佐渡島
俺の名は豊臣悠一、愛機であるフルアーマーガンダムに乗る欺衛軍の衛士でありフリージャズを好む男の一人だ
しかし俺は元々この世界の人間ではない。元にいた世界でガンプラビルダーとしてガンプラ大会に参加した経験がある
と言っても、優勝したことはなかった。
ある日、俺と義足野郎こと徳川良平は音楽趣味が合わない俺達は喧嘩別れした後、俺はトラックに轢かれそうになる義足野郎を助けようとしたが間に合わず一緒に事故死したんだ
喧嘩しつつ昇天する前に、魂だけの状態でケヤルガに引き留められた。
ケヤルガっていう胡散臭い神であり回復術士の話によると、とある人類が滅亡しかかっている地球へ行って、侵略しているBETAという化け物と戦ってほしいとのことだ。
これは俺達だけでなく、他の魂にも声をかけているようだが、引き受ける奴は中々いないそうだ。
そりゃそうだろ、化け物と戦うんだぜ?
BETA……この世界に突如地球に降下しハイヴという住処を作りこれまでの戦いで世界中の大半が国土を失われ追い込んだ化け物だ
地球に化け物が現れたなんて信じられないだろ?
崇宰恭子、如月佳織
この2人の出会いにより俺は変わっていった。
フルアーマーガンダムがこの世界で駆けて戦場に出るっていうのは夢にも思わなかった。
帝都である京都での防衛戦で俺は欺衛軍のファング中隊臨時次席指揮官として帝都に侵攻するBETAを殲滅
奇跡的にファング中隊の中隊長、佳織を含め隊員全員生還した
だが、帝都の陥落は阻止出来なかった。
そして俺はある出来事で問題行動を起こし、恭子はフルアーマーガンダムを没収し帝国軍の衛士として佐渡島に左遷を命じた
1998年9月1日
日本帝国 佐渡島
フェリーから降り両津港へ到着した俺は歩きで左遷された配属先である佐渡基地に向かった
「貧乏くじを引いた気分だぜ」
その光景は俺に似合わないものだ
華華しく咲いてるお花畑
長閑な田園風景
……昨日の出来事を回想で振り返る
それは欺衛軍本部の執務室で恭子が俺に左遷を命じた事だ
(あんな問題起こしたら、私の面子が汚れてしまうわ)
怒りを通り越した呆れ顔だ
あの淫乱男を殴った事は後悔していない
(斑鳩少佐が処理してくれたけど、貴方は暫く反省する形で帝国軍の衛士として佐渡基地に左遷を命じる)
(佐渡島…ですか)
(そう、自然と触れ合って佐渡基地にいるみんなと仲良くしなさい。司令官に連絡済みよ)
(え?欺衛軍の衛士が帝国軍の基地に行って宜しいのですか?)
何が何だか分からない
左遷って言われたら誰だって戸惑うだろうよ
(良いも悪いもこれは上層部の決定よ)
マジかよ、おい……。
(俺の機体も佐渡島に……)
(没収します、佐渡基地には撃震しか配備されていない。戦術機乗る機会が増えるきっかけになるわよ?)
成る程、要するに衛士の気持ちを考えて慣れ合いか。
(とにかくよ、明日早朝に佐渡島に行きなさい)
回想終わり
俺は困惑していた。
数時間後、佐渡基地に到着し入る前に身分証明書を警備員に見せた
見せた後、基地にいる衛士1人が出迎えてくれた
「豊臣悠一少尉でありますか?」
「ああ、そうだ」
「案内します」
と一言言って案内される
数分歩いて案内された後、基地にいる衛士はブリーフィングルームに
「此方です、中に入ってください」
俺はブリーフィングルームに入る
そこにいたのは
「貴様が新しく入った衛士だな?」
女衛士と新兵11人だ
「あ、はい。豊臣悠一少尉です」
俺は真顔で敬礼する
「佐渡基地司令部第三戦術予備部隊A中隊中隊長の坂崎都大尉だ。ようこそ佐渡基地へ」
坂崎都……佐渡基地のA中隊中隊長か。
顔をよく見れば別嬪さんじゃないか
しかも意外と母性溢れてやがる
「どうした、私の顔に何か付いてるのか?」
ドキッと心臓が鳴り響く
何だこの胸やけは
「食事はとったか?」
「いえ、取ってないです」
「なら食堂へ行こう、腹一杯食いなさい」
都は俺に手を差し伸べる
「ええ、是非喜んで」
俺は都と一緒に食堂へ行き食事をとった。
食事をとってる途中に都の隣に1人の女性が座り込む
「坂崎大尉、隣宜しいですか?」
「いいぞ」
「では失礼して」
セミロングの女性か。
優しそうな性格してそうだ
「豊臣少尉、此方がB中隊中隊長の大倉鈴乃大尉だ」
「宜しくお願いしますね」
「お、おう…宜しくお願いします」
「畏まらなくていいぞ、豊臣少尉は大倉大尉率いるB中隊に加わることになった」
配置は決まっていたのか
ここの司令部はトチ狂ったのか?
