、すぐに2戦目が始まる。降下コースは問題なく、他のチームも特段と変わった動きはしていない。しかし……

 

「良いアーマーゲット!」

 

「装備はバッチリ」

 

「でもヤバいっすね、これだと最終安置はマップの反対側っすよ」

 

 toreddoさんの言う通り、運が必要な場面で1番最悪の安置を引いた。これだと、最初の収縮の時点でチームが篭る予定の建物は使えない。

 

 2戦目の結果は0キル最下位。奮闘はしていたが、周りにチームが多すぎた。事前練習以上に全てのチームが必死に生き残っている。

 

「ドンマイ!安置が悪かったね」

 

「くそっ、あそこで1人落とせてたら建物に飛び込めたっす」

 

「私もカバーが遅れた、ごめん」

 

 散々な結果でも、チームの雰囲気は良かった。早めにマッチから抜けて、作戦会議をしている。

 

「3戦目、筑紫コーチの指示とは違うことやりたいっす」

 

「え?」

 

「このチームのIGLはtoreddoさん。私はtoreddoさんの指示に従う」

 

「ハルちゃんまで。でもどういうこと?」

 

「今まで守りの姿勢だったっす。でも2戦した結果からして、このままじゃ俺ら勝てないっす。だから3戦目だけ、キルポイントを稼ぎたいっす」

 

 toreddoさんの言うとおりである。すでに総合1位との差はそれほど開いている。

 

「私たちにできるかな」

 

「もちろんできるっすよ。俺らこの1週間でファイトもめちゃめちゃ成長したじゃないっすか」

 

「確かに……、よしそれじゃあ、3戦目だけはその手で行こう!」

 

 チーム内での会議の結果だ。私は口出ししないでおく。ただし、コメント欄はそういかなかった。一気に論争が展開されたコメント欄で、私はひたすらに過激なものをBANし続けていた。

 

 

❍✕△❑

 

 

 結果から言えば、3〜4戦目はまあまあだった。順位も半分くらいで、キルポイントは合計7キル。ファイトは強かったが、ムーブが疎かになり、1チームも落とせずに逃げられてばかりの試合だった。

 

 コメント欄はお通夜である。それもそう。優勝不可能なポイント差が確定したからだ。toreddoさんの作戦は良かったが、それに着いていける2人ではなかった。

 

「もしもし、3人ともお疲れ様です」

 

「あっ筑紫ちゃん!」

 

 4戦目の結果待ちの最中、私は通話に入る。この大会では、試合の間のみコーチングが許されている。

 

「ごめんね。筑紫ちゃんの指示に逆らってまでキルとりに行こうとしたのに」

 

「いえ、気にしてないのでいいですよ。それに、勝つならばあのムーブは必要でしたし」

 

「それでも、ゴメン……」

 

「時間がないので謝罪をしたいなら後日聞きます。それより最終戦について話しましょう」

 

 必要なのは実力、事前の準備、そして運。

 

「降りる場所を変えましょう」

 

 その言葉に、ララちゃんまでも言葉を失っているようだった。

 

 

❍✕△❑

 

 

 実況歴5年。esportsに身を捧げて10年になろうとしている私は目を疑っていた。

 

「toreddoチーム、まさか降りる場所の変更だ!」

 

 個人的に付き合いのあるtoreddoの視点に画面が移る。たしかチームメイトの2人だけでなくコーチまでVtuberを付けた珍しいチームとの認識だった。

 

「その場所は物資が弱いがこの後一体どのように動くのか、他のチームの視点も見てみましょう」

 

 他のチームも最終戦ということでムーブが変わっている。キルポを狙って走り回るチーム、上位維持のために守りに徹するチーム。しかし、1番ムーブが変わったチームはtoreddoのいるチームだ。

 

「おっと、toreddoたちのいる建物に近づいてくるチームがいるが……何故だ!何故仕掛けない!?」

 

 しっかり漁ってきた強豪チームが、物資のないtoreddoたちの籠る建物の前で止まる。壁越しの索敵スキルでtoreddoたちを確認し、そして少し迷った素振りを見せながら引き返していった。

 

「他のチームも戦闘している!これはtoreddoチーム漁夫のチャンスだ!」

 

 そう実況してみるも、toreddoチームは動かない。

 

