トータルイクリプスサンダーボルト 外伝   作:マブラマ

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朝鮮半島北部での派遣任務です


IN MY ARMS TONIGHT

私の名前は坂崎都

世間の荒波の中、生き残りに必死な日本帝国軍の女性衛士だ。

私は学生の頃、最強と呼ばれていた

「嘘だろ………10人はいたんだぞ」

「やっぱ『狂犬坂崎』はバケモンだ……」

「次は100人連れてこい」

『狂犬坂崎』と呼ばれ、一方的な喧嘩で負けなし……だが振るった拳は全て正義の為だ。

けど訓練学校での講義は集中して聞けなかった

「坂崎!講義中は起きろ!」

「南雲教官~眠いんだよ~」

今にして思えば私が卒業できたのは南雲教官もそうだが大半は鈴乃と華太のおかげだ

私はとにかく曲がった事が嫌いだ

「神宮司のクソ女、ムカつくよな」

「卒業までサボって犯しちまうか」

「おい…コラ」

例え訓練兵でも容赦はしない

無論、そんな奴等は性根を叩き込むだけだ

「彼女は貴様等の為に真剣になってくれてるんだ。恩を仇で返すなんざ許さん」

「グエエ、イデエ…」

「顔面がぁ…」

貴様等みたいな訓練兵は迷惑ばかりしてるんだ。

それを分からないのか…馬鹿者が

私は強かった―――獅子に生まれた故、その他は獲物でしかない…という程に

だからこそ弱き者を守ろうと思った

正義の拳しか振るわなかった。

そんな私も朝鮮半島北部に位置する朝鮮自治区に派遣されたが、ものの見事に冷遇されている

鈴乃達と一緒に幸せに暮らしたい…それが切なる願いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな私だが見ての通り、拠点である平壌基地の中に居続けるのは息詰まると判断した私達3人は外出し上官の許可を得て平壌市街へと散策していた途中、東欧州社会主義同盟のカタリーナと出会い拘束されそうになるがなんやかんやで万寿台に向かい、辿り着いたのは……。

「さあ、着いたわ!」

「おぉ…これが金九の銅像か」

韓国初代大統領の金九の銅像とその隣にあるのは東欧州社会主義同盟総帥、ベアトリクス・ブレーメの銅像だ

「隣はベアトリクスの銅像ね…」

鈴乃は関心を持ちつつ双方の銅像を見る

カタリーナは優しい笑みを浮かびつつ、言葉を並べる

「最愛の女傑指導者、ベアトリクス・ブレーメ同志はこの自治区を統治する前にウルスラ革命で勝利を掴み愚弄な反体制派を叩き潰したのよ。この銅像も我々東欧州社会主義同盟の栄光を記す証なのよ。我々は何も怖くはない――――ブレーメ総帥閣下がいる限り幸福の中栄光の中尊厳高く生きているのよ」

…………―――――成る程な

この銅像を見る限りは朝鮮自治区はベアトリクスが実質的に支配してると確信できた

と思った次の瞬間

上空にチボラシュカとアリゲートルを混成した部隊が万寿台上空で飛行していた

紋章をよく見ると…朝鮮軍の紋章だ。

「あれはチボラシュカとアリゲートル?!二個中隊ってところか」

「都、分かるの?」

「あぁ、チボラシュカの頭部は真ん丸い部分があるだろ?それに対し第二世代機のアリゲートルの頭部は角ばったデザインだ」

「おぉぉぉ…す、すげー…(俺は分からなかった)」

華太は驚愕してるな?

それに対しカタリーナは冷静に言葉を放った

「坂崎大尉、凄いわね…一発で分かったの?」

「動きで分かる」

「動きって…都…(分からないけど、やっぱ都って凄いわね)」

「(おいおい、動きで判別できるなんてすげーよ!)」

流石に困り果ててしまったか―――鈴乃は嬉々した笑みを浮かべる

「あの二個中隊はBETA殲滅に向かってるのか?」

「いいえ、あれは粛正しに行ってるわ(叛乱分子をね)」

「粛正って…(ああ、そうだった。ここは韓国と違うんだ)」

カタリーナはシラを切る

「何でもないわ。どう?この銅像を見た感想は」

さらに私達に金九とベアトリクスの銅像を見た感想を求めていた

カタリーナが欲する答えを言わなければならないな…

「錆一つなく綺麗に磨いてて美しい銅像だったよ」

その答えを聞いたカタリーナは満面の笑みを浮かび私をぎゅっと強く抱き締めた

「ふふふ、感謝するわ。その言葉が聞きたかったのよ」

「え?!」

私の胸の感触を体験したカタリーナは妖艶な笑みを浮かべ私の顔を近づき頬を触った

「貴女も美しい顔してるわね…」

「(近い…何をするつもりだ)」

手つきがいやらしい…これはもしや?

私を籠絡するつもりなのか?

籠絡されそうになるが鈴乃がそれを制止する

「…?」

「何よ。別に疚しい事なんてしていないわよ」

「あの、坂崎大尉は私の親友なんです。気安く触らないで貰えないでしょうか?」

鈴乃はカタリーナに私を籠絡する事を制止するどころか私の肌や体の接触はやめろと言い出した

「貴女は…?」

「大倉鈴乃中尉です」

「中尉?あははは、私と同じ階級じゃない」

嘲笑するカタリーナは鈴乃に対し聞き捨てならない程の言葉を言い放った

「親友ね…大倉中尉だっけ?貴女、本当に坂崎大尉を守る気あるの?」

「どういう意味ですか?」

「そのままの意味に決まってるでしょ?本当に彼女を守る気あるのか――をね。そんな甘ったれな考えでは彼女を守る事なんて出来ないわ」

なんとカタリーナは鈴乃に私を守ることが出来ないと言い出した

鈴乃は言い返そうとしたが、別の女性が現れそれを制止する

「カタリーナさん、それ以上はやめてください。困ってるじゃないですか」

この顔立ち…髪型。シュタージの長刀使いと言われたファルカ・ミューレンカンプか

ファルカ・ミューレンカンプ。シュタージで唯一の良識ある女性衛士だ

かつてリィズ・ホーエンシュタインと僚機であり互いの背中で戦う事が多かったとか

ファルカがいるって事はベアトリクスの側近だった二コラやロザリンデもいるってことなのか?!

「全く、目を離したらこうなりますね」

「何よ。私だって忙しいのよ」

「サボってるようにしか見えませんが…」

「グウウ…(足元見たわね)」

困り果てたファルカはポラロイドカメラをカタリーナに渡す

「カメラ?」

「ええ、記念に撮影するのもいいかと」

とファルカは私達の顔を覗く

「え?そ、そんな気遣わなくても…」

不敵な笑みを浮かんだカタリーナはポラロイドカメラを受け取る

「そうね。日本から来たお客様をもてなさないとね」

そしてポラロイドカメラで金九とベアトリクスの銅像を背景にして私達を撮影しようと試みるが

「ん?何か違うわね…このまま撮影してもつまらないから…ファルカ」

「何ですか?」

カタリーナは不敵な笑みを浮かべたままこう言い放つ

「隣に立って一緒に撮りなさい」

「え?」

私達3人の隣にファルカを立たせようと言うのだ

「ですが私は…」

「これも交流の一環よ」

「……了解しました」

渋々と動くファルカは鈴乃の隣に移動し作り笑顔を浮かべる

「はい、撮るわよー」

カタリーナはポラロイドカメラを持つ

「笑って笑って」

私達は優しい笑みを浮かべる

「華太…」

「何だ?」

「私はお前の事が好きだ!誇りに思え」

そしてシャッターボタンを押し写真一枚を撮影

ポラロイドカメラから出てきた写真一枚を私に渡す

「ん?」

「記念にあげるわ。大切に保存しなさい」

まさか東欧州の連中が私達を写真一枚撮ってくれるとは思わなかった

東西文化交流って奴か。

カタリーナは交代する形でファルカにポラロイドカメラを渡し再度撮影しようとしたが怪しげな三人組が現れる

「おっ、日本人がここにいるぜ」

「男1人に女2人か…欧州の女もいるぞ」

「姉ちゃん少し付き合えや」

これは予想外の展開だ

3人共全員朝鮮人か

人民服を着ている

華太が3人に立ち向かう

「おいコラ、随分と舐めてるようだな」

「何だ此奴?」

「お前は引っ込んでろよ。俺等は女に用があるんだよ」

そんな奴の戯言は当然聞き入れない

「テメエ、まさかと思うが都達を慰め者にしようってのか!ブチ殺すぞ!ボケ!」

怒号が響き男3人は怯むと思ったが

「あぁ、そうだよ。俺達は女が大好きで犯したくて犯したくてしょうがねぇんだよ」

3人のうち1人は醜悪な論理で私達に言い放った

その言葉を聞いた華太は怒りが爆発

「死にたくなければ消えろ。それともここで死ぬか?」

拳をポキポキと骨を鳴らす

分かる……この殺戮オーラは本気と表してる

「死ぬのはお前だよ!」

「ま、諦めてくれや。日本人の女は貰っていくぜ」

「祖国の地へ二度と踏み入れないようにしてやるよ」

「上等じゃねぇか…ならここで死に晒せ!」

華太は男3人に突っ込む

1対3……無謀過ぎる

しかし彼はそんな事お構いなしだ

「帝国軍人を舐めるな!クソボケが!」

ボガァ

「うぶぅぅぅ!?」

男1人に鉄拳制裁を食らわした

もう一人は果物ナイフで華太に突っ込む

「帝国軍人だからなんじゃああああ!!」

だが刺される事はなく躱した

「動きが遅ぇんだよ」

「は、速ぁっ!?」

男の腕を掴み背負い投げる

「でやぁぁ!!」

「がは!」

そして地面に叩き落とした

最後の一人は華太の背後から拳で後頭部を殴る

「オラァ!」

「ぐはぁぁ!?」

後頭部に当てられたショックで脳が震えそのまま倒れ込む

「朝鮮人を舐めるな!日本人風情が」

「ぐぅうううう…」

拙い、私達のところに…!?