「ところで坂崎大尉と大倉大尉の好きな音楽ジャンルは何ですか?」
「ん?音楽か」
都は笑みを浮かべつつこう答えた
「民謡だな、串本節や東京音頭とか有名だぞ」
民謡ね……。
「私も民謡好きだけどフリージャズが好きよ」
お!ジャズが分かるB中隊中隊長
ジャズの魅力が分かってるね
「大倉大尉はジャズが好きなんですか?」
「ええ、貴方と気が合いそうね」
と鈴乃は俺に向け笑みを浮かべる
「じゃあ今度機会あれば一緒に演奏して貰えませんか?」
「溜口で良いわよ、豊臣少尉」
優しい笑みを浮かべる鈴乃
その笑顔、守りたいぜ
「貴様は私とその中隊にいる衛士達の模擬戦相手する機会が増えると思う」
「明日は模擬戦ですか?大尉」
「そう、貴様がどれだけ戦術機を扱えるか確かめてやるから覚悟しておけよ」
と都は俺にウインクする
早速、模擬戦か……話が出来過ぎてるぜ
まさかと思うが…いや今は考えるな
明日の備えて早めに食事を済ませそのまま部屋に向かった
部屋に入りベッドに寝転んで布団を被り寝ようとしたが、誰かがドアがノックする
「豊臣、少しいいかしら?」
「ああ、どうぞ」
鈴乃が俺の部屋に入ってきた
ベッドに座りそのまま俺の顔をじっと見る
「明日、模擬戦だけど大丈夫?」
ん?心配してくれたのか
気遣いは結構だぜ
でも鈴乃と一緒にいると何故か落ち着く
「坂崎大尉、貴方は彼女と初めて会った印象聞かせて貰える?」
「最初の印象…ですか」
「溜口でいいわよ。2人きりだし」
最初会った印象か……本当の事言ったら怒る…訳ないよな
ここは正直に話そう
「中隊長としては誰もが慕われる母性溢れている女性だな」
「中隊長として……ね。個人としては?」
俺が初めて会った時、人の温かさや優しさを感じた
恋に落ちそうだった
「優しい女性だ」
「それだけ?」
「将来、お母さんとかなってそうだな」
鈴乃は俺の顔を近づき囁いた
「豊臣の両親はどんな人だったの?お母さん、お父さんとか」
両親か
親父は企業立ち上げ失敗し精神が病み自殺、お袋は俺を捨て他の男と駆け落ちしやがった
姉はいるが、家族としての愛情はないと等しい
だがこの世界にいる俺の両親は別だ
「親父は、欺衛軍の将校だったが軍資金を横領し更迭された。お袋も一昔は欺衛軍の衛士だったが九州でBETAに食われてそのままミートソースになっちまった」
「欺衛軍……貴方は」
「ああ、一般武家の衛士だ。豊臣秀吉って武将は学校の教科書で見た事あるだろ」
「……そうだったのね」
鈴乃は俺のベッドに寝転がりいきなりくっつきだした
「……おいおい、自分の部屋で寝ようぜ」
「私と一緒に寝なさい、これは中隊長命令だ」
職権乱用にも程があるだろ
まぁ、嬉しいが……。
鈴乃は目を瞑りながら俺を抱き締めつつその豊満な胸で背中に当て眠りについた
「おいおい、嘘だろ…(胸が背中に当たってる、ここは無視すべきか。それとも襲うか)」
もう訳が分からねぇ
ここは積極的に……。俺は鈴乃の手を優しく触れる
眠れねぇよ
「(大倉大尉、アンタも辛い思いしたんだろうな。ここにいる衛士達も)」
眠れないと言いつつ俺は鈴乃と一緒に眠っていった
1998年9月2日
佐渡基地内での戦術機でのA中隊とB中隊の交流模擬戦が行われていた
