私の名前は坂崎都。
愛想がよく優しい笑顔を振る舞う日本帝国軍の武闘派女性衛士だ。
学生の頃、私は鬼と呼ばれるほどに喧嘩が強かった。
「好子ちゃんの顔が凹んでる!」
「『狂犬坂崎』のパンチ強過ぎる…」
「貴様等、迷惑をかけた人達に土下座しろ」
規格外のパンチ力から、地元のヤンキー、スケバンは私を『狂犬坂崎』と呼んでいた。
そんな生活を送った私だが、弱い者いじめは大嫌いだった。
「(あの子、目が見えないのか。危ないな)」
「ふう…」
強く生まれた人間の責務は弱い者を守る事だと思っていた。
だが、世の中には残念なほどに非常識な奴等がいる。
「あ、ごめんなさい」
「あぁ~ん?痛ってぇなぁ~」
「なんだこのガキ、俺達を舐めちゃってんの?」
見ているだけで吐き気がするほどの光景を……。
「オメエは目が付いてねぇのか?馬鹿野郎」
「ごめんなさい…目が見えなくて」
「見えなくても俺は許せねえなぁ」
「財布出したら許してやる。まあ2万以上入ってたらだけどな」
「早く出せゴラァ。ブチ殺すぞ」
「は…はい」
私は半グレ衛士2人を呼び止める
「おいやめろ。下衆野郎―――この子に土下座して走って消えたら許してやる」
「あぁん?何このバカ」
「ムカつくね。殺しちゃおうよコイツ」
「俺等空手2段なんだぜ。謝るなら今だぞボケ」
謝罪する姿勢がないので私は半グレ衛士の一人にアッパーを喰らわせた
「この大馬鹿者がああああ!!!」
ボガァ
「グエエ!」
戦力が減ると困るので命を奪わない程度で留めた
半グレでも衛士務めてる人いるからな。
アッパーを喰らった半グレの一人は怯えだし始めた
「グアア…」
「目の不自由の人の為に点字ブロックを空けろ」
「はい!すいません!勘弁してください!」
「ダメだ。男ならかかってこい」
そしてもう一人の半グレ衛士も鉄拳制裁を喰らわせた
ボガァ
ともかく私は人の道を外れた奴等に容赦しなかった
「ほら、バス来たぞ。段差に気をつけろよ」
「ありがとうございます」
「アイツだ!」
まあ、毎回憲兵にお世話になったが……。
光明星作戦が成功に終わったことで、その立役者と言える坂崎中隊やヴェアヴォルフ大隊、第666戦術機中隊は英雄として扱われた。
そして私は東欧州社会主義同盟のレーニン勲章、北朝鮮の国旗勲章、共和国英雄等の勲章を授与されるなどの栄誉を得ていた。
そして、元山周辺からBETAが消えたことで大規模な戦力を留めておく必要がなくなり、第666戦術機中隊やヴェアヴォルフ大隊含め私達坂崎中隊は平壌基地へ帰還する事となった。
私は今回の光明星作戦の成功や勲章を授与された事を工藤中佐に報告した
「…そうか。良かったじゃないか」
「ありがとうございます。工藤中佐」
工藤中佐は険しい顔を浮かび私に言い放った
「…坂崎大尉、第666戦術機中隊が平壌基地入りした事は知ってるな」
「いえ、何も…」
「そうか。まあどちらにしろ今の北朝鮮や東欧州社会主義同盟の連中には余裕がねえ筈だ。小峠中尉」
「は―――中佐殿の仰る通りであります!」
状況は良くなったとは言えない。
北朝鮮はベアトリクスが支配してるとは言え、軍全体が団結してるとは限らない。
……第666戦術機中隊が北朝鮮にいるって事は恐らくベアトリクスの命令で来させた筈だ。
「そして朝鮮人民軍も最悪だ。光明星作戦終了後に国家保衛省によって複数の将校が逮捕された。容疑は反体制派の結成、及びクーデターの未遂だ。しかも国家保衛省の手はベアトリクスの傀儡政党である朝鮮労働党にまで伸びた。党も軍も大きな痛手を受ける結果となった」
国家保衛省……元山派が動いたか。ここまで来て権力争いか
「ベアトリクスも既に気付いてる筈だ。見て見ぬふりはしねえからな」
「最悪の場合、私達はどうなるんですか?」
聞きたくないが聞かざるを得ないだろう
「最悪の場合、軍の指揮権を元山派に奪われる可能性は高い。そうなると俺達は収容所送りだ。だが、第666戦術機中隊は海王星作戦や今回の光明星作戦での功績の価値は高まっている。大義名分もなく解体をする筈が……」
工藤中佐がそこまで言ったその時。基地全体にけたたましい警報音が響き渡った。
《総員!警戒態勢!総員!警戒態勢!各員は所定位置にて待機せよ!》
その警報音を聞き私達は外に出る。外では二コラ、カタリーナ、ファム、シルヴィア、アネットが既に出ており、空を見上げていた。
「何が起きたんですか!?」
「坂崎大尉、奴等が来た」
空を見上げれば10機ほどのアリゲートルが向かってきていた。その前方には一機のヘリがおり、こんな事をする組織が何なのかを二コラは理解した。
「元山派……」
「あれは…戦術機大隊『モランボン』!?」
「ア・ドックァ中佐……!」
二コラとカタリーナの予想通り、アリゲートルの護衛のもとヘリが着陸するとそこからドックァ中佐が姿を見せた。シルヴィアは厳しい視線を向け、眉を潜める。
「何か御用でしょうか?国家保衛省武装警察軍作戦参謀、ア・ドックァ中佐」
「二コラ・ミヒャルケ少佐、どうやら警戒させてしまったようだな。何、私は職務を遂行しに来ただけだよ」
前に見た時よりも痩せた印象が見えるドックァ中佐は工藤中佐とファムに視線を向ける。
「日本帝国軍の泉屋少佐、それと第666戦術機中隊のファム・ティ・ラン大尉。君達二人を国家反逆罪の容疑で拘束させて貰う」
泉屋中佐が拘束される!?