私が男に立ち向かおうとした次の刹那、カタリーナが男に向かって走りそのまま拳でフルスイングして顔を目掛ける

「罪なき日本人女性を犯してどういう神経してるんだ!ゴラァ!!」

ボガァ

「ぶびぃぃぃ!」

男は倒れ込み顔面陥没だ

紅林みたいなパンチだ………怒らせたら怖いってことはよぉくわかったよ

男達を気絶した後、カタリーナはモトローラ製の携帯電話を取り出し電話を掛ける

「私だ。婦女暴行未遂の男3人を制圧した。場所は万寿台の金九の銅像とブレーメ総帥閣下の銅像の前だ」

《了解です。今向かいます》

「それと救急車を手配しろ。帝国軍の衛士一人が後頭部に殴打されて意識がない」

30分後、救急車が到着し意識がない華太を担架に乗せられる

「貴女達は基地に戻った方がいいわ。帝国軍の上層部は何とか言い包めるから」

とカタリーナはそう言い残し、救急車に乗って去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、医師の手術によって幸い華太は命の別条はないものの怪我が治るまで様子見になった

カタリーナがいなければ華太は恐らく死んでいただろう

記憶障害とか残らなければいいが……。

病院の手術室から担架を乗せた華太が医師2名により病室まで運ぶ

そして、執刀医が私に話しかける

「手術は無事成功しました」

「それで、華太…いや小峠中尉はどうなったんですか」

「後頭部を打たれただけで記憶障害にはならず済みましたが暫く安静が必要です」

「そうですか…」

華太は暫く安静か………。

作戦に支障が出てくるな。

それでも私は思った――――私を守ってくれた華太はカッコよかった。と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌々日

平壌医科大学病院に安静している筈の華太が頭は包帯でぐるぐる巻き状態のまま基地に帰ってきた

「華太、大丈夫か?!お前、暫く安静だって医者から言われてた筈だぞ」

「都……このまま日本に帰らずに死んじまったら日本帝国軍の恥晒しだ……衛士を名乗る資格なんてねえんだよ」

体がふらついてまで戦いたいのか?!

無茶してまで……。

「……分かった。お前はまだ傷が治ってはいないから恐らく待機命令出されるだろう」

「そうか…」

朝鮮軍との合同シミュレーションだ……いや模擬戦だな

華太は…戦いたがっている

「模擬戦は出れるか?」

「ああ、いつでも出れるぞ」

「そうか、でも無茶はするなよ」

いつも通りに会議室へ行こうとしたその時、基地内で放送が流れる

《第1006戦術機連隊に属する衛士達全員、視聴覚室に集合せよ。繰り返す第1006戦術機連隊に属する衛士達全員、視聴覚室に集合せよ》

「何だろう?視聴覚室に何を見せようとしてるんだ?」

まさかな……。

「とにかく行ってみるしかない」

「そうだな」

私と華太は急ぎ足で視聴覚室に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、視聴覚室に到着し中に入った私と華太だが、視聴覚室の中には既に鈴乃や城戸、浅倉、工藤中佐、泉屋少佐の姿があった

「華太!?病院から抜け出したのか?」

鈴乃は心配そうな表情で狼狽える。

「ああ、問題ない」

華太はこう言い返すが…

「アホ、病院抜け出してどないすんねん」

城戸は華太に困惑した顔で言った

「せやけど、普通病院から抜け出せないと思いますよ。城戸の兄貴」

浅倉は冷静な表情で言う

「そやな。ここは北朝鮮――朝鮮自治区や。確かに無断で抜けたら連れ戻されて閉鎖病棟行きやな」

「閉鎖病棟って…華太の精神力は健在だ」

私は城戸にこう言い返す

「精神壊れなくても健常な人でも連れて行かれる―――社会安全員に見つからなくて良かったやん」

と、城戸は凛々しい笑みで私に向け言葉を放った

「皆、全員揃ってるな?これより『視聴会』を執り行う。各員注目!」

工藤中佐の言葉で皆はモニターに注目

モニターに映し出されたのは…白い軍服を着てるベアトリクスだった

ベアトリクスは真剣な表情でこう語りだした

《親愛なる同胞の皆様、愛する兄弟姉妹の皆様、同盟国の将校、下士官、兵士諸君!南朝鮮で活動している国連軍並びに日帝の衛士諸君!私は東欧州社会主義同盟を代表して、皆様に次のように訴え朝鮮自治区に残留してる日本帝国軍並びに帝国斯衛軍は、1995年6月25日、各戦線の全域に亘って朝鮮自治区に対するBETA駆逐と称して全面的な攻撃を開始し勇敢な朝鮮軍は敵の侵攻を迎え撃って激戦を展開し、BETAの攻撃を挫折させ朝鮮自治区は現情勢を検討し、朝鮮軍に断固たる反撃戦を開始して敵の武力を掃討せよ、と命令を下した。朝鮮軍は東欧州社会主義同盟の命令によって、敵を中韓国境付近から撃退し、中韓国境へ10~15キロメートル前進し朝鮮軍は甕津、延安、開城、白川などの各都市と多くの村落を解放し、朝鮮の全ての愛国的人民は平和的方法でBETAと言う地球外起源種をこの世から消滅するために全力を尽くしてきたにもかかわらず、一部の帝国斯衛軍衛士達は人民に背き、同胞同士の内乱を引き起こした》

どういう事だ?

私は理解が追い付けず、訳が分からなかった

《広く知られているように、必死になってBETA殲滅に反対するキリスト教恭順派や雄武真理教等は、以前から内乱の準備を進め彼等は全人類の膏血を絞り、軍備の拡張と後方の準備に狂奔し彼等は、前代未聞のテロ暴圧によって、朝鮮半島全域の全ての民主的な政党、大衆団体を非合法化し、愛国的で進歩的な人士を拘束、監禁、虐殺し、かつて東ドイツでの反体制派組織グローサ・ベアのやり方を酷似し我々に対する些細な不満の表現に対しても厳しい弾圧を加え朝鮮半島の自由、民主主義のためにたたかった数十万もの朝鮮人民のすぐれた息子や娘たちが、敵によって投獄され虐殺された》

要するに東ドイツ反体制派の人間が無実な国民を殺しまくってたと言いたいのか

シュタージも無実な国民を殺しまくった癖にどの口が言う?

《ウルスラ革命終結後に反体制派の人間が中心に結成された半グレ組織『グローサ・ベア』は内乱挑発の陰謀を覆い隠す為に、堪えず中韓国境付近で衝突事件を引き起こし、人民を常時不安に陥れ、これらの挑発的な衝突事件の責任を朝鮮自治区だけでなく東欧州社会主義同盟に転嫁しようと策しそのリーダーであるズーズィ・ツァプは「北伐」を準備する過程で、無政府主義者の指示に従い、かつて朝鮮人民の不倶戴天の敵だった日本帝国軍と結託することさえ躊躇いはなかった》

何だと……何を言って…?

《南朝鮮を植民地、軍事戦略基地としてアメリカに売り渡し、南半部の経済をアメリカ独占資本家の支配に委ね、南半部の経済命脈を奪い取り、民族経済を余すところなく破綻させ、朝鮮半島で切実に必要とする米穀とタングステン、黒鉛など多くの天然資源を略奪し南朝鮮の中小企業家と商人は抑えられ、破産を余儀なくされている。朝鮮の南半部では大部分の工場、製造所が閉鎖され、失業者は数百万に上っており、農民は今なお土地を得ることも出来ず、農業は年と共に衰退し南朝鮮は、塗炭の苦しみにさいなまれ飢えに喘いでいる。親愛な同胞の皆様!東欧州社会主義同盟は朝鮮半島の全ての愛国的・民主的政党、大衆団体および全人民と共に、同胞同士の内乱と流血の惨禍を避け、平和的方法による人類救済のためにあらゆる努力を傾け既に、1988年4月の日朝全欧州連席会議で、人類の平和的救済のための最初の試みがなされた。 しかし、ズーズィはこの試みを破綻させ、その侵略道具である「国連臨時朝鮮派遣師団」の指示のもとに1988年5月10日、一部の日本帝国軍将官が不正融資してる事を隠蔽し我が国の北半部にたいする武力侵攻の準備を強化した》

私は朝鮮自治区に派遣される前に久我と里中の会話を思い出す

 

”……風の噂によると上層部は反社に属してる衛士を一掃する作戦を企てているらしい”

 

……くだらないな。この状況下で衛士を斬り捨てる訳ないだろ

 

”なあ久我、それが事実だとしたら俺達の立場ヤバくねえか?そもそも誰が企てているんだよ”

”橘っていう将校だ。彼奴は俺達極道の事軽蔑してるからな。根っからの反社嫌いだ”

 

それが事実だとしたら私は何ができる

何もできない……ただ、その行く末をただじっと見るだけ

《BETAを人類から抹消する目標を達成する為に、帝国軍本土司令部によって、朝鮮半島を平和的に解決するよう提案した。全朝鮮人民がこの提案を熱烈に支持したにも拘らず、帝国斯衛軍はこの提案も拒否し我が東欧州社会主義同盟は全人民の意思を反映して、1988年6月7日、重ねて人類の平和的救済を促進するための方策を提案した。しかし逆賊ズーズィは、それを邪魔して平和的な促進についての東欧州社会主義同盟の提案を支持する人々を反逆者と見做すとして、その提案の実現をも破綻させ朝鮮自治区は、民主的政党、大衆団体の要望に基いて、BETA殲滅と民主的な発展に対する不屈の意志を表明するとともに、東欧州社会主義同盟と帝国斯衛軍の「国会」を連合して単一の東欧州欺衛連合軍を設立する方法によって、平和を実現するよう提案し、人類救済しようという全朝鮮人民の一致した願いと、我々の正当な誠意ある提案に対し、内乱の挑発をもって応えた――――――ズーズィ・ツァプは、彼等が引き起こした同胞同士の内乱でどのような目的を達成しようとしているのだろうか?》