強化装備を身にまとった俺は撃震の管制ユニットでテープレコーダーを持ち込み落とさないようにガムテープで機器の上に貼り付ける
皆、真剣なんだ
《豊臣少尉、撃震の乗り心地はどうだ?欺衛が運用している瑞鶴みたいに動かしてもいいんだぞ》
「……模擬戦の真っ最中に音楽が流れたら大尉はどう対処するのですか?」
《ん?戦場に音楽を持ち込むのか。いい度胸だな貴様は》
都も本気だろうな、まさに歴戦の衛士みたいにきりっとした表情している。
負けられねぇ……ガンダムがなくたって俺はやれるんだ
《ルールは簡単だ、A中隊とB中隊は12機ずつ合戦しどちらか1人残れば勝ちだ》
《では始めて宜しいですか?坂崎大尉》
《貴様らも聞いたな?》
《それでは始め!》
都の掛け声の合図で模擬戦は始まった
そして双方12機は噴射跳躍
互いにじりじりと攻めてきやがる
俺も突撃砲でA中隊の機体1機をペイント弾にぶつける
残り11機
《うあ!》
「フン、動きが遅いんじゃ的になるだけだぜ!」
鈴乃が乗る撃震が俺に近づく
《貴様、前へ出過ぎだ!距離を取れ》
分かってる。分かってるよ!そんな事
《来るわよ》
A中隊の機体が跳躍しながらペイント弾を放つ
「!」
俺は回避行動しペイント弾をただひたすら撃つ
《あ!》
《ひゃあん!》
3機撃破だ
残り9機
《中隊長!》
《止まるな!先に進んで撃つのみだ!》
《え?》
B中隊の12機のうち1機が脱落
A中隊残機9機
B中隊残機11機
よそ見してる場合じゃない
俺はひたすらペイント弾を撃ち尽くす
《中隊長!うあ!》
残り8機
ペイント弾の残弾が0になり背部兵装担架に収納してる突撃砲を握り構え乱れ撃ちで発砲
残り5機
鈴乃も続けてペイント弾で発砲
ひたすら撃つだけ
《ぎゃ!》
《うあ!》
残り3機
しかし、快調するのもここまでであり都機がB中隊の機体を次々とペイント弾で放つ
B中隊の残機は3機になってしまった
激しい攻防戦だ
俺は守りに入り鈴乃機を護衛
しかし別死角からA中隊の1機が鈴乃機に当てる
《ごめんなさい、あとは頼んだわ》
「(これが帝国軍のA中隊中隊長の実力か、だがな……)」
俺は別死角にいる機体に跳躍ユニットを噴射し最大全速で発砲し2機を脱落させる
残るのは……?
《ほぅ、なかなかやるな豊臣。貴様の実力どれ程強いか確かめさせて貰う!》
「望むところだ……」
俺は突撃砲でペイント弾を放つが、当てられない
ペイント弾の残弾が0になり突撃砲を都機に投げ棄てナイフを握り構える
カセットテープの電源を入れ、ジャズを流しつつナイフで都機に向け切りかかる
躱されるが執念の如く俺はナイフを振り回しつつ都機の動きを読み高揚感を上げながら切り込んだ
「流石、A中隊の中隊長だな。動きが素早い……良い盛り上がりだ、ジャズが聴こえたらお前の最後だ」
《戦場で音楽を持ち込むなど言語道断だ!》
突如、都機は急速で俺に近づき背部兵装担架に収納している突撃砲を含め2つ同時に発砲する
その砲撃を躱しナイフでただ切り込むが、都機は突撃砲を投げ棄て俺が乗ってる機体の頭部に当てた
「くっ……!」
ナイフを投げもう一つ握り構えてる突撃砲で発砲
これも躱しつつ都機に急接近し管制ユニットに突きつける
「至近距離詰めれば幾ら中隊指揮官であるお前には対処出来ないな」
《そうかな?》
な!?此奴…いつの間に突撃砲で管制ユニットに向けたんだ!?