私は呆然した
それを聞いた泉屋少佐は驚いた。
「え?俺が!?」
泉屋少佐は当然納得いかず理由を聞いた
「おいおい、何で俺が拘束されなきゃならねえんだよ。理由を聞かせてくれ」
「ファム大尉はこの前に捕えた反体制派の将校が協力者として名前が挙がったからだ。そして泉屋少佐。君はもっといけない。朝鮮人民軍将校と親しくなり軍内部にも協力者を作っていたのだからな」
「…そんな事、本気で思ってるのか?」
「思うも何も既に証拠は挙がっている。朝鮮人民軍内部の不和は君の逮捕でもって完全に収まる」
国家保衛省の動きは察知していた筈だった。しかし、ドックァ中佐の動きは早過ぎた。
ベアトリクスはそれを読んでいたのだろうか……?
二コラはドックァ中佐に鋭い目線を向ける
「ファム大尉はBETAの動きから恩赦が決まっている。第666戦術機中隊はこれまでのような働きを十分に出来る。と?そう解釈して宜しいですか」
「そう受け取って貰っても構わないよ」
私達を見下し嘲笑うドックァ中佐の態度に私は怒りを覚えるが相手が階級が上だ。
手出しは出来ない
「グウウ…!」
泉屋少佐は狼狽の声を上げつつドックァ中佐の指示に従う
「さっさと拘束しろよ。666の姉ちゃんも困ってるだろうが!」
「理解してくれて感謝するよ――――二人を連れていけ」
「は!」
泉屋少佐の言葉にドックァ中佐は同意してファムと共に国家保衛省職員によってヘリに乗り込んでいった。そして、その様子を見ていた私達含めヴェアヴォルフ大隊、第666戦術機中隊の面々は不安そうな表情をして、それもアネットは今にも泣きそうな表情で見送るのだった。
泉屋少佐の逮捕後、彼が戻ってくることはなかった。
ファムはドックァ中佐が言った通りに恩赦を受けてすぐに釈放された。しかし、この事で危機感を持った彼女達は第666戦術機中隊が存続できるように動き出した。
「…」
「泉屋少佐…更迭、されたらしいわ…」
私達が知らない間に帝国軍上層部からお達しが来て更迭されたらしい。
戻ってこない理由は恐らくそれしかない。
「華太から聞いたが、泉屋少佐は密かに平壌派の連中に情報を共有していたらしい」
「平壌派って…ベアトリクスを?」
「そうとしか思えないだろう」
あの男は元から粗暴だった。他人から注意されても自分が正しいと思い込み気に入らなかったらすぐ暴力を振るう
泉屋少佐は徴兵されてすぐに本土防衛の仕事をしてたが、ある日彼の態度を指摘した衛士を殴り憲兵に捕まった。
その後、北朝鮮の戦線に送る形で左遷されたらしい。
ここでも問題を起こしたのか。
「ねえ、都。貴女はベアトリクスを倒そうと思ってるの?」
鈴乃は悲しげな表情で言った。
ベアトリクスを倒す?そんな事して何の意味があるんだ?
「思わないよ。ただ」
「?」
「彼女は何考えてるか分からないだけだ」
私は確信した。ベアトリクスが革命に勝利を掴んだ理由を
「東独の英雄と朝鮮の英雄の二つ名か――――――みんなが望んだ結果ならそれでいいんじゃないか」
「それ本気で言ってる?」
二人の会話に入るように声をかけたのはシルヴィアだった。
「お前は…」
「知らなかったわ。アンタがベアトリクスを『敬愛なる女傑衛士』として好かれてるなんて」
そういうとシルヴィアは私に拳銃を向けた。
「!」
シルヴィアの行動は私には理解し難かった。
私は鈴乃と会話してるだけだ。
――――残念ながらそう簡単に信用する事は出来ない。
「来い!お前を拘束する」
「なっ!?どういうつもりだ!撃つのか?」
「不安要素を排除するのよ」
突然の凶行ともとれるシルヴィアの行動に私は叫ぶがシルヴィアは何のことはないと言わんばかりに答えた。
そんなシルヴィアに乗るようにファムも現れ、話し出す。
「自ら怪しさを暴露して話を逸らす。シュタージはともかく国家保衛省が考えそうな手だわ」
「ファム大尉…」
「……」
私と鈴乃は国家保衛省――――北朝鮮のスパイだと思われてる
「(くっ……どうすれば!?)」
工藤中佐がこの場にいたらすぐ制止しただろう。
――その工藤中佐は今、朝鮮人民軍の上層部と会議している
戻ってくるのは明日―――。
「やめろ!これからBETAと決戦なのに戦力を削る気か!?」
私がそういうとシルヴィアは拳銃を下ろし、拳で魂をこもったフルスイングで私の顔面に目掛けて殴った
「そんな言い訳、私には通用しないわよ!」
私はガードで阻止!
だが、ガードを振り払いモロに鉄拳制裁を受けた
ボガァ
「グウウ!」
良い拳だ。流石ポーランドの亡霊と呼ばれてるだけで伊達じゃない。
だがな、まだ倒れない。
「おい、先に殴ったのは貴様だぞ…」
「……だから何?」
「何で私と鈴乃をスパイだと言い切れる?下手すれば冤罪だぞ」
「私はね。善人面してすぐに裏切る衛士は大嫌いなのよ!」
だから私と鈴乃をスパイと疑ってるのか?身勝手にもほどがあるだろ
「拳で語り合いましょう。アンタが勝ったら私は謝るわ」
「当たり前だ。御託はいいからさっさとかかってこい!」
次の瞬間、シルヴィアは先攻で私に変則的な蹴りを打ち込んできた
「ッ!」
ガッ
「うぐぅ!」
続けてまるでダンスのように飛び蹴りが飛んでくる
「ハァ!」
ガッ
「がは!」
だがこの程度の蹴り、他の衛士は即倒れても私は倒れない
「何だそれは、その程度か?」
「……(何この女、タフネスがある)」
勘違い女の攻撃なんて効かない
「私達は日本帝国軍の衛士だ!北朝鮮の戦線に送られてBETAと戦ってるんだ!」
私は拳を握り攻撃態勢を構える
「歯を食いしばれ――――出ないと死ぬぞ」
シルヴィアも同時に構える
「その言葉、そのままそっくり返すわ」
私が本気で握った拳はもはや鋼鉄
「必死で戦ってる人間が同じ想いを掲げてる人間を潰してどうするんだ!!」
ボガァ
「ガァ!」
全体重をのせたパンチを前に。ガードなど全く無意味だ!
