私の名前は坂崎都
彼氏を作ってデートするなんて夢のまた夢の妄想してる日本帝国軍の女衛士だ。
私が子供の頃、天国のお祖母ちゃんに教わったことがある
「あんたは人よりずっと強く生まれた。だから弱い人を守るんだ」
「うん!分かった!」
だから私は昔から弱き者を助ける事が自分の責務だと思って生きている
だが残念なことに世の中は腐った奴ばかりだ
自分の利益しか考えない奴等が多々いる
特に斯衛の衛士に対して不躾な行為をする輩だ
「おい女、少し付き合えや」
「ぶ、無礼者が!私が誰だと思って話しかけている!?」
「いいから付き合えや!」
「きゃぁっ」
この状況を見過ごす事など出来ない
「おいコラゴミ衛士が、貴様等は完膚なきまで潰す」
「誰この馬鹿。俺ら斯衛軍の衛士だけど」
「お前も混ぜてやろうか?」
私は奴等に拳をフルスイングで顔面陥没させた
「斯衛の衛士が斯衛の女性を犯して人生滅茶苦茶にする気か!」
ボガァ
「ぐげええええええ!!」
「私を犯そうとしてどういう神経してるんだ!!」
「ひいいいいい」
もう一人の顎を目掛けて殴ろうとしたが、ピタッと止めた
「え…?殴らないんですか」
「反省したなら許す。さっさとここから立ち去れ」
「す、すみませんでした~(仲間呼んでぶっ殺してやる)」
そして奴の背中に目掛けて拳で叩き付ける
「これが貴様のやった事だ!!」
バキ
「ぐげええええ!!」
奴は気絶し後頭部を見ると見事に陥没していた
「カカカカ…」
こんな下衆を逃がすわけにはいかない。罪もない斯衛の女性衛士が味わった痛みを味わえ
「ほら、世の中は酷い人間ばかりではないから気を付けろよ」
「はい、心遣い感謝します」
「彼奴だ!捕まえろ!」
まあ、相手の怪我が酷過ぎて最近警察の世話ばかりなっている……。
気が付けば尾崎大尉の死から1年経過し私は左遷先の場所…帝国陸軍白陵基地でデスクワークに励んでいた
無論鈴乃も一緒だ。
「暇だな……」
暇だ。それしか言えない退屈の日々が続いていた
そんな時だ、一人の憲兵が私の元に訪れ話しかける
「坂崎大尉、今すぐ格納庫に来てください」
「何だ?」
「とにかく来てください」
不穏な空気が流れて来たな…
「分かった、今行くよ」
私は格納庫に向かい、そこには2人の男が喧嘩していた
あの2人、どこかで見たような……いや気のせいか
2人に近付くと怒声が響いてきた
「久我ぁぁぁぁぁ!テメエだけはぶっ潰す!」
「紅林……潰されるのはテメエじゃああ!!」
凄い気迫だがこれは力比べをしているのか。
私から見ればどう考えても喧嘩にしか見えない
他の衛士達は傍観してるようだ
…………制裁しに行くか
「何をやっている!?」
そして2人は喧嘩をやめ私の方に振り向く
「え?坂崎大尉!?」
この顔と容姿……紅林と久我か
「すいません…お見苦しい所見せてしまって」
「良いんだ。で、何で喧嘩したんだ?」
紅林は久我と喧嘩した経緯を話した
「そうか…牛乳瓶の取り合いで」
「子供ですよね。面目ない」
全く、牛乳瓶くらいでなんだ?
すると久我は私に喧嘩を吹っかけて来た
「坂崎都大尉……少しツラ貸して貰いますぜ」
「私とやりたいのか?」
「だったら、何だって言うんですか!」
次の瞬間、久我は最短距離で無抵抗な私を詰めて来た
「最短距離でやらせて貰うぜ!」
「(速いな……!)」
拳が飛んでくる
私は衛士だ。単純な攻撃は通用しない―――そして
久我の顔面に目掛けて最短距離で拳を叩き付ける!
「フン!」
「ごばああああ」
モロに受けた久我は白目をむきそのまま気絶しつつ倒れた
「貴様もやるか?」
「え?いやいいです。上官を殴るなんてお天道様が許されないですよ」
紅林は物分かりがいい。模範的な衛士と言いたいが彼は問題度々重ねて起こしてるから模範的とは言えない。
私は紅林の首を囲うように背後から腕を回し抱き締める
「ちょ、坂崎大尉!?当たってますよ」
「お前は私と同じだ。良き衛士として励もうとしている」
ニッコリと笑みを浮かび紅林を揶揄った
「久我とはライバルなんだろ?何故紅林に固執するのか。気になるな」
「?あぁ、彼奴は…俺の腐れ縁みたいなもんですよ。訓練学校での白兵戦も決着付けなかった訳ですから彼奴はいつか俺と決着付けたいとこう思ってます」
「そうか……ここは帝国軍の基地だ。喧嘩ならよそでやってくれ。どうしてもやりたいと思えるなら私が相手になってやるぞ」
こうでも言わないとまた喧嘩になるからな
「俺なんかといいんですか?」
「いいんだ。やりたかったらいつでも構わないぞ」
紅林と親しみ交流を築き始めた私は久我の存在を忘れかけようとしたが、彼はすっと立ち上がる
「いてぇな…少し効いただろうが」
ほぅ、起き上がって来たか。私の鉄拳を喰らっても起き上がるとは。
「久我虎徹少尉…貴様の敗因を教えてやろうか?」
「……」
「たった一つの答えだよ。そう、私達衛士を見縊ったからだ」
私はそう言うと彼は怖気ついた顔でガクンと落ち込んだ。
「グウウウ…この俺が女に負けるなんて……!」
相当落ち込んでるな……。
「久我、もう一度私と喧嘩するか?」
「あ?そんなの決まってるだろ坂崎都大尉さんよ!」
私は格納庫にある戦術機、撃震1機を指にさした。
「戦術機での模擬戦はどうだ?」
さあ、彼がどう答えるかだ。
「久我、悪い事は言わねぇ。潔く負けを認めて坂崎大尉に謝った方が良いんじゃねえか?」
紅林は久我にこう言い向けるが…久我の目を見ると真っ赤な炎を燃え盛るような闘志があった。