《朝鮮自治区で実施された無償没収と無償分配の原則による土地改革の結果、土地の主人となった農民から土地を取り上げて再び地主の手に返し、北半部の人民の民主的な自由と権利を奪おうとしている。彼等は、将来的に朝鮮自治区を逆賊ズーズィの奴隷にしようとし第二次大戦のように朝鮮人を弾圧し自分の都合で朝鮮の発展に必要不可欠である政治家や政治運動家を抹殺しようと企てている―――親愛な兄弟姉妹の皆様!朝鮮半島国民と我々には大きな危機が迫っている!》

私は頭を抱え目を瞑りつつただ呆然した

華太と鈴乃は黙って映像を見る

工藤中佐は真顔で黙々だ

泉屋少佐も……

他の衛士達は………皆困惑していた

「嘘だろ……帝国軍がこんな事を」

「そんな、上層部は私腹を肥やして俺達を捨て駒扱いしてるのか!?」

「もう嫌だ!衛士なんかやめてやる!」

こんなモノ見たら騒ぐのも当然だ

しかし、工藤中佐は威圧をかけ皆を黙らせた

「馬鹿野郎!静かにしやがれッ!例えそれが事実だったとしたら俺達は受け止めなければならない!ここに来てまで衛士をやめるなど自殺行為だ――――お前等はここに何しに来た?異星起源種を倒す為だろうが!それを自覚してるなら良い。想いはな…皆同じなんだ!分かるか?」

工藤中佐の言う通りだ

朝鮮自治区を支配してるベアトリクスの言い分聞いて困惑するには分かる

しかし、帝国軍の上層部が私腹を肥やし衛士を切り捨てているというのが事実でも私達は受け入れるしかない

《……朝鮮の自由と民主主義の為の正義の戦争である!全朝鮮人民は、再び軍国主義国日本帝国の奴隷になることを欲しないならば、異星起源種を打倒し、その軍隊を粉砕する救国闘争に決起しなければならない。我々は如何なる犠牲も厭わず、必ず最後の勝利を勝ち取りなければならない!

全朝鮮人民は、日本帝国の背後にいるキリスト教恭順派の一挙一動を、常に鋭く監視し、警戒心を高めるべきであり、朝鮮軍は北半部の民主改革の成果を堅く守り、南半部の同胞を反動的な支配から解放し、朝鮮半島の旗のもとに死守するための正義の戦いで、勇敢さと献身性を発揮し朝鮮軍の将校、下士官、兵士は、人民のなかから生まれ、朝鮮軍は朝鮮人民のすぐれた息子や娘たちで組織された朝鮮の武力である。朝鮮軍は祖国と人民を愛する精神で教育、訓練され、近代的な精鋭兵器で装備されており、祖国と人民の利益の為に生命を捧げて戦う気高い愛国主義精神で武装し将兵は、祖国と人民のために最後の血の一滴まで捧げて戦わなければならない》

私は怒りを抑え込んだ

ベアトリクスの演説を見て帝国軍はそんな野蛮な事するような軍隊ではないと堅実な組織だと信じ込んでいるからだ。

《朝鮮自治区の人民は全ての活動を戦時体制に切り替え、短期間に敵を掃討する為に、全ての力を戦争勝利の為に捧げなければならない!我々に対する全人民的な援護活動を組織し、朝鮮軍戦術機各部隊を引き続き増員、補充し、前線への一切の必需品と軍需品の緊急輸送を保障し、負傷兵に対する温かい親切な救護活動を組織し前線の勝利を保障する為に人民軍の後方を鉄壁のように固めるべきであり後方では、逃避分子やデマを撒き散らす者などと容赦なく戦い、スパイ、破壊分子を摘発、一掃する活動を機敏に組織しなければならない。敵は狡猾で陰険である為、あらゆる手を尽くしてデマを撒き散らそうとするだろう。人民はこのような敵の悪質な扇動に乗せられてはならず、権力機関は敵を利する反逆者を容赦なく処断し朝鮮自治区の労働者、技術者、事務員は、工場、製造所、交通運輸、逓信機関などを敵の侵害から守り、生産計画と各自に課された全ての任務を忠実に実行し、前線の要請に敏速に応えなければならない。

朝鮮自治区の農民は、農産物をさらに増産して軍に必要な食糧を十分に供給し、戦争勝利のために全力を尽くして軍を援助すべきであり南朝鮮の男女パルチザンは遊撃戦をさらに激しく、いっそう勇敢に展開し、遊撃隊に広範な人民大衆を参加させて朝鮮武装警察軍を創設、拡大しパルチザンは敵の後方で敵を攻撃、掃討し、敵の参謀部を襲撃し、鉄道、道路、橋梁や電信電話線などを一部切断、破壊し、あらゆる手段を尽くして敵の前線と後方の連絡を断ち、至るところで反逆者を処断し、我々の作戦に積極的に協力し、南朝鮮の同胞は、愚鈍な国連軍の命令や指示に服従することなく、その実行をサボタージュし、敵の後方組織を混乱に陥れなければならない。

南朝鮮の労働者はいたるところでストライキや暴動を起こし、敗走する敵の破壊から工場、製造所、鉱山、鉄道その他各自の職場を守り、戦争の勝利を保障するために朝鮮半島を積極的に援助すべきであり農民は敵に食糧を渡してはならず、今年の農作物の取入れを手抜りなく行い、パルチザン活動に積極的に参加し、人民軍に各種の協力と援護を惜しみなく与えるべきだ》

パルチザンとは他国の軍隊または反乱軍等による占領支配に抵抗する為に結成された非正規軍の構成員である

所謂、レジスタンス――――東ドイツ反体制派のような連中だ

抗日パルチザンは日本統治時代の朝鮮での運動。朝鮮独立運動の一つだ

もっとも注目を集めたとされるのが、1937年の普天堡の戦いだが東北抗日聯軍に属した金日成はこの戦いで戦死した

1944年、日本は条件付き降伏を受諾され、朝鮮半島は解放された

朝鮮半島全体が韓国として樹立し、その国の初代大統領を務めたのは金九だ。

《親愛なる同胞将兵諸君!諸君の敵は、まさにBETAであり諸君は、人類の未来の為に機を逸することなく銃口を不埒な異星起源種共に向け、諸君は人民軍とパルチザンの側に加わり、自由をめざす全人民の闘争に協力し諸君は朝鮮人民の敵に反対して立ち上がり、BETAと戦う栄誉ある衛士の隊列に加わるべきである!》

私はモニターに映っているベアトリクスの姿を見て釘付けになった

認めたくないが、認めざるを得ないか。

《親愛な同胞、兄弟姉妹の皆さん!BETAを速やかに撃滅、掃討する為に、東欧州社会主義同盟の周りに堅く団結するよう、全朝鮮人民に訴え人類の歴史は、自由と朝鮮の真の独立を目指す戦いに死を賭して立ち上がった人民は、常に勝利することを教え我々の戦いは正義の戦いであり、勝利は必ず朝鮮の側に輝き人類の未来の為に我々の正義の戦いは、必ず勝利するものと私は確信する。時は来た!勝利への確固たる信念をもって勇敢に前進すべきだ!

 

全ての力を人類の援助に捧げよ!

 

全ての力を敵の撃滅、掃討に向けよ!

 

全人民的な正義の戦争に総決起した朝鮮万歳!

 

人類の為に勝利を目指して前進すべきだ!》

この演説の映像を見た感想は言葉が出ない程の驚愕

現実を突き付けられた

ワァーッと歓声が広がりスタンディングオベーションをする映像に映ってる朝鮮軍の兵士達はは感激し称賛の声が広がる

私は天井を仰ぎ息を吸いつつ坂崎都自身らしくない台詞でこう啖呵する。

「華太、私達って何の為に戦ってるんだろうな」

「え?突然何を言い出すんだ。お前らしくないぞ」

「ふふ、らしさってものは自分の個性を作り上げるものだ。鈴乃も――――お前達は日本帝国という国を愛してるのか?」

「国を愛してるのか?」と華太と鈴乃に問いかける

私が望み答えが返って来た

「……都、勿論だ。俺も日本が好きだ」

「私もよ――――まさか日本が嫌いって言うの?じゃ、貴女は一体何の為に?」

「私も日本が好きだ。が軍の上層部は楽観視している―――――どうしても許せなくなってくる…」

悔しい表情を浮かび拳を握る

「朝鮮半島はもうすぐBETAに呑み込まれる。それを対応するのは我々日本帝国軍と朝鮮自治区の朝鮮軍。南側の韓国軍だ。風の噂だが38度線の要塞陣地化、ソウルに戦術機の残骸などを利用し鉄壁を作り景福宮周辺を取り囲み絶対防衛線を張って意地でも――――――」

私が放つ言葉は今後、朝鮮半島全域の末路がどうなるか、推測していた

これはあくまでも私個人的な推測―――――外れる事がある

「――――ここ、北朝鮮は最前線だ」

朝鮮自治区―――――――北朝鮮は最前線

そして主都平壌は火の海と化する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の朝鮮半島の現状は北はベアトリクス・ブレーメ率いる東欧州社会主義同盟が統治し管理している。

