トータルイクリプスサンダーボルト 外伝   作:マブラマ

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今回は坂崎中隊長視点からの話です


OH MY LOVE

私の名前は坂崎都

見ての通り日本帝国軍本土防衛軍佐渡基地司令部第三戦術予備部隊A中隊の長を務めていた女性衛士だ。

幼少の頃、私は親友の大倉鈴乃が同じ年頃のいじめっ子のリーダー格に目付けられ虐められていたがそれを割り入ったのは私だ

心は優しき正義感を溢れて困った人は放って置けない

男相手でも腕っぷしが強かった

「もう終わりか?情けないな。私の大事な親友を虐めた罰よ」

「う…うわぁ。くりちゃんの顔が凹んじゃったよ!?」

「だから言ったじゃない!青鬼には手を出すなって!」

地元の阿保共は私を最強の女やら青鬼やら狂犬やら勝手に騒いでた

決して偉そうにしてた訳じゃない

喧嘩だって全部売られた喧嘩だ

そんな矢先、帝国陸軍横浜衛士学校の門を叩き衛士界隈に入った。

界隈に入ったとはいえまだ未熟の訓練兵。

BETAという存在は世界がどれだけ蹂躙され国土を荒されたかを教官から頭に叩き込まれた。

そこでも曲がった事してる輩は必ずしもいた

「お前、顔ムカつくしぶっ殺すわ」

「うあああ……」

「鼻折っちまえー」

特に弱い者虐めとかは見過ごすことは出来ない

「おい、今すぐやめろ。その人に土下座したら許してやる」

「はあ!?」

「誰なのお前?馬鹿なの?」

「ムカつくほど美しい顔してんな。お前の顔面を不細工にしてやるよ」

でも残念なくらいに世の中は腐った奴ばかりだ

私はそのいじめのリーダーらしき訓練衛士を顔面陥没させた

「ハァ!」

ボガァ

「グエエエエエエ」

そして地面に叩き付けられる形で倒れる

それを見た他の訓練衛士はビビっていた

「おい、お前もやるか?」

「い、いえすいませんでした!は、鼻が陥没してる!」

「ありがとうございます」

真の強さを持つ者は弱きものを助けるんだ

ただ講義の方は何とかついてきた。

「坂崎!貴様、配属相談くらい来い!」

「行ってもよく分かりませんよ南雲教官」

衛士訓練学校を卒業し正規の衛士として活躍させたのは殆ど鈴乃や華太のおかげみたいなもんだ

ギリギリのラインで総合戦闘技術評価演習を合格した私には戦友が増え、そして散っていった者もいる

「因果応報ってあったな――お祖母ちゃんの言う通りだ」

私達が配属された中隊の長であった坂元は『九一六作戦』で戦死

原因は仲間割れで坂元の悪評を知った中韓連合軍の衛士の一人によって葬られたのだ

訓練衛士を過剰な体罰を繰り返したバカは衛士の恥晒しだ。

あの男は死んで当然だった。

身勝手な理由に隊員を見捨てた時点で衛士失格だ

この世界は人の命なんて羽のように軽いと私は実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして正規衛士になってから2年

