はー、めっちゃテンションさがるわー。成功しても失敗しても自分死ぬミッションって。いや、テンションどころの話じゃないと思うけど
はい今のわたしー、ガイア封印ミッションのまっさいちゅう。
せっかくアレントとかジールパドンとか、古代エンジュール人の遺産が精霊石やべーからそっとしとけってアドバイス残してくれたのに、ウチの連中バカばっか。予定調和で精霊石の力を使い過ぎて、ガイアを叩き起こしちゃったワケ。あっという間に国中ガイアに侵されてあたり一面石だらけ。
もーこーなってしまうと古文書の言いつけ通り、双子の光翼人が命と引き換えにガイアのエネルギー源になってる精霊石を砕くしかないんだけど、それって光翼人的にはどうあがいても絶望ルートなわけで。
我が妹ながらなんなんだよお前。ふざけんなよ。死にたくなくて逃げるんならまだしも無駄死にとはどういう了見だ! 私に対する嫌がらせか!? どーすんだよ!? 光翼人が1人だけでガイアを封印できたなんて記録どこにも残ってないんだぞ!
(諦メタラ? モウ実質試合終了ダヨ?)
触手を蹴散らしながら飛び回っていると、ガイアの声が直接脳内に響いてきた。コイツ……! 化け物のくせに、人間様を煽りやがって。自慢じゃないけど、私は煽り耐性ゼロなんだよぉぉ!!
「誰が諦めるかっつーの! 本当に最後の最後まではな!! 歴代の光翼人だって、死亡確定の出来レースだったのにガイアを封印してきたんだぞ! そりゃ私だって死ぬのは嫌だよ! 死にたくないよ! でもね! 誰かの為に役に立って死ねるって、そういう死に方に誇りをくすぐられたりもするんだよ!!」
(誰ノ役ニモタタヌ。我ヲ封印スルノニ成功シタトテ、我ガ呪イハ消エヌ。無事ニ生マレル子供ハ少ナク、獣化ノ疫病カラモ逃レラレヌ。オマエタチノ文明社会ガ再建スルコトハナイ。我ガ牙カラ逃レタ僅カバカリノエンジュール人モ、結局クタバッタゾ?)
「だから何じゃい! 生き残ったエンジュール人はみーんな未来に絶望して自殺したのか? そうじゃないだろ!? 地に這いつくばり泥水をすすってでも、生きられる内は精一杯生きようとした人もいたんだろ!? そういう人達が後世の私達に教訓を残してくれたんだろ!」
役に立たなかったけどな! 私達がバカだったせいで!
ガイアを生み出したエンジュール人もバカだけど、そのバカの警告を無視した私達は輪をかけてバカだよ! もうこうなったらバカらしく、最後の最後まで往生際悪くのたうち回って手こずらせてやるんだから! 覚悟なさい、ガイア!
(その意気や良し。私の力、貴方にお貸ししましょう)
あれ。なに今の声。ガイアのじゃない。幻聴?
(ク……、マタ貴様カ。我ガ眷属の面汚シメ……)
(訂正させてもらいましょうか。
幻聴じゃない、なんかガイアと言い合ってる。
あ、なんか地平線の向こうから、未確認飛行物体が飛んでくる。UFO? いや、凄いスピードでどんどん近づいてきて……。人っぽい形してるのが見えてきたよ。まさか! 過去の文献にもない第3の光翼人!?
本来、この世に光翼人は2人しか存在しない。しかし、己の意に沿わずに生えた翼の為に、光翼人として祭り上げられ、そして命を落としていった歴代の光翼人達の血と汗と涙がイレギュラーを生み出しちゃった系!? それでそれで、武運
ちょっとそういう主人公に都合のいい展開。安直で好みじゃなかったけど、いざ自分が当事者になるとこれほど燃える展開はないね! 何せ私の命がかかってるもんね!
で、ただ下がりだったテンションがガイアの煽りと思わぬ助け船のおかげでめっちゃ上がって、近づいてくる光翼人No,3を凝視したんだけど。
……なんかアレ、違くない?