南は大韓民国本土、我々日本帝国軍、帝国斯衛軍

無論、私達も北朝鮮に駐留しているが長居は出来ないだろう。

今ある朝鮮の軍事組織は大韓民国本土軍、朝鮮軍、中韓連合軍、韓国義勇軍の4つ、準軍事組織は朝鮮武装警察軍、戦闘警察、海洋警察庁、朝鮮警備隊の4つ。

ベアトリクスはこれらの組織を統一する為には改革を実行しようとしていた。

――――――――そんな事は私達には無関係だ。

ベアトリクスが何しようが口出しする筋合いは全くないのだ

BETA侵攻状況は今のところは動きがない。BETAが平壌に迫って来るのも時間の問題だ

あのユルゲン思想塔は光線級の的になって崩落される

”どうぞ、撃ってください”と言ってるのと同じようなもんだ

気が付けば、時は12月24日――――クリスマスイヴを迎えた

反米感情が強い日本帝国はクリスマスを祝う人々がいるのは稀に等しい

一方で事実上宗教が禁じられ、特にキリスト教に対する弾圧が非常に厳しい朝鮮自治区―――北朝鮮にはクリスマスを祝う習慣は存在しない筈だが、多くの北朝鮮国民、特に若者はクリスマスの存在を知っているそうだ。

そう、平壌だけでなく他の街も大々的にクリスマス祝っているのはベアトリクスが黙認してるからだろう。

東ドイツ出身のベアトリクス、アイリスディーナにとっては嬉しいイベントの一つだ

余談だが、東西ドイツでは12月24日と12月25日だけでなく26日までの3日間がある。

そういう意味でベアトリクスは東ドイツの英雄の称号を掴んだだけでなく『朝鮮解放の女神』と称えられ評価を得ている

平壌市街はクリスマスムードだ

街中ではクリスマスツリー等の飾りをしてる

無論、クリスマスソングでお馴染みのジングルベル。朝鮮語題名では『鐘の音』という曲が流れており、金九広場では男女カップルが大勢いて寄り添っている

私はと言うと………?

「華太ぉ、こっちだ」

「お、おい!都、恥ずかしいだろうが」

華太と一緒にいた

しかも恋人繋ぎでデートしている――――2人きり…という訳ではない

「私の事忘れてない?都」

「そんな事ないよ」

私の右腕にしがみついている鈴乃だ

さらに

「小峠はん、モテモテやな」

「城戸の兄貴、大倉中尉にデート誘ってこの構成ですか」

「しゃあないやん。どうしても坂崎大尉と一緒にいたいって言うからな」

城戸と浅倉だ

何やら鈴乃とデートする形で一緒にいるらしい

「大倉はん、何処行くんや?」

「牡丹峰へ行くわ―――ね?都」

「ああ(さて…何処行こうか?)」

「モランボン?モランボンと言えば焼肉やな!」

違うぞ城戸―――全く無関係だ

「城戸の兄貴、それは関係ないかと」

「会社名がこの丘の名前が由来なんや。モランボンだけに牡丹峰や」

城戸は寒いギャグを私達に向けて言った

……面白くない。

「完全に滑ってますね」

と浅倉はこうツッコんだ

城戸が優越な笑みを浮かびながら楽しく話してから数分後、凱旋門に到着した

「ここが凱旋門か…」

この凱旋門は、ウルスラ革命でエーリヒ・シュミット率いるシュタージ政権による支配から解放された4ヶ月後の1983年7月28日、平壌に凱旋したベアトリクスが「東独朝鮮合同歓迎平壌市民大会」において東ドイツ指導者として民衆を前に演説を行った場所である。

パリのエトワール凱旋門をモデルとしながらも、エトワール凱旋門より10m高くなるように造られている。高さは60m、正面幅52.5m、側面幅36.2m、アーチ門の高さ27m、アーチ門の幅18.6mと世界で一番大きい凱旋門で、1万500個の花崗岩で造られている

4本の花崗岩の枝の柱の上には、ベアトリクスとアイリスディーナが生まれた年である1959年とベアトリクスが平壌に凱旋した1983年を示した浮き彫りがある

また、その東側と西側の壁面は白頭山の浮き彫りがあり、南側と北側の壁面には「ベアトリクス・ブレーメ総帥の歌」や革命を賛美する歌の歌詞が彫刻されている。凱旋門内部は、何十もの部屋、手すり、展望台、およびエレベーターがある。

直で見るとやはりデカい

「おぉぉぉ、すげー(何mあんだよ……)」

華太も驚愕してるようだな

城戸は驚いた表情ではなく凛々しい笑顔で凱旋門を見つめた

「あれが北朝鮮の凱旋門か……でっかいなあ。浅倉」

「デカいだけにデカルチャー――――と?」

「意味わからんわ」

城戸と浅倉は漫才しながら会話しツッコミとボケを繰り広げた

あの2人は勝手に盛り上げればいい。

凱旋門から離れ凱旋青年公園に移動しようとした時、1台の黒い車が私達の前に阻むように止めた

そして降りてくるのは…

「坂崎都、大倉鈴乃、小峠華太。貴様等この場で拘束する」

国家保衛省――――北朝鮮の秘密警察。

2人はそこに属する人間だ

突然の出来事で私は怒りを表す

「私達は何も罪を犯していませんが」

城戸と浅倉はこれに対し唖然とした

「えらいこっちゃに抹茶や…」

「これは拙い状況になってきましたね…」

この場で拘束されるのは納得するはずがない

「私達は日本から派遣された衛士です!」

「そ、そうよ!一体何の恨みがあるんですか!?」

私と鈴乃は国家保衛省の職員にこう言い放ったが、奴等が返ってきた答えは常識では考えられない言葉だった

「恨み?そんなものはないよ。貴様等は日本人だからだ。ただそれだけの事だよ―――」

「ッ!」

「大人しく我々の言う事を聞いた方がいい。悪いようにはしない。そして北朝鮮社会に貢献しなさい」

此奴……日本人だからという理由で私達を!

そんなくだらない答えを聞いた私達が大人しく従う事は毛頭ない

私が奴等に怒りの言葉を言おうとした時、華太が奴等に対し怒りを爆発した

「俺達が日本人だから拘束だあ?笑わせるな!罪なき人々を捕まえ牢屋の中に入れたらそれはただの冤罪だろうが!」

華太は国家保衛省職員その1に向けて拳を振るう

「テメエ等が言う北朝鮮社会なんか知らねえ―――――俺達に的をかけたら…死ぬだけじゃあああ!!!」

ボガァ

「ぶぎゅぅうううう!?」

「き、貴様等…やってくれたな」

国家保衛省職員その2が怯えながら言い放つ

「あ?次はテメエだ」

「ま、待て!これは親愛なるベアトリクス・ブレーメ総帥閣下の命令で動いてただけだ」

そんな戯言は華太が信じる訳はない

「ベアトリクスの命令?嘘吐くな。テメエ等単独で動いてただけだろうが」

「ホントだ!」

次の瞬間、華太は奴の前髪を掴み威圧を掛けた

「随分と舐めてるねえ……一旦、西朝鮮湾に沈めようか?」

「ひいいぃいい!本当ですぅうううう!!」

私は奴の目を覗いた。

どうやら本当みたいだな………殺す前に止めた方がいいな

「やめろ華太。奴が言ってる事は本当だ」

「お前…」

「目の奥を覗いたが濁ってなかった――――」

私は奴に言い詰める

「貴様、ベアトリクスの命令で動いたのだろ?ならベアトリクスのところに案内しろ!」

「それは……」

出来ないと言うのか?日本人衛士を迫害しようとした貴様等が拒否権なんてない

「拒否したら、貴様等をBETAの餌として屠るぞ」

「ひぃいい!!それだけは勘弁してください!!!」

恐喝紛いな言葉だが、奴は私の言葉を聞くと首を縦に振った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平壌基地にいる工藤中佐に連絡を入れ事情を説明したが、基地には戻ってこれないと一言を添え了承を得た

国家保衛省の職員は私達を車に乗せ、ベアトリクスがいる場所へ向かった後は城戸と浅倉はそのまま基地に帰ってしまった

その場所は……?

「やはり最初から私達を…」

国家保衛省本部だ。

「―――!そ、総帥閣下は定期的に執務する場所を変えてるんです。本当です!」

「……信用できる?」

鈴乃は目を細くして2人を疑う

「………これが本当だとしたらベアトリクス・ブレーメという女傑は用心深い。暗殺回避の為だろうな」

東ドイツの指導者で北朝鮮を支配してる彼女が暗殺されたら、世界が混乱するだろう。

無論、ベアトリクスの代わりはいないと等しい

私達が車に乗って移動してから2時間後、ベアトリクスがいると思われる国家保衛省本部に到着した

「こ、此方です…」

そして車から降りた私達は真顔で中に入る

国家保衛省職員に案内され、階段を昇り左から突き当りの廊下を真っ直ぐに行き長官室の扉の前に辿り着いた

ここがベアトリクスが執務してる場所の一つか……。

職員の一人が長官室の扉を叩く

「失礼しますブレーメ総帥閣下、坂崎都大尉、大倉鈴乃中尉、小峠華太中尉の3名連れてきました」

「入りなさい」

「―――は」

ベアトリクスが一言を添えると職員は私達を長官室の中に入らせた

長官室の椅子に座り執務しているベアトリクスは不敵な笑みで私達を出迎えた

本人と直接対面したのは初めてだ――――少し緊張するな

「これはこれは日本帝国軍の英雄候補、初めましてね」

「(あれがベアトリクス・ブレーメ……革命に勝利した東ドイツの英雄)」

ここに連れてこられたのは正直意味不明だ

何をさせたいんだ?