私は松本駐屯地の屋上で隠れて煙草を吸ってる華太を見かけ彼に近付いた

気配を消しそっと手に持ってる煙草を取り上げる

「ここは禁煙だぞ、華太」

「…外なら吸っていいだろ」

「喫煙所で吸え」

手すりを両腕に乗せつつ景色を見つめた

「華太、私の事どう思っている?」

「ん?」

「……」

私は華太の顔を見つめつつ誇らしげな笑みを浮かべる

「ふふ、華太隠さなくてもいいんだ。ここなら今2人きりだし言いたい事を素直に言っていいんだ」

「正直に言っていいか?」

「いいぞ」

「俺達って衛士だよな?中国での戦闘で分かったことがある」

そう言って華太は私の顔を見て話す

「上官だった坂元大尉がいなくなって、悲しいという気持ちはなかった。あの男は衛士に向いてなかった―――新井等の他の衛士達も皆死んでいって…任務は果たせてなかった」

と寂しげな表情で沈みゆく夕陽を見て話した。

「お前は任務を果たした。ただそれだけの事だ。仲間が死んでいってその仇を取るのは誰だ?」

「……」

「私達衛士だ。いつ日本がBETAに侵攻されるのか分からない――――それを阻止するのが私達の役目だ」

いつBETAに日本を侵攻されるか分からない……いつ故郷が失われるのか分からない

私の心の中で恐怖を襲い掛かり深い悲しみを抱いていた

「そうか……俺はまだアンタの気持ちを伝えられねえ」

「どうして伝えられないんだ?」

「いつアンタがいなくなるか…怖いんだよ。俺はアンタがいなきゃ強くはならねえ」

華太……お前って奴は

「だったら今からやればいい。つまり私と一緒にいたいと言いたいんだな?」

私は華太に揶揄い優しい笑みを浮かぶ

「ば、馬鹿野郎!そんなんじゃねえ……俺が言いてえ事はアンタと一緒に異星起源種を一匹残らず殺していきたい。それが本音だ」

華太は私達と一緒に戦いたいと強く思ってる

2人きりだ―――ここでキスするのも一つの手だが今はそこまではいけない。

次の瞬間、華太は帝国軍のBDUの右ポケットに入ってる煙草の箱を取り出そうとするが

「ダメだ」

「おい!」

私は一瞬で取り上げた

しかし、逆側に入ってるポケットからも

「阻止だ」

「何で分かったんだ!?」

隙を作らず煙草の箱を取り上げた。

「華太、お前…煙草を1日何本吸ってるんだ?」

「え……?」

答えられないか。

少しカマをかけるか。

「私がお前の煙草を吸ってる数を当ててやろうか?」

「…当ててみろ。当てれるものならな」

ほぅ、言ったな?

「私が当てたら華太、お前は私の恋人になる権利をやろう」

「は?」

「私の事は戦友として好きだろ?」

「勝手にしろ」

「では当てるぞ。お前が煙草を吸ってる数は――――」

私が答えを言おうとした時、坂元の副官であった尾崎大尉が私達を呼びかける

坂元の死後、彼は大尉に昇格していた。

そして私は副官。鈴乃は次席指揮官に任命された

「坂崎、小峠。少し付き合ってくれ」

私と華太は言われるがままに尾崎大尉に付いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議室に集められたのは尾崎率いる中隊のメンバーだけだ

何をやらされるんだ?

「山梨の北富士駐屯地からの要請があった。雄武真理教という教団の名は知ってるな?」

尾崎は鋭い目線で真剣に語る

「はい、確か麻元正平率いる新興宗教団体ですね」

私は強張りつつ口を開いた

「そうだ。その雄武が東京でサリンを捲いたらしい」

その言葉は驚愕せざるを得ない一言だった。

「それを作った相手は高学歴の信者で麻元を極度に心酔している幹部だ……彼奴等はやり過ぎた。今回ばかりは手加減無用だ」

そう、尾崎大尉は教団の施設を襲撃しようと試みていた

「奴等は戦術機を保持している。無論これは血塗れた市街戦になる事を覚悟して挑め!」

今回の作戦は対人戦だ

日本帝国軍衛士のプライドをかけて、一方的な暴虐的な戦いを強いられるのだ

尾崎大尉率いる中隊が相手にするのは宗教団体の信者の一部

所謂過激な信者だ。

奴等は銃やサリンなど密造し戦術機の製造ラインを設置してまで国家転覆を企てているだろう

一般的な社会構造はピラミッド型であり軍で例えるなら国のトップである征夷大将軍殿下に兵士達が服従する構造だが、雄武はピラミッド構造あるが、それは私達には理解しがたいものだった。

現時点で日本はいつBETAに襲われるか分からない状況であり海外派遣で現地にいる他国の衛士達と共闘している。しかし奴等は日本に貢献しないどころか国家転覆を企てている。

それに対し雄武はキリスト教恭順派のバックアップを受けており、戦力を増強し拡大している。

そんな雄武だが元々はヨガ教室であり当初は超能力の獲得を目指すアットホームで明るいヨガ教室だった

その後、宗教化し信者が増えるも麻元を疑った信者達は次々と脱会。かつて在家信者が死亡する事件が発生しとある弁護士一家が殺害される事例もあった。

そんな奴等が日本を乗っ取ろうとしている

その信者の中には現役の衛士がいた。

奴等舐めている……私達がこの状況を黙って見過ごすわけにはいかなかった

「いいか!俺達尾崎中隊は面子が命だ。連中にたっぷり苦しめたうえで地獄で後悔させてやれ!」

「了解しました!」

対人戦だ―――BETAとの戦闘とは訳が違う

腹を括るしかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして私が教団が所有してると思われる戦術機の破壊する担当になった