「事前練習カスタムで見せたように動きません。ひたすら耐える姿勢を見せているtoreddoチーム、この後はどう動くのか」

 

 非常に興味深いものの、他のチームの実況を挟む。キルムーブのチームもいるせいか、部隊数の減りがこれまでより早い。

 

「さあ、あっという間に半分のチームが消えました。現在総合1位のチームは1人生存、2位は壊滅し3位4位はキルポイントを積んで全員生存です、これはわからない展開になってきました!」

 

 toreddoのチームはまだ動かない。ひたすらに自分達の存在をアピールしながら籠り続けている。どこか1チームでも飛び込んで来たら死んでしまう状況。そこでずっと耐えている。

 

 そして、変化が訪れる。

 

「おっと?1位チームの残り1人がtoreddoたちの建物に侵入成功。これは……」

 

 ついに、toreddoチームが動いた

 

「殺しに行った!見事な連携だぁ!1位チーム壊滅、これは本格的に1位争いがわからなくなってきた!」

 

 1人分の物資を、toreddoチームが回収する。私は当然それをtoreddoが使うものだと思っていた。

 

「toreddoチームから1人飛び出した!朝蛇ハルだ!物資を全て朝蛇ハルに託している!」

 

 ウルトを使いながら索敵を駆使し、人数の減ってるチームに1人で仕掛ける。

 

「toreddoだけじゃない!このチームには朝蛇ハルもいる!しかし流石に1人では厳しいか!」

 

 2人生存のチームを1人落とすも、ギリギリの体力となる。このまま落とされるかと思った瞬間、朝蛇ハルの後方からシールドが投げられる。

 

「このチームは3人生存だ!ポータルで移動してきた2人がカバーに入り、見事に部隊を落とした!素晴らしい連携プレイだ!」

 

 あまりに見事な連携に、つい興奮しすぎてしまった。しかし、誰がこの絶望的状況を一介のVtuberが覆すと思っていたか。

 

「しかも移動した先は最終安置中!勝利の女神はtoreddoチームに微笑んでいるぞ!」

 

 他のチームが削り合いながら安置を目指す中、toreddoチームは落ち着いて対処していく。

 

「あと3部隊!まだtoreddoチームも残っている!おっとここで3人ともグレネードを手に持っているぞ!過去の局面まで温存していたのか!?」

 

 見事なグレネード裁きにより、1部隊が壊滅。もう1部隊もポジションを失った。

 

「流石の現役プロ!この局面でtoreddoを落とした!これで1on2!あの状況からtoreddoチームを3タテしてしまうのか!?」

 

 もう索敵スキルを撃つ暇すらないはずだった。しかし、朝蛇ハルは前に突っ込みながら索敵スキルを放った。数秒間、敵の位置が見える代わりに無理に放った為に朝蛇ハルも現役プロに撃ち取られる。

 

「あと1人!1on1!」

 

 その姿の見える数秒が、決め手となった。

 

「鐡ララ!シールドを前に投げてのファイトをプロに仕掛けていったぁ!完璧な位置、完璧なタイミングだ!まさか、まさか!!!勝った!現役プロに鐡の名を叩きつけた!」

 

 まるで相手を手玉に取るようなシールド際の攻防だった。しかもプロを相手にしてだ。

 

「予想を覆すとはこのこと!最終戦のチャンピオンはtoreddo、朝蛇ハル、鐡ララの3人だ!」

 

 

❍✕△❑

 

 

「やった!やったぁ!」

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!まじナイスっす2人ともぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「やったぁ……」

 

<ナイスチャンピオン!!!>

<感動したわ>

<全俺が泣いた>

<あんなん勝てんやん普通>

<全員ハンパないって>

 

 3人も、そしてコメント欄も大盛り上がりだった。それこそ、アンチコメントがすぐに流れて行くほどに。

 

<<おめでとうございます。このチームのコーチができて良かったです>>

 

<筑紫コーチ!>

<コーチもおつかれさま!>

<次は筑紫ちゃんも選手側期待してるで>

 

 こうして私がデビューしてから初の大きな大会が幕を閉じた。

 

 

 そして数日後……

 

 

「筑紫ちゃん!お邪魔しまーす!」

 

「まさか本当に来るとは」

 

 海外に行くのか?というほど大きなスーツケースを持って、ララちゃんがリアル私の家にやってきたのであった。

 

 

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