《残念だったな、貴様の負けだ》
「ぐっ…(クソ、やられた!こんなあっさりと…)」
《模擬戦闘はそこまでだ、元の配置に戻れ!》
俺の完敗だ。
さて、どうやったら勝てるか早速部屋に戻って研究しないとな。
模擬戦が終わり、更衣室で強化装備を脱ぎBDU(戦闘服)に着替えた後食堂に向かうが都と鈴乃と遭遇する
都はジト目で得意げそうな笑みを浮かべている
自分が勝ったから自慢しに来たのか?
女に負けるなんて情けねぇ…。
「自分の実力を思い知ったか?豊臣」
「あぁ、坂崎大尉には敵いませんよ」
操縦技術は義足野郎と同じ強さなのか?
「お手本見せないと中隊長としての面子が汚れるからな、で?もう一度私とやり合おうと考えているのか?」
思考読めてたのか!
図星突かれた……。
「図星……だな?」
「……もう一度戦いたいです」
「はぁ…」
都は俺の返答を聞いて呆れ顔になりつつ溜息を吐いた
「貴様が考えてることよくわかった。ではこうしよう、1対1での個人的な訓練なら相手になってやる」
都は義足野郎と同じ強さを秘めている
何か対策を捻らねぇとな……とはいっても俺は戦場で音楽を持ち込む一衛士だ。
当然答えは決まってる
「ありがとうございます大尉」
鈴乃は少し苦い笑みを浮かび俺の心配をする
「豊臣君、無理にやらなくてもいいのよ」
「大倉大尉も豊臣少尉とそこまで仲を深めたのか?」
都は鈴乃を揶揄いにやりと笑みを浮かべる
「え?違いますよ!私はただ豊臣少尉と一緒にいると」
「一緒にいると?」
「落ち着くんです……昨夜は豊臣少尉の部屋で一緒に寝ました」
ちょ、待ってくれ!
何を言い出すんだ……おい
勘弁してくれ
「大倉大尉」
「何かしら?」
俺の顔をじっと見つつ笑みを浮かべる
「今日は自分の部屋で寝てください」
「何故?」
「そりゃ、まぁ中隊の士気が下がるだろうし隊員の皆が誤解されるじゃないですか」
あんな女が中隊長だなんて、ある意味凄いぜ
「……佐渡基地内での公認カップルと認定するぞ?」
「やめてください坂崎大尉まで……」
「そう照れるな、貴様はB中隊の中隊長、大倉鈴乃大尉の事が好きになったのだろ?なに、隠すことなんてないぞ。堂々と付き合っていますとアピールしたらどうだ?」
確かに、鈴乃は優しき音楽の趣味が合う女性だが、そこまで発展してねぇよ
頭が痛くなるぜ、これは……。
「ここに来てから2日経ったが、坂崎大尉、アンタと出会って良かったと思う。だから明日案内してくれないか?佐渡島の…」
「構わないぞ、貴様が満足するまで案内してやろう」
まぁ、外に出ないよりはマシだな
これから街に行って出かける機会が増えると思う。
こんな世界で平和に長閑な生活を送ってる人はいるんだ。
目に焼き付けねぇとな
1998年9月3日
俺は街の風景を眺めつつ私服姿の都と一緒に手繋ぎで歩いていた
その日は偶々休暇だった事により街等の風景を見ることはできた
正直、都と一緒に街散策するのは嬉しかった。
俺は都の顔をじっと見ながら歩く
「どうした?私の顔を見て」
「あ、いや…何でもないです」
下心を出すな俺
何を考えてやがるんだ……。
「坂崎大尉」
「?」
「……」
……。
「何だ、唐突に……さては疚しい事でもあるだろ?」
「ない!ないです!」
言え!ハッキリ言うんだ俺
「坂崎大尉……俺は…」
「都で構わない。それに今日は休暇だ、下の名前で呼んでいいぞ。但し仕事とプライベートは分けて置けよ」
「ああ、都…俺はアンタの事が好きだ。でも恋人としての関係ではないってことは分かっている。アンタと一緒についていく!俺は強くなりたいんだ」
俺は都の顔を見てハッキリ自分が思ったことを言った。
「強くなりたいか……」
そう言って都は手繋ぎをやめて突如俺を抱き締めた
「!」
「なら私に頼るといい」
え?いきなり抱き締められたぞ
しみったれな恋愛ドラマかよ
「遠慮はするな、貴様は両親に愛情を注がれた事はないだろ?大倉大尉から全部聞いた」
あの女……!