いや、確かに光翼人っぽいのが空飛んでるんだけど、なんかバイザーみたいの付けてて顔分からないし。いや、それはいいか。空飛んでるし。バードストライク対策は必要だよね!
だけど翼が妙に
そいつはそのままガイアの頭上を通過したと思ったら、物凄い風圧がガイアを襲って、ガイアはひるんだの。
あー、このもの凄い音ってあの見たことない風系魔法の副作用みたいなものなんだ。と私は直観した。
そんな私に光翼人ぽかったものが近づく。足元に火を吹かしながら。砂埃すごい。できればもーすこし離れたところに着地してからこっち来てほしかったな。
「光翼人ですね?」
綺麗なソプラノ。女の子かな?
「そうだよ、貴方は?」
「名乗るほどのものではありません、ガイアを封じる手助けにきました」
そう言って、光翼人ぽかったものがバイザーを外したの。そしたらその素顔は……。
やだ! 超絶美少女じゃん!?
瞳はルビーのように透き通った赤色で、薄銀色の髪をさらさらとたなびかせて、どう厳しく採点しても10代後半にしか見えないのに胸おっきいし腰のくびれも凄い。線は細いのに、女の子特有の部位だけは豊満なのが服の上からでも分かるアンバランスな体つき。これがトランジスタグラマーって奴か。ちきしょう! 何なんだよその未使用極美品みたいな顔と体はよぅ! ここんことガイアとの絶望的な戦いでロクに飲み食いもしてなくて、血と汗と涙と泥と砂にまみれて訳ありジャンク品みたいになってる私の顔と体にケンカ売ってんのか!?あと最後の砂はあんたのせいなんだからね!
「……戦闘継続に支障はないようですが、不快感で気が散るというならさっぱりさせましょう」
そう言って彼女が目の前で手をかざすと、血とあ(略)が綺麗さっぱり消え失せたの。いや、消え失せたなんてレベルじゃないねこれは。身体全体が、化粧水と乳液で
「ガイアとの戦いは長丁場になります。ここはしばらく私に任せて、貴方は休んでいてください」
「う、うん。ありがと……」
……で。訳ありジャンク品(クリーニング済)に代わってガイアとの戦端を開いた未使用極美品の戦いぶりは……いや、その、うん。凄いよ!? 凄いんだよ!? チートだよ!? でもね、絵面がひどいんだよ。
両手から電光発するのはいいけど、目からビーム出すし、口から炎吐いてるし。人間やめてるわーこの人。足から火を噴いてる時点で人間じゃないけど。
あまりにも超絶美少女なもんだから、同性なのに不覚にも欲情してしまったけど、そんなムラムラした気分も一気に冷めるような光景だわ。
あ、今度は両手を切り離してロケットパンチだ。と思ったら離れた両手がガイアの背後に回って飛び回りながら電光放ってる。ファン〇ル?
「グ……ガ……」
おー、全方位攻撃でガイアの動きが止まったよ。
もうあいつ一人でいいんじゃないかな状態の私は、手持ち無沙汰なのであのファン〇ルみたいな奴を操作するコントローラーとか貸してくれないかなーと思ったりしてます。暇だ―。
あっ、そうだ! 西エレンシア大陸にもガイアの触手が出張ってるみたいだし、ここはあのチートに任せて私はそっちの退治に行けばいいじゃない!
ナイスアイディアをひらめいた私は無言で飛び立つ。だって彼女はただいま戦闘中。気を散らしちゃいけないもんね。私は気遣いのできる女なの。
やってきました西エレンシア大陸。さっそくガイアの触手がお出迎え。バリヤー貼って蹴散らしていくけど思ったより数が多い。やだなー、バリヤー貼るのだって体力使うのに。
私はバリヤーを解いて、触手が届かない高空にいったん退避。情けないけど、こんなところで死ぬわけにはいかない。
さてどうしたものか。高空で休み休み触手を始末していくという方法が一番安全で堅実だけど、それだとすごい勢いで世界各地に広がっていくガイアの増殖を止められない。かといって無理したら私が犬死するだけで……。どうする!? どうすればいい!? 考えろ! 私の灰色の脳みそ!
