トータルイクリプスサンダーボルト 外伝   作:マブラマ

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日帝の武闘派衛士 後編

総戦技評価演習に訓練部隊の約半数が合格した。

そして訓練カリキュラムは戦術機教習課程に入り、座学や機械化歩兵装甲実習、シミュレーター訓練を経て、実機教程が始まった。

例によって私と都、小峠は同じ小隊だった。

小峠は相変わらず、私と都には負けないと豪語してるがそれは以前のような敵意を持った態度ではなくなっていた。

約束に従い、私も言葉遣いには気を付けながら、超えるべき目標として、ライバルとして常に小峠を意識し、自己鍛錬を続けた。

その時既に、小峠の事は少し知ってしまった。

『教育』の成果とは関係なく個人的に友好的な関係を築くことが出来た。

その効果は同じ隊の訓練兵にも良好な影響を及ぼし私達の小隊はあらゆる評価で2番目に君臨し続けた。

そして数週間後、実機教程が模擬戦まで進む頃には、私と都の評価は小峠に肉迫していた。

戦術機という同じ条件の『身体』を手に入れた事で、男女の――――少なくとも小峠と私や都の身体機能の差が消滅したことが大きな理由だと思われる。

筋力などのアドバンテージは、戦術機の操縦においてさほど有利には動かない。

操縦をサポートする間接思考制御システムにとっては、寧ろ運動神経や反射神経、思考力がものを言うのだ。

決して小峠がそれらの能力で私達に劣っている訳ではない。

相変わらず高い壁である事は確かだった。

だが時に経つにつれ、私はあらゆる教科で小峠と肩を並べ始め、ゲーム理論などの一部教科では、私が上に立ったものもあった。

それでも戦術機の操縦技能評価だけは最後まで及ばなかった……都を除いて。

そして私と都は任官式を迎えた。

訓練部隊はそのまま実戦戦闘中隊に格上げされ、最前線に赴く事になった。

だが…ただ一人私だけは、別の部隊への配属予定となっていた。

通達されたのは教導部隊への配属だった。

………皮肉な事ね。

私は前線で活動する衛士になりたかった。

兵士に指導する教官になりたかった訳ではない。

他人任せにしたくない……直接戦場へ出て女でも戦術機を操り戦えると証明したい!

あのシュヴァルツェスマーケンの長だって前線に出て活躍したんだ、私に出来ない訳ではない!

―――翌日、私は部隊への残留を志願した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…しかし、物好きな奴もいたもんだな」

「ああ、全くだ!後方配属を蹴って最前線に来たがるなんて頭おかしいぜ」

「だからな、志願兵様ってのはさ、俺達には到底理解出来ない崇高な使命感を―――」

緊張からか…いつもより無駄口が多い。

約10km西のCPにいる中隊長もこの会話が聞こえている筈だが、何故それを咎めない

何故ならその中隊を指揮してるのは……あの『鎌の坂元』だからだ。

新米には構っていられない……私は察した。

現在帝国軍の坂元中隊は大連に向け侵攻中のBETA主力を叩くべく中韓連合軍の『九一六作戦』に参加している

神宮司がいる部隊より先にBETAの主力を殲滅しようと考える坂元は楽しそうな笑みを浮かべこう言い放つ

「中隊長、他の部隊より先に行動して宜しいのでしょうか?」

《折角、中国に来たんだ。もっと楽しめ》

楽しめって、どう楽しめばいいのよ…。

衛士の間では、最初のBETAとの戦闘任務を『初陣』と呼ぶ。

後方任務に何時間従事しようがそれは初陣ではなく待機命令だ。

私達は最前線にいる!

最前線で戦って緊張するのは想像以上だ。

ここは肚を括れ

都も同じ気持ちだ。誰だって緊張する事はある

『死の8分』を乗り越えられるか私だけでなく都や華太、他の隊員も不安を感じていた。

《鈴乃、余所見をするな!前だ!前!》

都が強張った顔でそう言い放ち、私はしっかりと前を見れば……

赤い蜘蛛みたいな物体と殻に包まれてる物体が近づいてくる

《漸くお出ましか》

坂元はにやりと笑みを浮かび私達に命令を下す。

《よし、BETA祭り開始ぃ!総員…一匹残らずブチ殺せ》

BETA殲滅だ

戦車級、突撃級、要撃級数体が現れ、それを対処する為隊員達は一斉発射

シュッ

閃光が放たれる

レーザー……これは!

