私の名前は坂崎都
人生の波に乗り遅れる寸前に至った日本帝国軍の女性衛士だ。
私は少々ヤンチャに生きてきた
「と、富子ちゃんをワンパンで!?」
「デカい口叩いといて……この程度か」
「やっぱり『狂犬坂崎』には誰も敵わないのよ!」
曲がった事が見過ごせない性分で、地元の馬鹿共はいつも喧嘩三昧
その所為って言ったら語弊あるが講義の方はからっきしだった
「坂崎、日本での政治・軍事全権を皇帝に代わり代行する帝国最高権力者とは何だ?」
「あ、暴れん坊将軍」
「それは徳川吉宗を主人公とした時代劇ドラマ…」
衛士訓練学校卒業出来たのは奇跡じゃないかと今でも疑っているくらいだ
こんな風に生きてれば普通は見えないものだって見てくる
「お姉さん相手してよ」
「うう…」
「頼む一回だけ!ヒャヒャヒャ!」
お天道様に顔向け出来ない真似をしている阿保な衛士なんかがな
「貴様等、今すぐ地面を掃除して走って消えろ…なら許してやる」
「あー!馬鹿が登場しましたよぉ!」
「何此奴、やっちゃう?」
基地内で飲酒喫煙するなど言語道断だ。
もしも人より腕っぷしが強いのなら、それを誰かの為に使ってほしいものだな
私は阿保衛士2人纏めて鉄拳制裁した
ガッ
「グエエイデエ…」
「顔面が…」
「地面、綺麗にしておけよ」
こんな格好悪い真似やって自分が気持ち悪くならないのか?
幼少の頃に死んだお婆さんがよく言ってた
「お前は人より力が強い。その力は自分の為ではなく誰かの為に振るいなさい」
「そうしたらどうなるの?」
「みんなから好かれて貴女が幸せになるよ」
あの言葉は今も胸の中にある。
だから私は人の道を外れたりはせず善良な衛士になれたんだ。
艦砲射撃と共に始まった光明星作戦。この奇襲攻撃で人類は沿岸部の敵を排除、橋頭堡を確保する……筈だった。
「ば、馬鹿な!?」
その言葉を叫んだのは誰だったのか。もしかしたら全員だったかもしれない。確かに沿岸部には光線級がいた。しかし、事前の調査でそれは少数であり、被害は受けても艦砲射撃で殲滅出来ると思われていた。
艦砲射撃が始まると、当初に確認していた10倍の数で以て全ての砲撃を迎撃した。
「光線級の数事前情報の10倍、いやこれはそれ以上です!」
「BETAはこの作戦を読んでいたというのか!?だが光線級は一発を打つのに時間がかかる!今のうちに……!」
その言葉が最後まで言われる事はなかった。声の主が乗艦した船が光線級の一撃を受けて爆発した為である。
今度は迎撃されることもなく沿岸部に命中していく。充填が完了した光線級が迎撃と攻撃を行っていくがそれも数が減っていく。それを8回ほど繰り返すと光線級の攻撃は完全に止んだ。
「よし! 各戦術機は内陸部の敵の掃討に入れ!」
予定よりも手痛い打撃を受けた朝鮮人民軍海軍も戦術機を輸送する船に被害はなく、何の問題もなく次の攻撃に移る事が出来た。
《坂崎大尉。どうやらBETAの動きは大分此方に対応してきているようだ》
「問題ありません。ミヒャルケ少佐。我々はどのような敵であろうとも祖国日本の為に戦うだけです」
《……そうだな。私も祖国ドイツを取り戻す為に戦うだけだ》
出撃の準備が整い、格納庫に収納していた撃震が上昇していく。全機出撃準備が整い私の号令待ちとなった。
「敵の動きはこれまでのように単調なものではない可能性がある。だがそれがどうした?我等は日本帝国の戦術機部隊である!その実力を今こそ示すぞ!全機出撃!」
その言葉に合わせて一斉に跳躍ユニットを点火。一斉に船を出て前線へと飛びだっていく。そして中央戦域に辿り着いた私率いる坂崎中隊とニコラ率いるヴェアヴォルフ大隊は二手に分かれて襲い掛かるBETAへの攻撃を開始した。
「ちっ! 予想外に多いか……!」