シルヴィアは一発で顔面陥没まではなってないが意識を失うほど崩れ倒れた
「が…ぁ…」
「おい貴様、よく聞け。貴様は私と鈴乃をやってもいない罪を被せようとした。衛士というのはな国を守る仕事なんだ。思い切り泥塗れになりどんな環境でも生き抜かなきゃダメなんだ。守るべき者を守れなかったとしてもその者の遺志を継いで必死に戦い続けるのは一国の衛士だ。他者と交流し他国の衛士と協力して前を向いて、次こそ大切な人を守るのが筋だろう。貴様がやろうとしていることは協力するどころか足を引っ張ってるんだよ!」
シルヴィア、すまないがもう一発気合い入れておく
「ぐぅぅ…」
「ここにいる衛士達に全員謝罪して来い!大馬鹿者が!!」
ボガァ
「ぐふぅ!(もうダメ……!)」
完全にやり過ぎてしまった私はその足で自首した
「坂崎大尉!貴様何やってるんだ!?」
「すみません。ついカッとなって」
カタリーナにこっ酷く叱られたよ。
当然営倉入りだ。
その後、ファムが私に謝罪してきた
「本当にごめんなさい!」
「私は大丈夫ですよ。ファム大尉」
冤罪を被せようとした奴に制裁を加えた事に後悔はない。
翌朝、私は釈放され再び衛士としての仕事を務め始めた。
平壌基地にて会議室でブリーフィングを行われていた。
北朝鮮の首都、平壌の目と先にある安州要塞陣地にて私達が属する第1006戦術機連隊総動員でヴェアヴォルフ大隊と共に強固な防衛線を張っていた
無論、第666戦術機中隊も参加している
私は目の前に書いてる数字を見る
右翼8万、中央14万、左翼8万。計30万――――とてもじゃないが勝てる見込みはない。
「ブラゴエスチェンスクハイヴから南進したBETAは予想外にもウランバートルハイヴのBETAと合流。30万という群れを3つに分けて慈江道を進軍中。背後には平壌があり、後退は許されない。そこで、軍は保有するほぼ全ての戦術機を安州要塞陣地に集結。全戦力を以てこれを迎え撃つ」
「ミヒャルケ少佐、元山の基地はどうなっているんや?」
城戸が二コラに問いかける
「30万のBETAとは別の群れが集まっているんだぞ。援護は期待出来ん。だが、そこが引き付けられているからこそ30万で済んでいるとも言える」
あまりにも敵の数が多すぎた。これを守り切る事が本当に出来るのか不安になるが二コラが状況を説明した工藤中佐に代わり話を続ける。
「作戦を前に2つ報告がある。よぉく聞け。泉屋少佐は諸事情で韓国の首都、ソウルに滞在する事になった。泉屋少佐の抜けた穴は666のファム大尉がフォローする事となる」
工藤中佐はドスを効いた声で言い放つ
「そして先程、第1006戦術機連隊が38度線に配置されるという内示が下った。何れにせよ対BETA戦だけではなく、朝鮮半島全体にも関わる事になる」
それはつまり危険な前線を離れられることを意味している。その為か、会議室にいる衛士達の表情は明るい。
誰だって死と隣り合わせの戦場よりも後方で細々と支援するのがいいと感じるのは当然だ。
「全てはお前達が上げた武勲あればこそだ。俺は誇りに思う。だからもう一度、その力を貸してくれ……」
工藤中佐はキリッとした顔で敬礼する。
そしてファムは号令を出す
「総員傾注!朝鮮半島の存亡はこの一戦にかかっている。最強たる我々に敗北は許されない。不埒な異星起源種共に黒の宣告を下してやれ!祖国万歳!」
ファムは真面目な表情でこう言った後、666中隊の面々も「祖国万歳!」と一言を添えつつ叫んだ。
「……我が大隊は666中隊に負けず、最後まで戦え!そして人狼の鉄槌を下せ!祖国万歳!」
二コラも対抗しファムと同じようにこう言った
そして続けて言い放つ
「これはブレーメ総帥閣下の為であり人類存亡の為である!異論はないな?では解散!」
ブリーフィングが終わったが、その瞬間、シルヴィアは目の前に座っていた私と、その隣にいた鈴乃に声をかけた。
「覚えておく事ね。私は貴女達を信じた訳じゃない。怪しい動きをしたら、その場で撃つわ」
シルヴィアの言葉には殺気が籠っており、確実にそういう状況となれば撃つという意思が感じ取れた。
その場で撃つ。か……「やれるものならやってみろ」と言いたいところだが彼女ならやり兼ねない
しかし、それに対する華太は威圧的な表情でシルヴィアを挑発させる。
「日本帝国軍の衛士に喧嘩売るとは凄いチャレンジャーだな。西朝鮮湾に沈めたいの?あぁ!?」
「やる気?」
「上等だ。ゴラァ」
拙い……今にでも衝突しそうだ。
先に手出ししたのは、シルヴィアだ。
「!」
ゲシィッ
「ぐぶぅ!」
まずは蹴りを一発喰らったが、華太は打たれ強い。
「ぐぅぅ…!」
だが、華太は一方的にシルヴィアの攻撃を喰らうだけだ
「頭蓋骨陥没されなさい」
ボガァ
「ガハァ!」
シルヴィアのパンチを喰らった華太はその場で倒れる
「シルヴィア……(あれは手加減してるわ。本気だったら死んでる)」
ファムはそう解釈し呆然した。
この光景を見た二コラはシルヴィアを拘束する。
「何をやってる!馬鹿者!」
「離せ!触るな!」
「全く貴様は…あの時と変わらん態度だ。いつになったら学習するんだ?」
二コラはシルヴィアを抑えたままカタリーナに手錠を掛けられる
「…出撃は一時間後だ。それまで営倉入りだ!」
「……あとで覚えときなさい」
倒れてる華太にギッと睨み付け二コラとカタリーナに連れていく形で営倉に入れられた。
安州要塞陣地は北朝鮮最後の防衛線である。ここはによって光線級の射線が切れている事から新安州青年防衛線を越えない限り敵の攻撃が来る心配はない好条件の場所だった。
しかし、それは光線級が越えなければの話であり、越えれば多大な被害を受ける事は必須と言えた。
火砲やミサイル火器により近づいてくるBETAを次々と吹き飛ばしていく。対するBETAも30万という数は伊達ではなく、本当に減らせているのか不安になるほどの大群で以て押し寄せてくる。その様子は戦車級の多さと泥臭いコンクリートも相まってまるで血塗れのような勢いであった。