《光線級、来るぞぉ。当たると遺体諸共消滅だぁ》

真面な命令を下すこともあるんだ…と安堵した途端、私はあることに気付く

「中隊長!他の部隊とはぐれて行きます!」

《あぁ?》

通常、戦術機でのBETA戦闘は他の戦術機部隊と連携しつつ殲滅しに行くのだがどういう訳か帝国軍の戦闘領域から離れていく

すると坂元は私の元へ音声通信でぼそっと呟いた

《神宮司や新井にいる部隊と連携したら犬死になるだけだ。残念だが此奴等は見捨てることにした》

え?見捨てる!?

何を…言って………

神宮司達を見捨ててあとは何とかしろと言いたいのか?

無理だ、駆逐できるわけがない

推進剤も無限にあるわけではなく弾も尽きてしまう

そうなれば、もう終わりだ。

ましてやまだ訓練学校卒業したばかりの新兵だぞ

返事ができなかった私はただ呆然とした…しかし坂元の前では寸分の間も許されなかった。

《神宮司達を見捨てろって言ってんだろう!BETAの餌になりたいのか!ボケ!!》

当然、この男に拒否権などある筈がない

そうして私達は神宮司達がいる戦闘領域から2㎞まで移動した

《おら、ボケっとしてねぇでさっさと光線級ブチ殺してこい》

私は親指をぐっと力を入れ弾丸を放つ

―――――命中!

隊員の1人が光線級数体を駆逐して捨て身の攻撃で仕掛けたが

《弾切れだ!近接戦闘か!》

数体殲滅したものの途中で弾切れになってしまうが、長刀で光線級をバッサバッサと斬り込んでいく

ここまでは順調に駆逐した―――が。

《あ、ヤッベェ、補給するの忘れてた。こりゃぁ急ぎだぁ》

「え!?補給ですか!?」

坂元がとぼけた口調でそう呟いた

《神宮司達のところに戻るぞ》

《え?しかしまだ戦っている者が》

と都は坂元に抗議するが

《もう一度言う―――神宮司達のところに戻れ》

坂元は都を一蹴した

私はここですべてを悟った。

最初から誰一人生き残らす気は毛頭ないと。

こんなところで見捨てれば、今光線級と戦ってる隊員はまず助からないだろう

「……」

私は口を閉じ黙った。

抗議して言い返すほど聞く耳が持たない

しかし都と小峠は坂元を糾弾する

《坂元中隊長、幾ら何でもやり過ぎです!》

《そうですよ!隊員一人欠けることなく無事帰ることが任務の一つだと思います!》

当然ながら、坂元は般若顔でこう言い返した

《あぁ?じゃぁテメエ等もBETAの餌になるか?》

《…クッ…》

しかし、坂元の前にこれ以上言葉を返すことが出来なかった

私は悔しかった……隊員を見捨てることを強いられた事が。

私達含め坂元率いる中隊の隊員は腕を無理矢理力を込めフットペダルを思いきり踏み速度を加速しつつ隊員1人を見捨て、神宮司達がいる場所へと戻っていった

《中隊長!?何処行くんですか!!?中隊長!!!》

寂しさに込める声は助けを求めていた。が助け船など来るはずもない

奮闘虚しく推進剤が切れ、隊員1人は

《そんな……そんな見捨てないでください!!坂元中隊長ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!》

音声通信から鳴り響く絶叫

戦車級数十体が隊員が乗ってる機体に近づき、無理矢理コクピットブロックをこじ開けそして…

グチャァァッ!

《ぎゃあああああああああああ!!足が…足が!!やめろ!!俺に近づくな!!や、め…》

戦車級に食われ無残にバラバラとなって事切れていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《さっさと帰んぞぉ、俺は可愛い子ちゃんからプロポーズなんだよ♡》

「……」

数時間後、やりきれない気持ちで神宮司達と合流したのだが

《これはこれは、アホの坂元さんじゃないですか》

《独断専行は困りますわ》

《おや?みんな雑魚が来てますよぉ》

そこには何と帝国軍と共闘している中韓連合軍のF-4が立ち塞がっていた

多方面に被害を広げている坂元は他国の衛士達の怒りを買い恨まれていた。

《お前等もBETAの餌になってこいよ…―――――死ねやゴラァ!》

ガガガガガガ!