思いついた!(この間約0.1秒)
要はこれ以上ガイアの触手が世界各地に広がらないようにすれば、いくら増殖しようが当座の問題は解決するわけで、増えた触手はそれからじっくりコトコトまとめて料理すればいいじゃない!
Qじゃあ触手が世界各地に広がらないようにするには?
A囲いを作ってその中に閉じ込めればいい!
冴えてるぞ、今日の私!
あの触手全部を封じる囲いとなると、それこそ東エレンシア大陸全部と西エレンシア大陸の東半分を覆うメッチャ長大な壁にしなくちゃいけないけど、そこは私の光翼人の力で何とかなる!
では早速下準備。土木工事はじめ! 大学で、土木工学を学んだ私の真価を見せてやる!!
「完成だ!!」
私は喜びと共に高空に舞い上がり、出来具合を確認する。
北の地平線の果てから南の水平線の向こうまで、延々続く壁、壁、壁……。長さもヤバいけど高さもヤバい。どれくらいヤバいかというと、壁のてっぺんで暮らしてたら紫外線浴び過ぎて確実に早死にするくらいののヤバい高さ。
いやーこんなものを作り上げちゃう自分の才能が怖いわー。ガイアを封印してお役御免になっても世界遺産に確実に選ばれるレベルだわー。
あっそうだ! ちゃんと製作者を明記しておかないと! これだけの大仕事を果たした功績を誰かに横取りされちゃたまらん。まー誰かと言ってもこんなん作れるの光翼人くらいだろうけど。
これで私の名前が後世に残るとワクワクしながらサイン入れようとすると。
「そこの光翼人……。休んでいろとは言いましたが、こんなところで何を遊んでいるのですか」
背中に突き刺さるお声。
振り返ったそこには、端正なお顔を怒りに歪ませたチートが。
「あ、あれー? もうガイア倒しちゃったの?」
ちょっと早すぎませんかね。まだガイアの触手は一つも壁に到達してないよ?
「倒してなどいません。外側からいくらドンパチやったところでガイアに決定的なダメージは与えられないのです。かといって、エネルギー源であるガイア体内の精霊石を砕こうにも、簡単に異物の侵入を許すほどガイアも甘くありません。したがって、まずガイアにとって極上の餌である光翼人を目前にちらつかせ、見境なく食しようと大口を開けた瞬間、一気に体内に突入。しかる後、コアにある精霊石を砕くという手順を踏まなくてはいけないのです」
ほー。貴方って物知りだねえ
「その準備が整ったのであなたに声をかけようと思ったらこのざまです。この火急の時に雲隠れして積み木遊びに興じるとは。代々の光翼人の、お高くとまった姿勢は常々気に入りませんでしたが、それでも命を捨てて世界を救おうとする姿勢だけは見上げたものだったのに。見損ないましたよ!」
私の世界遺産を積み木呼ばわりとは、お前ちょと表出ろ。
とは言えないのが辛いとこだなー。そんな事してもこのチートにシバかれるのが目に見えてるもん。
「遊んでたんじゃないよ! 私はガイアを倒す方法なんて知らなかったし、貴方一人でガイア本体倒せそうな勢いだったからこっちの別動隊に対処しようと思っっただけだもん!」
なので私は子供の武器・泣き落としで対抗する。泣くよ泣くよ? わんわん泣いちゃうよー? さあさあどうでるチート。
「……こんな精神年齢ガキンチョを光翼人に選ぶとは、精霊どもは全く人を見る目が無いのですね。もう一人の無能は早々と犬死しているし……」
現実は非情であった。冷ややかな視線に、心まで凍り付きそう。
ちょっと、塩すぎませんかね。泣いてる女の子にそれですかあ!?