さらにBETAは重光線級という、装甲、火力、射程が光線級を軽く凌駕するBETAを繰り出して来る。本来、届く筈のない距離から狙撃されていく為に戦術機に大きな被害が出始めた。
それを受けて、第1006戦術機連隊は勿論、ヴェアヴォルフ大隊と第666戦術機中隊が動き出した。
《お前等、聞こえるな?我が連隊は光線級だけ狙いを定め光線級吶喊を行う!気合い入れとけ!》
工藤中佐は私達に気合いの一言を添えた
《工藤中佐、重光線級は我々第666戦術機中隊にお任せを》
《ファム大尉か。頼もしい姉ちゃんだな。じゃあお言葉に甘えさせて貰うぜ》
弱気な言葉は吐いてられない。実際、今まで光線級吶喊を行って帰還率が高いのは第666戦術機中隊以外にいない。他は失敗するか成功しても帰還できないかのどれかだ。そういう意味では適任と言えるかもしれないがだからと言って相手は重光線級である。
不安になるのもしょうがない。
しかし、工藤中佐の脳裏にふとよぎる顔があった。
泉屋少佐だ。現在、彼がどのようになっているのか、それは分からないが、これだけは言える
彼は悠々自適に韓国で過ごしてる。
……もし、ここを突破されれば泉屋少佐だけでなく久我や里中と他の日本軍衛士。韓国軍衛士達が食い殺されるかもしれない。それだけはさせたくない。
《見えてきたぞ……ファム大尉》
《総員傾注!これより光線級吶喊を行う!私のケツについてこいッ!》
ファムを先頭に重光線級へと吶喊する。
続いて私達も後方支援に向かう
彼女達を支援するように陣地からの砲撃が続いており、重光線級は其方の迎撃を行っていた。
重光線級は火力、装甲、射程において光線級を上回っている。しかし、一つだけ光線級に劣るものがあった。それはレーザー発射までのインターバルだ。
光線級は12秒時間がかかるが、重光線級はその3倍の36秒かかる。
つまり3発撃つことが出来る時間を用いて発射するそのレーザーは強力となっているのだ。
それだけ発射に時間がかかるものだが、第1006戦術機連隊と第666戦術機中隊が到着したとき、運がよく重光線級はレーザーを発射した直後であった。
《陣地からの砲撃が陽動となっている!今なら懐に飛び込めるぞ!》
工藤中佐はそう言い放ち、ファムが率いる第666戦術機中隊は先頭で一気に吶喊を開始し、重光線級に攻撃を開始。それと同時に私達も光線級だけ狙いを定め砲撃開始した
「重光線級は666中隊に任せて、我々は光線級だけ駆逐だ。無駄に弾使うなよ」
《了解!》
《了解だ!》
《了解しました!》
《承服したで》
《了解》
鈴乃、華太、北岡、城戸、浅倉は頼もしい。
次々と駆逐していく光線級。数は減り続ける
シルヴィア機は完全に横を見せた重光線級の腹部に銃弾が突き刺さっていくが装甲も高いというのは折り紙付きだった。これらの攻撃を重光線級は無傷もしくは擦り傷程度で防いだのだ。
《効果なし。レーザー来ます!》
《全機バックブースト展開!全力で後退しろ!》
666中隊全機が離れると同時に、重光線級は光線級の何十倍もありそうな極太のレーザーを放つ。
それは余波だけで戦術機にダメージを与える程であり、これによりシルヴィアの機体は左腕に不調をきたすようになった。
《左腕に損害!…まだ戦えます!》
シルヴィアの機体は左腕が損傷されたがまだ戦おうとしたその時、城戸が666中隊を援護した。
《あんま無茶し過ぎると傷が増えてしまうで》
城戸が乗る撃震はパワー・スピード・テクニックが非常に高い
《あたしに任せてください!》
アネットは城戸の援護を試みる
《ええ心構えや。流石666の衛士…ほなお手並み拝見させて貰うで!》
次の瞬間、城戸機は凄まじい速度で120mm弾を放った。それと同時にアネット機の両腕に長刀を展開させた。
《うお、二刀流や!》
《このおおおおおお!》
アネットは雄叫びを上げると瞼を閉じようとする重光線級に右手に持ってる長刀を突き刺す。中心部という一番閉じるのに時間がかかる箇所を刺された重光線級は痛みに悶えるように振り回そうとするがやがて動かなくなった。
《ごっついなぁ…》
城戸はそう呟く
《…はぁ…はぁ…ファ、ファム姉。重光線級1体撃破したよ!》
《02、此方も撃破したわ》
シルヴィア機は左腕が損傷したにも拘らず重光線級1体撃破した。
《此方も一体撃破した。倒せない相手ではないから怯えることはないわ。次に行くわよ!》
ファムの言葉通り、重光線級は倒せない相手ではない。外皮は確かに硬いがそれでも突撃級の正面装甲には劣り、レーザー以外の攻撃手段を持たない。戦車級のように数が多いわけではなく、要撃級のような素早さもない。だがそれでも消耗は覚悟しないといけない相手ではあったが。
「(これが第666戦術機中隊の実力……私達より上がいるって事は理解している。彼女に見習わないとな)」
《残り7体……!もう少しよ。頑張って!》
第1006戦術機連隊は健在だ。光線級はほぼ全て殲滅済み――――ヴェアヴォルフ大隊も奮闘しているが二コラの指揮能力が低い為か、カタリーナがサポートする形で何とか戦車級を殲滅出来たようだ。
第666戦術機中隊は残りの重光線級に吶喊を開始した。
《これで残り4!》
アネットは長刀2つで照射粘膜を守る保護膜ごと貫く。
僅かに硬い感触に当たったとに剣の根元まで深々と突き刺さったことで重光線級は活動を停止した。
《弾薬、推進剤残り2割以下!》
《これ以上の戦闘続行は……いやいけるわ。アネットちゃん》
ファムの言葉に自信を持ったアネットは城戸に頼る
《申し訳ないけど手伝ってくれないでしょうか?》
《ええで!浅倉ぁ、行くで!》
《城戸の兄貴の為ならいつでもいけます!》
城戸機と浅倉機は凄まじい速度で射撃!