長期戦になる事を踏まえて銃火器による遠距離攻撃を行っているニコラはレーダーに映る敵の数を見てそう毒づいた。BETAは当初の予定は5000もいればいい方だと考えられていたが蓋を開けてみれば1万は確実に超えていそうな数が存在していた。明らかにこちらの動きに合わせているとニコラは感じていた。それは私も同じようで、周辺のBETAを駆逐し終えると通信を行った。
「総員傾注。ここで小休止を取る。各員、マガジンの残弾を確認しておけ。長期戦になる。休めるうちに休むぞ」
私達はここで小休憩する。無駄に体力を消耗したくないからな
本来なら却下される筈だが、二コラは違った。
《休めるだけ小休憩したほうがいい。あとが大変だからな》
なんと快く承諾したのだ
競争相手がいないこの戦域は東欧州社会主義同盟にとっては好都合でやりやすい
私は秘匿回線に切り替え華太と会話した
「華太、少し構わないか?」
《お、おう。都どうしちまったんだ?》
「……華太、貴様は頼りになる男だ。衛士でなくても仁義や任侠を貫いて生き延びるだろう」
《やらなきゃやられるんだ―――渡世では死と隣り合わせ。何が言いたいんだ?》
この様子じゃまだ分かっていないようだ。本音を言うか
「日本に帰ったら、結婚を前提に付き合って貰えるか?」
《お前、それって》
「ああ、私からのプロポーズだ」
プロポーズした場所が北朝鮮の戦域なのは笑えない
景色が綺麗な場所でしたかった。
「ダメ、なのか?」
《……》
華太は悩みながら考え、こう答えた。
《俺も都の事が好きだ。良いのか?俺と付き合うという事は生活が苦しくなるぞ?》
「構わん」
《……そうか》
華太にプロポーズした直後、レーダーが新たなBETA群を捉えた。その数は3万以上。東欧州社会主義同盟や朝鮮人民軍が展開する戦区の境目を縫うように向かってきていた。
私は秘匿回線からオープン回線に切り替える
そして皆に号令を出す
「総員傾注!これより我々は敵の前衛に飛びこみ足止めを行う」
《あの数の群れに突っ込むのね……》
《おお、数が多いぞ…》
《当たり前田のクラッカーや》
《城戸の兄貴は場を和ますのは上手ですね》
11機の撃震が低空で突撃する。6機が前衛、5機が後衛で攻撃を行う。
目の前にいるのは突撃級。数は3000。5層以上の波で進軍している
「突撃級は総員非装甲部を狙え!間違っても正面から挑むなよ!」
私の指示に合わせて突撃級の後方に銃弾を叩きつけていく。場合によっては砲弾すら防ぐ装甲を持つ突撃級だがそれは正面のみの話である。後方や脇は他のBETAと同じ硬さしかない。
そして先頭の突撃級が倒れたことにより後方の突撃級がぶつかり、身動きが取れなくなっていく。そこを一匹ずつ仕留めていくがそれでも数が多すぎて対処が難しくなっていく
「北朝鮮の艦隊が私達を砲弾の雨に晒される前に撤退だ」
《坂崎大尉、それは許可出来ないぞ。南側で戦ってる私達を援護しろ》
撤退させない気か!?
このままだと犬死になるという事が分からないのか!?
「ミヒャルケ少佐!それは自殺行為です!」
《日本の衛士は玉砕覚悟で戦うのだろ?だったら最後まで戦え。貴様の意見を聞くに値しない!》
何を言ってるんだ?この女は
自分達が率いてる部隊を全滅するまで戦えって言うのか。
この言葉を聞いた私はブチ切れた
「少佐…最後まで戦えと言うなら戦力の消耗を考えて先に撤退するのが良い選択だと思いますが…」
《これは我々が考えた作戦だ!口出しする権限など最初からない》
「その作戦は海王星作戦の丸パクリですよね?自分達が考えた作戦…?ふざけるのも大概にして頂けないでしょうか?」
撤退をしようとしない二コラに対して私は怒りを覚え、咆哮する。
「部下の指摘を聞かない衛士が真面な作戦練れる訳がないだろうが!いい加減現実を直視しろ!少佐はブレーメ総帥の側近で凄い衛士だと思ったが、何も出来てないじゃないか!ただ強引に部下を死なせるだけだろ!みんな生き延びようって思うのは全員同じなんだ!不安なんだ!どれだけ戦績を得ていても二度と返ってこないモノがあるんだ!それを失わせない為に必死に戦ってるんだよ!衛士を捨て駒扱いする奴は指揮官以前に衛士を名乗る資格はない!」