「華太、武器の準備はいいな?」

その机の上に並べているののは89式5.56mm小銃と9mm拳銃、マークII手榴弾があった。

「ああ、抜かりはないな。鈴乃は?」

「ええ、この数なら問題ないわね」

尾崎大尉のお墨付きだ。

上層部に駆け込んで武器を調達したのだろう

こんなに武器が揃えられてる

「都、武器を持ち込める数は限られる。一つだけにしましょう」

「分かった。予備弾倉は必ず持っていけ」

「了解だ」

「ええ」

それを聞いた華太と鈴乃は頷いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、上九一色村に到着し奴等を確実に地獄を落とすため複数の部隊が各自に散開した。

「尾崎中隊長、教団の施設と思われる建物が見えました。そろそろ開始時間が迫っているかと」

《久々の対人戦じゃ、血が滾る…》

装備が違い過ぎる―――信者が何人いても無駄だ。

死体が増えるだけ

この男は狂人だ――――異名はマシンガンの尾崎

機関銃マニアでその腕はピカイチ

しかも…戦闘が始まると異常人格になる

とんでもない中隊指揮官だ……が味方にいてくれると頼りがいがある

《躊躇すんなよお前等、やるかやられるかだ》

教団の長である麻元は警察に任せるとして、私達の狙いはあくまでも雄武真理教を無力化

次の瞬間、赤いマーカーが光り、警報音が鳴る

接敵だ!

識別データは……?

《邪魔するぜええええ》

ガガガガガガ

尾崎大尉は突撃砲で120mm弾を放ち接近してくる戦術機を破壊した

その戦術機をよく見ると、ソ連で製造されたバラライカだ

数は大隊規模

そして流れていくように私達は教団の施設の一つである戦術機格納庫に乗り込んだ

《どうもー!招かるざる客でーす!全員今日が命日でーす!》

「貴様等、全員機体から降りて武装解除しろ!」

《何だあ!?》

《に、日本帝国軍の撃震だ!!》

無謀な奴等は突撃砲を構え私達に向かってきたが…

《撃てるものなら撃ってみろ!》

《若いのに可哀想にねー!》

ガガガガガガ

《ハチさんおいでー!》

《うがあああっ!!!》

歯向かったら無駄死にするだけだ。

尾崎大尉に蜂の巣にされるだけ……

《君達は調子を乗り過ぎました!命乞いをしても無駄でーす!》

尾崎大尉は突撃砲を構え狙いはバラライカ1機に定める

《地獄の底で衛士舐めたことを後悔してくださいね…》

敵前逃亡する者や泣きながら命乞いをする者もいたが…

《ひいいいい!!たっ、助けてくれぇ!!》

《ダメだ、お前等は調子乗り過ぎた》

ガガガガガガガ

《うがあああ!》

《おかああああさああん!!》

勿論誰一人も生かしておくわけにはいかない

尾崎大尉はバラライカ35機撃墜した後、隊長機と思われるPF型に乗ってる信者は最後まで抵抗したものの私と鈴乃、華太を含め4人で挟み撃ちし追い詰め両脚を直撃され倒れた

そしてコクピットハッチを無理矢理こじ開けさせ管制ユニットの中にいたリーダーらしき男の姿があった

尾崎大尉は管制ユニットから降り、隊長機の管制ユニットに近づき日本刀を奴の額に突きつける

「ひぃ、許してくれ!お願いだ!!」

「お前のせいで罪なき国民がトラウマを植え付けられ死んでいった者がいるんだよ。落とし前付けさせてもらうぜ」

「うで…腕を?腕を斬るのか?いやだぁ、やめてくれ!」

「誰が腕って言った?袈裟斬りだよ」

「ひいいいいい!」

男は恐怖を植え付けられ怯えていた

「おい、最後のチャンスをやろう」

「え?え?」

「君らがいる組織の戦術機部隊を全員ウチの所に入りなさい。ならもう少し生きられるよ」

「はい!はい!はい!だ、脱会して日本帝国軍に入ります!」

尾崎大尉の提案に教団の戦術機部隊を仕切っていたリーダーは壊れた人形のように首を縦に振った。

結局、武力で教団の信者だった人間を配下に付けた

人材確保が狙いだったのだろう

「やっぱ殺したくなってきた」

「ここにいる信者達はみんな入れますから!助けてください!」

どうせこの信者は若者を紹介した時点で落とし前は取るんだろうが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何時間経ったのだろうか…私達が教団の戦術機を無力した中で、教団の長である麻元は逮捕されていった