残りの弾薬量からこの射撃は数十秒しか持たない。その間に決着を付けるべくアネットとシルヴィアは吶喊する。
そしてアネットは今までと同じように長刀を突き刺し、重光線級を仕留める。
シルヴィアも短剣を保護膜が開いた隙を狙って突き刺した。
《残り2体!》
《浅倉ぁ!》
《了解です》
次の瞬間、浅倉機は残り2体のうちの1体に近づいて行く。
浅倉は冷静に遂行し長刀を握り攻めていく
《……俺とやった奴は死ぬ。決して逃げられん……俺に勝てる奴なんかこの世におらん……》
そして長刀で袈裟斬りしたが重光線級は回避し、長刀は分厚い体に突き刺さった。それでは致命傷とならなかったようで保護膜が開き、浅倉機に照射粘膜が向けられた。
《…!》
次の刹那、照射粘膜を辻斬りした。
唯一の武器をやられた重光線級は痛みからか体をくねらすがそこを狙って再び長刀を突き刺した。
《もうどうでもええ。大人しくくたばれや》
重光線級も遂に動かなくなり、倒れ込んだ。
そして、限界を迎えたのか浅倉機の長刀が曲がってしまい、取り出すのが困難となってしまった。
《重光線級撃破しました》
《よおやった!坂崎大尉》
「うむ、よくやったぞ!」
《よぉし、お前等そろそろ弾薬がなくなる頃だ。総員撤収するぞ》
重光線級の撃破という功績をあげたものの、既に弾薬は殆どが空となっている。
これ以上の戦闘は不可能と判断した工藤中佐は撤退を決め、第1006戦術機連隊全機が戦線を離脱していった。
それを伴い、ヴェアヴォルフ大隊と第666戦術機中隊も戦線離脱した。
最悪の事態は脱却したといってよく、安州要塞陣地は確実にBETAを削っていくのだった。
基地へと帰還した第1006戦術機連隊の衛士達の表情は明るい。何しろ危険な任務を終えて戻ってきたばかりだ。
整備兵達は補給に向かい、隊員達は束の間の休息を取るべく戦術機から降りていく。
「よくやったな城戸、そして浅倉」
「へへ、あのくらい余裕で行けたで」
「城戸の兄貴は援護射撃しただけですやん」
「細かい事は気にしなくてええ」
今回のMVPとも言える二人に私は称賛した。今回は普通の光線級相手ではなかったが誰一人として欠けず、それどころか全滅させられたのは大きいと感じていた。いまだ予断を許さない安州要塞陣地だがこのままいけば充分に守り切れると感じていた。
「補給と機体の修復が完了すればまた出撃となるだろう。それまでは休むといい」
「では、お言葉に甘えてそうさせて貰うわ」
城戸はそう言い残し浅倉と共に格納庫から立ち去った
姿が見えなくなった直後、華太が私に近付き話しかけられる
「都、少し話したいが構わねえか?」
「ああ、勿論だ」
華太は思いつつ極道らしい表情で私に向き合った。
「俺は決めたよ。都、アンタについていく」
「華太……」
「都、俺の女にならないか」
華太がそこまで言ったその時。突如として基地内の電源が切れ、あたりが真っ暗となる。
突然の事に私と華太はハッとした。
「総員!機体に戻れ!」
そう工藤中佐が叫ぶのと同時に次の瞬間、基地の入り口が爆破された
「全員その場で動くな!」
爆破された入り口からは朝鮮武装警察軍の兵士達と大隊規模のアリゲートルが姿を現し、それぞれアサルトライフルの銃口を向けてきた。
いきなりの事態に整備兵はあっけなく無力化され、私と鈴乃、華太以外他の衛士達も自分の戦術機に乗る事さえできずに拘束されていく。
「アリゲートル…戦術機大隊『モランボン』か!?―――小峠!大倉ぁ!無事か!?」
結果、戦術機に乗り込めたのは華太と鈴乃のみだった。正確には華太の戦術機に乗り込む形で私も拘束を逃れていた。しかし、その管制ユニットには突撃砲の銃口が向けられており、すぐにでも不審な動きを見せれば破壊するという意思が込められていた。
脱出は不可能。私達に出来る事は残されていなかった。
「クソったれ!!どうすればいいんだ!!」
《機体から降りたまえ》
そんな手詰まりの状況に悪態をついた華太と私の耳に入ってきたのは知っている声だった。いや、この状況を思えばその声だろう。
朝鮮武装警察軍作戦参謀、ア・ドックァ中佐だ。
「くっ…舐めた真似しやがって!」
《もう一度言う。機体から降りろ。でないと君達の仲間の安全の保障は出来ないよ》
ベアトリクスの命令で動いたんじゃない。彼の独断専行だ。
ドックァ中佐の目を見ると濁っていた
手にしている拳銃を工藤中佐の頭部に銃口を向けていた。それが何を意味しているのか、分からない私達ではない。
「………工藤中佐!グウウ……」
《華太、そっちは逃げられそうか!?》
動揺する華太に通信が入る。それは同じく戦術機への搭乗が出来ていた鈴乃だった。
しかし、彼女の元にもアリゲートルの1機が銃口を向けていて動くに動けない状況だ。
「ダメだ…動けそうにない!」
《ッ……!こっちもだ。ドックァ中佐は最初から私達を…》
最悪だが予想出来ていた事でもあり鈴乃に動揺はない。寧ろこの状況をどう切り抜けるのか考えている様子だった。しかし、状況が好転するわけもなく、さらにもう一機が姿を現した。
識別は……ヴェアヴォルフ。
「おい、都。ヴェアヴォルフのアリゲートルだ!」
諦めて機体から降りようとした次の瞬間、音声通信が入る
《戦術機大隊『モランボン』の衛士達に告げる。貴様等の目論見は既に見抜いてる―――大人しく機体から降りろ。聞き入れない場合はこの場で粛正する!》
カタリーナの声だ。まさか助けに来てくれたのか!?