べらべらと喋りやがって……まぁいいさ、こんなことで落ち込んでる場合じゃない
「家に行くか?」
「?」
家?都の家にか!?
これはチャンスだ
「ああ、じゃあお言葉に甘えさせて貰うぜ」
「良い返答だ」
都の誘いに断る訳がない
ただついていくのみだ
女性からの誘いは断らないんだ俺は
2人きりか……少し変な妄想してしまったぜ
数時間後、俺と都は都の家に着き中に入った
「お邪魔するぜ」
「さぁ、中に入って」
家の中に入ったもののリビングに見慣れた人物がいた
「何でお前がここに来てんだよ」
鈴乃だ
「先にお邪魔してまーす」
「豊臣、貴様と私が2人きりの世界になれると思ったか?」
少し落ち込んだ
期待した俺が馬鹿だった……。
俺はソファーに座り鈴乃が事前に注いだコーヒーを口につけ啜り飲む
「アメリカンコーヒーだな」
「キリマンジャロよ」
鈴乃は即答する
「同じだろーが」
「匂いと香りが全然違うのよ」
「鈴乃はコーヒーに詳しいんだな」
「ええ、子供の時はバリスタになりたいからコーヒーの銘柄とか色々調べたわ」
鈴乃の夢はバリスタになりたかったのか。
都も続いてコーヒーを啜り飲む
「これはエメラルドマウンテンだな」
「正解よ」
和やかな雰囲気だな
「2人はまさかと思いますが…」
まさかと思うがそんな訳ないよな
「同性カップル……ですか?」
都と鈴乃は頬を赤らめ照れつつ否定する
「な、何を言ってるんだ貴様は!そんな訳ないだろ!」
「そ、そうよ!私と都はあくまでも一衛士として振る舞ってるから、ね?」
いやいやいやいやいや、お前らデキてるだろ!?
「お前らデキてるだろ?否定するってことは」
都と鈴乃は俺の顔に向け拳を振るった
「ぐぼ!」
「違うぞ、豊臣。私達はあくまでも一衛士だ」
鈴乃は「うんうん」と頷く
「罰として明日は私と鍛錬に付き合って貰うぞ」
白兵戦……か?
面白い、受けて立つぜ
俺は「了解しました」と一言を添い小さな笑みを浮かべる
俺はソファーから離れ明日に備えて早く自分の家に戻ろうとするが都に呼び止められる
「豊臣、今日は泊っていけ」
「え?そんな悪いって…」
「……お前は私の仲間の一人だ」
仲間……仲間か。
今までそんなのいなかったな。
俺は再びソファーに座り都と鈴乃が俺をサンドイッチみたいに挟む込むように座り込んだ
「(おいおい、板挟みかよ……)」
「少し暗い話になるが、お前は…いや私達が何故BETAと戦い抗ってるかその意味は分かるか?」
人類一つに団結し立ち向かっている
簡単な答えだが……俺は考え込んだ
「分からない。でも東ドイツシュタージのベアトリクスって女傑は『人類は必ずしも一つにはならない』と断言してたぜ。その言葉通り一つにはなれない……彼女が言ったことは間違ってるのかと俺は思ってるよ」
「ふむ、成る程。人類は必ずしも一つにはなれない………か」
都は俺の手を触れ少し笑みを浮かべながら言い放つ
「いいか?そのベアトリクスって女が言ってたことが全部正しいとしたらそれは思い込みだ。彼女の行動からにより今までやってきたことを正当化するなぞ外道と同じだ。が、不必要な粛清はしなかった。ベアトリクスは本当の生きる価値がない外道を探り葬ったんだ」
拷問ソムリエかよ……ある意味怖い女だな、ベアトリクスは
「人の死を今まで見てきた彼女はこの時点で普通の女性ではなくなった。元々ブレーメ家のお嬢様だったからかスポンサーが沢山いたらしい。人の優しさを持つ女とは思えないな……」
ベアトリクスならあり得る事だな
東ドイツの国営企業だけでなく御剣財閥から支援されたって話がある
恐らく賄賂受け取ったんだろうな……。
「人間の命は尊い、人の心と優しさを持ち逆境を超えて生きている。ソ連のスパイの一人が国を乗っ取り政権を掌握。当時、シュタージはシュタージ政権として恐怖政治をし無実な人々を粛清しまくって核を受け取り既に陥落されたポーランドに落とそうと画策したんだ。ベアトリクスはそれを良しとせずそのスパイを粛清した」
あんな状況だったら人の優しさとか失うのも無理はないな。
本を読んでみたが、酷い有様だった。
「心と優しさを失っても何かきっかけがあれば取り戻せる。感情だけで動いたら無意味だ」
「俺も…彼女と同じ道へ辿るのか?」
俺はポツリとこういったが都は優しい笑みでこう言った
「お前はお前だ、自分の道へ行っていいんだ。私はそう思ってるよ」
都……そうか、都も自分はいつか死を追い詰めてまで戦い続けてたんだな。
何やってるんだ俺は……。
「ベアトリクスやアクスマンみたいにはなるな。破滅するぞ」
「都は優しい性格してるな、俺と違って周りの事何も考えず行動しない。いっその事付き合うか?」
俺は都に告白したが、都は笑みを崩さずこう言い返した。
「ありがとう、でも今は恋人として付き合えないよ」
振られた……?