「後片付けは頼むわ」

「は!」

遺体処理は警察に任せるか

何れにしてもBETAがいつ日本に来るか分からないことは確かだ

戦死者が増えるどころか地球の人口が激減されるほど軍は人材不足だ

私もそろそろ……か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10日後、小峠の弟分である北岡が血相を変えて私の自室に飛び込んだ

「坂崎中尉、大変です!」

「どうしたんだ?」

「教団の連中の残党に尾崎大尉が撃たれました!」

「尾崎大尉が!?」

何と雄武の残党の一人に尾崎大尉が銃撃されたというのだ

尾崎大尉は衛士界隈において狂人だ

一度狙った獲物は外さない……。

しかし上層部の誘いによる会食後、無防備のところを襲われ重傷を負ったという

帝国軍は人材不足

これ以上死人を出すわけにはいかない

この話を豊田司令官に持ちかけたが

「豊田司令、尾崎大尉が銃撃されました!」

「何だと?」

私は尾崎大尉を撃った犯人を捜そうとしたがそれを待ったとかける

「ちょっと待て」

豊田司令官は冷静を装う

普段なら生意気な衛士が不躾な言葉を投げかけただけで激昂し瓶ビールを頭の上に叩き付けられるほど手に付けられない狂気的な男だ

あの豊田司令官が冷静を装っている―――不気味だ。

「教団の残党狩りは警察に任せればいい。ウチが介入したら痛恨だ」

「しかし!」

確かに帝国軍は人材不足を喘いでいる。これ以上喪うのは死活問題だ

しかも北岡によれば、撃った奴は教団の警告を無視…単独で暴走したことによる襲撃だったらしい

「俺が教団の残党の連中と対話しに行ってくる。上手くいけば我々日本帝国軍と協力しキリスト教恭順派との縁は切ってくれるだろう」

「成る程…」

「坂崎中尉、尾崎大尉にはまだこの件は伝えるな――日本の未来を考えれば下手すりゃ内戦が起きるかもしれないからな」

「りょ、了解しました」

こうしてこの件は、豊田司令官が取り持つことになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、豊田司令官は大仕事を成し遂げた

「示談成立した。それに既に脱会した元信者も異星起源種と戦う決意を見せていたぞ」

「本当ですか…!?ありがとうございます」

上手く教団残党側との話を纏め、脱会した元信者を衛士として戦力を加える事に成功した

穏便に済ませた……と思う。

豊田司令官は今回の件で彩峰中将を事前に説得していた

何手も先を読む豊田司令官…根回しは完璧だった

「今は頭に血が昇ってるから本人にはまだ言うな。尾崎を撃った跳ねっ返りも教団から見放され今は塀の中だ。懲罰部隊に入らねえ限り一生出てくることはねえ。理解してくれる筈だ」

豊田司令官の性格とは思えない完璧な立ち回りが見えた……

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は一件落着―――そう思っていたがこの問題は一筋縄ではいかなかった

なんと豊田司令官が説明する前に尾崎大尉の耳に示談の情報が入っていた

「クソが…豊田ぁ、ミンチにしてやる!ゴフッ!」

尾崎中隊にいる隊員が情報を聞きつけ耳に入れてしまった。

「俺が撃たれて示談なんぞあり得るか!雄武は全員蜂の巣だろうが!」

「そうですよね!ミンチにしてハンバーグですよね!」

尾崎大尉は自身の了承なしに示談が進んだことに遺恨を抱いていた。

そして尾崎大尉は怒りのあまり暴走し始める

「豊田の野郎……まさか自分が五摂家の煌武院悠陽を気に入らせるために雄武と手を組みやがったんじゃあ」

「確かに!それはあり得ますね!」

今回の襲撃は全て豊田司令官が画策したものだとまで言い出した

堪忍袋の緒が切れた尾崎大尉はもう誰も止められなかった

「彼奴…ミンチにしてメンチカツにするわ…ゴホッ」

「えっ、その体でですか!?―――――――――すげえ…マシンガンの尾崎はやっぱり不死身だ」

阿保な部下の煽りもあって尾崎大尉はボロボロの体のまま医務室から姿を消した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、事件が起きた

