ゲームつよつよ系Vtuberはレティクルの向こうに何を見るのか【完結】   作:畑渚

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個性

[ひこうにん]VeGについて語りたい#569

 

30:名無しのVeG民

 一日が終了したわけですが……

 

31:名無しのVeG民

 VeG民冷えてるか~?

 

32:名無しのVeG民

 そりゃひっえ冷えよ

 

33:名無しのVeG民

 ララちゃんとこ以外はねぇ

 

34:名無しのVeG民

 真柴姉妹が……内藤についていけないとは

 

35:名無しのVeG民

 辞書作ってこないと会話が成立しないからな

 

36:名無しのVeG民

 内藤と普通に会話してくれる女将が恋しい

 

37:名無しのVeG民

 それより女将のチームでしょ

 

38:名無しのVeG民

 バランスブレイカー二人の化学反応よ

 

39:名無しのVeG民

 女将がショートバレルショットガン2丁で走ってたところまではみた

 

40:名無しのVeG民

 それ初戦やんけ

 

41:名無しのVeG民

 筑紫氏も苦戦してんねぇ

 

42:名無しのVeG民

 そりゃあれだけ使用キャラがピーキーだと流石にね

 

43:名無しのVeG民

 なんか拍子抜けしたわ

 てっきり筑紫が破壊して回る大会になるのかと思った

 

44:名無しのVeG民

 ずっと0キルだったもんな

 女将と水城ゆずがキルできてるという現実

 

45:名無しのVeG民

 そんなに酷いんだ

 

46:名無しのVeG民

 今までの、全部チートだった説

 

47:名無しのVeG民

 ありえる

 

48:名無しのVeG民

 体調でも悪かったんかな?

 

49:名無しのVeG民

 >>46 そういうのは裏でやろうな?

 

50:名無しのVeG民

 >>49 裏でも表でも変わらんだろ

 

51:名無しのVeG民

 はいはい加熱すんなよ~

 

52:名無しのVeG民

 今日は暑いなぁ

 

53:名無しのVeG民

 ここのスレ民は暑かったり冷えてたり大変やねぇ

 

54:名無しのVeG民

 >>53 お前も同類定期

 

 

❍✕△❑

 

 

「ふわぁ~っ」

 

 大きくあくびをしてから時計を見ると、もう朝だった。カーテンの隙間からは日差しが差し込んでおり、自分が時間を忘れてゲームに熱中していたことを思い出す。

 

「だめですね。まったく」

 

 こういうことをするな、と家族から口酸っぱく言われていたことを思い出す。この熱中癖があるから、いろいろと失ってきたというのに。

 

「えっと、換気でもして、それから朝ごはんをたべて……」

 

 やることをリストアップしながら椅子から立ち上がった瞬間、グラリと視界が揺れる。

 

 あっマズイ……

 

 そう思ったときには、床に倒れ込んでしまった。

 そのまましばらく眼を瞑り、そしてゴロンと寝返りを打つ。意識がはっきりしてきたあたりで、スマホを操作して連絡をとる。今日はララちゃんと出かける予定だったが、さすがにこの体調で外に出る勇気はない。

 

 予定を断る謝罪文を送ってから、ゆっくりと起き上がる。今度はぐらつくことなく立つことができた。

 とりあえずはカロリーを取ろう。思えば昨日の昼から何も口にしてなかった。

 

 

❍✕△❑

 

 

『筑紫ちゃん本当に大丈夫なの?』

 

「ええ、少し脳を使いすぎただけですから」

 

 通話越しに心配の声を上げるのは、ララちゃんだ。急な私の予定キャンセルに驚いて、電話をかけてきてくれたのだ。

 

『うーん、でも心配だな』

 

「大丈夫ですよ。慣れてますし」

 

『よし、わかった!』

 

 その声と同時に、玄関の鍵がガチャリと開く音がした。

 

「私が看病してあげよう!」

 

 そこには、両手に荷物を抱えたララちゃんが仁王立ちをしていた。よくよく見れば両手に持っているのは近くのスーパーのレジ袋だし、中身もスポドリやゼリーなど様々だ。きっと私の体調が悪いと聞いた瞬間に飛び出すように買いに行ったのだろう。

 

「えっと、ご迷惑をおかけします?」

 

「もうほんと、迷惑だよ!心配させないでよね」

 

 口でぷんすかなどと言いながら袋から食べ物を出すララちゃんは、どこか嬉しそうだ。

 

「ご飯の管理くらい自分でしてよね~!」

 

「すみません、気をつけてたんですけどね」

 

「……やっぱり昨日のことを引きずってるの?」

 

 その問いには、つい沈黙を返してしまった。

 

「まあ気持ちはわかるよ。筑紫ちゃんほどじゃないけど、私のチームも成績は良くなかったし」

 

「ララちゃんのところは10位くらいでしたよね」

 

「うん。でももっと上を狙えるはずだった。コミュニケーションエラーが多すぎて……」

 

「大丈夫ですよ。ララちゃんのコミュニケーション力なら絶対強くなれます」

 

「ありがとう。それで、筑紫ちゃんの方はどうなの?」

 

「私ですか?私はキャラを研究したところなので、今晩の練習では私が――」

 