「クク、いいねぇ~。上等だ―――受けて立つぜ」
「決まりだな。上層部に許可を得てからやろう。私が行ってくる」
「逃げるのは無しですよ」
「誰が逃げるか」
数時間後、上層部から許可を貰い私と久我は1対1で戦術機で模擬戦闘を行う事となった
互いに対峙し睨み合いしてる………訳ではない
久我は何故か自分に勝ち目があると勝手な解釈で確信していた
阿保が…私は神宮司と同じ戦場に行った衛士だぞ。自分の技量を過信するなぞ大きな間違いだ
審判は鈴乃が取り仕切る
モニター越しで久我がニヤリと笑みを浮かべ自信満々でこう言った
《アンタがどれだけ技量あるのか見せて貰いますよ坂崎パイセン》
「自惚れるな、貴様の実力はどれほどのものなのかを上官と部下の差を教えてやる!よぉく覚えとくんだな」
紅林は観戦だ
2人の対決を見届けたいのだろう
鈴乃が真顔で始めの合図を送る
「ではこれより坂崎都大尉と久我虎徹少尉の1対1での模擬戦闘を開始します!では始めッ!」
模擬戦が始まった
互いに突撃砲を握り構え直線的に120mm弾を放つ
そして躱す
36mm弾を放ち、また躱す
躱す躱す躱す
互いの機体は放たれる弾丸を躱し続けた
《どうしたんですかぁ?坂崎パイセン。逃げないでくださいよ!》
「貴様も逃げてるじゃないか」
《ッ!うるせえ!じゃあ本気出させて貰うぜ!》
久我の機体は速度を上げ120mm弾を放ち乱れ撃ちした
だがな、こんな攻撃当たるわけがない
私はそれを躱す
「動きが遅いぞ。貴様の本気はその程度なのか?」
私は久我に挑発をして怒りを買う
紅林なら絶対にそんな事しない筈だ。
右旋回して最短距離で久我機を詰める
「上官を舐めると痛い目に遭うんだよ」
《な!速い!?》
私の勝利と思われた。しかし久我は私の機体が持ってる突撃砲を蹴りで弾いた
「貴様……」
《油断は禁物ですぜ!》
久我機は突撃砲で120mm弾を一斉発射
私はギリギリで躱しもう一つの突撃砲を持ち構え36mm弾を放った
久我機は一切動くことなく私に目掛けて一斉射撃
「くっ…!このままでは」
右側の跳躍ユニットが損傷した
《飛べない豚はただの豚ってか!これでもう飛べない…一気に行きやすぜ!》
勝ち誇った表情で一斉射撃し続けたがここで弾が尽きる
残弾警報が鳴り響きそれを気付かずに撃ち続けた結果、残弾数:0と表示された
《な…残弾0だと!?》
突撃砲が使えないとならばそれを棄て短刀を持ち最短距離で私に詰める
《ナイフで抉らせてやる!》
右の跳躍ユニットが損傷、突撃砲は…弾かれたのもあるからまだ使えるか?
私は迎撃態勢を構え久我機に目掛けて36mm弾を撃ち続けた
「くっ……!」
だが、当たらない!
そして
《懐に入ったぜ!》
拙い!やられる……!
久我機が持つナイフで管制ユニットが当たる直前にバックステップで躱す
戦術機はこういう使い方が出来るんだぞ?
「(久我虎徹……貴様は将来有望で期待できる衛士だ。だがな、機体の性能を過信すると戦場だったら確実に死ぬぞ)」
私は最後まで弾が尽きるまで撃ち続けた
「掛かって来いっ!若造がああああ!!」
久我、貴様は本気でこの戦場で命を差し出せるか
BETAは対話など不可能……本気でやるなら私を倒せるはずだ
《砲台代わりに射撃ですかい!?このまま抉らせて頂きますぜ!》
残弾警報が鳴り響き、私の突撃砲に残ってる弾は……
「残弾0か」
弾はなくなった
そして久我と対抗すべくナイフを持ち替え突っ込んだ
「死んどけ久我ああああ!」
そして次の瞬間
ガチャン!
久我機が転倒し私の機体が握ってるナイフをコクピットブロックに突いた
《……!》
「貴様の負けだ」
《そ、そんな……馬鹿な…》
「これが上官と部下の差だよ。久我、貴様が戦場へ赴きBETAと遭遇したら死ぬぞ」
《……》
その光景を見た鈴乃は慌てて結果を言い出した
「…く、久我機戦闘不能!よって勝者は坂崎都大尉です!」
こうしてこの模擬戦は私の勝利で終わった。
数時間後、更衣室で強化装備を脱ぎ制服を着替え終えた私はPXに向かおうとしたが久我が私の前に立ち塞がる
「何だ?」
「坂崎パイセン、俺はアンタに惚れたんだ。だからその…」
ん?
「俺はアンタを超えるまで最後まで勝負する!」
久我、お前なりに私と鍛錬受けたいんだな
………いいだろう、受けて立つ
「ふふ、分かった。何度でも受けて立つぞ」
自分の能力を理解したようだな久我
頑張って成長しろよ。
そして強くなれ
翌日
紅林が私の所に訪れた
「坂崎大尉、少しお願いがあるのですが」
「紅林か。何だ?貴様が直接私のところに来るなんて珍しいな」
何の用で私に?
「単刀直入で言います。俺と付き合ってください!」
「……」
え?
どう言う事だこれは。
まさか………?!
私の眼にまた挑むような鋭い光が走り頬を赤らめつつ困惑した
「紅林、お前な……上官を揶揄うんじゃない。私はそう意図も簡単に落とせないぞ」
上官である以前に一人の女だ。
私は断りの言葉を言おうとするが、紅林は苦笑いをした
「大尉?あの、何か勘違いしているようですが俺が言いたいのはシミュレーション訓練に是非お付き合いしたいと」
そう言えば紅林は実戦経験はなかったな――――そういう事なら断る必要はないな
少し付き合ってやるか
「いいだろう。BETAでの戦闘シミュレーションは実戦経験積む前に大事な事だからな」
「ありがとうございます!それと、どうしても報告しなければならないことがあります」
?