「でもでも! 私は私なりに考えてガイアがこれ以上世界を侵さないように天まで届く防壁を築いたんだよ! どうよ!?」
私は得意満面で壁の方に振り返る。人類が誕生してより女は星の数こそあれど、ここまで超ど級のDIY系女子は後にも先にも私だけっ!!
「……なるほど。確かに、これを登って壁の向こう側に行くのはガイアといえど
「でしょ!?」
「……ですが地中から突破されたらどうするのです?」
「……」
「……」
「……そこはまあ、突破された時に考えよう!」
「今考えなさい!」
また怒髪天を衝くチート。そんなに怒んないでよー。突貫工事だったんだし、DIYだもん。完璧なものなんてできないよー。
「……私だって、できる限りの事はやったんだもん」
「……! そう、ですね。ごめんなさい……、私も少し言い過ぎました」
あれ、なんだか急にしおらしくなったよ。なんか「できる限り」ってワードを出したあたりから急に表情が曇ったけど、チートもやるだけやったけどうまくいかなかった事ってあるのかな?
「……とにかく、いつまでも油を売ってる暇はありませんよ。私がガイア本体を止めて時間稼ぎするにも限度というものがあります。最期は貴方の手で封印してもらわねば」
あー、やっぱりガイアの封印は私じゃなきゃダメなんだ。
「体内まで入り込めたら、後はあなたが全部やってくれるのかなーと期待してたんだけど」
「あいにく、私にそこまでの力はありません。ガイアの眷属と化した異形どもの相手ならば容易いことですが、ガイアのエネルギー源である精霊石を砕く力は私にはない」
そうかなあ。純粋な戦闘力では私なんかよりよっぽど強そうなんだけど……。
「ところで時間稼ぎといえば、あなたまでこっち来ちゃってガイア本体大丈夫なの?」
「少しの間なら問題ありません。端末が相手をしています」
そう言う彼女の両手は外れたままだった。きっと今こうしている間にもあのロケットパンチ改めファン〇ルはガイアの頭上を飛び回っているんだろう。
それにしても。端末、端末かあ……。
「本体がこんなに遠くにいるのに操作できるものなんだ?」
「それは心配いりません。世界各地に基地局を作ってあって、中継リレーで電波はこの星の裏側にも届きます。基地局もガイアに破壊されるのを前提にした配備になっているのでバックアップ体勢は完璧です」
お前は何を言ってるんだ。
でもまあとにかく、本体からどんだけ離れていようと端末を自由自在に動かせるっぽいのは分かったよ。
「でもあんなにすばしっこく動くの、よく操作しきれるね」
「そうでもないです。初代の頃は基地局なんてなかったので。処理速度の限界もあって片腕だけ有線式で分離運用するのがやっとでした。先代までの私が地道に改良を重ねてくれたおかげで、18代目の私は両腕両足を無線式で完全同時分離運用できるようになったのです」
またわけわかんない事いってるこのチート。これが不思議系か。私そっちは好みじゃないんだけど。いやもー分かっちゃったけど。
「あなたってホント人間じゃないんだねー。私達の世界でいうロボットみたいなもん?」
「人間でもロボットでもありません。その中間といったところですか」
あーなるほど、サイボーグなんだ。確かにこーしてみる分には両手が無い以外はどこにでもいないレベルだけど美少女だし。目からビーム放ったり口から炎吐いてるの見たときは流石に引いたけど、やっぱこうして間近で大人しくしてるの見てるとムラムラくるし。でもやっぱり人間じゃないんだね。
「もったいないねー。男を選り取り見取り、食い放題できそうな体付きしてるのに」
「一応ですが、人間との生殖行為も可能ですよ」
「マジでっ!? ……あれ? 一応て?」
「本来は不要な機能なのですが、偉大なるお父さま達が、ガイアを滅した後は人間社会に溶け込んで、人並みの幸せな生活を送れるようにと取り付けてくれたのです。ですが何ぶん一度も使ったことがないもので。理論上は完璧に設計されていますが、本番で本当に不具合なく作動するかと聞かれても保証しようが……」
あんた処女か。いやサイボーグに処女もクソもないけど。ホントに未使用極美品だったんだね。
「あ。貴方が美少女なのってもしかして」
「お察しの通りです。配偶者選びには困らぬようにと、お父さま達により組み込まれた生体細胞内のナノマシンがその時代の流行りを分析し、最適化した容姿を形成してくれるのです。殿方にしても、こと容姿に限れば相手が醜女よりは美女の方がいいでしょう? ……フフッ❤」
いや、そこまで察してはいなかったんだけど。ブスより美女の方がいいのは否定しないけど。ていうかそこで女まで悶々とさせる流し目してくるの禁止!!