「ここに連れてこられた理由は分からないようだから単刀直入に言うわ。貴女達は今、日本帝国軍の上層部からゴミ扱いされてるのよ」

ゴミ扱い!????それって捨て駒にされたと言いたいのか

違う――――とは言い切れない

上層部の連中は私達の事をそんな風に思われていたんだな。

「仮にそれが事実だとしたら私達は何をすべきか理解してると思います」

私はベアトリクスにこう言い放った

「理解?何を理解したのかしら?」

ベアトリクスは私に問いかける

「それは……我々日本帝国軍であり国の為にBETAを…」

「国の為ね……」

そう言って椅子から立ち上がり私に近付き目を覗く

「……嘘は吐いていないみたいね」

「(この女…一体何を考えているんだ?)」

「朝鮮自治区―――北朝鮮は元々日本での統治を反対してた人々の集まりだったのよ。他人の家に土足で上がったら貴女は快く受け入れるの?」

「……受け入れないですね」

私が答えた言葉はベアトリクスが欲した答えだった

「そうよ……今でもそういう思想の人間が沢山いるのよ」

統一はまず無理だろうな……北の人間と南の人間はそれぞれの思想で対立している

難しい問題だ。

「それと坂崎大尉、貴女はこの現状をどう思ってるの?まさか知らなかったとでも?」

「何の事ですか?」

「ここ北朝鮮で平壌派と元山派の2つの財閥が対立していてクーデター勃発してもおかしくはない状況になってる」

ベアトリクスは笑みを消え、真剣な眼差しで私の顔を見て話す

「東ドイツのシュタージ内部の派閥だった『モスクワ派』と『ベルリン派』の朝鮮版と言ったら分かりやすいわね」

東ドイツの秘密警察、シュタージ内部の2大派閥である『モスクワ派』と『ベルリン派』

モスクワ派は現在東欧州社会主義同盟総帥であるベアトリクス・ブレーメが長とした派閥

東ドイツ崩壊後に社会主義陣営の盟主であるソ連に亡命政権を樹立する事で国体を維持しようとしていた

ソ連政権とその秘密警察であるКГБに太いパイプを持ち、当時の東ドイツかソ連の援助なしに戦争を継続する事が不可能であることから、彼等の方針はドイツ社会主義統一党中央からも多くの支持を受けていた

特に現在、ファム・ティ・ランが長とする第666戦術機中隊に対しては存在そのものを排除しようと画策

東ドイツ反体制派と繋がってる疑いがあったからだ

海王星作戦においては東西融和の象徴的な存在となった事でこれを利用せんとする勢力が確実に出てくることが予想された

また部分的な西側との協調を望むベルリン派とも同調し兼ねない第666戦術機中隊は、モスクワ派にとってあらゆる意味で邪魔な存在だった

一方、ベルリン派はシュタージ武装警察軍作戦参謀の肩書を持ってたハインツ・アクスマンが長とした派閥であるが、此方はソ連の影響下にありすぎる事を好まない一派だ。

東欧諸国の盟主として、ソ連と距離を置きつつ西側と部分的に協調する事で自身の影響力を保とうとした

党の主要部は親ソ連のモスクワ派で占められていたが、党の一部からベルリン派を支援する動きもあったことは事実―――。

特にソ連は国連常任理事国として大きな力を持っていたが、既に自国領の大半がBETAに奪われており、革命勃発する1年前には米国からアラスカを租借し、国家機能の移転が始まっている状態だった

このままソ連の言いなりになるくらいなら、東ドイツに近く、亡命後も影響力が発揮できる東欧に逃れた方が良いと考えた者が多かった。

第666戦術機中隊に対しては、ベルリン派が西側やソ連に取り組まれないようにする為の独自の兵力として用いる為に、その取り込みを画策していた

互いに対峙する中でウルスラ革命で勝利を掴んだのは――――モスクワ派だ。

ベルリン派はアクスマン死亡により壊滅。東ドイツ反体制派はベアトリクスによって壊滅状態に追い込み、特にリーダーのズーズィ・ツァプは現実を受け止められない為なのか。側近であるシモーネ・レージンガーや最も信頼できる構成員のみ再編成し半グレ集団として成り下がっていった

とどのつまり、北朝鮮内部の2大派閥、平壌派と元山派はその2つを模倣している

「平壌派は朝鮮半島陥落後、南沙諸島に亡命政権を樹立する事で国体を維持しようとしてるの。無論ソ連の援助なしに戦争継続は不可能よ。一方元山派は私の影響下にある事を好まない集まり…私の言いなりになるくらいならアメリカに亡命して影響力を発揮できると思い込んでるわ」

隣国である中国は大半がBETAに占領されてる

このまま何もせず攻められたら……考えたくはないな

妖艶な笑みを浮かべるベアトリクスは一枚の写真を私達に見せた

「ア・ドックァ中佐……朝鮮武装警察軍作戦参謀。陰湿かつ残忍な性格をした人物で、日本人狩りを自身の快楽のために行う男よ」

年齢は50~60代。白髪染めで黒く光ってる髪型

この男はハインツ・アクスマンの朝鮮人版か。

下衆な男だ――――――自分の事しか考えていない

「私を利用してアイリスディーナや彼女の戦友諸共抹殺しようと企んでいたけどね。話が逸れてしまったわね。誤認拘束の事はここで謝罪させて貰うわ。でもね、彼等は悪気でやった訳じゃないから理解して頂戴」

「……」

私は絶句した

「私達はどうしろと?」

「朝鮮半島はもうすぐBETAに呑み込まれる。それを対応すべく私は最善を尽くしたわ。38度線の要塞陣地化、ソウルに戦術機の残骸などを利用し鉄壁を作り景福宮周辺を取り囲み絶対防衛線を張って復元工事を成し遂げる……朝鮮南部にいる衛士や将校達は今頃ピクニック気分でビールやキムチ、サムゲタンとか飲み食いしてるでしょうね。ふふふ」

ベアトリクスは笑いながらそう言った。

笑い事ではない!

黙って見ていた華太は口を開く

「ベアトリクスの姐さん、それは言っちゃいけねえと思います」

「おい華太、よせ」

彼奴、感情が激しいところあるからな。

ここで何もせずに粛正されるのは御免だ。

「姐さん…私の事を言ってるのかしら?」

「アンタが世界を変えてくれたおかげで俺達極道は生きているんだ。任侠を貫いてる」

「ふむ、それは理解していると?そう言いたいのね」

ベアトリクスは冷静に振舞い私達に紅茶が入ってるティーポットをカップに注ぎ淹れそれを差し出す

「ダージリンティーよ」

当然ながら私は警戒する

紅茶に毒が入ってるんじゃないか?と疑ってる

「いつまで立っているの?座りなさい」

そう言われて私達はソファーに座り込む

私と鈴乃は紅茶の匂いを嗅ぐ

「(良い匂いだ…)」

しかし、安易に飲む訳にはいかない

「ふふふ、そんなに私の事を疑ってるのかしら?」

ベアトリクスは妖艶な笑みを浮かべ紅茶が入ってる自分のティーカップに口に付けつつ啜り飲む

「大丈夫よ。安心して飲みなさい」

私達を籠絡させるつもりだろうが――――彼女の犬に成り下がるのは誇り高き日本帝国軍衛士として恥晒しだ

紅茶を啜り飲みながら笑みを浮かび続けるベアトリクスは私にこう言い放った

「―――――我々東欧州社会主義同盟は国連に屈服させて如何にもBETA大戦を早期終結できるか?模索している。逆らえない様思い知らせてやるわ」

この女……国連を敵に回すつもりか?

「事務総長は我々の方針を賛同してるわ」

信じられない…あの国連だぞ。ベアトリクスは一体何を……!?

「今日はクリスマスイヴなのに邪魔してごめんなさいね」

「え?あ、いいえお気になさらず。私達は単に休暇デートで」

悪意はないとはいえ、元はと言えば国家保衛省の連中が仕出かしたことだ

彼女は東ドイツだけでなく北朝鮮を支配してる独裁者だ

私はベアトリクスにある映画の話を語る

「ブレーメ総帥、『独裁者』という映画はご存知でしょうか?」

「ええ、知ってるわ。確かチャールズ・チャップリン主演の映画ね」

「本物の独裁者を床屋と間違えて逮捕され逆に床屋は将兵達によって独裁者に間違えられ、司令官と共に丁重に扱われ最終的に床屋が独裁者と間違えられたまま、軍に占領された国の首都へ連れていかれ、大勢の兵士が集う広場で演説を行い―――それは自由と寛容、人種の壁を越えた融和を訴えるものであり演説を終えた床屋は兵士達の拍手喝采の中、映画のヒロインに対して、希望を捨てないようラジオを通じて語りかける。貴女はあの映画の独裁者みたいになろうとしているのですか?」

戦場で死ねないのは惜しいが、私は命を捨てる覚悟でベアトリクスに向け真剣な表情で言い放った

「ふむ…それはどう言う意味かしら?」

それに対しベアトリクスは不敵な笑みを浮かべる

ファルカが執務室に入り敬礼し報告する

「失礼します。総帥閣下、準備を整いました。金九広場で?」

「ええ、そうよ」

…………。

「帰って良いわよ。もう話は終わったから。ミューレンカンプ少尉、2人を見送りしなさい」

「―――は」

最悪のクリスマスイヴだ。

私達は平壌基地に帰ろうとしたその時、朝鮮武装警察軍の保安隊の隊長らしき男性が執務室に入って来た

「ブレーメ総帥閣下、この戦域に駐留してる中韓連合軍の事ですが如何なさいますか?」

その一言でベアトリクスは即時に決断した

「……我々の脅威となるならば対処しなければならない。言わなくても分かるでしょ?」

私達に配慮して遠回しに保安隊隊長に言い向けた

「では」

「下がれ。良い結果を待ってる」

「は!」

男はベアトリクスに敬礼し去っていった

「ファルカ」

「は!坂崎大尉、此方へ」

ファルカに誘導しつつ私達は平壌基地に帰った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平安北道 新義州市 中韓連合軍総司令部

司令室

 

一方その頃、中韓連合軍の将校達は今の現状を見て、ベアトリクスが今何しようとしているのか?推測しつつ困惑していた

「BETAは徐々に侵攻し変わらず。か」

総司令官は真顔で呟く

「そうみたいですね。我々もいつ生き残るか瀬戸際に立っています」

副司令は不安げな表情を浮かべつつこう言った

その時、下士官らしき兵士が司令室に入り、狼狽の声を上げる

「司令!テレビを付けてください!」

「何事だ!」

「と、とにかくテレビを!」

総司令官は頷き、副司令は即座にテレビの電源を入れる

金九広場に集う約600万人の朝鮮人

壇上にベアトリクスが立ち誇らしげで余裕がある笑みを浮かべつつ民衆の前に言い放ち演説する

《同志の皆さん!今日、朝鮮革命は新たな転機を迎え我々東欧州社会主義同盟と朝鮮軍と人民は、ユルゲン・ベルンハルト同志とアイリスディーナ・ベルンハルト同志の不滅の太陽旗のもとに一掃固く団結しており、彼の遺訓を守って自主の道、先軍の道、社会主義の道を真っ直ぐに前進し、我々は厳しい試練と難関の中でもユルゲン・ベルンハルト同志が譲り渡した貴い革命的遺産を堅く守り抜き、さらに輝かす事によって、より大きな勝利を収める事のできる強力な土台とカギを手に入れる事が出来た!