《ぐ……!》
目の前に迫る回避できる死を回避しない事がどれほど愚かなのか。そしてそれを分かっていない二コラに私は怒りの言葉で叫んだ。
階級が上下なんて関係ない。
資料で見た通り、やはり二コラ・ミヒャルケという女性衛士は無能指揮官だ。
ノイルピーン市街戦でどうやって生き延びたかは知るまでもない
「どうなんです?二コラ・ミヒャルケ少佐!」
《ぐぬぬ……》
言葉に詰まる二コラは焦り出し困惑した次の瞬間
《二コラ、撤退させなさい。戦力を無駄に消耗するのは駄目よ》
二コラに変わり指示を出したのはベアトリクスだった。
これには流石に逆らえなかった
《総帥閣下!私はただBETAを…》
画面越しのベアトリクスは二コラに威圧を掛ける
《私の命令を逆らうのか?ミヒャルケ少佐》
《ぐ…!分かりました…至急撤退します》
総帥の肩書を持つベアトリクスの指示という事もあって全機撤退を開始する。そしてその直後に砲撃が開始された。
そこにいるのは韓国軍と韓国に駐留してる日本帝国軍だ。
ストライクイーグルと撃震を編成した部隊か…。
《そこの戦術機部隊!聞こえているなら北西に迎え!脱出を支援する》
「それはありがたい!私は第1006戦術機連隊第1大隊『坂崎中隊』の坂崎都大尉だ」
《此方は大韓民国陸軍第2戦術機甲部隊『チュンチョン』チャ・オジン少佐だ。後方の要撃級は此方が対応する!》
分裂した朝鮮の片割れの支援を受けつつ私達は撤退を開始する。そして、途中ですれ違った部隊、在韓米軍のトムキャットが放ったフェニックスミサイルを目撃した。それはミサイル内に内蔵された無数の小型爆弾が目標地点に到着すると周囲にばら撒くというものであり、私達が11機で辛うじて抑えていた突撃級を全滅させる威力を見せつけた。
その様子に、一番のショックを受けたのは自分の能力に妄信しているとも言える二コラだった。
そして何も言えなくなった。
韓国軍やアメリカなどの西側諸国は力を蓄えて満を持してこの戦域に介入したのだ。
私としてはそんな経緯がある以上このくらいは出来て当然とさえ感じていた。だが、二コラにとっては自分達がどれほど頑張ろうとも無意味にさえ感じられる西側の力に悔しさで歯を食い縛るのだった。
橋頭堡の確保に成功したことで元山には急ピッチで基地が建設され始めた。しかし、その建造速度は私達は勿論だが、二コラ率いるヴェアヴォルフ大隊の面々から見ても異様とも感じられるほど早かった。何しろたった半年で基地として稼働できるほどに建設されているのだからだ。
これが西側諸国の力だ。
幾ら戦力が高かろうが社会主義陣営である東欧州社会主義同盟や発足したばかりの朝鮮人民軍は余裕がない
「少ない戦術機で戦っているのが馬鹿馬鹿しく思うな。華太」
「ああ、その分衛士の質じゃ俺達が上だと考えればいい。囲まれた時に生存できる可能性が俺達の方が高いとな」
私の嫌味な言葉を聞いた華太は彼女の頭を撫でながらフォローするように言うが当の本人は好意を寄せる相手に撫でられている事もあって顔を真っ赤にして俯いている。
「と、当然だ。私はお前達の事を思って行動してるんだ」
「分かってるさ」
全く……華太と一緒に居ると調子が狂う……だが、不思議と不愉快ではない
私は優しい笑みを浮かべたその時
「あー、いたいた。こんなところにいたんスね。無能な人狼部隊の衛士様よぉ!」
その言葉とともにやってきたのは日本帝国軍の簡易ジャケットを着た三人の男女だった。そして先頭に立つ男は続ける。
「アンタが指揮官か?」
男は二コラに向け嘲り笑うような態度で言い放つ
「そうだが」
「日本帝国軍第5910戦術機大隊の久我虎徹少尉だ」
久我虎徹だと………!?