「そんな色っぽい仕草やめてよ! 抑えが効かなくなるじゃない! なんなのアンタ! 私に襲われたいの!?」
「生憎、私にそちらの気はありません。……まあ仮にあったとしても、夫婦の契りを結ぶ相手が光翼人なんて願い下げですが」
ええー!? 私なんかわるい事した!? すっごく憎々しげな顔になっちゃったけど!? いや、ガイア本体の始末押し付けたり、心のなかでやーい処女、処女が許されるのは小学生までだよねーって思ったりしたけどさ!*1
「……もう一刻の猶予もないのに喋り過ぎましたね。すぐに東エレンシア大陸に戻りますよ。重ねて言っておきますが、光翼人が一人だけでもガイアを封印できるようにするところまでもっていくのが私の限界です。精霊石を砕く事まではできません。覚悟はいいですね」
「う、うん」
そして私たちはフルスピードで内海を渡っていく。その最中、私……というか、私の翼を見る彼女の視線は、心底憎たらしいものを見ているようなものだったのです まる
そんなこんなでガイア戦も佳境。ファンネルが触手を引きつけている隙にガイアの体内に潜り込んだら、いきなり虹色に光り輝く水晶体に出くわしました。それを見てチートが目を丸くしてる。
「ほう……。これは驚きましたね。まだここの基地局が作動していたとは」
「え? これがあのファン〇ルを遠隔操作するための? 何でこんなとこにあるの?」
「先代までの私もこうしてガイアの体内に潜り込んで、光翼人と共に戦った事が何度かあるのです。これはその時の名残のようなもので、とっくに機能不全に陥ったとばかり思っていたのですが……」
そう言って、チートは何やら水晶体を弄ってる。
「……うん、これでよし。 経年劣化による多少の
「長スギィ!!」
こんな長居してたら消化されそうなとこに、そんだけほったらかしにしても不具合なく動けるってどんだけよ!?
「フッ……。こんなものは偉大なるお父さま達の編み出した超科学の一端にすぎません。お父さま達は、精霊石の力を借りずともこれだけのものを作る力があったのです。それだけの科学力があれば、精霊石を調べて自前の精霊石を作ってみたくなるのも無理からぬ流れでしょうに……。あの分からず屋の、センター試験レベルの問題すらロクに解けない私立文系光翼人め……」
なんかブツブツ言ってる。
「光翼人は、理系であるべきです!!」
「……なんでもいいけど、今の大声で敵さんが大挙してやってきたんだけど。これ倒せるんだよね!?」
「フン。無抵抗の基地局一つ満足に破壊できないような連中に私が遅れを取るとでも? 」
張り合う相手がおかしいよ。化け物達もこの基地局は放置してただけじゃないの?
「格下だからって油断してると思わぬチョンボやらかすかもよー」
「貴方こそ気を引き締めてかかるのですね。ザコの始末など私にとっては赤子の手をひねるようなものですが、化け物とはいえしばらくスプラッタな光景を見続ける事になりますから」
チートの、実力は、本物でした。
いたるところにうじゃうじゃしてる紫色の化け物をチートは一撃で一掃して。
途中で道塞いでた紫色の化け物の親玉みたいのもチートが一撃で一掃して。
ガイアのコアみたいなのはチートもさすがに多少苦戦……。というより、なにか懐かしい相手との対戦に色々思うところがあるみたいな、そんなわざと決着つけるの長引かせてるような感じだった。私の勘だけど。
でも結局コアも一人で倒しちゃったよこのチート。私やっぱり要らない子?