「豊田ぁ、テメェやってくれたなぁ」

「尾崎か?テメェ何を!?」

尾崎大尉はAR-18を持ち構え豊田司令官に銃口を向ける

尾崎隆雄という衛士は狂人……一度銃を握ったら最後…引き金を引くまで外さない

そして、次の瞬間

「ブンブンブーン!!鉛が飛ぶぅぅ!!!」

ガガガガガガガ!

「うがあああああ」

豊田司令官は数百発喰らって即死。更にその流れ弾で駐屯地に配属されたばかりの別部隊の女性衛士も1人亡くなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍内での殺人であり、当然ながら軍事裁判にかけられる

弁護士は必死に尾崎大尉を擁護したが流れ的には検察側に傾いていく

そして……

「松本駐屯地司令の豊田は国の為に動いたと断言はできる。が被告人は豊田が画策したものと思い込み殺害。しかしそれは誤信―――心神喪失とは程遠い極めて遺憾な行為でもある」

「申し訳ありません、カッとなってやってしまいました」

だが裁判官は何かをグッと堪えてるようだった

仲間を殺した尾崎大尉が待っているのは当然『死刑』―――誰もがそう思っていたのだが

「判決を言い渡す」

そして裁判官が下した判決は……

「主文、被告人は征夷大将軍斉御寺経盛殿下の名の下に第889戦術機中隊の中隊指揮官の権利を剥奪と同時に解任。当中隊は解散を命じる」

「え?」

裁判官の判決は予想外の判決内容だった

「被告人は取り返しのつかないことをしてしまったことは事実であり松本駐屯地司令官の豊田が被告人に相談なしに動いたことは事実である」

尾崎大尉は裁判官の前でお辞儀した

それは征夷大将軍殿下の最初の恩情であり最後の恩情でもあった。

指揮権剥奪は軍隊での重い処罰の一つである。

指揮権剥奪後、今回の件で全国にある基地や駐屯地に広まりその事実が拡散されこの知らせにより当事者は完全に衛士界隈から追放

今更訓練兵からやり直しできない元衛士は居場所がなく路頭に迷う事になる

尾崎大尉が率いた第889戦術機中隊は解散していった

こうして帝国軍の内部でこれから期待してた部隊を喪ったことで征夷大将軍の心の傷は大きかった

尾崎大尉の失脚が影響で軍の士気は下がり私達は海外派遣での任務の準備の為、多忙を極める事となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半年後

松本駐屯地中隊長執務室

 

私は尾崎大尉の後任で中隊指揮官に任命され、坂崎中隊を設立する

無論、階級は大尉に昇格

鈴乃は次席指揮官、華太は一階級昇進し中隊での教育係に任命した

所謂副官である

だがそれを喜ぶ事は出来なかった……尾崎大尉が誤信しなかったら私は中隊指揮官になれなかったかもしれない

彼が志半ば果たせなかった事を私が引き受ける

今後の事どうするか考えようとしてる時、駐屯地にいる憲兵が中隊長執務室の扉を叩き「失礼します」と一言を添え、私は入室許可を得た

そして憲兵が入り私に今の現状を報告した

「坂崎大尉、おめでとうございます―――と言いたいところですが一つ事態が発生していて軍内は大騒ぎになっています」

「ん?どういう事だ?」

「……昨日、雄武はキリスト教恭順派との関係を断った人達と恭順派との関係を継続している信者と別れて派閥が生まれたようで」

尾崎大尉のおかげで雄武はキリスト教恭順派との縁は完全に切った。が、それを納得いかない信者もいて当然の事か――――麻元がいなくなってからの教団は完全に荒れて内部分裂してるらしい