今はもう国連がBETAとの対決において主導権を確固と握るようになり、経済強国の建設と人民生活に転換を齎す事は時間の問題となった。

我々は、ウルスラ革命を完遂したその精神、その気迫で経済建設と人民生活に画期的な転換をもたらし、戦闘国家の高峰に勝利の赤旗を翻さなければならない。

我々が強盛国家の建設を力強く推し進めるためには、革命の参謀部であり嚮導的力量である統一党を組織的、思想的にいっそう強化し、全人民を党のまわりに固く団結させて党政策の貫徹へと奮い立たせ、人類が一つの思想・意志で固く団結し、統一党と人民が渾然一体となって革命と建設を推し進めることは、偉大なユルゲン・ベルンハルト同志とアイリスディーナ・ベルンハルト同志の願いであり伝統的な革命方式であり、ユルゲン・ベルンハルト同志とアイリスディーナ・ベルンハルト同志は、我々を唯一思想体系と唯一的指導体系が確立し、人民大衆の中に深く根を下ろした不敗の統一党に強化、発展させ、鉄のように団結した人民大衆の革命的熱意と創造的力に依拠して隆盛、繁栄する社会主義強国を打ち立て、勝利と栄光を記してきた党と盾に忠誠誓い紅く染められた旗と、この地に齎された社会主義の獲得物には、領袖は統一党員と人民を信じ、統一党員と人民は領袖を絶対的に信頼し忠実に従ってきた一心団結の誇らかな歴史が秘められている。我々は、ユルゲン・ベルンハルト同志とアイリスディーナ・ベルンハルト同志が築き上げた不滅の世界の業績を財宝として捉え、一つの思想・意志で固く団結し、人民大衆の中に深く根を下ろした強力な戦闘的参謀部としてさらに強化、発展させ、人民の渾然一体の威力によってこの地に全世界が仰ぎ見る天下第一の強国、人民の楽園を必ず建設しなければならない》

司令室にいる兵士達は絶句

絶句という表現しかなかった

《朝鮮革命の新しい時代の要請に即して我々を一掃強化し、強盛国家の建設を力強く推し進めるうえで、党細胞の位置と役割はきわめて重要であり。党細胞は統一党の党生活の拠点であり、大衆の中に張りめぐらされている党の末端神経であり、党政策貫徹の先兵であり、我々さえ強ければ、いかなる逆境の中にあっても党は微動だにせず、この世に恐るべきものも、不可能な事もない。

党細胞の強化は統一党強化の第一歩となり、キーポイントとなるため、党中央はドイツ社会主義統一党第13回党大会代表者会議後、党活動を改善するための最初の大会として細胞書記の大会を招集し、この大会を党大会や党代表者会議に劣らず重視している。ドイツ社会主義統一党第12回党大会が党の戦闘力を全面的に高め、強盛国家の建設を推し進めるうえで画期的な転機となるようにする為には、大会の参加者をはじめ統一党の細胞書記が党の意図をはっきりと認識し、党細胞の活動を根本的に改善、強化していかなければならない!》

中韓連合軍の総司令、副司令、通兵士達――――司令室に入り込んだ衛士5人は慌てつつ画面を凝視する

《統一党員の間でユルゲン主義の教育を着実に行い、彼らを理想と思想、先軍思想で武装させ、革命の首脳部決死擁護精神と社会主義への確固たる信念、強い反帝階級意識を持った熱烈な革命闘士としてしっかり育てるべきであり、統一党の初の党組織である建設同志社の熱血闘士は、全ての党員が見習うべき亀鑑だ。

我々のように徹底した信念と清らかな良心をもって統一党と領袖に従い、一心団結の代をしっかり受け継いでいくようにするための教育活動を力強く行わなければならない!現段階において党細胞に提起される最も重要な課題は、名誉党員を第2の私、ベアトリクス・ブレーメ。私の後継者、真の同志、戦友に育てる事であり、全ての統一党員を真のユルゲン主義者に育てる事は、我々を永遠なるユルゲン・ベルンハルト同志、アイリスディーナ・ベルンハルト同志の統一党として強化、発展させ、強盛国家の建設と朝鮮革命の最後の勝利を達成するための先決条件であり決定的保証であり、ユルゲン主義者とは、ユルゲン主義を確固たる信念とし、我々の指導のもとに人類の勝利を目指して全てを捧げていくユルゲン・ベルンハルト同志とアイリスディーナ・ベルンハルト同志の真の戦士、教え子の事であり党細胞は党員を真のユルゲン主義者に育てることを基本とし、党組織思想生活の指導に力を入れなければならない》

ベアトリクスの言葉を聞いた総司令は焦りだし怯えだす

「グウウ…ベアトリクスめ!好き放題言いやがって」

《細胞の中に高い統一党組織観念に基づく自発的な党生活気風を確立し、党員を党組織生活の溶鉱炉で鍛え、党と領袖、祖国と人民に対する限りない忠実性と強い組織性、規律性を身につけた、逞しい革命家に育て上げるべきであり、統一党員を真のユルゲン主義者に育てるうえで特に注目を払うべき事は、彼らに人民を愛し人民に献身的に奉仕する精神を深く植えつけ、それは本質において人民大衆第一主義であり、人民を天の如く崇拝し、人民のために献身的に奉仕する人が他ならぬ真のユルゲン主義者であり、ユルゲン・ベルンハルト同志とアイリスディーナ・ベルンハルト同志を戴くように、人民を崇め人民の為に全てを捧げようとするのは統一党の確固たる決心なのだ!》

「……我々はベアトリクスの奴隷ではない!皆騙されるな!全てハッタリだ」

と総司令は言い放った次の瞬間、朝鮮武装警察軍の兵士が司令室に入りこの場にいる総司令、副司令、兵士達。衛士5人に銃口を突き付ける

保安隊隊長が総司令に冷徹な言葉を放った

「中韓連合軍は本日をもって解体だ!これは親愛なる指導者ベアトリクス・ブレーメ総帥閣下の直々の命である」

「貴様達は我が軍を解体してどうするつもりだ!?」

総司令が言う事も無理はない

理由なき軍を解体しようとしていた

冷酷非道…保安隊隊長は冷徹な視線でこう言い放つ

「知る必要はない。連れて行け!」

「我々の敵はBETAだぞ!」

「貴様みたいな叛乱分子を摘発しなきゃノルマは達成出来ないんだ」

総司令は保安隊隊長の言葉を耳貸さず断固拒否した

「解体は断固拒否する!」

しかし、それが逆効果だった

「はぁ、此奴だけ鳩拷問しろ。あとは適当に処刑だ」

保安隊隊長は悪魔みたいな顔で言い放ち、この場にいる全員第14号管理所と呼ばれる強制収容所へ連行された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咸鏡南道耀徳郡大淑里

韓国義勇軍司令部

 

韓国義勇軍の衛士達も数十人集ってざわざわと騒ぎつつテレビを見ていた

《「全てを人民の為に、全てを人民大衆に依拠して!」というスローガンには、統一党に人民への愛と信頼の精神を漲らせようとする党の意志が込められ、幹部と党員は、誰もが我々東欧州社会主義同盟の衛士達や第666戦術機中隊の衛士が一生涯歩んできた人民愛の道を我々とともにしっかりと歩み続ける真の同志、戦友になるべきだ!党細胞は、幹部と党員に私の崇高な人民観を深く体得させ、彼らが人民を自分の父母妻子のように思い、愛するようにすべきだ。特に、幹部が所属している党細胞は幹部を人民の真の忠僕にならしめることを重要な課題とし、党生活指導と掌握、統制を強化しなければならない。私は当初から幹部の間に見られる権力乱用と官僚主義、東西ドイツでの派閥争いを、政権を握った労働者階級の党が最も警戒すべき危険な毒素と見なし、それに反対する戦いを一貫して繰り広げた》

「これは……」

義勇軍の総司令は真っ青な顔だ。副司令は驚愕しつつ唖然

「司令!」

《私、ベアトリクス・ブレーメも「人類に奉仕しBETAを殲滅する!」というスローガンを示し、統一党を権力を振るい、官僚主義的に振舞う党ではなく、鬼畜独裁者エーリヒ・シュミットが率いたシュタージみたいに不特定多数の人民を弾圧し無差別的に虐殺され東西ドイツを蝕んだ元凶ハインツ・アクスマンは自分だけ逃げようと画策し他人を利用したエゴイストそのもの。彼等みたいな人間を指導者と言う肩書を持ち国の未来の事を任せる訳がない!人民大衆に忠実に奉仕する母なる統一党として強化、発展させるために労苦を尽くし心血を注いだ!》