「……ここからがあなたしかできない仕事です」
「は、はひっ!」
思わず直立不動で返事しちゃった! だってこのチートめっちゃ怖いんだもん!
R-18(バイオレンス的な意味で)な光景がなるべく視界に入らないようにチートの背中にくっついてようやく一息ついたと思って顔みたら、顔面返り血まみれなのに拭おうともしないどころか薄ら笑い浮かべてるのよ。化け物達よりアンタの方が怖いよ!
私は逃げるように、ガイアのコアがあったフロアの更に奥に進む。そこに精霊石がありました。
「別に怖気づいたわけじゃないけどさ。本当に貴方の力でも壊せないのコレ?」
「試してみますか?」
そう言ってチートは、ガニ股になって精霊石を凝視して、口をあんぐり大きく開けて、両手を精霊石に向けて。
あ、これ見ない方がいいやつだ。
「オールウェポン・ファイア!!」
……チートが何をしたか、あえて語るまい。
ただ驚かされたのは、紫色の化け物達を一撃でまとめて一掃して、ガイアコアにもそれなりにダメージ通ってたぽいチートの攻撃を、それも全力全開っぽい攻撃を喰らったはずの精霊石が、傷一つついていない事だった。
「うっそ……」
「悔しいですが、私の力と精霊石の相性は最悪です。まるでダメージが通りません」
「ゴーストタイプに、はかいこうせんブッ放つようなもんかー」
「貴方の出番です。辞世の句があれば聞きますよ?」
分かりやすい例えを出したのに、華麗にスルーされた。私また泣いちゃうよ?
「この精霊石ってさ、私が砕いてもガイアは機能停止するだけで、完全に滅ぼすことはできないんだよね」
「……その通りです。砕かれた精霊石は7つに分裂し、世界各地に散らばる。そして精霊石の力に魅入られた人間が精霊石を集めてまたガイアを復活させる。この世界はその繰り返しです」
どこか遠い目をして、まるで実際に見てきたように苦々しい顔でつぶやくチート。まーそりゃサイボーグだから人間より長生きしてるんだろうけど
「普通の人間より長生きできるといっても、私も不死ではありません。ナノマシンによる生体細胞のメンテナンスにも限度があるし、劣化によるパフォーマンス低下が許容ラインを超えれば任務の遂行にも支障をきたします。そうなれば私も永遠の眠りにつき、次代の私がそれまでの私の記憶と任務を受け継ぐ。歴代の私はそうやって、ガイアを完全に滅するため精霊石をこの世から完全に消滅させる方法について研究を続けてきました。しかし、未だに目途が立ちません」
私はチートの悔しそうな横顔を見た。
ただの人間ではどれだけ鍛えようと届かない高みにある力を持ちながら。
ただの人間なら代を経るごとに薄れていきそうな目的意識をしっかりと継承しながら。
それでもガイアを滅するという目的はかなわず、次代に望みを託して一生を終える。そんな生き方の記憶を持ったまま、延々と同じ生を繰り返すのは、ガイアとの戦いで死ぬことが定められた光翼人より、ある意味残酷な人生じゃあないのか。
「ですが、私はあきらめない。たとえ1000年後、10000年後の事になろうと、この呪われた連鎖を断ち切るためにも、お父さまやお母さまの無念を晴らすためにも、必ず精霊石をこの世から完全に消滅させてみせる」
私は苦笑した。やっぱりあんたは凄いチートだよ。並の人間の想像を絶する存在だよ。ご両親の教育がいいのかな? あなたが言うお父さまやお母さまってのに、一度会ってみたかったなー。
「それなら私の命を
そして私は、精霊石の前に立つ。
なぜか、嬉しかった。これから、本当に死ぬというのに。
どうせ死ぬなら、誰かのために役に立って死にたい。そうは思っていたけど、本当に誰かの役に立てるのか、いっそひと思いにみんな死んだ方がいいんじゃないかと思う自分もいた。
でも今はそう思わない。だって私が精霊石を砕けば、少なくともこのチートの役に立てる事が分かったんだもの。
「……覚悟は決まったようですね。最後に、何かしてやれることはありませんか?」
チートの声が震えてる。やだなー、もう後がないのに湿っぽい展開は。こっぱずかしいじゃん!