「戦術機整備兵の筆記試験を合格しました」
「おお、それはめでたいな!」
「はい!戦術機の構造や仕組みを必死に勉強した結果です」
「よく頑張ったな。褒めて遣わすぞ――――ってお前は衛士だろうが、何故整備士の道を?」
紅林は整備兵になるつもりなのか?
―――いや、そんなことはどうでもいい。
私は紅林の話を詳しく聞いた
「戦術機はBETAと対抗できる人型兵器です。が、今のままだといずれ各国の戦線が瓦解し地球にいる人類は滅びます」
「……何故整備兵に?」
「弱き者を助けるためにはそれの補助が必要です。出来るだけみんなの力になりたい…そう思っただけですよ」
ふむ、成る程……衛士兼整備兵か。
「つまり貴様は衛士を務めながら整備兵やると言いたいんだな」
「はい!」
彼は本気みたいだ。
私は紅林の将来や人生を応援した
「貴様がいれば衛士や整備兵の数は補充できるだろう。頑張れよ――――1時間後、シミュレータールームに来るように」
「了解しました!」
紅林は敬礼してから返事をしてその場から立ち去った
1時間後、私は30分前に強化装備を着替え先にシミュレータールームで紅林が来るのを待ち構えていた
暇潰しに鼻歌でもするかと思ったその時、紅林がここに到着した
「待ってたぞ紅林」
「あ、坂崎大尉は先に来てたんですね」
「当然だ」
私は映画に出てくる優しい笑みを浮かんでるヒロインのような顔をし紅林を見つめた
「さぁ始めるぞ。貴様の実力を見せてみろ!」
彼の目は、闘志を燃やしてる目をしていた
本気で掛かって来いと言いたいところだが今回はBETA戦闘でのシミュレーション鍛錬だ。
互いに管制ユニットを模したシミュレーターに入り戦闘開始準備をした
起動は……鈴乃に任せている
《いつでもいけるわ!》
「すまんな鈴乃、付き合わせてしまって」
《紅林、分かってるわね?これは実戦経験を積む前の余興だと思えよ》
《了解です!》
ほぅ、凄くやる気が出てるな――――負けるわけにはいかないなこれは。
「始めてくれ」
鈴乃はシミュレーターの電源を入れ指示役を務める
私と紅林が入ってるシミュレーターの中で画面に映ったのはまさに建物が崩落し森林が燃えてる光景
「これをクリアするのは簡単じゃないぞ」
《クリアして見せますよ》
瓦礫の中から戦車級が現れた。
一匹だけじゃない…何十、何百…次々と出てくる
「早速お出ましだ。弾は無駄に…」
私は突撃砲で目の前の戦車級を120mm弾で放とうとしたが、紅林機が一気に距離を詰める
次の瞬間、紅林機の右マニピュレーターが拳のように力強く思い切りフルスイングで戦車級を殴り付けた
《オラァァァ!死んどけ!!》
人間技じゃなかった……戦車級が次々とマニピュレーターだけで倒し続けていく
「おい紅林!武器を使え!」
《素手でならBETAは倒せますよ!》
紅林の操縦センスはまるでボクシングの戦い方―――軽く右フック、左アッパー、左右ジャブを繰り出し戦車級を全部倒していった
戦車級倒したら次は兵士級だ
私は突撃砲で120mm弾を兵士級に放った
しかし紅林は武器使わずマニピュレーターだけで兵士級を倒す!
《吹き飛べゴラァ!》
凄まじい攻撃だ――――隙が見えない
兵士級は全て殲滅した後、今度は要撃級が出現!
「紅林!要撃級だ!120mm弾で対抗しろ!」
だが彼は要撃級相手でも突撃砲を使わずマニピュレーターだけで拳を強く握るように要撃級1体を金剛石みたいにフルスイングで振るった!
ボガァァ!
《ここから出ていきやがれッ!化け物が!》
素手でBETAを軽々と倒している――――紅林が倒したBETA数体を見ると戦車級がどれもこれも関節が折れたり歯が折れたり兵士級は顔面陥没していた
今倒した要撃級も顔面陥没している
そして紅林機の背後から別の要撃級が現れるが…
《俺達の故郷を荒らす外道共が…死んどけェ!》
ゲシィッ!
蹴りを食らわした
しかし第一世代機の撃震にそんな人間技は再現できるわけがなく動きが思い通りに動かない
体勢を立て直すのに時間がかかった
「くっ…!」
私は残ってる要撃級を狙いを定め120mm弾を放ち殲滅!
残存の個体はないか確認した途端、要塞級が出現した
《大尉、要塞級です!》
「ここまでの大きさだとマニピュレーターだけで戦うのは無理だな」
《……》
ん?まさか要塞級でもマニピュレーターだけで戦うつもりか?
《坂崎大尉、少し手荒になりますが武器の使用許可をください》
「…」
《拳だけでは倒せない……ここは武器を使って戦うしかないと俺は判断しました》
漸く理解してくれたようだ
紅林機は突撃砲を握り構え迎撃態勢を取る
「…許可する。いいか?要塞級は36mmでは歯が立たん。120mmで応戦するんだ!」
シミュレーションは1体しか出てきていない
本当の戦場だったら4体以上出てくるのは当たり前の光景だからな
そして至近距離で要塞級が近づいてきた次の瞬間…
「今だ!」
ドォン!
ドォン!
互いの機体が36mm弾を放った
しかし要塞級はびくともしない
背後から回ろうとした私は要塞級の特徴である鞭が襲い掛かる
「!」
だが、それを躱すのは安易ではない
次々と襲い掛かってくる
紅林機が超反応で速度を上げ突撃砲を金属バットを握るように打撃を与える
《オラァ!》
ガァッ!
鞭が砕き、一瞬で使えなくさせた
これで要塞級は……ってそうじゃないだろ!!!!
突撃砲の使い方が間違ってる……。
次の瞬間、紅林機はもう一つの突撃砲で36mmを放ち要塞級が倒れるまで撃ち続けた!
《此奴でトドメじゃあ!!》
弾が尽きるまで要塞級を攻撃!