「中隊長!」

やられる前にやる!

坂元は突撃砲で120mm弾を放ちながら左手に持ってる戦術機用の鎌を振り上げる

《クッ…BETA殲滅任務の筈なのに、こんなところで対人戦か!》

奴らに襲い掛かる

BETAではなく中韓連合軍のF-4を目掛けて120mm弾を放ち続ける!

《う、撃て!このままだとBETAの餌になるぞ!》

都は血相な顔で叫んだ。

「でも…」

《迷ってる場合か!鈴乃、撃つんだ!やられてぇのか!!》

華太の一言で私は迷いを―――――捨てた。

数は中隊規模だ

しかし、他の隊員は恐怖心を植え付けられ怯えるだけで何もしてこなかった

中隊副官の尾崎が突撃砲を4門一斉発射する

《ミンチになれやぁ!ハンバァァァァァグゥゥッ!!》

この男も坂元と同じ狂人衛士だ。

別名は『マシンガン尾崎』

機関銃マニアであり且つ銃の達人。また銃や火器全般にも詳しい

《大倉、坂崎、小峠!遠慮せずにブチ込め!!躊躇すんなよ、やるかやられるかだ》

尾崎は中韓連合軍の戦術機を次々と撃墜していく

《りょ、了解です!》

《了解!》

小峠と都も参戦

120mmを放つ

そして坂元は1機撃墜した後に

《坂元!往生せえええええ!!》

中韓連合軍の衛士一人が短刀で坂元の機体に目掛けて真っすぐ突き刺し管制ユニットを貫いた

《ガアアアアアア!!!》

やらなければやられる!

《坂元ォッ!クッ…大倉やり返せぇッ!!》

「……こぉのおおおおおおおおおお!!」

尾崎の一言で私は無我夢中にトリガーを引き36mm弾を放ち続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれくらい経ったのだろうか―――辺りはBETAの死骸と戦術機の塊

私と都、小峠がその場に立ち尽くしていた

「はぁ……はぁ……」

《鈴乃、大丈夫か?》

「えぇ……私は大丈夫よ」

大丈夫ではなかった……私は中韓連合軍の戦闘で左腕が骨折

真面に戦術機の操作など出来る状態ではない

《……嘘を吐くな鈴乃、左腕…動かせないだろ》

都は私の嘘を見抜いていた。

肝心な坂元は……?

《坂元中隊長……死んでる―――都、鈴乃》

《……》

「……」

その時、浮かんだのは訓練学校を退学した山田の姿と一度も場所を移動せずに戦っていた神宮司と新井の顔。

この人は死んで当然だった。

坂元は―――――衛士の恥晒しだ。

あの男は身勝手な理由に隊員を見捨てた時点で衛士失格なのだ

この世界は人の命なんて羽のように軽いと私は実感した。

「BETAと戦ってるのに対人戦だなんて……一体何なのよ、これは」

九-六作戦は物量に圧されて戦線が瓦解、最後は戦術核で大連侵攻は何とか食い止めたが失敗に終わり神宮司は怪我を負ったものの無事生還、新井や他の衛士達は全員死亡

遺体は残っていない

中韓連合軍は何とか頑張っているが、帝国軍は哈爾浜まで一時撤退

その後、アジアの各戦線は徐々に後退し、翌年にはインド亜大陸は完全にBETAの支配下となった。

それに伴いBETAの東進は本格化、中国戦線は更なる地獄と化した。

私は坂元を反面教師として習い、彼の中隊にいた隊員達を死なせたことを悔やみその苦しみを癒す贖罪を求め、狂ったように戦い続けた

だが皮肉な事に、私達の戦いは多くの戦友を失う結果となった。

衛士達の死を彩られた時を重ね、階級が一つ上がった頃、私は生き残った自分がすべき事をその意味を考えて戦うようになっていた。

―――そして、一つの軍令が下った。

それは、帝国軍松本駐屯地への転属命令だった

坂元中隊の副官、尾崎は私達を含め新たな戦術機中隊――第889戦術機中隊、通称:尾崎中隊を設立しそこに属し私はその中隊の次席指揮官に任命された

『死の8分』を生き延びた……いや、生き延びた者としての使命を果たす為、私達は大陸を後にした。

 

 

 

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