これにはドックァ中佐も予想外であり狼狽の声を上げる
「ディーゲルマン中尉!貴様、どういうつもりだ!?我々はブレーメ総帥閣下の命を受け行動してるのだぞ!」
《日本人衛士を快楽殺人的に無差別で粛正した人間が何を言う。今すぐ部下達に武装解除を命じろ!》
叱責するカタリーナに対しドックァ中佐は歪んだ顔でこう答えた
「貴様等ヴェアヴォルフも、東ドイツ国民を粛正しまくってたそうじゃないか。貴様等も人の事言えないだろう!」
《!貴様…》
「ウェーハッハッハッ!悔しいか?悔しいだろう?どうせ朝鮮は滅びる。BETAに蹂躙されてな!」
ドックァ中佐は高笑いしカタリーナを小馬鹿にする。
無論、上官の命令なしで動く事は軍規違反だ。ドックァ中佐はそれを逆手に利用したのだ
彼の発言を聞いたモランボンの衛士達は疑心暗鬼を生み、機体から降りる
「お、おい!貴様等、何故降りる!?」
「ドックァ中佐、もう貴方の命令は聞きません。日本人を恨むのは勝手ですが私達を巻き込んで私怨に付き合いきれません」
衛士の一人は真顔でこう言った
「ぐぬぬ…此奴を機体から引き摺り降ろせ!」
朝鮮武装警察軍の兵士達も彼の事を疑い始め、命令は聞き入れなかった。
「どうした!?何故命令を逆らう!?」
これにはカタリーナも予想外だった。
《…貴様等、彼の部下だろ。何故命令に逆らうんだ?》
「逆らうって……もう疲れたんですよ。ディーゲルマン中尉」
朝鮮武装警察軍の兵士の一人が憔悴しつつこう言った。
「もうウンザリなんですよ!今日も日本人衛士粛正、明日も日本人衛士粛正。毎日毎日彼に付き合わされてやりたくもない事をやらされてるんですよ!」
そう言うと、兵士達の銃口を下ろし工藤中佐達の拘束も解いていった。
そう彼等はドックァ中佐に信頼されてなかったのだ。
《部下の統制が取れてないようですね。ア・ドックァ中佐》
「ぐぬぬ…貴様!」
カタリーナはドックァ中佐を軽蔑し鬼みたいな顔を浮かんでいた
そして兵士達はドックァ中佐を拘束し手錠を掛ける
「な…馬鹿!違うだろ!」
ドックァ中佐は歪んだ顔でこう言うが兵士達は聞き入れて貰えなかった。
次の瞬間、カタリーナは兵士達に命令する
《この者を連行しろ!》
「は!」
そして兵士達は迅速に動きドックァ中佐を連行していった。
ドックァ中佐が拘束された後、私達はいつもと変わらず衛士としての役割を全うしていた。
そんな中、戦術機の部品と弾薬、補給がそろそろ切れそうだった
工藤中佐のチェックは徹底的だ
「坂崎大尉、戦術機の部品と弾薬。それに補給だ。ここに来てから数ヶ月経つがもう切れそうだ」
「そんな…北朝鮮の衛士達やヴェアヴォルフや666に頼んで分けて貰えば…」
「馬鹿野郎!弾薬は何とかなるが部品と補給は来ねえんだよ!悲しいことだがこれが現実だ。受け入れな」
整備兵による機体の整備は出来なくなる。
拙いな……そんなこと考えてるうちにカタリーナが私に話しかけてきた
「坂崎大尉、何か困ってるみたいね」
「ディーゲルマン中尉…何の用です?」
私がワザと拒絶しようとするがカタリーナは優しい笑みを浮かべる
「部品と弾薬、補給が不足してるそうね。もう分かりやすいんだから嘘吐かないでよね」
……馴れ馴れしいが、言ってる事は事実だ。
「実はそうなんだ」
「やっぱりね…」
カタリーナは不敵な笑みを浮かび、猫なで声で私を絡んだ。
「ねぇ、部品と弾薬、補給困ってるなら手っ取り早く入手できる方法教えようか?」
耳に近付いて甘い声で囁く
「これはチャンスよ。逃したら二度と手に入れられないわよ?」
「近い!近過ぎるぞ!で、手っ取り早く部品と弾薬、補給を手に入れる方法って何だ?」
怪しさが満載しすぎる。私達を嵌める気だ。
私は警戒すると、カタリーナは高らかに答えた
「通販サイトよ」
「通販だと?」
「ええ」
聞き耳立てた工藤中佐が話を割り込んできた
「姉ちゃんよ。もしそれで入手できるなら半年は保てる。が、責任は姉ちゃん一人だ」
「工藤中佐…(14年経っても姉ちゃんと呼ばれるなんて少し嬉しいかも)ええ、これは私の独断専行だから責任は私が取る」
「……という訳だ。坂崎大尉」
工藤中佐が了承得てくれたのはいいが、心配だな……詐欺だと思うがそうは言ってられない。
やるしかないか。
「ディーゲルマン中尉、すまないな。手間取らせてしまって」
「カタリーナでいいわよ。まあ無事入手できるかは保証出来ないけどね」
そう言ってカタリーナは誇らしげな笑みを浮かべその場から去っていった
「信じるしかねえな。今はそれだけ願うしかねえ」
「ええ、彼女は嘘吐くような人間ではないと思います」
カタリーナは国家保衛省の執務室でノートパソコンを開き通販サイトで戦術機の武装、部品、弾薬。そして推進剤を虱潰しで探した。
「(この通販サイトは普通の回線では見れない…衛星経由で接続すれば戦術機の部品や弾薬は手に入れる!)日本製の…77…部品と弾薬…」
ブツブツと言ってるうちにお目当てのものが見つかった
「あった!これ…え?嘘」
しかし、そう簡単に手に入れることはなかった
「売り切れ……そんな馬鹿な。何かの間違いよ」
他の通販サイトも調べたがどれも同じだった
「ない…全部売り切れてる」
戦術機の武装と武器、弾薬と推進剤の支払い方法はベアトリクスのポケットマネーだろう。
悲しげな表情を浮かび嘆こうとした時、一通のメールが届く
「メール?誰だろう」
その宛先は、アメリカ陸軍の女性将校だ。
しかもご丁寧に顔写真まで送ってきた。本来なら自殺行為なのだがどうやら自信ある笑みを浮かんでる
年齢は20代前半。
「馬鹿な女…自殺するのと同じなのに警戒心がないわね」