しかしそれは私には関係ない事だ。あの教団とは二度と関わりたくないからだ

「半年前に連中は無力化した筈だ。尾崎大尉がいなかったら日本はどうなってたか考えたくもないな」

「ええ、そのキリスト教恭順派との関係を継続している派閥である『麻元派』が好き勝手暴れてるようで」

「何だと?」

阿保な信者達が松本市街地を荒らしているというのだ

今回の奴等――『麻元派』は日本国民を恐怖に植え付けようとすれば相手が誰だろうが容赦ない拷問を科すという

「その中でも武闘派で一人ヤバい奴がいるそうで」

「武闘派……か」

この話、何やらキナ臭い匂いがするな

引継ぎがまだ終えていないという時にトラブルか……

「つまりテロ組織との関係を続けたい信者の一派がこの街で暴れてると?」

「警察も動いてるのですが、進展がありません」

「……上層部に掛け合ってみるよ」

この国の土地を荒らす奴は断じて許さない。

それがBETAであってもだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上層部に掛け合った私は「警察の手には負えないから教団にいる武闘派の制裁は坂崎中隊に任せる」と命を受け、相手は少人数であることから私と鈴乃、華太の3人で奴等の制裁を加えに行くこととなった

我々日本帝国軍を舐めるとどうなるか、連中に学んで貰わないとな

私達3人は撃震で松本市街地に到着した

《都、ここで教団の連中が襲撃するというんだな?》

「警察の捜査でここに襲撃されると情報あったからな。確証はないが…連中を葬るしかないな。それがBETAであってもだ」

《……》

授業料はその命だ。

次の瞬間、白く塗装された機体が此方に接近してくる

バラライカではない……あれはチボラシュカだ!数は…3!

教団の連中はまだ戦力を温存していた。

接敵警報が鳴り厳戒態勢に入る

「白いチボラシュカ……教団『麻元派』だ!」

ここは市街地……拙い、住民に被害が被る

私は2人に市街地から離れるよう命令を下す

「鈴乃!華太ォ!市街地から離れるぞ!!ここでの戦闘は無理だ」

そしてフットペダルを踏みつつ跳躍ユニットを最大全速で市街地から離れ直進

連中は私達の後についていく形で追いかけてきた

《都!どうするつもりなの?》

私はここから離れて移動する場所を模索していた

何処か…何処か市民の被害を被らない場所は……!?

《公園だ!松本と塩尻に跨って位置している場所に行くべきだ!》

市境を跨ぐ公園………公園!?

長野県松本平広域公園!

「華太、助言感謝するよ。そこに移動するぞ!2人共私のケツについて来いッ!!!」

教団側の機体が追いかける。

チボラシュカは1.5世代機……当然だが撃震より性能は上だ!

だが、旧型の機体でもチボラシュカに圧倒出来た中隊がいるんだ!彼女の真似は流石にできはしないが私なりにやって見せる!

《撃震は第1世代機よ!このままでは公園着く前に追いつかれるわ!》

「背部兵装担架に収納してる突撃砲があるだろ。それを活用すれば…」

《分かったわ》

鈴乃機は背部兵装担架に収納してる突撃砲を教団側のチボラシュカに銃口を突きつけ後ろ向きで120mm弾を放つ

命中!

撃墜された1機は松本駅駅舎前に不時着し崩れる

残り2機だが、追いつくのは時間の問題だ

数時間経過し、長野県松本平広域公園に到着

そして公園内で…

「到着したな」

教団側の機体が立ち塞がる

互いにピリピリした雰囲気だ

私は教団側のチボラシュカに乗ってる衛士の一人に説得し始めた

「私は日本帝国軍松本駐屯地坂崎中隊の坂崎都大尉だ。貴様等の野望は既に途絶えた―――投降しろ!命だけは助けてやる」

それに対する答えは……日本人の誇りが全くないと過言と言っていい言葉だった。

《尊師様は我々を楽園に送り精神世界に彷徨う崇高なお方だ。我が教団の理想実現を邪魔するなら貴様等は尊師様の敵だ!》

此奴は本当に日本人なのか疑わしい

だが自分の意思なしに教団を入らせた家族もいる。その人達こそが被害者だ。

「貴様等の所為で長い苦しみの生活を送ってるんだぞ。死者も出ている……他者に気遣いせず我欲の為に地下鉄にいた人達を死に追い込んで何とも思わないのか?家族を不幸にして何しているんだ?」

無駄なのは承知で私は奴等に後悔の念を聞いた。しかしやはり骨の髄まで腐った輩と確信した

《霞が関にサリンを捲いたことは心からお悔やみ申し上げている。だがこれは尊師様が望んだことだ―――尊師様がこの国をお導きなければ日本は滅びていく。ハルマゲドンが襲来し人類を滅亡していいと言うのか?》