何で彼奴がここにいるんだ?それに里中まで…いや今はそんなことはどうでもいい
久我の姿を見た私達の表情は険しくなる。
「東欧州社会主義同盟戦術機大隊ヴェアヴォルフの長を務める二コラ・ミヒャルケ少佐だ。無能な衛士って私の事か?聞捨てならないな」
「ハッ、笑わせんな。アンタは無慈悲で東ドイツ国民を殺しまくってた癖に。革命に勝ったら総帥閣下の親衛隊の長か?舐めやがって…ふざけるのも大概にしろボケが」
「さっきから喧嘩売ってるようだが、自分の立場がどうなっても良いのか?」
久我の言葉に二コラが我慢出来なくなったのか食って掛かる。
彼の言葉は私達に撫でられているにも関わらず、現実に戻すほどの威力はあったようだ。
「謝罪を要求する。今すぐ跪いて土下座しろ―――”無能な自分達の所為で迷惑を被った”とな」
「貴様、何だその口の利き方は!粛正されたいのか!?」
二コラの言葉を聞いた久我は冷徹な目線を向ける
「チッ…これだから社会主義国家は……。死にたいのなら、自分達だけで死ね。俺達を巻き込むな」
「ッ!」
二コラは今にも掴み掛かりそうになるがカタリーナが制止する
「落ち着いて二コラ。相手が思うツボよ」
「ぐぬぬ…!」
カタリーナは久我の顔を見る
里中は余計な口出しをして火に油を注いだ
「久我の言う通りだ!お前なんか一人で死ねばいいんだよバーカバーカ!」
里中は二コラを煽りふざけた態度を取った
里中の言葉が二コラの堪忍袋の緒が切れた
「自分達から首を突っ込んでおいてよく言うな…」
「あ?」
「まだ実戦に出てない貴様が言える立場か!貴様等に何が出来ると言うんだ。無能なのは貴様等の方じゃないか。何も出来ない何もやらない結果が出せない貴様等の言葉を聞くに値しない!死にたいなら自分達で死ね?死ぬ勇気もない奴が出しゃばるな!」
ブーメラン発言した二コラは久我と里中に向け言い放った。
その言葉を聞いた久我は怒った
「んだと…この!」
「そこまでだ!」
今にも掴み掛かりそうになる久我と二コラを第三者が止めた。それは撤退時に通信を行った韓国軍のチャ・オジン少佐だった。
「少佐!?」
「全く、何やってるんだお前は」
「……」
所属は違えど、階級が上である人間には逆らえないな
「大韓民国陸軍第2戦術機甲部隊『チュンチョン』チャ・オジン少佐だ。ヴェアヴォルフ大隊の二コラ・ミヒャルケ少佐だね。話は聞いたよ」
「あ、はい。面目ないです。私こそ無礼な態度を取って申し訳ありません」
久我は自分のおかしそうになった失態に気付いた。他国とはいえ自分より階級の高い相手に掴み掛かりそうになったのだ。
そして、別場所では韓国軍と朝鮮人民軍の衛士2人が握手し仲良く接している。
オジン少佐は楽し気な笑みでこう言った
「階級は同じなんだ。東西南北関係なく楽にしてくれて構わない」
「そう言って貰えると此方としても有難い。これからの作戦、お互いに協力していこう」
「此方としても敵視し合って戦闘に臨むよりは良い。宜しく頼む」
お互いに握手を交わした
「じゃあ、私はこれで失礼するよ。お互い仲良くな」
そういうとオジン少佐は戻っていく。その後を悔し気な表情をした久我達が追いかけていき、何とか手を出す事態に陥ることなく終息に成功した。しかし、この一件で西側諸国が東側諸国をどう見ているのか、本当にやっていけるのかという不安や不満が心に現れ、沈殿していく事になる。
久我は私と鈴乃がここにいることは気付かなかったようだ。あとでめっちりと叱っておくか。
数日後、基地も完成してフル稼働が始まった時に第2波とも言えるBETAの動きが発見された。
「総員傾注、2時間前、朝鮮人民軍の偵察部隊の報告により新たなBETAの群れが確認された。数は6万。我々ヴェアヴォルフ大隊と貴様等日本の衛士達はその敵の流れを正面から受け止める事となった」
どうしてそんな危険な事を!
二コラの言葉に驚きの声を上げたのは鈴乃だった
「ミヒャルケ少佐、本気で言ってるのですか?」
「うむ、我が東欧州社会主義同盟と朝鮮人民軍を中央として、右翼に朝鮮人民軍、左翼に日本帝国軍が展開。我々がBETAを遅滞させている間に重金属雲を展開し、面制圧で包囲殲滅する」
これは確か対BETA戦ドクトリン―――アクティブディフェンスだ。
「貴様等西側は14年前に近接戦闘の経験してる衛士は少なかったが、今は欧州に属する衛士達も積極的に近接戦闘を心掛けてる。が将校達は自らの保身の為に安全策を取るのだろう」
城戸が挙手し二コラに質問を投げかける
「西側諸国は面制圧を拘ってるちゅう事ですか?じゃあ、面制圧に失敗したらどないしまんの?」