カタリーナは早速、その女性にメールのやり取りをした
「”初めまして、私は東欧州社会主義同盟のカタリーナ・ディーゲルマンだ。現在北朝鮮の戦線で物資が不足している。武装と部品もそうだが弾薬と推進剤を分けて貰いたいが上の人に許可を得ないと出来ないのは承知だ。それと希少金属を50%くれると有難い。良い返答を待ってる”と」
この内容で送ってから10分後返信が来た
「返信来たわ。ん~…”お初にお目にかかりますカタリーナ・ディーゲルマン中尉。メールでのお問い合わせありがとうございます。武装と部品、弾薬と推進剤は提供致しますが希少金属に関してはお答えし兼ねます”……――――。”返答感謝する。希少金属に関してはお答えし兼ねますとは何だ?我々に喧嘩を売ってるのか貴様は。希少金属なんて一つあれば十分なのでは?”」
返信送った後、5分後再び返信が来たが相当頭に血が昇っているだろう。奴はカタリーナに食って掛かった
「……”それは貴女、いや東欧州社会主義同盟の皆様には無関係の筈です”いやいや関係大アリでしょ…。”馬鹿みたいに武装と部品、弾薬、推進剤。希少金属を購入してどうするつもりだ?”」
再び返信したが、奴の返答は驚愕の事実が綴られていた。
その返答内容は……?
”最強の第3世代戦術機の開発を行うんです。こっちは金が掛かっていますからね。東ドイツ国民を無慈悲で殺した貴女達と一緒にしないでください。あ、因みに私は元女子ボクシング選手ですよ。下手な言動すると殺すかもしれませんよ?”
「グウウ……!」
やれるものならやってみろ…と喉元まで出たが、ベアトリクスに迷惑を掛けてしまうから喧嘩を売る訳にはいかなかった。
奴の返答はさらに続く
”これは違法行為でも何でもありません。もし宜しければその戦術機の設計図を此方に送りましょうか?勿論タダという訳にはいきませんが。”
何と悪びれることなくカタリーナにこう言ってきた。
これには悲痛な声が漏れてきた
「……ッ。我々の事をゴミ扱いしているのか此奴は。”ではその最強の戦術機の設計図を購入するから値段は幾らだ?”」
悔しい表情で訴えるカタリーナの切なる願い…それに対し奴は信じ難い言葉で返答した
”では5倍の値段で売りますよ。ブレーメ総帥閣下に購入資金を出してくださいね”
「!(この女……ブレーメ総帥の名を)」
”これは違法行為でも何でもありません。購入した物資を他の軍隊に売ることは自由なんですよ”
目の前が真っ赤になるほどの怒り…しかし、奴がやってる事は合法だった。
結局、カタリーナは奴との交渉は打ち切り物資を手に入れることは出来なかった
「……ああ、久々に怖い思いしたわ」
私に一体どんな言い訳するのだろうか。何より我々に物資を購入できなかった。
折角の物資の補填なのに、それがとにかく辛かった。
翌日、平壌基地に赴き格納庫にいる私達に謝罪しようとしたが、どう説明すればいいのか分からなかった。
そんなこと考えていると、一人の朝鮮人民軍衛士とトレンチコートを着てフードを被った若い女性の姿があった。
顔をよく見ると、メールで見た顔写真とそっくりだった。
カタリーナはすぐに理解した。奴が物資を横流しにしたと。
「今回も上手くいったな。で?俺を脱北してくれるんだろうな。あの女狐の言いなりになるのはごめんだ」
「この国はすぐに滅びる。例えベアトリクスがこの国を守ってもBETAの侵攻は止まらないわ。希少金属を分けて貰って感謝するわね」
奴はそう言ってお金を渡した。
「約束は破るなよ。早くこの国から出て自由気ままに生きたいぜ」
「貴方のお陰で助かったわ。ありがとう」
奴はニッコリと笑みを浮かんだ。
これ以上見過ごすわけにはいかないので前へ出た。
「そういう事だったのね…」
「あ?」
「あ、貴女は…」
これには二人共は予想外だった。
「ディーゲルマン中尉……」
「何故物資を横流しした?」
カタリーナの問いに対し朝鮮人民軍衛士は悲しげな表情を浮かびこう答えた
「お金が…お金がないんですよ。母さんが全部お金持っていかれて…」
「え?」
男は経済的な家庭事情でお金どころか貯金すらなかった
「南浦市に住んでいますが、家賃が払えない状況で…もうここから出ようと」
事情は分かったが、物資を横流しする事は許されない。
「貴様、脱北しようとしてるな?」
「そ、それは…」
男はポツリとつぶやこうとするが奴はそれを遮りフードを外す
「直接対面するのは初めてですね。私は元女子ボクシング選手でありアメリカ陸軍のヘザー・オールクス少尉です。以後お見知りおきを」
「ふーん、そうなのね?」
カタリーナにとっては手間が省き助かったと言っても過言ではないだろう。
そっちから喧嘩を吹っかけてきた
「ここで心置きなく暴れられるわね」
と身構えようとした時、自室に戻る途中の私に遭遇した
「ん?ディーゲルマン中尉か。物資は手に入れそうか?」
「だからカタリーナだって!それより此奴等物資を横流ししようとしてたわ」
自室に戻ってベッドに寝ようと考えただけの私だが、その言葉を聞いて私は怒りを覚えた。
「よぉく分かった。この女はアメリカ人のようだな。カタリーナ、私に任せろ」
「了解したわ」
ヘザーと名乗る女性は余裕の表情を浮かんでいた
「私が勝ったら定価で物資を売ってくれ」
「貴女が『狂犬坂崎』と呼ばれてる坂崎都大尉ですね。お会いできて嬉しいですよ―――ですが、私には勝てませんよ?馬鹿は死んでも治りませんからね。アメリカ軍の誇りを持って商売してるだけですよ」
法的にどうこうの前に、人として守らなきゃいけないルールがある
「何が商売だ…貴様等のやってる事は、ただの汚い横流しだろうが!」
他国の衛士を泣かせる下衆女は……私が許さない!
