ゲームつよつよ系Vtuberはレティクルの向こうに何を見るのか【完結】 作:畑渚
あと'//,世界3位おめでとう。
「というわけでどうも〜!水城ゆずです。みんなこんゆず~!」
<こんゆず~>
<こんこん>
<キターーー!>
「はい、というわけで今日の夜から大会の練習があるよ。今回は色々あって後回しになってたチームの顔合わせをしたいと思いまーす。というわけで自己紹介よろしく!」
「ゆずちゃんの視聴者さん始めまして。VeGの女将こと秋月葵ですぅ。いつもはあんまりFPSやらないんやけど、今回はせっかくお誘いいただいたわけやし、頑張りますね」
「というわけでまずは葵ちゃん!FPS初心者と侮ることなかれ。ジャンルは違えどVeGの名に恥じぬゲーマーさんだよ。そしてもうひとり!」
「こんにちは、初めまして。筑紫みやと言います。チームを引っ張っていけるように頑張ります」
「筑紫ちゃんはね、めっちゃ強いの。私もチーム組むにあたってアーカイブを見たんだけど、今回の大会でもトップレベルの強さをしてるし、これは私たちなかなか良いチームかも?」
「他にもたくさん強い人居ますし、わかりませんよ」
今回の大会。私は一番トップ層のポイント換算で参加している。その結果、うちのチームは合計ポイントをほんの少しオーバーしており、その代償に私に制限が課せられている。ピックキャラを指定された中からしか選べないという制限だ。これは私から提案した制限であり、他の全チームに私自身が説明しに言って納得してもらったものでもある。といってもだいたいは全力の私と戦いたいという好戦的な相手が多かったが……。
「というわけでゲームのほうをやっていこうか!タイトルはこれ!」
その声に合わせて画面を切り替える。コメント欄はすこしざわついていた。
<ホラゲーで草>
<有識ニキ、三人のホラー耐性教えて>
<上から超つよ、激つよ、無味に等しい>
<つまりだれもビビらないホラゲー配信が始まるってこと……?>
このゲームはマルチプレイ可能な幽霊特定ゲームで、数々のアイテムを使いこなし、フィールドにいる幽霊の種類を当てて生きて帰ることが目的である。ちなみに水城ゆずはこのゲームの超高難易度コンテンツのソロ踏破者である。葵先輩と私は初見のゲームだが、お互いにホラーに対して忌避感はなかったのでこのゲームをやることになった。
「よし、それじゃあとりあえずウォーミングアップにいこうか」
「チュートリアルみたいなものはないん?」
「やってみたほうが早いから!大丈夫、そんなに難しくないから」
「でも私たち初心者ですよ」
「大丈夫!私がいる!」
随分と頼もしいが、実際にそのレベルの実力と知識がある。それに流行りのゲームではあるので、実は私は他の人の配信で少しだけ内容を知っている。だというのに……
「水城さん!?」
「あかん、これどうしようか」
水城さんがまさかの最初の襲撃で死亡。このゲームの性質上、死んだ人はボイチャからも切断されるため、フィールドには初心者二人が取り残された。
「どうしましょう先輩」
「うーん、とりあえず筑紫ちゃんはコレやってもらっていい?私トラックから別の機器もってくるわぁ」
「わかりました~」
<あっ単独行動>
<キャリー枠さん即4で草>
<そりゃ(ベテランとはいえ初撃避けれなかったら)そうよ>
「まさか水城さんが最初に脱落するとは思ってなかったです」
<単独行動!>
<でも筑紫ちゃんも少し知ってる感じか>
<なんか作業ゲー見てる気分だ>
「えっと、ここらへんでしたよね。それでここでレーダーを起動して……」
キャラが手に持つレーダーが、起動した瞬間にけたたましく鳴り響く。
「あっ」
二人目の犠牲者が、その場に転がった。
「アハハハ筑紫ちゃん!ようこそこちら側へ」
「いやぁ、死んじゃいました。葵先輩だけでできますかね……?」
「無理じゃないかなぁ。だってこれ多分……うんそうだね。あの幽霊だから無理だねぇ」
「何か条件が?」
「あの幽霊は凶暴だからさ。単独行動してると狩られるんだよねぇ」
なるほど、どおりでさっきから単独行動について言及するコメントが多いわけだ。確かに残り1人の葵先輩は、今後ずっと襲われるリスクを考えて行動しないといけない。
「しかし随分と難しいゲームですね。これで一番簡単な難易度なんて」
「あー、それね」
「えっ?」
「嘘なんだよね」
しばらく言葉が出なかった。というかなんと反応すればいいのか考えつくまで時間がかかった。
「実は一番難しい難易度なんだよね」
「はい?」
「しかもマップも激ムズのやつ」
「なるほどなるほど、そういうことですか」
どうりで難しく感じるわけだ。初心者二人でどうこうできる難易度ではない。
「二人のコメント欄がネタバレをあまりしないでくれて助かったよ」
「まあ、そもそも難易度が高すぎてコメントを細かく追う余裕すらなかったですけどね」
「アレ?もしかして怒ってる?」
「いやいや、まさか。怒ってるわけないじゃないですか」
「うーん、やっぱりなんか怒ってるよね?」
「いえいえ。ただ、この恨みをどうやって返そうか考えてるだけですよ」
「やっぱり怒ってるじゃん!」
「なんて、嘘ですよ。仕返しです」
「あーもう、こんな人だとは思わなかったな」
「こんな?」
「ん?ああ、意外と話しやすいなって。ガチガチのゲーマーさんって聞いてたしコラボ配信も少ないから会話が続くか不安でさ」
「事前情報だけじゃ計り知れないってことですかね」
その気持ちはわかる。私だって水城さんとのチームが決まったときは不安だった。大会である以上勝ちにはこだわりたいが、大御所が相手となっては気を使わなければいけないかもしれないからだ。
しかし、この事前のコラボ配信を経て、そんな遠慮はむしろ失礼に値することがわかった。これなら、貪欲に勝ちを狙いに行ける。その過程の厳しい練習ですらも、水城さんなら楽しい配信にしてくれるだろう。
いや、もしかするとこのドッキリ企画こそが、私にそう思わせるための水城さんなりの作戦だった可能性も……いや、さすがに考えすぎか。
「あっ、葵ちゃんしんじゃうねぇ」
「詰みですね」
「わー、しんでしもうたわ」
「おかえり~」
「おかえりなさい、先輩」
ゲームオーバーになったことで強制的にロビーに戻され、ボイスチャットが再接続される。
「よし、じゃあウォーミングアップは終わったと言うことで次はこのマップ行こうか!」
「さすがにさっきのより簡単なやつよな?」
「……」
「あの、水城さん。コメント欄が『鬼畜DLCマップ』の文字で埋まってるんですけど」
「大丈夫大丈夫!私たちに敵なしだよ!」
この後無茶苦茶、幽霊退治した。