そして崩れ倒れ屍となった
「……」
数時間後、シミュレーターの画面が消え、訓練は終了
シミュレーターの中から出て、その場で反省会を行った
「紅林、戦術機の操縦やBETA戦闘の対処の仕方は合格だ」
「ありがとうございます!!」
「ただ、マニピュレーターだけで小型種のBETAを倒すのは驚いたよ」
「うっす」
「……何故武器を使用せずにBETAと戦った?」
理由は聞かなくても分かるが念には念をだ。
「小型種の対応は適した戦い方だと自分はそう解釈しています。が要塞級だけは幾ら腕っぷしが強い俺でも倒せるわけがないのでやむを得ず武器を使用しました」
「成る程な――――そんな戦い方をしたらマニピュレーターが壊れて武器が使えなくなるぞ」
「弾薬尽きたらBETAを倒せないと思ったからです。勝手な自己解釈してすみません」
ふむ、弾薬が尽きたら戦えない……確かに一理あるな。
衛士は上官の命令は絶対だ。
私は紅林を説教して叱った
「弾薬はいつか尽きる時はある。それは避けられないのは分かる……が、上官の命令を無視して自分なりの戦い方をするのか?」
………。
「いえ、自分の為ではありません。上官の命令を聞いて実行するのもアリですが部隊の長が喪失し上からの命令がなければ自分で何とかするしかないと」
「つまり他の衛士を考慮してBETA相手と戦えるとでも言うのか」
「はい」
そんな甘っちょろいやり方ではBETAに勝てないぞ!と言いたいところだが私はあえて紅林を褒めた
「的確な判断だと思うぞ。部隊長がいなくなった後の事を想定してその戦い方をしたんだな」
と優しい笑みを浮かべ彼の頭を撫でた
シミュレーター訓練を終え早く着替えてシャワーに行こうとしたその時、基地内に軍関係者ではなさそうな男が一人でうろついていた
この格好から見れば……衛士ではない
本職のヤクザだ
「紅林は先にPXに行ってくれ。少し用事思い出した」
「了解です」
紅林はその場から立ち去った。が鈴乃は私の手を繋いだ
「都、貴女を一人で戦わせるのは危険よ」
鈴乃の視線を向けた先は男の右手に握ってる特殊警棒
だがヤクザがこの基地に何しに来たんだ?
…………考えてる暇はない。追い返すべきだな
私は男に近付こうとしたが鈴乃が先に前へ出て言い放った
「貴様、そこで何をウロウロしている!?ここは関係者以外立入禁止だ」
すると男は振り向き鈴乃の顔を直視する
「あ?んなこたぁ分かってんだよ」
此奴、白けた態度して…何か訳アリでここに入ってきたに違いない
鈴乃はその男に向けストレートな発言をした
「貴様は何者だ?何しにここへ入って来た?!」
「俺は京極組の相良だ。ここにいる衛士の一人が世話になったそうじゃないか――――少し痛い目に遭わせようと思ってる。邪魔するなら」
「邪魔するならこの場で殺すか?」
この男―――相良と言う男が発する強烈な殺気。
間違いなく相当数の人間を殺している…
「これは京極組のシノギなのよ。素人に邪魔されちゃあ極道廃業なんだわ」
此奴も小峠と同じ属種か?!
特殊警棒の相良…京極組内でも一二を争う残忍な極道だと聞く
敵の骨を全て折り内臓を全て破裂させる…その時の音を楽しむ狂人だ
「お前の内臓が破裂する音…カセットテープで永久保存するわ」
目がドス黒く濁っている…紛う事無き真の殺戮者だ。
だが、そんなのお構いなしだ。
私は鈴乃の前に出て相良と対峙する
「日本帝国軍の坂崎都大尉だ。貴様は一体何しに来た?一人で基地に侵入してくるとはいい度胸じゃないか」
「坂崎?あー、お前ここの関係者か。丁度いい…俺のサンドバッグになれよ」
もう逃げられない。ここはやるしかない
未来の衛士は私が守る!
「シャアア!まずは頭蓋骨の割れる音!」
ガッ
「ガアアアア」
踏み込みが異常に速い…!私が全く反応出来ないなんて
「次は、肝臓の破裂音!」
グォ
「グアア!」
さらに警棒の振りが早すぎて攻撃がほぼ見えない
命を絶つような一切躊躇ない攻撃……
「グゥウウ!」
「おいおい、正義は勝つんだろ?頑張れよ偽善者――――だが負ければ逆賊、喉仏が割れる音!」
ガァッ
「グエエエエ!」
徹底的だ…まるで作業をこなすかのように私を殺す気だ
意識を刈り取るような連撃…だがな、こんな男に
「私は―――絶対に負ける訳にはいかないんだ!!」
「おおー、ギネス級のタフさだな。申請しろよお前」
私は拳を強く握り相良の方に向ける
「死にたくなければ歯を食いしばれ…」
「アホさもギネス級か?そんなテレフォンパンチ俺に当たる訳ねえだろうが」
拳を固め怒りと魂と全体重を乗せた極限のパンチだ
ガァ!