城戸のネガティヴな質問に対し二コラは怒鳴りつける
「失敗など許されない。これは我々ヴェアヴォルフ大隊と貴様等の挑戦状と捉える」
二コラは必ずこの作戦を成功させると息まいており、その重圧が今の彼女にかかっていた。それゆえに狂気とも感じる程、彼女はこの作戦の成功に拘っていた。
「……この作戦は成功しなければならない!先程言ったが今は欧州の衛士は近接戦闘する者が増えている。海王星作戦と同じ規模…いやそれ以上の大規模作戦となる!」
「上手くいくといいわな」
「城戸の兄貴と同じ意見です」
城戸と浅倉は「この作戦は本当に上手くいけるのか?」と疑心暗鬼した。どこか嘲笑するような笑みと呟きを聞き二コラの顔は怒りで染まるがそれを必死に抑え込んだが話を続ける。
「…出撃まで時間はある。各員準備を整えておくように。解散!」
どこか不安を残しつつ、ブリーフィングが終了した。私は危い焦りを見せる二コラを見ながらこの作戦について考えるのだった。
そして、BETAの第2波を止めるアクティブディフェンスが発動した。北進を続ける6万のBETAに対して艦砲射撃を含めた攻撃が3方向から同時に行われる。それらは突撃級すら吹き飛ばし、小型の戦車級を残らず吹き飛ばしていく。
それは撃震に乗った私達にも確認でき、レーダーに映るBETAの反応が急速に消えていく様子に戦慄さえ覚えてた。
これほどの包囲殲滅を成功させるなんて……これが西側諸国の力なんだ。
《…!》
あまりにも一方的な様子に二コラは自分の存在意義を失い驚愕したが、私はそれに対して答えた。
「ミヒャルケ少佐、戦術とは対策されて当たり前ですよ。それにいくら完璧な作戦とはいえ始まるまでは机上の空論に過ぎない。ましてや相手はBETAだ。人間の予想なんて…」
そこまで言った時、城戸が話を割り込む
《予想なんて通じへんと思いますわ坂崎大尉。俺達は未来から来たタイムトラベラーとはちゃいますわ》
城戸の言う通りだ。そうだ私達は未来人でも預言者でもない。
小休憩を取ろうとした次の瞬間、新たなBETAの反応がレーダーに映る。
《中隊長!両翼の戦術機が次々と撃墜されています!》
「これは……!くっ…地中を掘っていたのか!」
BETAは地下から現れた。それも両翼の外側から包囲するように光線級が出現!
奇襲を受けた両翼の戦術機に大量の撃墜判定が出る。更に光線級による露払いは済んだとばかりに突撃級、要撃級が出現したが悪夢はまだまだ続いた。
《内陸から要塞級の出現報告!数は100!》
《カタリーナ!見間違いじゃないのか!?》
《見間違いじゃないわ…無数の戦車級と共に北上に接近してくるわ!》
《……BETAは戦術を用いたという事か!?そんな馬鹿な…》
明らかにアクティブディフェンスに対するカウンターの如き動きに二コラは驚く。それは他の面々も同じであり、先程までの包囲殲滅が霞むほどの衝撃だった。
《両翼の損耗率50%を超えます!》
《光線級接近、我が大隊に集中攻撃仕掛けようとして……攻撃来ます!》
《そ、総員回避せよ!》
次の刹那、二コラは部下達を命じ回避させる
《次の攻撃まで時間かかる。全機攻撃用意!》
ぞろぞろと迫ってくる光線級を二コラ率いるヴェアヴォルフ大隊がとった行動は
《砲撃開始!》
ただひたすら120mm弾を光線級に向け放った!
そんな状況に対して真っ先に動いたのは私は今遂行してる任務を放棄する
「総員傾注!我々は現在の任務を放棄。韓国軍と支援してる日本の衛士達の救助を行う!」
この言葉を聞いた二コラは現実を受け入れずに攻撃続行する
《坂崎大尉、貴様は自分の責務を放棄するつもりか?南朝鮮の連中を助けるなど…》
二コラは却下しようとしたがカタリーナが了承の言葉を添えた
《分かったわ。南朝鮮の連中を救助しに行きなさい。貴重な戦力は失くしたくないからね―――それで宜しいですよね大隊長》
カタリーナは不敵な笑みを浮かび二コラに威圧を掛けた
《カタリーナ……くっ、分かった。まさか両方助けると言うんじゃないだろうな?流石にそれは無理だぞ》
「確かにそれは難しいでしょう。故に片翼のみの救助を行います。特に左翼のBETA群は右翼よりも多い―――右翼の韓国軍と在韓米軍には悪いが自力で対応して貰うしかないですね」
華太は疑問を抱きこう言った。
《韓国軍を支援してる日本人も助けるって言うのか。お前はすげえ女だよ》
「このままでは撤退すら難しい。見ての通り光線級は左右に広く展開している。沿岸部ならばともかく内陸部の光線級を叩かない限り逃げる事は難しくなる」
《朝鮮人民軍より坂崎中隊へ。貴官等の損耗率を答えよ》