「違うよ」

 

 肩をガシリと掴まれてララちゃんの方を向く。ララちゃんの表情は、先程までとは打って変わって悲しそうだった。

 

「筑紫ちゃんのチームは?って聞きたいんだよ」

 

「チーム、ですか?」

 

「そうだよ。だってチームメイトが二人とも、FPSメインじゃないゲーマーでしょ?筑紫ちゃんは初めての経験なんじゃないかって」

 

「確かにそうですね。いや……でも……」

 

「もう、筑紫ちゃんらしくないよ?」

 

「私らしく、ですか?」

 

「そう!筑紫ちゃんはもっとこう、自分と敵の分析をきっちりやって、周りが何と言おうと自信をもって自分の作戦を遂行するタイプじゃん?」

 

「自分の作戦……」

 

 寝不足と体調不良で思考にかかっていたモヤが、スッと晴れた気がした。

 

「ありがとうございます、ララちゃん。おかげで今しなければいけないことがわかりました」

 

「そ、そう?……もしかして敵に塩を送っちゃったかな」

 

「そうと決まれば、二人のプレイを見直さないと!」

 

「ちょーっと待った!」

 

「……?ララちゃん?」

 

「体調不良で倒れるんだから、今日これ以上無理するのは許さないよ!」

 

「無理じゃありません。むしろコンディションが良い気すらします!」

 

「とぉっ!」

 

 ぐっと力をかけられ、私は抵抗できずにベッドに倒れ込む。体調は本調子とは言えないみたいだ。

 

「とりあえず睡眠!私、筑紫ちゃん寝るまで一生ここで圧かけるからね!?」

 

「それはそれで寝れないのでは……?」

 

 しかし、意外にも言われるがままに目を瞑れば、すぐに睡魔が襲ってきたのだった。

 

 

❍✕△❑

 

 

 目を覚ませば、すでに外は暗くなり始めていた。ふとテーブルを見ると、可愛らしい文字で『ちゃんとご飯食べてね。今夜もGLHF』と書き置きがされていた。

 

「さて、と」

 

 やることは盛りだくさんだが、シンプルだ。

 パソコンを起動し、動画配信サイトを開く。ウィンドウを分割して、3つの配信アーカイブを同時に開く。それぞれ水城さん、葵先輩、そして私のものだ。

 

「ああ、そうですよね。私らしくない」

 

 再生ボタンを押せば、昨日の敗因はすぐに判明した。

 

 昨晩の私は、こだわり過ぎていた。キャラクターの性能に呑まれて、敵どころか味方すらも見失ってしまっている。

 水城さんは常に私より遅れた位置にいて、葵先輩は逆に私の真後ろをキープしている。葵先輩はというと、自分の物資漁りをおろそかにしてまで私に着いてきており、戦闘ではその物資の弱さもあってダメージが出ていない。

 

「私が前衛じゃないほうが良いんですかね……でもそれだと強いチームに当たれないですし……」

 

 悩みどころだ。私は顎に手を当てながら、ふと葵先輩の画面を見みる。

 

「ん……?これは」

 

 それは、私が警戒できていなかった場所をしきりに見るシーンだった。

 実際その後、葵先輩が見ている方向から来た敵に対処しきれずにそのマッチで敗退したことが気にかかる。

 

「えっと……確か葵先輩の連絡先は……」

 

 チャットサービスを起動してみると、葵先輩はちょうどオンライン表記になっていた。そして追加情報として、現在ちょうどゲームを起動中のようだ。もしやと確認してみると、配信で個人練習しているところのようだ。

 

『えっと、ここって何て名前のとこや?』

 

<イーストタウンやね>

<物資うまいぞぉ>

<まあチームで降りるには激戦区すぎるけど>

 

『そうやね、あー負けや。武器がまだ把握しきれてへんなぁ』

 

 コメント欄と会話しながら葵先輩はゲーム理解を深めているところらしかった。

 普段はもっと複雑なゲームを好んでいるからだろうか。葵先輩の学習速度は目を見張るものがあった。何より、バトロワで重要な『マップに道順を引く』という能力が高い。

 

 これはもしかすると、もしかするかもしれない。

 

『あー、移動しきれへんかったなぁ。もう少し早く、いやでもそうすると他のチームにあたっとったやろうし。このゲーム難しいわ』

 

<成長意欲◎>

<移動の意識が偉すぎる>

<エイムさえあれば……>

 

『エイムはどうしようもないしなぁ。せめて別のところで貢献せんと』

 

 そう言いながらも、葵先輩は常に『視聴者の一人である私が考える、道順の最適解』で動き続けていた。

 そういえば葵先輩は、リアルタイムストラテジーというゲームジャンルが得意だった。先輩からしてみれば、たかが20チームの動きなど、片手間に把握しきれるのかもしれない。

 

 

 もしこの仮定が合っていたとしたら、先輩は私以上にバトロワのIGLに向いていると言える。

 

 

「もしそうならば……ガラリと構成を変えることができそうですよね……」

 

 その後、変な笑みを浮かべながら配信を見ている姿を兄さんに見つかり恥をかいたのは、ここだけの話である。

 

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