《そうですよ、尊師様は日本に必要なお方……そう、革命は犠牲が付き物だ。犠牲になった13人はお気の毒だと思ってますが、現体制をのさばらせた征夷大将軍殿下に責任があるのです!》

ふざけるな……貴様等の所為で人類は

私は奴等に対し無慈悲で突撃砲を構え銃口を向ける

「犠牲が付き物だと………」

怒る狂うほど咆哮した

「ふざけるな!貴様等がやった行為は宗教団体とは到底思えない。罪なき一般市民を吹っ飛ばしたら、それはただの外道だろうが!」

奴等は怯まず私達に銃口を向け120mm弾を放った

「鈴乃、華太。やるぞ!」

《了解したわ!》

《遠慮なく行かせて貰う!》

散開し奴等が放つ弾丸を躱しながら跳躍ユニットを最大全速で飛行しつつ最短距離で詰める

BETAと戦った経験ある衛士とただ対人戦しか経験がない衛士の違いを奴等に分からせてやる!

私はチボラシュカ1機を銃口をコクピットハッチに突き付け

「残念だよ―――貴様等が協力してくれれば命奪わずに済んだのに」

《え!?はや!!》

そして36mm弾を0距離で射撃した

《ぐはぁ!》

管制ユニットに貫通した機体はそのまま倒れ込んだ

「……どんだけ素晴らしい理想か知らないが、無実の人を吹き飛ばしたらダメだろ――――大馬鹿者が」

残り1機は鈴乃と華太によって既に撃墜されていた

これで終わった――――筈だった。

芝生グラウンドの奥から黒と黄色の塗装を施されてるアリゲートルの姿が現れた

コクピットブロック部分だけ黄色い塗装だ。

そしてモニターから大柄の男の顔が表した

《おいお前等、俺の仲間に何やっちゃってんの?》

「お、尾崎大尉……?」

《え…そんな、嘘でしょ》

《尾崎…大尉》

何とそこに現れたのは帝国軍を失脚し衛士界隈から追放した尾崎大尉だった。

《斉御寺のジジイが衛士界隈から追放しやがるからあれから大変だったんだわ》

「大尉……」

行く宛もなく浮浪し続けた挙句、雄武の『麻元派』に行き着いた……という

《悪いがお前等にはここで死んで貰うわ》

「……温情で生かしてくれた征夷大将軍殿下に何を言ってるのですか?」

……無言、静けさに浸る。

「大尉!」

私は尾崎大尉と説得を試みるが華太が割り込む

《こんなクズは都、アンタの出番じゃあない……俺にやらせてくれ》

征夷大将軍殿下の気持ちを踏み躙り、雄武に身を寄せ裏切った……外道に成り下がったこの男―――尾崎隆雄は………ここで消すしかない

マシンガンの尾崎……私達がまだ正規衛士に任官された時に色々と教えてくれたから知っている。

 

「ヒヨッコだったお前等にミンチできるなんて……最高じゃねえか」

 

這いつくばる姿を見て対人戦とBETA戦闘で最初から下から蜂の巣にすることを…

そして私は華太に発砲命令を下す

「華太!撃て!!発砲を許可する!!」

命令を下した後、華太はドンピシャのタイミングで飛んだ。

《ハンバーーーグ!!》

右旋回し120mm弾を芝生に向けて放った!

アリゲートルは第二世代機だ

撃震では対処しきれないと思ったが………。

一斉砲撃する尾崎大尉は華太機……ではなく鈴乃機に狙いを定めるが鈴乃はそれを回避しきれず右腕に持ってる突撃砲を壊された

私は尾崎大尉と対峙する。

《いい度胸だな!だったらお前の頭と腹に鉛玉ブチ込んでやる!ハンバァァァァァグ!》

頭と腹に鉛玉をブチ込むと言いながら突撃砲を下に向けて跳躍飛行しつつ私が乗ってる機体を連射した!