「パンチの軌道は見え取るんじゃあ!ウッシャアアア!」
相良は特殊警棒で私のパンチを止めた…が
「そんなもんで……私のパンチが止まる訳がないだろうが!」
ボガァァ
「グエエエエエエ!!」
私が本気で握った拳は金剛石のように固く全体重が乗ったパンチに防御は無意味だ
「か…あ……(し、信じられねえパンチだ。女の癖に力あり過ぎだろ)」
相良の顔面を一発完全に陥没させた
「鈴乃、憲兵を呼んでくれ。此奴には色々と聞かなくてはいけない」
「わ、分かった!」
数分後、憲兵2人が到着し相良を拘束した
その後どうなったかは私が知る由もない
翌日、私は自室で休息を取り読書をしながらコーヒーを飲んでいた
銘柄はキリマンジャロブレンドだ。
凄く良い香りしてる……そのお楽しみの途中に久我が扉を叩き「失礼します」と一言を添える
私は不貞腐れた態度で「入れ」と一言を添えつつ久我を中に入らせた
「坂崎パイセン、少しツラ貸してくれ」
「ん?久我……貴様は上官に対する態度が悪いな。少し制裁が必要だな?」
「グウウ……(何だこのオーラは…信じられねえくらい圧倒してる)」
少し威圧掛けただけで怖気付いたな―――彼はまだまだ未熟なようだ。
「折角、コーヒーを飲みながら匂いを堪能してるのに台無しじゃないか。で?話があるんだろ?」
「あぁ、そうだ」
「話ならこの場所で構わないぞ。それとも何だ?私の事好きになったか?」
私は少し意地悪そうな笑みを浮かんで久我を揶揄った。
「な!?んな訳ねーだろ!昨日来てた特殊警棒持ってた男の事だけどよ」
「特殊警棒…?」
相良ってヤクザの事を指してるのか――――まさかと思うが
「貴様の知り合いか?」
久我は頷く
「否定はしないんだな――――」
突如、久我は私の前に頭を下げた
「ご迷惑をかけて本当にすいませんでした!!」
「え?」
「相良の兄貴は確かに下卑たシノギしていますが俺の兄貴分なんです!どうか相良の兄貴の事を見逃してやってください!」
久我は申し訳なさそうにそう言ったが私は何を言ってるのかよく分からなかった
黙っていても話は終わらないので私は適当に返事した
「そうか、貴様もヤクザなのか……」
今の状況じゃヤクザだろうが何だろうが関係ない
戦力は不足しているんだ。寧ろ戦力が上がったら有難い
「人類全体が脅威を脅かしているんだ―――上にいる人間は使えるだけ扱き使うからな。泣き言は言ってられんよ」
「……?」
「自分の道が正しければ自分が決めた道を進めばいい―――久我、この先は苦しい事が沢山待ち受けている。それを乗り越えてこそ本当に生きる価値がないテロリスト共を葬られるんじゃないかと思う。良いか?仮に衛士辞めても闇に墜ちるな。世話になった人達を裏切ったらそれはただの外道だからな」
裏社会では『舐められたら恥晒しで人として終わり』と聞く
任侠映画の見過ぎだが、私がイメージしてるヤクザは恐らくそういう風に見える
良識派がいれば外道もいる
「坂崎パイセン…いや坂崎大尉、アンタはすげえ衛士だ!男に負けない強くてかっこいいスよ!」
「私は言いたい事を言ったまでだ。それ以上もそれ以下でもないよ」
久我にコーヒーを振舞うか……と思ったその時だ
「坂崎大尉!大変です!」
血相な表情を浮かんだ憲兵が私に声をかけて来た
「どうした!?何があったんだ!!?」
「と、とにかく来てください!演習中に事故が発生しました!」
演習中に事故だと!?
一体何が…?
「東富士演習場の仮説補給所で火災が発生して…訓練衛士が2人巻き込まれました!」
それを聞いた私は背筋が凍り付いた
久我は私の自室から出て走る
「何処行くんだ!久我ぁ!」
「あんなの聞いたら放って置けませんぜ。大尉殿――では失礼しました」
と言って事故に遭った現場へ向かい走っていった。
…って神奈川から静岡まで走りで行くのか!
私は自室から飛び出し久我の後を追うが、基地の外に出た時点で彼は既に60式106mm無反動砲を搭載した一期73式小型トラックに乗って東富士演習場に向かって走り去った
「あの馬鹿……あとで始末書だなこれは」
私は彼の行動を不可解だと察し頭を抱える
全く、仕事を増やしてくれる
数時間後、東富士演習場から横浜に戻った訓練衛士達は自室待機命令が下された。
当然ながら久我も基地に戻っていき、私に事の次第を包み隠さず報告した
「――――以上が、現在までに判明している事故の状況です」
「そうか―――それで?」
「訓練衛士の三浦って言う女性1人が死亡確認した。あとのは病院送りになった。正規兵に成り上がるのは絶望的だと言って過言だ」
……。
「それと今回の事故の調査権は事故調査委員会に移管される―――つまりアンタがその事故の調査しろって事だ。俺が言ってる事…ご理解頂けないでしょうか?」
2人の事故の調査は我々に託されたか。
面倒な仕事次々と増える。
「私が調査チームの長になったと?そう言いたいのか」
久我は沈んだ表情を浮かぶ
どうやら本当なのだろう
「状況は状況だからな。久我、第三会議室でみんなを集めてくれ。誰でもいい―――あと念の為に警察に通報した方が良いな」
「了解しました、大尉」
こうして今回の件である東富士演習場での事故の調査は私達坂崎調査隊という調査チームが結成された
東富士演習場の事故調査に任された私達坂崎調査隊の面々を第三会議室に集められた
久我もその調査チームに入っている
ここに集めた人数は12人か…少数だが気を緩んではいられない
「今回、ここに集められたのは他でもない。我々帝国陸軍事故調査委員会は私達坂崎調査隊を発足しその先頭として事故調査する事となった。その事故の真相を突き止めたい―――協力してくれないか」
調査チームのメンバーは…
私と久我、鈴乃、鬼頭、佐竹、園田、栗林、矢作、森口、露崎、江藤、楠木の12人
「鈴乃、お前まで巻き込んで済まない」
「大丈夫よ。それより早く真相を究明しましょう。時間がないわ」
「みんな聞いてくれ。東富士演習場の事故を探る―――些細な事でも構わない」
私ははきはきとした声で皆の前に言い放った
佐竹は私に問を掛ける
「あの、何で俺も事故調査しなければならないんですか?一応衛士ですよ俺は」
「貴様は何も役に立ってないからだろう。病気が頻繁的に起こるしシミュレーション中や終わった後も嘔吐したり下痢起こしてトイレに駆け込んだ。そんな奴に衛士を名乗る資格はない!」
「そんな~…俺だって頑張ってますよ!」
こうは言ってるが、佐竹は衛士と言うより整備兵に向いている
後で説教しておくか
「聞き込み調査に行くぞ!貴様等気合を入れておけ!」
「はい!」
そして私達調査チームは訓練衛士がいる寮に行き聞き込み調査を開始した
数分後、寮に到着した私達は訓練衛士の伊隅、竹宮、佐久間、狩野と接触
彼等の言い分はこうだ
この訓練学校は異常だ。軍隊は厳しいと承知の上で言っている。
訓練カリキュラムが酷過ぎる――――。
だから教官の神宮司に文句言いに行くと佐久間は言った。
他所はここより人道的だと狩野はこう証言した。
当事者同士での話し合いは妥当な判断だろう――――だが彼等はまだ訓練兵。所謂ヒヨッコ衛士だ。
とてもじゃないが訓練衛士と訓練学校の教官であり神宮司に文句言ったら100%鉄拳制裁だ。
放って置けないな
「人材を潰すだけが目的と受け取れる節があるなら証拠が必要だ。貴様等が言っても追い返されるだけだ」
「…」
彼等を鼓舞する方便じゃない―――佐久間はそう確信していた。
久我が伊隅たちがいる部屋に入り調査結果を報告する
「坂崎の姐さん、情報屋でこの件を聞いたがこの訓練校の方針とカリキュラムの決定は校長達じゃなく神宮司が握っていましたぜ」
「な、ん…だと……!?」
中国大陸での戦域で活躍した神宮司がこの外道なカリキュラムを強行しただと!?