第630大連合部隊の隊員がズカズカと司令室に入り込む

「本日もって韓国義勇軍は解散だ」

「何だ貴様等は!」

総司令は狼狽の声を上げるが、多勢に無勢だ。

部隊を率いる隊長は総司令に向け威圧を掛けながら言い放つ

「貴様等は朝鮮半島の恥だ。よくも貴重な武器を鬼畜米帝に横流ししたな?」

隊長の問いを聞いた総司令は醜悪な論理を吐き捨てる

「だから何だって言うんだ!戦術機開発のルーツはアメリカだぞ!アメリカに我が軍の武器と戦術機を横流しして何が悪い?困ってる相手国は放っておけないだろう。これも朝鮮半島の為だ…ベアトリクスなら分かってくれる筈だ!」

ベアトリクスの名を勝手に使い隊長にこう言い向けたが、当然許される訳がない

「――――全員連れて行け!」

「了解!」

韓国義勇軍総司令は抵抗し第630大連合部隊隊員を殴るが大人数の前に成す術がなくあっさりと拘束される

「こんな事して貴様等は一体何をしようと!!?」

総司令の一言で隊長はブチ切れた

「貴様等はBETA駆逐任務を成し遂げた。がもう用済みだ―――――それに加えて貴重な武器と弾薬、戦術機を横流しするなど言語道断だ」

この場にいる全員第15号管理所と呼ばれる強制収容所へ連行され、そして中韓連合軍、韓国義勇軍は強制的に解体された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年が明け1997年に迎えた。

平壌基地では監視役の朝鮮軍兵士含めブリーフィングルームで工藤中佐が考案した作戦を皆で考えていた

「白頭山要塞陣地陥落は中韓連合軍と韓国義勇軍の戦力不足だ。俺達衛士はなぁ、それを阻止できなかった。これは俺の責任だ」

工藤中佐は白頭山要塞陣地陥落の事は責任取ろうとしていた

違う―――違うぞ。

工藤中佐の所為ではない。

これはもしや朝鮮軍が動かなかったからか?

私はそんな事はないと思い込もうとしたがそうとは言い切れない

悔しい…上の命令があれば私達は動ける

でも動けない――――動けないんだ。

私は挙手して工藤中佐に問いを掛ける

「中佐、発言の許可を」

「ん、おう。言ってみろ」

「は!我々日本帝国軍はこの地で何しに来たのでしょうか?」

疑問だらけだ―――――今思い返せば出撃命令が全く出ていない。

「それはどういう意味だ?坂崎大尉」

工藤中佐は鋭い目線を向ける

「上の命令待つまで私達は動けない。それは理解しています―――ですが、これは明らかに異常です!出撃命令が一切出ていない。帝国軍だけじゃない朝鮮軍の上層部は私達を日本に帰らす気は毛頭ないかと」

「……」

工藤中佐は黙り込んだ。

鈴乃も異変に気付く

「確かに、ここに来てから出撃命令が下ってないわ」

華太も、城戸と浅倉もこの自治区の異常さに気付いた

「そう言えば一つもねえな」

「こりゃあ異常やな」

「同感です」

城戸は挙手し工藤中佐に言葉を投げかける

「ちょっと発言して宜しいでっか?」

「城戸か…構わねえ」

城戸は真面目な表情を浮かべる

「俺達の目的は朝鮮半島に蔓延る異星起源種の駆逐だった筈……一つも下されてへんという事はこれは明らかに国家保衛省に規制かけられたとしか思いませんで」

工藤中佐は城戸に向け怒りを隠しつつ指摘しようとしたその時、兵士がズカズカと急ぎ足でブリーフィングルームに入り慌てて工藤中佐に報告する

「申し上げます!ベアトリクス・ブレーメ総帥が中韓連合軍、韓国義勇軍の2つを解体し我が軍に統合され『朝鮮人民軍』と改名すると」

正直、意味不明で理解が全く追いついてこなかった

中韓連合軍と韓国義勇軍が解体!??

しかも朝鮮軍に統合だと………。

当然ながら私だけでなく鈴乃、華太、城戸、浅倉、泉屋少佐は驚愕し頭の中が真っ白に染まりつつ怒りを表す

「馬鹿な……この間までは何ともなかったわよ」

「何だこりゃあ……」

「もう双方にいた衛士達も粛正されたと思うわ」

「城戸の兄貴、確実だと」

泉屋少佐は無言でブリーフィングルームにあるテレビの電源を入れ映像を映す

その映像に映し出されたのは紛れもなく金九広場で朝鮮自治区の住人を集いその壇上に立って演説してるベアトリクスの姿だ

《1983年3月28日、東ドイツでの革命で勝利を勝ち取った我々は即座に準備を移った。我々はBETAという地球外生命体に勝たなくてはならない!それを伴い先ず、戦術機各部隊の編制、疎開禁止令を廃し国家の政府機能をアイルランドへ移動、更に朝鮮自治区…まさにここ朝鮮半島北部を統治。次々と重なる問題を成すすべきなのは朝鮮半島の軍事を纏め上げ無駄な編成を撤廃しそれを統一する事だ!》

無駄な編成か―――――理由は分からないまではないが幾ら何でも無茶苦茶過ぎる。

常識を逸脱していた。

《私は訴えたい!何があろうとどんな困難に乗り越えようとも我々は戦い続ける!欧州奪還、朝鮮の真の独立、BETA殲滅、人民たる有意義な戦いを!私の親友の兄であり恋人であった、ユルゲン・ベルンハルトは月光の夜事件で当時の国家人民軍将校と共にクーデターを勃発しその後ユルゲンはハインツ・アクスマンによって実の妹であるアイリスディーナを強要し粛清された!

そしてモスクワ派とベルリン派での政治派閥争いをし、国家に革命をしかけたのである!

その結果は諸君らが知ってる通り鬼畜シュミット並びにアクスマンの敗北に終わった!

それは良い!しかしその結果欧州は西まで呑み込まれ日本帝国政府は増長し帝国軍並びに斯衛軍の内部は腐敗し、雄武という宗教テロ組織のような反政府運動を生んだ!これが人類を生んだ歴史である!!

ここに至って私は人類が今後、絶対に戦争を繰り返さないようにすべきだと確信したのである!!

それが朝鮮民主主義人民共和国の建国や朝鮮半島での軍事編成の真の目的である!!

これによってそれを叛旗を覆し我々の意向を逆らう人々を粛清する!!》

…………。

《諸君!もうすぐこの時が来る!24年間耐え抜いた人類はもうすぐBETAをこの世から抹消する時が来るだろう!――――――――――立てよ人民よ!今こそ立ち上がる時が来た!今まで犠牲になった衛士達や一般市民の弔い合戦をするべきであり人類の為に事を成さなければならない!我々は最後まで戦い抜け勝利を掴み取るのだ!朝鮮万歳!東西ドイツ万歳!祖国万歳!!》

映像に映ってる朝鮮自治区改め北朝鮮の国民達は歓声を上げ万歳と声を大きく響いた

そして拍手喝采

皆、全員拍手喝采する

が、1006戦術機連隊の衛士全員は口が開いたまま唖然とした。

私達も含めて。

工藤中佐も溜息をつき呆然する。

東欧州社会主義同盟においては、総帥は以下のように記されていた。

統治権を総攬する元首である。

陸海空軍(=軍隊)を統帥する。

最高評議会、人民議会の協賛を以って立法権を行使し、最高評議会もしくは人民議会が議決した法律を裁可若しくは拒否する。

国家保安省長官によって輔弼される。

司法権はその名において法律により裁判所が行う。

である。

つまり事実上ベアトリクス率いる東欧州社会主義同盟は独裁体制だが彼女の事を好評を得ているからか誰一人も不満を抱く者や反感を抱く者はいなかったのだ。

北朝鮮にいる一部の朝鮮人はベアトリクスだけでなくアイリスディーナまで個人崇拝してる者もいる。

このような状態になったのはかつて東ドイツで活躍していた一人の少女の功績や戦果により影響があり、ウルスラ革命でベアトリクスは勝利を勝ち取った事により朝鮮半島北部の朝鮮自治区を統治し『朝鮮民主主義人民共和国』と言う名の国家を建国するまでに至った。

当然ながら朝鮮自治区に駐留してる日本帝国の帝国軍並びに欺衛軍や中韓連合軍、韓国義勇軍、大東亜連合軍の将校や衛士達は「何故、東ドイツのシュタージが朝鮮北部に居るんだ?」と疑念を抱き叛乱を模索したがベアトリクスを熱狂に崇拝する一部の朝鮮人の密告により全員拘束

強制収容所に収監し朝鮮半島繁栄の為に強制労働される

―――――くだらん。

まあ、ベアトリクスが言ってる事は残念ながら事実だ。

偏見な事だが、北朝鮮は日本の統治を反対していた人間の集まりだ。

彼女2人を個人崇拝するのは勝手だが、幾ら何でも極端過ぎる。

「工藤中佐、私達の敵は東欧州社会主義同盟の連中でしょうか?」

「ん?何故そんな事聞くんだ?」

「BETAの筈です。一体誰と戦って…」

弱音を吐いた私は工藤中佐に喝を入れられた

「馬鹿野郎!お前は分かってる筈だ!俺達の敵はな…BETAだけじゃねえんだ。世の中を蔓延る人間の皮を被った外道も敵だ。仁義と任侠なんてねえんだよ」

確かにその通りだ。

坂元大尉は神宮司達を見捨てた衛士の恥晒し。尾崎大尉も外道に寝返り仁義と任侠を捨てた衛士。

それに対し伊隅は真面目で礼儀正しい訓練衛士だ。もう卒業して正規衛士になったがどの部隊でも馴染めるだろう

「北朝鮮と言う国が建国された今、何をすべきか……」

私と鈴乃、華太、城戸、浅倉は今どうするか考えている

「都、明日は国連軍の連携作戦のブリーフィング。彼女達が割り込んでくる可能性は高いわ」

鈴乃は不安を募り華太は困惑していた

「連中の事だ。上手くやってくれるさ」

「そやな」

「城戸の兄貴と同意見です」

そして工藤中佐はこの言葉で締める

「明日は気合い入れとけよ。分かったな?」

私含め衛士達はハッキリとした声で「はい!」と一言を添え、今日の会議は終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