私の言う通りこのままでは逃げる事も難しいのは分かっていた。
そんな葛藤を心の中で抱えていると朝鮮人民軍より通信が入る。
「此方、坂崎中隊。損耗はありません」
《ええい、貸せ!貴様等の損耗など関係ない!お前達は今すぐに撤退だ!この作戦は失敗だ!作戦失敗の責任は南朝鮮の連中に負ってもらう!故にお前達はは損害なく撤退する事だけを考えろ!》
朝鮮人民軍の将校らしき男性が割り込み通信変わった。
何を言ってるんだ此奴は…衛士達を見捨てろって言うのか
「(救いの手を払い除けろ――――結局は自分の事しか考えていないんだな)撤退はしません!私達は日本帝国軍の衛士です。救いの手を払い除けるなど、衛士の資格はありません」
《黙れ!お前達はブレーメ総帥閣下の駒だ!北朝鮮社会に貢献しろ!!》
阿保将校の一言で怒り狂いそうになったが二コラが制止し将校に叱責した。
《坂崎大尉、挑発に乗るな。何だ貴様は…前線で戦ったことがない将校がブレーメ総帥の名を語るなんて甚だしい。身を弁えろ》
《ではどうしろというのだ!?》
《では南北朝鮮の艦隊には光線級の殲滅を頼みましょう》
《何だと!?貴様等に出来るのか!?》
阿保将校は狼狽の声を上げる
二コラは平然とした顔で阿保将校にこう言い向ける
《現在、沿岸部から内陸部にかけて光線級が展開している。これらを殲滅しない限り撤退は難しい。そして光線級吶喊を得意とする我等を撤退させるという事は代わりに行ってくれると解釈していいよな?》
《それは…!》
《貴様は理解しているだろ?ここで我々が真っ先に撤退した場合、東欧州社会主義同盟と朝鮮人民軍は衛士達を平然と見捨てる臆病者の集まりだと――――とどのつまり、ブレーメ総帥閣下は臆病者とでも?》
《そ、そんな事一言も言ってない!》
未だ決めかねているらしい阿保将校に対して声を上げたのは私だ。
「(第666戦術機中隊の真似事だが、致し方あるまい)我々はこれより光線級吶喊を行います!少佐」
《ああ、行け!》
「…総員傾注!不埒な異星起源種共に、頼りない韓国軍や米軍の連中に! 我々の力を見せてやれ!」
私達は行動を開始した。それと同時に各戦線においても反撃が行われようとしていた。
朝鮮人民軍海軍の艦隊では砲撃が再開され、光線級の殲滅を行おうと躍起になっていた。
《北韓の連中が動き出したようだ!俺達も負けてられないぞ!》
右翼にいた在韓米軍の戦術機部隊は奇跡的に全機健在であり、友軍機と共に過酷な光線級の殲滅を開始した。
ここからは一機の撃墜が即座に死に繋がる危険地帯だ。
全員が覚悟を決めて突撃を行おうとしたその時!
《右前方より友軍機!『チュンチョン』です!》
《坂崎大尉、丁度いい所に来たな。光線級の殲滅に手を貸して貰えるか?》
友軍機、『チュンチョン』は健在のようで数を保って跳躍をしていた。そこにオジン少佐からの通信が入るが内容は私達もやろうとしていた事だった。
「無論だ。この状況での戦闘は望むところだ!」
《いいねぇ!俺達も気合い入れていくぞ!》
「行くぞ!総員!攻撃開始!」
『チュンチョン』と合流した私達は一斉射撃を開始する。そして、韓国軍の衛士達は坂崎中隊という日本の強さを知る事となる。
《77は第一世代機だろ?一体どれだけの操縦技術なんだ……!》
《すげー、これが神風か!》
《玉砕覚悟で戦ってる人間だからな。ただもんじゃねえぞ》
『リュンチョン』の面々は何故私達がここまで持ち応えられていたのかを理解した。
我が坂崎中隊と『チュンチョン』は無事にBETA群を抜け、光線級がいる位置にまで辿り着いた。
しかし、そこには北上していた要塞級が迫ってきており、更なる苦難が私達に襲い掛かる。
次の瞬間、私達の目の前に要塞級が現れた
「要塞級だ!数は8!」
《フォ…要塞級だと!?どうするの?都》
要塞級なら中国での戦闘で遭遇した事がある。
だが、オジン少佐は要塞級の殲滅を引き受けた
《このタイミングに来たか――――仕方ない。光線級は任せた!要塞級は此方で対応する》
「すまない。オジン少佐」
《なぁに、俺達はアンタの事を信じてるんだ。さっさと殲滅してこっちを助けてくれよ》
「勿論だ」
光線級の群れを突っ込もうとしたその時、ラーストチカ12機を編成した戦術機部隊が此方に接近した
よく見ると……第666戦術機中隊シュヴァルツェスマーケンの紋章だ。
《嘘だろ…おい》
《この紋章って…》
「ああ、東ドイツ最強と謳われた第666戦術機中隊シュヴァルツェスマーケンだ」
アイリスディーナは総書記という立場で事実上衛士引退している
となると、後任となったファム・ティ・ラン……?