「久我、何かの間違いだろ…神宮司は私と鈴乃の同期だ。こんな事あり得ないよ」
「そのあり得ない事を神宮司がやったって言ってるんだ!!」
ッ!!?
狩野はぶっきらぼうな態度でこう答えた
「坂崎大尉、でしたね。ウチの教官…神宮司はかなり上のお偉いさんに直のコネがあって、そいつに頼んで前線から引き揚げて貰ったって話ですよ」
どう言う訳か理解できない
つまり神宮司は豊田元司令官より偉い人にコネがあって前線に引き上げたって事か?
彼奴はそんな事するような人間ではない
ましてや坂元や尾崎みたいな衛士は分かるが神宮司が………。
「例の噂―――神宮司は、味方を見捨てて逃げ回ってたから生き延びたって話、あれも事実だってオチですよ」
竹宮は困惑な顔でこう言った
「……なんで急にそこまで調べられるのよ」
彼女の言いたいことはわかる。
これは流石に野放ししてはいけないな
「もう少し詳しく聞かせてくれ。神宮司は私の同期だ―――何かの間違いだと思いたいが」
私は狩野に直接神宮司が何をしたのかその上にいる人間の情報を聞き出した
「前に食品ルートをぶっ潰された時から洗ってたんですよ。何か役に立つ情報は無いかって」
「でもあの件は誰にも処分されなかった筈だけど、なんであんたが恨むのよ……?」
竹宮は困惑した顔を浮かべたまま言ったが…
「こっちの収入は確実に減ってんだよ。大体誰にも処分されないなんて、逆におかしいだろ?こりゃあ裏に何かあるなって睨んでんだ」
成る程、ここまで恨まれるとはな……だがまだだ。まだ確信を持ったわけではない
訓練衛士の証言がダメなら―――。
これは佐久間や狩野の個人的な怨恨だな。
藤澤の件が大義名分を与えたという事か
笑えない冗談だ。
久我は京極組のヤクザの一人だ。当然だが裏社会の情報屋と繋がりはある
私は計算の内だが伊隅達の視点では計算外だっただろう。
そして伊隅が信じられないと思い込んでる表情で私と久我、竹宮、佐久間、狩野にこう言った。
「……なんか話が逸れてない?結局、何が言いたいの!?」
佐久間は答えた
「ああ、つまりだな……ここの異常さは帝国軍の規定じゃなく、神宮司教官の勝手な暴走だってことが言いたいんだ」
繋がった……この事故の関連性、藤澤の病院送り――三浦の死亡――神宮司が帝国軍かもしくは国連軍と裏で繋がっており武器を密輸して覚醒剤をばら撒いてる?
「……」
この時点で私は神宮司との信頼はビルの倒壊みたいに崩れ落ち失望していった
狩野は竹宮にこう言い放つ
「てめえが逃げ帰って来たもんだから、身代わりに少しでも優秀な衛士を送り出して、そのお偉いさんに見捨てられないようにしたいんじゃねえのか?」
狩野の言っていることはトータルすると破綻している
一線は引いているようだが、佐久間もそれすら気が付かないほど愚かな人間だとそう言いたいのか?
理屈抜きで神宮司を貶めたいだけなのか…確証がない情報は必要ないはずだ
自分が正しいと言う根拠が欲しいのか?
「……もしそれが本当だとしたら……三浦は……そんな異常な演習で?」
ダメだな…竹宮や佐久間達も完全に冷静さを失っている
神宮司の思惑が上手く行き過ぎたと言うべきか
「憶測はともかく、ここの訓練規定が他所と比べて異常なのは確かだ。兄貴達に他校規定を調べて貰って裏は取れている」
成る程………不満を持ち怒り爆発するのも理解できる
彼等は神宮司に反逆をしようと模索していると私は直感した
「俺達はこれ以上、教官の横暴に付き合う気はない…これは全分隊長の総意だ」
「つまり、第16衛士訓練隊全員の意思って事だ。伊隅達以外のな」
「三浦と藤澤の所属分隊の当事者として、出来ればお前達にも賛同して欲しい」
彼等は本気だ
目を見れば分かる―――あれは嘘を吐いてる目ではない
佐久間の言葉を聞いた竹宮と伊隅は困惑しつつ無言を貫くが
私は敢えて彼女にこう聞いた
「どうなんだ?彼等の言い分は理解できる。これは野放ししていいレベルではないんだ伊隅、竹宮」
「…」
「…」
久我は伊隅達にこう言い放った
「アンタ等、大事な戦友を喪って悔しくねぇのか?俺だったら彼女をぶん殴りに行く!こんなカリキュラムは滅茶苦茶だ!アンタもそうだろ坂崎の姐さん」
「そうだが…賛同するかしないかは彼女次第だからな」
私がそう言うと伊隅は佐久間と狩野に問い詰めた
「……ひとつ、聞いて良い?」
「なんだ。ひとつと言わず何でも聞いてくれ」
「ただ抗議するだけで終わり、なんてつもりはないわよね。……勝算はあるの?」
伊隅がそう言うと狩野はニヤついた笑みでこう答えた
「ヘヘッ……流石伊隅だぜ。分かってらっしゃる」
そして佐久間はこう言った
「教官が要求を拒んだ場合、実力行使も仕方がないと思っている」
実力行使か――――今の私は事故調査チームのリーダーだ。
私がGOサインかければ神宮司や事故の関係者を締め出すことは出来る
竹宮は困惑した顔で佐久間達に言い放った