「なんだかんだ言ってもあなたって優しいんだねー。私の事嫌いっぽいのにさ。そんな嫌いな私のためにとっても優しそうな顔してくれる、泣きそうな顔してくれる。……いや、私というより、光翼人の事が嫌いっぽいのかな?」
「……いろいろと、事情があるのです」
そうみたいだね。貴方みたいないろんな意味で規格外なサイボーグ、私達の技術ではまず作れないし、ガイアともやりあえる力あるし。
「冥土の土産替わりに、話してもいい範囲で構わないからあなたの事、教えてくれないかな?」
そう尋ねると、チートはいくらか
「これから死にゆく貴方であれば、話してもお母さまとの約を
ほえ? エンジュールに貴方みたいのがいたなんて初耳なんだけど。
私がよく分かって無さそうな感じだったのが伝わったのか、チートが補足してくれた。
「歴史は、全てを伝えているわけではありません」
「あーなるほど。正史では描かれなかった、名もなき人間たちの奮闘の物語的な? 私、そっち系の小説も大好物だよ!?」
「あなたは死ぬ間際までそんな調子なんですね」
なにおう! いいじゃないか、読書! 忙しい時間の合間合間でもできる素敵な趣味なんだぞ!
「でも……そうですね。光翼人が嫌いなはずの私が、あの世に赴こうとする貴方の事を本気で悼んでいるとすれば、それは貴方が光翼人にしてはあまりに俗っぽいからです」
「それって私が光翼人として無能だって言いたいのー?」
私が口をとがらせると、チートは苦笑する。
「そうではありません。私の記憶にある歴代の光翼人たちは、人でありながら人である事を辞め、精霊の
あはは、きっついなー。でも否定できないや。
「私の妹も確かにそんな感じだったなー。どうして禁を破って欲望に負けた人間なんかの為に私死ななくちゃいけないのよぉぉぉぉ!!!ってムンクの叫びだったし」
でも欲望に負けるなとか簡単に言うけどさ、そんな聖人みたいな生き方、誰にも彼にも出来るはずないじゃん。
「精霊サマも意地悪いよねー。約束された破滅の未来へといざなう禁断の知恵の実を人間によこすんだからって愚痴ったら、激怒した妹とケンカしたこともあったなー」
そういったら、チートがびっくりして、ぽろぽろ涙を流し始めたの。私もびっくりだよ。
「ちょ、ちょっと! どうしたの!?」
「……貴方のように光翼人になっても、人間らしさを失わない人がごくまれにですが出てきます。そういう人と出会うたび思うのです。世界は残酷だ。貴方のような光翼人がお父さまやお母さまの生まれ育った時代にいれば、ガイアなど生まれなかったかもしれないのに。と」
ガイアが生まれない? それってどういう事?