《此方東欧州社会主義同盟第666戦術機中隊『シュヴァルツェスマーケン』ファム・ティ・ラン大尉です。光線級殲滅は私達に任せてください》
間違いない。先頭に立ってるラーストチカに乗ってるのはファムだ。
「日本帝国軍第1006戦術機連隊坂崎中隊の坂崎都大尉だ。シュヴァルツェスマーケン…援護感謝する」
驚きを隠せなかったのは別場所で戦ってる二コラだ
《666中隊だと!?援軍なんて聞いてないぞ!でも援護してくれるなら有難い!》
第666戦術機中隊がどうしてここに来たかは置いといて数が増えれば戦力は上がる
「…では我が中隊は韓国軍と在韓米軍の手伝いをしよう」
お互いの役割を決めたが私は要塞級の方に向かうといったがある意味では当然と言えた。
《お手伝いしますぜ。坂崎の姐さん!》
《俺も手伝います!》
「久我…里中……」
この状況で戦力が増える申し出を断るほど私達に余裕なんてない
《第5910戦術機大隊の長を務める五十嵐だ。ウチの隊員が不躾な態度を取って済まない》
「私は大丈夫です。五十嵐少佐」
工藤中佐と泉屋少佐は平壌基地の保守に当たっている
この場にいないのはその為だ。
《坂崎都大尉。貴女の話は聞いてる。我が大隊もお手伝いしますのでお手並み拝見させて貰いますよ》
「ならばしっかりと見せつけてやります。日本帝国軍の実力を!」
その言葉と共に私は突撃砲で36mm弾を放ち跳躍ユニットを吹かすと高速で要塞級に近づいていく。
接近に気付いた一番近い要塞級が触手を振るってくる。50mも伸びるこの触手は光線級並みに厄介であり、避けるのも一苦労だが私は要塞級の懐に潜り込んだ。
「はぁあああああああ!!」
ひたすら36mm弾を撃ち込む
その後方に久我と里中は要塞級に120mm弾を撃ち込んでいた
《此奴、デカい割に倒れねえ!》
《120mm弾がもうすぐなくなりそうだ!クソォ!》
「久我、里中。要塞級に120mm弾では歯が立たない!36mm弾を撃ち込め!」
私はそういうと久我と里中は36mm弾を放った
足は脆く折れてバランスを崩した要塞級は倒れ込んだ。
そしてもう一体の要塞級の真横から一気に突っ込む。
《坂崎の姐さん、ここは俺に任せてください》
久我は向かってくる触手を再び躱すと長刀で足を二本切り落として見せた
本当は決死の覚悟を決めていたつもりが蓋を開ければ私達の無双を見せつけられていた。今ではオジン少佐達は倒れた要塞級に止めを刺す作業を安全にこなす事しかやる事がなくなっていた。
《最短距離で地獄に落ちやがれ!》
里中も短刀を2つ握り、要塞級その3に向け投擲した
《里中、いい感じだ!》
久我は36mm弾で止めを刺す。
ほぅ、少しはやるようになったじゃないか。
そして、順調に要塞級がやられていく隣でシュヴァルツェスマーケンも光線級を順調に倒していた。
《02、光線級は残り何体いるの?》
《の、残り20!》
《17!》
《12!》
《10!》
《5!》
《これで最後よ!》
シルヴィアが最後の一体を倒したことで左翼に出現した内陸部の光線級は掃討された。
《これで全部ね―――中隊長》
《ええ、坂崎中隊の援護に向かう!我に続け!》
そして、ほぼ同時に私達の援護射撃に向かう
「すまない。ファム大尉」
《困った時は助け合いですよ》
と優しい笑みで声をかけた
暫くすると、久我達は要塞級を全部倒し終えた。
《姐さん、要塞級倒しましたぜ》
「よくやった久我。里中もだ」
《へへ、ありがとうございます!》
「ははは、貴様達の手柄だ。誇りに思え」
《な…何なんだこれは》
久我と里中、第666戦術機中隊の活躍に私は笑い、二コラはショボい声で呆れていた。カタリーナを除いて他のヴェアヴォルフの衛士達も同じようで似た反応が返ってくる。
そこへ、重金属雲がなくなったことで通信が回復したらしく、東欧州社会主義同盟艦隊から通信が入る。
《東欧州社会主義同盟から坂崎中隊、及び第5910戦術機大隊、第2戦術機甲部隊、第666戦術機中隊、ヴェアヴォルフ大隊。光線級の殲滅を確認した。右翼においても在韓米軍の活躍により其方も片付いた。沿岸部は取り戻した。つまり、全ての光線級の殲滅を確認した。これより砲撃を開始する。巻き込まれないように退避されたし》
《此方坂崎中隊、了解した》
《第5910戦術機大隊、了解した》