《ブンブンブーン!鉛が飛ぶッ!!!》

この男の戦闘スタイルは見抜いている

私は尾崎大尉のアリゲートルの頭部を120mm弾で破壊する

メインカメラが壊れて視界が見えなくした

《それでやったつもりか?あぁん?》

だが、尾崎大尉は怯まず突撃砲で一斉射撃し続けるが…残弾表示が出る

《ッ!―――チィッ、残弾0か…》

私は距離を詰め突撃砲の銃口をアリゲートルのコクピットハッチに突き付ける

「―――終わりです……投降してください。上層部には上手く丸め込めますから」

投降を呼びかけたが、尾崎大尉は応じなかった

最期まで……。

そして――――

《投降はしねぇ――》

その時、尾崎大尉は短刀を持ち構え私の機体を襲い掛かるが…

《都!》

華太が私を斜線上から回避させた

《尾崎大尉……いや尾崎の兄貴。アンタは俺達にとって頼もしい兄貴分だった。だがな、一般人を巻き込むなんてただの外道ですよ!》

速度を上げ、突っ込みつつ突撃砲を構え

《死ね―――裏切り者が!》

36mm弾を放ち尾崎大尉が乗るアリゲートルは管制ユニットに貫通した

《ぐげえええええぇっ!!》

尾崎大尉の断末魔がこだまし動かなくなると爆散した

「華太、よくやった―――これは即死だな」

《ハア、ハア、ハア……ああ》

この男は最早生きていても仕方がない―――恥も任侠も……衛士の心得を捨てた人間だ。

こうして今回の件は終わった。

しかし、心を濁ったものが残る。これが私達が描いていた衛士の世界…か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尾崎大尉の死後、私と鈴乃は帝国陸軍白陵基地に左遷された

上層部の命令は遂行したが尾崎大尉の殺傷に関しては過剰防衛であると一部の将校が指摘された

華太とは暫くお別れになるが、弱気は言えない。

「暫く華太と会えないのは寂しいが…」

そして中隊の長を代理を務めるのは華太だ。

彼に中隊の長を任せられるかは不安だが上層部が決めた事だ

些か従うしかあるまい

「『小峠中隊』か……笑わせてくれる」

坂崎中隊は継続、副官は空席、次席指揮官は北岡が代理を務める事になった。

少し悲しい表情で駐屯地内で歩いたら、華太が声を掛けた

「都…すまない。俺が力弱かったから…」

「いいさ、私がいない間中隊は任せたぞ」

「勿論だ――俺はまだまだだな」

私は他の人間がいないか周りをキョロキョロと見て確認した後、和やかな笑みで華太を私の胸を押さえ当てる形でぎゅっと抱き締めた

「!?」

「お前なら出来る。胸を張り続けていいんだ」

「おい、当たってるぞ」

「気にするな」

「いやいや、良くねぇから!」

と言ってるものの、華太の顔を見ると小さな笑みを浮かべてるが目が笑っていない

「華太、寂しいのか?」

「寂しくなんかねぇよ」

「本当に?」

「……」

彼奴、無理をして振舞おうとしているな

「本当は寂しいんだろ?」

「寂しくなんかねぇ!」

「嘘だな」

「嘘じゃねぇ…俺は、都――今まで黙ってて悪かった。俺は田頭組の構成員だ。本当のこと言ったらお前に嫌われちまうのが怖くて…俺は一人でも生きていける。苦しい事なんか何もない。結局一人でいいんだとかほざく奴はいるが、誰かに支えなきゃ生きていけない―――今の世の中ではヤクザも徴兵されるからな」

「……寂しくないのか?」

「寂しくない」

「寂しいんだろ?」

「寂しくねぇ」

「……嘘を吐け」

私は華太に言い放った

それは底冷えのする低く濁った声だった

この目の奥にある寂しい感情は……

「寂しいんだな」

「寂しくはねぇ」

「嘘を吐くな」

「嘘じゃねぇ」

「寂しいなぁ」

「寂しいさ!」

その震えた声は……嘘を吐けないほどの哀しさを表していた

「俺はお前の行動が正しいと思ってる」

「?」

「尾崎大尉がやった事は衛士としての以前に恥も任侠を捨てた人間だ。擁護する気はねぇ。本来なら正当防衛だ」

「そうか」

私は抱き締めたるのをやめ、華太の顔に近づく

「目を瞑ってくれないか」

「お前、何を」

「いいから早く目を瞑れ」

そして互いに目を瞑り唇を重ねた。

3分後、そのまま唇から離す

「さよならとは言わないよ。また会える時が来る」

「……」

数日後、私と鈴乃は左遷先でデスクワークを務める事になり細々と勤務していった。

 

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