「……実力……行使って……佐久間!?」
「気は進まないが、狩野のコネクションをフル動員して貰うつもりだ」
「今回の事故は神宮司の保身にとってかなりのダメージになる筈だ。大騒動にして世間の注目を集めりゃ、マスコミも食いつく」
本当にこれを実行すれば神宮司は訓練校の教官ではいられなくなる
良ければ左遷…悪ければ世間に大バッシングされて衛士界隈から追放になるかどちらかだ
「今は事故の調査と現場検証で保安部隊もそっちにかかり切りだからな。立て籠もるにしろ武器の調達にしろ、色々やり易い。しかも当事者の神宮司は屋内待機。上層部の連中は陣頭指揮で現場に張り付いてる。やるならこのタイミングしかない」
これはマッチポンプだ
狩野は恐らく誰かに利用されてるのだろう。
特ダネを欲したいが為に
そのターゲットが神宮司まりもとなれば、これはもう確信的だ。
「本気で言ってるのか?貴様等は。最悪の場合、国家反逆罪になるぞ?」
念の為に佐久間達に威圧を掛ける
「それは違う―――反逆罪があるとすれば教官だ。訓練校を私物化し、人権蹂躙を看過している」
「俺等はそれを暴くんだ。……これは三浦の弔い合戦だぜ!?」
竹宮は佐久間達の行動を理解してるものの迷いを見せる
「……でも」
狩野は迷ってる竹宮を見てこう言った
「でも……なんだよ」
「……そんなことをしても……三浦は……喜ばないんじゃない……かな」
「竹宮、お前……」
私は竹宮の意思を尊重しようとしていた
「あたしも神宮司は許せない……だけど…藤澤だって、そんなこと望んでないと思う」
「竹宮……」
「じゃなかったらあの子たち、修検に……あんな一生懸命にならなかったんじゃないかな」
…………。
「あたし、爆発の前にデータリンクのログ見たけど……あの子達、オルブライトターンを同時に決めてるんだよ?」
オルブライトターン―――――推力を維持したまま180度ベクトル転換するC難度の実戦機動
あの訓練衛士2人がそんな大技を……?
「あたしと伊隅に黙って……ふたりでずっと練習してたんだよ……?」
…………。
「神宮司のことは……何か別の方法で何とか出来ないのかな……!?」
竹宮の一言を聞いた狩野は叱責する
「……おい竹宮っ!?おまえッ、彼奴等はお前等に恩を返し――――」
それ以上言おうとするが佐久間は止めた
「―――いいんだ、竹宮。俺達は無理強いをする気はない。ただ……」
「……」
「これは三浦や藤澤だけの問題じゃない。俺達は候補生からあんな目に遭う奴をもう二度と出したくないだけなんだ」
「……」
「それだけは分かってくれ」
「…………気持ちは………わかるよ」
「そんな事が言いたいんじゃないのはわかっているが、念の為、お前が賛成しなかった事は記録しておく」
竹宮は佐久間達の言い分を賛同しなかった
こんな事しても彼女が喜ぶはずがない――――竹宮はそれを理解して賛同しなかった……が。
「いや、あたしは―――」
竹宮は何か言いたそうだが狩野が阻止する
「――いいからそうしとけって」
「狩野……」
「別に俺等は多数決で従わせたい訳じゃねえからな。全員、自分で決めたんだ。だからお前の意思も尊重する」
成る程な、自分で決めた選択肢は貫かなければいけないと言う訳か
「ごめん……狩野」
「謝るところかよ、バーカ」
「ごめん……坂崎大尉もごめんなさい」
「お前が決めた事なら私は何も言わんよ」
狩野が続けて言い放つ
「……お前の言う通り、もし藤澤が俺等の行動に反対だったら」
「……えっ?!」
「彼奴の事だ、俺等とは絶てぇ口も聞かなくなる。だからお前は、そん時のための保険だ」
全員沈黙――――これには私は何も言えず口をポカーンと開けたままだった
久我もイラついてるだろう…神宮司の事を
「あのクソ野郎……!」
私は久我を制止する
「まだ話は終わってない」
「く…!」
狩野は「彼奴がここに戻って来た時のな」と一言を添え、竹宮は不安そうな表情を浮かべる
「狩……野…………」
佐久間は伊隅に賛同するかしないか聞き出した
「伊隅……お前はどうする?」
「……色々聞かせて貰って安心したわ」
「お前も………やめとくか?」
と狩野は問い詰める
伊隅の答えは既に決まっていた
「いえ、行くわ」
伊隅は神宮司の所へ行くつもりだ――――その決意を表した
「流石伊隅………やっぱただの優等生じゃねえな」
伊隅の決意は竹宮も驚いただろう。彼女はNOと答えると思ったからだ
「嬉しくないわね、それ」
「誉め言葉だぜ?お前、黒幕の素質充分だって前々から思ってたんだ」
「お前が賛同してくれるのは心強いよ、伊隅。これで全分隊長が揃った」
「……………」
突如、伊隅は佐久間達に残るよう告げる
「待って佐久間。あんた達は残って」
「はあ?何言ってんだよ伊隅……お前、やっぱ反対なのかよ?」
「狩野―――私が行くって言ってるのよ」
伊隅の言葉を聞いた直後、疑問を浮かぶ
まさか一人で行くつもりか?