「A中隊とB中隊の衛士全員……この佐渡島にいる衛士達はそれぞれの思いでBETAと戦っている。全て終わったら考える。それまでは私の音楽仲間だ」
「え?都、お前は確か民謡が好きだった筈じゃないのか」
振られた訳じゃないんだな……。
「豊臣の趣味に合わせようと努力している。ジャズの名盤教えてくれないか?」
都は俺の事を気にかけている
佐渡島にいる皆の事を思って自分が如何に正しいかそれを考えて行動している
母親みたいだ……。
「2人きりの空間で話すのもいいけど私がいる前でイチャイチャするのやめてくれない?」
鈴乃がいてた事忘れてた!
……少し嫉妬している、顔が怖い!笑ってるけど目が笑ってない!
「あぁ、すまない鈴乃」
少し疑問がある
何故、都と鈴乃と一緒にこの一軒家にいるのか
「なぁ、2人はここで共同生活してるのか?」
「ああ、そうだが……豊臣に言ってなかったな。お前がここにくる以前に鈴乃と共同生活していたんだ」
都と鈴乃が共同生活してたんだ……。
ん?”していたんだ”?
「お前もここに住むか?」
都は得意げある笑みを浮かべ俺を都と鈴乃が共同生活……所謂シェアハウスを入れようと誘い込んだ。
「頭が混乱する……何を考えてるんだ」
「3人一緒に住んでも問題ないだろ?」
確かに……男1人女2人だと取り合いにならないか?
俺は考えた
待てよ、ここにいたら都の弱点とか探れるかもしれない
同時に鈴乃の弱点も探れる
俺はこう返答する
「分かった、俺はここに住むよ。でもいいのか?女同士の家に男1人寝転んでも…」
「私が良いと言ったら良いんだ。一部屋空いてるからそこに入るといい」
「感謝する……という訳で改めて宜しく頼むぜ!都、鈴乃」
こうして3人共同の生活を始めていった。
登場人物紹介
坂崎都
日本帝国軍佐渡基地司令部第三戦術予備部隊A中隊中隊指揮官。
階級は大尉
包容力と母性ある女性で「頼れる母さん」と言われるほどの別嬪である。
乗機は撃震
好きな音楽ジャンルは民謡、ジャズ(悠一の趣味を合わせる為だったが、後に好きな音楽ジャンルとなった)
大倉鈴乃
日本帝国軍佐渡基地司令部第三戦術予備部隊B中隊中隊指揮官。
階級は大尉
都と同じく包容力と母性ある女性で別嬪である。
乗機は撃震→不知火→?
普段は真面目に勤務態度を取る模範的な女性衛士だがプライベートでは少し甘えん坊な一面がある。
好きな音楽ジャンルは民謡、オールディーズ、ジャズ
駒木咲代子
日本帝国軍佐渡基地司令部第三戦術予備部隊A中隊に配属された女性衛士
階級は少尉(後に中尉に昇格し帝国本土防衛軍帝都防衛第1師団・第1戦術機甲連隊に所属される)
常に眼鏡をかけてる生真面目で模範的な勤務態度を取るが少し抜けてるところがある
乗機は撃震→不知火
好きな音楽ジャンルは民謡、歌謡、ポップス、R&B、クラシック
次回のお楽しみに!