平壌基地

会議室

 

会議室内には東欧州社会主義同盟の衛士は勿論、朝鮮軍改め朝鮮人民軍衛士、国連軍衛士、将校。帝国軍衛士12人は不穏な空気で南へ侵攻するBETAの数を削減を試みていた。

この作戦の指揮を担当するのは国連軍ではなくヴェアヴォルフ大隊の長である二コラが指揮を執る事になった。

「白頭山から1.5㎞近くにBETA群が侵攻、南へ一直線に進み江界、恵山、清津、羅津のそれぞれの方向へと突破。解体した中韓連合軍や韓国義勇軍は4つの防衛線を展開したがどれも全滅。当然ながら帰還した衛士は0だ」

朝鮮半島の地図をパソコンである部分拡大し分かりやすく作戦内容を説明する

「ヴェアヴォルフは平安南道、威鏡南道の二手に分かれ一個小隊で前方砲撃、後方支援、中距離射撃、長距離射撃の4つを展開だ」

私は挙手を上げ意見を述べる

「上申します。ミヒャルケ少佐」

「何だ?意見あるなら聞くぞ」

この女は元々ベアトリクスの副官だ。

彼女の期待を応える為に国の貢献で働いた

ただ、それだけだ

「少佐は、かつては無能な指揮官として部下の指摘を聞かなかったそうじゃないですか」

作戦には無関係な事だが念には念を入れる

二コラは私の問いに対し睨み付けながらこう言った

「それは作戦に関係ある事なのか?確かに私はブレーメ総帥の側近だ。しかし東ドイツ反体制派の作戦を見抜いてなかったのは事実だし言い訳は出来ない。私達が今生きてるのはイングヒルト・ブロニコフスキーという地主貴族の女性のおかげだ」

と二コラは誇らしげな笑みを浮かべる

「あと、貴様もとある教団を壊滅に追い込んだようだな。彼奴等はやり過ぎた。粛正されて当然だ」

いや、教祖と幹部数名は塀の中だ。

まだ死んではいない

「……言いたいことはそれだけか?坂崎都大尉」

「……」

私は反論しなかった。

くだらない論争する暇があるなら異星起源種を駆逐する事だけ考えろ!と私の心に聞いた。

「――――作戦会議を続けるぞ」

二コラが掲げる作戦の内容はこうだ。

国連軍、日本帝国軍、東欧州社会主義同盟による一大反抗作戦“光明星作戦”。これはブラゴエスチェンスクハイヴに強襲上陸を仕掛ける前提で朝鮮半島の前線に押し寄せるBETAを軽減、可能ならば前線との包囲殲滅を行うというものだった。とはいえ前線との包囲殲滅は不可能と思えるほどに遠いためにこれは可能ならば程度となっている。

これは紛れもなく人類史上欧州での一大反抗作戦『海王星作戦』の丸パクリだ。

自分で考えた作戦じゃないのか……恐らくベアトリクスが西側に半ば脅迫して推奨したのだろう

これを成功させることが出来れば最終防衛線に殺到するBETAの数を減らし、戦局を好転させられるかもしれない。

「北部戦域は朝鮮人民軍、中央は貴様等日本帝国軍、南部は我々東欧州社会主義同盟が担当する。各戦域40キロの縦深を行う。これが出来れば我々と貴様等は稼ぎ出された時間を利用して防衛ラインを大幅に強化する事も可能だ。場合によっては前進も出来るだろう」

二コラの言葉を変わり、具体的な説明をするのはこの作戦の参加を決定したカタリーナが言った

「国連主導の作戦ではあるが人類の命運を左右する戦いである事を忘れるな!」

この作戦の指揮は国連軍ではなく東欧州社会主義同盟だ。

無論、今更参加拒否なんて出来ない

「……とはいえこの作戦において大なり小なりBETAを駆逐できるはずだ。成功すればいう事はないが失敗したとしても……、損害は大きいだろうが防衛線の負担を減らすことが出来る。必ず成功させるぞ」

私達含めこの会議室にいる衛士達は「はい!」と一言を添えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミヒャルケ少佐」

「……何の用だ?」

平壌基地の格納庫で自前の戦術機であるアリゲートルの調整を行っていた二コラに私は後ろから声をかけてきた

二コラは私の方を一切見ず、調整を続ける。私の方も背を向けずに話し始めた。

「少佐、その機体はかつてベアトリクス・ブレーメ総帥が専用機として使用したアリゲートルですね。まだ現役でご活躍してるのですね」

「…この機体は2代目だ。ブレーメ総帥が革命に勝利した後に献上して貰ったんだ」

「2代目?ではブレーメ総帥が乗ってた機体は」

「後にテロリストに成り下がったテオドール・エーベルバッハが乗ったチボラシュカツヴァイとの戦闘で修復不可能まで至ったから廃棄処分された」

チボラシュカツヴァイは確かテオドール・エーベルバッハ専用機として戦地改修された機体だ。

第二世代機のアリゲートルと互角の性能と出力、テオドールによる戦術でベアトリクスが乗ったアリゲートルを倒す寸前まで至った。

彼の戦術ならチボラシュカで編成した戦術機部隊を倒す事は容易かっただろう。

だが、『廃棄処分された』というのは表向きだ

「ミヒャルケ少佐、その機体はブレーメ総帥がかつて乗ってた本物の機体ですよね。嘘を吐くのやめて貰っていいですか?」

「……」

都合が悪くなったら黙口か。

「少佐」

「………管制ユニットだけはブレーメ総帥が乗ってた本物の機体だよ。あとは予備機の部品だ」

管制ユニットだけは本物か――――どうも嘘っぽい。

私は疑心暗鬼を生む。

「……」

「アイルランド・ケリー州や平壌にあるブレーメ総帥専用のアリゲートルはレプリカだよ。一応動かす事出来るぞ?」

ふむ…成る程。だがどうでもいい情報だ

私は二コラの言葉に呆然しその場を離れる。そんな私に二コラは一言だけ答えた。

「この作戦は海王星作戦と同規模になるだろう。我々が前線に出れば戦局は好転する。それだけは覚えた方が良い」

「………了解しました」

私は立ち去ろうとしたその時、二コラはもう一人の人物に声をかけた。

「先程から見ているの気付いてるぞ。ディーゲルマン中尉」

「バレちゃったか。一応気配消してたけど」

「影で分かるだろ……」

物陰から姿を見せたのはカタリーナだ。

カタリーナは二コラの背に背中を預けて座る

「二コラ、いやミヒャルケ少佐」

「何だ?言い改まって」

「少佐の背中はあたしが守るわ。長い付き合いでしょ?」

二コラは小さな笑みを浮かべる

「頼む。帰還出来たらカリーヴルストや平壌冷麺を御馳走してやろう。坂崎大尉も一緒にだ」

「あ、ありがとうございます」

気に入られたようだ。

そういうと二コラは調整を終えて立ち上がり、カタリーナが向く方向とは逆に歩き出した。

「生き残ろう。理不尽な現実を向き合うのが私達の戦争かもしれない」

二コラの言葉にカタリーナは満面の笑みを浮かべて答えた。

二コラに見えていないのが残念だったと思えるほどの笑みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は東欧州社会主義同盟や朝鮮人民軍の衛士や将校達の交流や親睦を深める等の平和的な一コマがあったが、それも艦隊が咸鏡南道楽園群近郊に到着するまでだった。

《時間だ。坂崎大尉》

「はい――!総員傾注!作戦開始の時刻となった。これより艦砲射撃を行い、沿岸部のBETAを殲滅。その後は内陸部の掃討に移る……行くぞ!」

数秒後、日本帝国海軍と朝鮮人民軍海軍の全艦艇による艦砲射撃が開始された。ここに朝鮮半島最大の激戦と呼ばれるようになる光明星作戦が幕を開けたのだった。




いつも作品見ていただきありがとうございます
今回の話も朝鮮半島北部での派遣任務…所謂北朝鮮ですね
作品劇中では北朝鮮は12月24日と25日はクリスマスムード一色に染められていますが史実では逆なんです
それどころかクリスマスを祝う習慣は存在しないんです
恐らく金一族の独裁の影響でしょうけど、キリスト教に対する弾圧が非常に厳しい北朝鮮にはクリスマスツリーは無縁でしょうね。
とどのつまり、北朝鮮国民は大々的にクリスマスを祝う事は不可能
特に若者はクリスマスの存在を知っており正確な由来は知らなくとも、韓流など海外のドラマや映画でクリスマスを祝っている様子を見て、12月25日は世界的に祝われる日であることを認識しています。
中には、この日に合わせてプレゼントを交換する人もいるようです。
クリスマスパーティーを開いたり、ツリーを飾る家庭を見かけたら即逮捕
そう思うと史実の北朝鮮は怖いですね(-_-;)
いやホントに(-_-;)
月刊MR…MUV-LUV REGENERATIVE。購入しました!
今まで買えないと思い込んでましたが、コンビニ決済で買うことも出来ると知って即購入です!やっと買えた…内容見たところ、臼杵咲良は両親から愛情を注がれて育ったんだなと印象を受けました
次回も朝鮮半島の派遣任務です!朝鮮半島最大の激戦―――光明星作戦の話です。
この作品を…トータルイクリプスサンダーボルトや他の作品、Pixivで投稿した作品を読んで頂けた全ての方々に感謝しつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます
ではまた
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