当然ながら佐久間は伊隅に問い詰める
「どういうことだ?説明して貰えるか?」
「向こうだってバカじゃないわ。反感買う事なんて計算済みでしょう?」
確かに一理ある
神宮司の思惑なのか?計算なんだ。と。
伊隅は続けて言った。
「さっき聞いたでしょ、私達を排除する為にいるって。雁首揃ってのこのこ出向けば、危険分子としてその場で一網打尽もあり得るわよ」
うん、伊隅の言う通りだな
まだヒヨッコで正規兵になってすらない訓練兵が出向いても鉄拳制裁どころか訓練学校から追放され非国民と皆から冷たい目で見られるだけだろう
そうなれば非国民だ。
「む……」
「あのババアがそこまで俺等を買ってるとは思えねえな。どうせ何も出来ねえ腑抜けだって決めつけてやがんだろ?」
狩野、口の利き方は気を付けろよ。
私も神宮司と同じ歳だからな
…とはいえ、訓練衛士の不満があることは確かだ。
私は狩野にこう言い返した
「相手はあの”死神”神宮司だぞ。仮に逃げ回って生き延びたなら最悪の事態には対処出来てる筈だ」
「…む…確かに……」
「貴様が行くべきだろ?他人に押し付けて自分は楽な道進む気か?」
「…まぁ、そう言われればそうですけど」
佐久間は私にこう言い放った
「正当性は此方にあります、坂崎大尉。最初から事を構える姿勢で臨むべきじゃないかと」
情報収集はこれで十分だ
証言や音声証拠があれば神宮司を追い詰めることは出来るが、正直そんな事したら神宮司と二度と会えないような気がする
だがな、そんな事言ってられない―――――腹を括れ私
「ありがとう。恩に着るよ。行くぞ久我」
「はい!」
そして私と久我は第三会議室に戻りチームのメンバーと証拠集めの収穫を得て今後の事を考えた
数時間後、第三会議室で今回の調査報告が終わり個室に戻ろうとしたが
「坂崎の姐さん!大変だ!」
「どうしたんだ!?久我」
「三浦の機体から何かが仕組まれたんです」
それを聞いた私は冷静になり考え込む
「久我、調査報告書は持ってるか?」
「あ、はい。此方でございます」
久我は今回の調査報告書を私に渡す
「急だな…すぐ結果が分かったのか?」
報告書の内容はこうだ
その内容は結果的に神宮司を撃墜した藤澤と三浦の戦術――その根幹となるC難度の大技を成功させるために必要な措置だ
主機出力のリミッターと搭乗員保護機能を解除し、それを隠蔽するために戦域ネットワークにウイルスプログラムを仕込み、情報を流出
そして神宮司が事前に不正を把握できなかった事も、三浦の機体が指揮官機の制御を受けずに動けたのはそれが理由だと言う
本来、それは一介の候補生が知り得ない機密情報だ。
だが、訓練衛士の狩野がそのネットワークを活かし、リアルタイムでそれらを入手できた
判明した事実から芋づる式に特定された関係者の証言により藤澤が整備兵を抱き込み、三浦と共に実行したという事実も明るみに出た
そうか…この事故は神宮司だけの責任だけじゃないと言う事だな
私が馬鹿だったよ。何故神宮司を悪者扱いしようとしたんだと。
だが、訓練校の上層部に属する者であれば、調査結果を待つまでもなく推定出来ていた筈
データリンクが妨害されようとも司令部に記録された外部観測モニターのログを見れば、その機動の異常性などすぐに判別できる
となると原因は藤澤と三浦の不正工作か――――因果応報だな
あの事故の真相は、本来なら衛士界隈を揺るがす大事件に発展する内容だ。
だが、この一件は誰一人罰することなく問題になる事もなかった
「よし、10日後で結論を出そう。久我」
「了解です」
そして調査報告書を見た私はそのまま個室に戻っていった。
10日後、我々事故調査委員会が結論を発表した
三浦の死は最終的に、訓練中に発生した不慮の事故として処理された
事件以降、目に見えて憔悴していた竹宮は三浦達が不正に手を染めた理由を探っていた
私達の協力を取り付け、不正に関わった整備兵に辿り着いた
竹宮は整備兵の一人を絞り上げ、事の真相を――――――三浦と藤澤が何を言っていたかを聞き出した
己の信念―――。神宮司への反発―――。贖罪の念――――。
何が彼女を突き動かしていたのか――そして、彼女がそれを知るべきだったのか。
私には分からない
だが、何かが引っかかる
そう2人が不正を行った理由は伊隅と竹宮の為だと言う
しかし左遷された私には最後まで今回の事故についての真相は闇の中へと思い込んだ
そして5日後、竹宮は訓練校を去った
精神的に疲労困憊だったのだろう………もう二度と神宮司とは関わりたくはないからだ。それ以降の消息は不明。別の道を歩んで幸せになって欲しい
藤澤は一命を取り留め、半年後に退院。だが衛士訓練資格は剥奪されており自主退学となった
つまり衛士界隈から追放された。自業自得だが単に不正を染めてた訳ではなかったがやった事は衛士として失格だ。
彼女のその後のことについては誰も知らない
佐久間と狩野の2人は自主退学したそうだ。
彼等も神宮司と関わりたくないだろう。あの2人は悪い奴ではなかったが別の道で無事幸せになって頂きたいものだ
そして伊隅は……無事正規兵となり衛士となった。
こうして今回の件は終わったが、何かやり切れてない気持ちがある
「(竹宮……お前は衛士に向いていなかったかもしれない。仮に向いていて衛士として活躍したら初陣で死んでただろうな)」
神宮司は何も処罰されなかったそうだ。
彼奴とは同期だ。不正に気付かなかったのは彼女の盲点だ
風の噂だとその後、国連軍に入って訓練校の教官として勤務しているとか
……神宮司が何しようがしまいが個人の勝手だ。私がどうのこうの言う筋合いは全くない
そして坂崎調査隊は解散。皆それぞれの道へと行った。
伊隅は衛士としての能力を開花するだろう―――。
世の中は魑魅魍魎でありいつ死ぬか分からない
最後に見た竹宮の姿はその悲しげな表情しつつ涙を流していた
彼女は二度と戦術機には乗らない。二度と衛士界隈に入りたくない――――多分決意を揺らぐ事はないだろう
衛士界隈はハッキリ言って厳しい世界であり闇の奥の奥の底から黒い噂が流れている世界だ
あの竹宮の涙を流してる姿が今でも脳裏に焼き付くほど思い浮かぶ
あの事故がなかったら今頃三浦と藤澤、そして竹宮は正規衛士になって私達と共に戦っていたかもしれない
今回の話ですが、前半は紅林や久我が模擬戦やシミュレーターに乗ってBETA戦闘訓練ですが、後半は『マブラヴオルタネイティヴクロニクルズ ~告白~』を参考にして書きました。
あの事故がなかったら竹宮達は衛士になってたかもしれませんね。評価は一変している訳ですし(-_-;)
かなり上のお偉いさんに直のコネと狩野が言ってましたが、あれはどう考えても香月女史の事ですよね。まりもちゃんとは親友関係ですから筋は通ってるかと
当然ながら坂崎中隊長はそんな事は露知らずです。神宮司の人間関係まで知っては無かったんでしょう
今回はここで筆を置かせて頂きます
次回は坂崎中隊長の休暇と海外派遣での任務です!お楽しみに