チートがおかしなことを言ったので、私は聞いてみた。
「でもガイアって人間の欲望が産み出しちゃうんでしょ? 人間の弱さに光翼人が理解あろうとなかろうと関係ないんじゃない?」
「言い伝えではそういう事になっています。ですが……ぐすっ」
うずくまって
「大丈夫? ゼンマイ切れたのなら回そうか?」
「ありませんよそんなもの……。古代エンジュールのテクノロジーを見損なわないでください。ゼンマイごときでどうにかできるような安っぽいシステムはこの体に組み込まれてはいないのですから。いないのですから!」
「お、おう……」
なにか背中にネジとかあったら思いっきり回してみたいなー、と好奇心で聞いてみたらこっちが引くくらい勢いよく食らいついてきたよ。でもあなたってガイアとの戦闘も想定して作られたのに、それはダメコン的にちょっとどうかと思うわよ。武人の蛮用って言うじゃない。
「構成部品が精密機械ばかりじゃ予期せぬ動作不良に悩まされたりするんじゃないの?」
「その時は私の跡継ぎ、19代目を緊急出荷させて任務を代行させます。ゼンマイごときで急場をしのいだとて嬉しくもありません」
意地でもゼンマイ動力化を拒否するチート。プライド高いのかこだわりがあるのか、さすがサイボーグだけあって機械になりきれない人間臭さがあるなあ。
「人間臭いサイボーグちゃんにお願い。次にあなたが出会う光翼人は虫が好かない奴かもしれないけど、それでも貴方の力で守ってあげて? ううん。光翼人を守ろうなんて思わなくていい。その時代の人間を守りたいから仕方なくお前も守ってやるんだ的な感じでいいから」
「……言われるまでもありません。大半の光翼人は好きませんでしたが、それでも彼女たちの犠牲のおかげでこの世界が滅んでいない事も認めています。光翼人に力を貸すのは私の存在理由の一つです」
「よかった」
そして私は、背中の翼を広げて魔力を振り絞る。精霊石に向かって魔力を叩きつける。精霊石。ヒビ、入った。その瞬間、体に激痛が走る。体が張り裂けそう。でも泣かない。負けたりなんかしない。引き分け上等。それで冥土での楽しみができるもの。
私は、ちらっと、様子を見守る涙目の美少女を振り返る。そういえば、最後まで貴方の名前聞いてなかったね。これはとんだ大ポカですわ。いいお友達になれそうだったのに。
でも仕方ないや。あの世であなたの子孫たちが、ガイアを完全に滅してくれるのを気長に眺めているよ。
「
……声、裏返っちった。一世一代の晴れ舞台だからって、慣れないカッコつけした結果がコレだよ!
「……相撃ちに終わるから間違ってはいませんが、最後の最後まで
尊い光翼人の犠牲により、精霊石は砕かれた。
混乱の時代は終わり、休息の時代が訪れる。
補足説明
なんだいめかの こうよくじん
歴代の光翼人のなかでも、やたら俗っぽい存在。ただし根性に関しては群を抜いており、片割れが犬死して、もうどーにでもなーれ状態でも奮闘する。極限状態でも自分にできることはないかを必死に考え、ガイアの侵攻を食い止めるための世界の果てを建設した。
大学では土木工学を学んだ理系。暇さえあればネット小説をスコップしてる。
ちなみに彼女の世界は古代エンジュールの遺産によりIT技術は2010年代の地球並みの発展を果たしたものの、航空宇宙工学は未成熟で、いまだジェット機も存在しない
第18代リブラ
機械いじりが趣味。趣味が高じて自分の体まで弄り回した結果、歴代リブラでもトップクラスの火力を手に入れた。ただし、後継の19代目の体まで弄らない程度の良識は備えている。
機械いじりが趣味なだけに古代エンジュールのテクノロジーがいかにすさまじいものだったかもよく理解しており、エンジュール人に対する尊敬の念は先代までの記憶抜きにしても非常に高い。その反動でアナクロな技術に対する嫌悪感は、歴代リブラの光翼人に対する嫌悪感に勝るとも劣らない。科学音痴も嫌い。なのでその双方を兼ね備える相手ときたら……。
タッグを組んだ光翼人が歴代の中でもトップクラスの当たりクジだったことで、後継達から事あるごとに羨ましがられることになる。
基地局
みなさんご存じセーブアイコン。本作ではリブラがファン〇ルを遠隔操作するために世界各地に設置したという設定。
この基地局がいつどうしてセーブ機能を持つに至ったかは永遠の謎。
エンジュールのすごいテクノロジーを基にして作られているだけあって、どのような劣悪な環境でも長期間運用に耐えうる非常に信頼性の高い構造になっている。