《第2戦術機甲部隊、了解だ》
《第666戦術機中隊、了解です!》
《ヴェアヴォルフ、了解》
光線級の完全殲滅。これが意味するのは砲撃により敵を片付ける事が出来るという事だ。つまり、絶望的とも言えたこの戦闘を勝利で終わらせることが出来るかもしれないという事だ。
全戦術機部隊はすぐに戦域を離脱する。その数分後には砲撃が始まり、沿岸部・内陸部のBETA群を駆逐していく。包囲するように展開していたがゆえに一つ一つの敵は少ない。各個撃破されるようにBETA群は駆逐されていき、戦闘開始時には夜だったが夜が明けるころには一面にはBETAの死骸しか残っておらず、動いているものは皆無だった。
そして、それが意味するのは犠牲を出し、予想外の事態に陥ったが光明星作戦を成功させたという事だった。それが分かった瞬間、衛士達が喜びの雄叫びを上げ、この勝利を喜ぶのだった。
「24年に及ぶ忍耐も終わりです」
万寿台議事堂で行われる最高人民会議。目の前の男の言葉に、ベアトリクスは心臓を握られたかのような感覚に陥った。この最高人民会議にいるメンバー全員、彼女の周りに信用出来る者はいない。
「光明星作戦は人類の勝利で終わった。目的は達成されたが貴様等にとっては人類の勝利とは何だ?」
ベアトリクスはここにいるメンバー全員に問いを出す
「そ、総帥閣下。発言の許可を」
七三分けの中年男性が挙手する
「ええ、許可するわ」
「そもそもBETAという地球外生命体は人類と戦争をしているとは思っていません。簡潔に言えば、開拓。この言葉がしっくりきます。人類が人のいない大地を見つけ、田を耕し、港を整備し、家を建てて街を形成する。人類とはその過程に存在する障害物でしかありません。田で言えば雑草、港で言えば不安定な足場。家で言えば埃、街で言えば災害。我々人類はその程度の認識―――生物と認識していないのですよ」
それに対するベアトリクスの答えはこう返す
「貴方の言い分は理解出来るわ」
「ご理解頂き感謝します」
「地球を死の星にして人類を根絶やししようと?」
そう言ってベアトリクスは懐から拳銃を出し男に銃口を向ける
「不愉快な気分よ。貴様は私を見下してるな?」
「そ、そんな!違います!私は総帥閣下の為にアドバイスを!」
「何も違わない。貴様は人類が滅びる事を望んでる。まさか人間の皮を被った異星起源種なのか?」
ベアトリクスは七三分けの中年男性に冷徹な目線を向ける
「わ、私は人間です!貴女様のお役に立てるなら何でもします!」
七三分けの中年男性は焦りつつ苦し紛れで言い放った
「何でも?具体的な要素は何だ?」
「えっと…執務です!政治要素を含む執務を!」
次の瞬間、ベアトリクスは拳銃の引き金を引き弾丸を放つ
「つまらない男…役立たない奴は死ね」
パァン
「ぐぶぁ!」
七三分けの中年男性は倒れ、絶命した
彼はベアトリクスを―――全人類を裏切ろうとした最低な男だと彼女は断定した
裏切者には死を
意図も簡単にベアトリクスに謀反しようとする将校もだ。
そして…
「平壌派及び統一党は私が対応する。ロザリンデ」
「――は」
「元山派の連中を全て粛正しろ。放置しておくと厄介なことが起こる」
ベアトリクス率いる平壌派は朝鮮半島の存亡をかける朝鮮革命を決行しようとしていた
「さぁ始めるわよ――――かつての東ドイツ革命みたいに。全て捻り潰してやるわ」
この時のベアトリクスは不敵な笑みを浮かび、”この朝鮮革命に勝利を掴むのは私だ”と確信した。
いつも作品見ていただきありがとうございます
今回の話は朝鮮半島最大の激戦―――光明星作戦の話です。
途中参戦した韓国軍のチャ・オジンのモデルはチャ・ドジンという韓国の俳優ですね。
彼は端役、脇役、悪役を演じる個性派俳優ですが、まぁパッとしないですね。
余談ですが、マブラヴ:ディメンションズというソシャゲのキャンペーンに当選し月刊MR創刊号(印刷本)を入手することが出来ました!僥倖!圧倒的な僥倖!
大切に保管しておきます。はい。
この作品を…トータルイクリプスサンダーボルトや他の作品、Pixivで投稿した作品を読んで頂けた全ての方々に感謝しつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます
ではまた