開始の合図もなく、下衆女は不意打ち出来た。
「遅い!素人が!」
バチィーン
「それで全力か?転売女…貴様が先に殴ったぞ」
「え?嘘でしょ……」
私の打たれ強さは昔から異常だった。
パンチ一発で倒れた事はない。
正しい見本を新米の衛士達に見せるのが真の衛士だ。
「他国の衛士を泣かせ、くだらない手段で金儲けするんじゃない…下衆野郎!」
ヘザーは身構えてガードをしたが、そんなの関係ない
「この横流し野郎が!!!」
ボガァ
「ぐげぇえええ!!」
私のパンチにガードは無意味だ。全体重と魂をのせた極限のパンチだ。
ヘザーは倒れ、痙攣を超すが私は馬乗りで拳を奴の顔面に目掛けて振るった
「メーカーだってその値段にする為汗水流してるんだ!」
ボガァ
「グエエエエエエッ!!!」
本当に欲しい人に…衛士達に物資を渡してやれ!この下衆野郎がぁ!!
ヘザーの顔が原型なくなるほど完膚なきまで鉄拳制裁した。
「はあああああ!!」
「すみません。勘弁してください!許してください!!」
男の制止で私はやっと我に返った。
「おい、約束通り定価で5戦分貰うぞ」
「は、はい。勿論でございます」
私は男に札束を渡した。
衛士としてではない。私個人として悲しくて情けない気持ちでいっぱいだったからだ。
「あと…他の部隊の衛士達の機体に定価で物資渡してこい。じゃないと貴様もこうなる」
「ひいい、わ、分かりました!」
先に手を出したのは向こうだとしてもやり過ぎたのは事実。
「また騒ぎを起こして…この馬鹿!」
「鈴乃、悪かったよ…」
やはり今回も順安区域安全部にいる社会安全員のお世話になってしまった。
すぐに殴るのは悪いとは分かってはいるが、今回の件に後悔はない。
「衛士達を泣かせる人間に喧嘩売られちゃ買うしかないよな…」
一応、物資は届いたから平壌基地にいる衛士達は喜んでくれているだろう。
一方その頃、万寿台議事堂から出たベアトリクスはロザリンデや警備兵5名を連れて急遽アイルランドから訪朝したアイリスディーナがいる柳京ホテルに向かおうとしていた
前に止めているリムジンを乗ろうとした時、突如朝鮮人民軍と思われる軍用トラックが前後挟み撃ちし同時に降りてきた兵士達はベアトリクスに銃口を向ける
「何の真似かしら?」
ベアトリクスに囲む兵士達は朝鮮人民軍陸軍の軍服を着用しアサルトライフルを握り構えている
不自然な点がある
何故、タイミングが良くベアトリクスに囲んでまで銃口向けられるかを
ニコラに連絡しようと試みるが明らかに連絡できるような状況ではない
警備兵は抵抗したが銃弾に倒れる
目の前の人物に手で口を塞がれたまま柳京キムチ工場へと連れて行かれ拉致された
「!」
「総帥!」
ロザリンデはそれを阻止しようとしたが、返り討ちに遭い蹴りを入れられた
「ぐ!」
兵士に押されるままに後退したベアトリクスは荷台に座らされる。
突然の事態に混乱するベアトリクスを尻目に、兵士は懐からナイフを取り出してベアトリクスの眼前に突き付けた。
目の前にナイフを怯える様子はなく兵士に睨み付ける
そしてその場から走り去る軍用トラックを見たロザリンデはただ見ているだけしかなかった
「……!」
東欧州、北朝鮮を震撼させるベアトリクス・ブレーメ拉致事件が起きてしまった。
いつも作品見ていただきありがとうございます
今回の話は安州要塞陣地防衛戦です。
今更ですが、朝鮮武装警察軍の作戦参謀のア・ドックァ中佐のモデルは韓国俳優のイ・ドックァです。
独特な雰囲気や声、そして特徴的な笑い方がいいですよね。興味ある方は是非検索してください。
マブラヴ:ディメンションズ、声優陣公開されましたね。
アイリスディーナやベアトリクス等の声優さんはキャラのイメージにピッタリなんですよ。でも唯依を演じる声優さんが………うん。かなりベテラン風な若手声優さんですね。
この作品を…トータルイクリプスサンダーボルトや他の作品、Pixivで投稿した作品を読んで頂けた全ての方々に感謝しつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます
ではまた