1998年9月4日
日本帝国佐渡島
佐渡基地 某演習場
俺が佐渡島に左遷されてから4日が経ち、今日は基地内の演習場で個人的な鍛錬を行おうとしている
戦術機同士の戦闘……対人戦だ。
撃震の整備は良好だ
都が通信越しで俺にこう告げる
《緊張するか?そう難くはなるな、慣れればいいだけだ》
モニターに映る都は凛とした表情だ。
鈴乃も演習場にいるが整備兵用のヘッドセットで俺と都の様子を見つつ合図を送る
「坂崎大尉、そろそろ始めて宜しいですか?」
《始めてくれ》
「それでは双方、配置について訓練を開始してください」
操縦桿をぐっと握る俺は緊張しつつ汗垂らす
そして互いに配置につく
「戦闘を開始してください」
鈴乃の合図で双方の機体は跳躍ユニットを噴出し最大全速で駆け抜け互いの機体が突撃砲を握り構えペイント弾を放つ
両機体は回避
次の攻撃に備え距離を置きつつジグザグ飛行で突撃砲を構える
それにしても動きが堅いな
反応遅いしあれでBETAと戦えるのか?
「(案外楽勝と思いがちだが、相手はA中隊の中隊長……本気でやらないと勝てない)」
都機は突撃砲を構え地面に向けペイント弾を放つ
「地面に向けて撃っただと!?」
何を考えてやがる!?
「……成る程、地面に態と向けてまで撃って攪乱か」
飛行したまま突撃砲を構えペイント弾を都機に向け放った
避けられたか……!
再度突撃砲を構え都機に向け照準を合わせる
慎重に……慎重に
頭部に目掛けて放つ
《!》
当たった!
もう一度…今度は管制ユニットを狙い撃つ
しかし外れる
都機は俺に接近し突撃砲を構え管制ユニットを目掛けてペイント弾を放つ
当たりそうになるがギリギリのところで回避する
予備の突撃砲を構えながら乱れ撃ちし都機の左肩部分を当てる
そして最大全速で突撃砲を背部兵装担架に収納しナイフを握り構え攻め管制ユニットに刃を向ける
「今度こそ俺の勝ちだ!」
《…甘いな》
都機は刃を向けられてるにもかかわらず蹴りを入れる
俺は態勢を崩すが何とか持ち直し再度ナイフで都機に向け切りかかるが都機もナイフを握り構え素早い動きで管制ユニットに突きつけつつそれを受け止める
「くっ…!」
《どうした?貴様の実力はそんなものなのか!?》
言ってくれるぜ………。
距離を詰めながらナイフを握り振り回しつつ都機に向け攻撃を仕掛ける
だが当たらない……。
何度か攻撃仕掛けるが当たらない
鈴乃は不安を募りながら1対1の模擬戦を見守っている
どっちが勝つか、もう勝敗はついている。
「くっ、ここで退くかよ!」
悪足掻きで都機に向けナイフを握り構えながら叩き付ける……が
先手必勝で都機は管制ユニットに突き付ける
《……私の勝ちだな、でも一歩も退かなかった事は褒めてやろう。もう少し鍛錬すれば私を超える衛士となるかもしれない》
ああ、だからこそ強さを求めてBETAを倒すんだ
「そこまで!坂崎大尉お疲れ様です。豊臣もお疲れ様」
鈴乃は都と俺に労いの言葉をかけ笑みを浮かべる
こうして個人的な模擬戦は終了した。
更衣室で強化装備を脱ぎBDU(戦闘服)に着替えた俺は都が着替え終わるまで待ち続けていた
「ん?何だ、私が着替え終わるまで待っていたのか?」
都は更衣室から退室し着替え終わった後で俺に食堂を行くよう誘う
「食堂へ行こう、腹が減った」
俺は「はい」と一言を添え、都と一緒に食堂へ行き配給された食事を手にして空いたテーブルに座り込み食事を取り始めた
「今夜、一杯どうだ?」
「え?ああ、いいですよ」
「畏まらなくていい。一杯と言ってもスナックだがな」
スナック……ああ、客同士で話したりカラオケとか歌う場か。
「佐渡島の魅力を堪能するのは良いが、やっぱり衛士同士で話す場を設けるのも大事だな」
ほぅ、んじゃ少し付き合うか
「付き合うぜ、俺も色々言いたい事とか山ほどあるからな」
「どんな話なのか楽しみにしているよ」
食事を取り終えた後、早速都が行きつけのスナックバーに鈴乃も連れて行くことにした
数時間後、俺は都の誘いで鈴乃を連れて行きつけの「ゆみ」という店名のスナックバーに到着し中に入り、都は店の責任者らしき女性に挨拶をする
40代の女性でかつては帝国軍で衛士を務めていたらしく重慶攻防戦に参加した経験がある
その女性は「ママ」と呼ばれる。
「あら、都ちゃんいらっしゃい」
「ママ、私の部下の豊臣悠一少尉だ」
スナックママは俺の顔をじっと見て妖艶な表情を浮かべる
「へぇ、良い男じゃない?」
「はは、初めまして…」
都は慣れた様子でスナックママと話し会話に浸り込む
鈴乃も会話を参加し、都の話を聞いて「うんうん」「そうだね」と一言を添え頷いた
俺は………会話が入れない
「ボトルキープした酒をくれないか」
スナックママは都の注文を聞き、カウンターの後ろの棚にあるずらりと並べられた酒瓶を一本手に取り盃を交わす
撃震と書かれた日本酒だ。
このスナックママが帝国軍の派遣部隊の衛士だったとは最初は誰も思わなかっただろう
「さあ、豊臣。飲んで楽しく話そう」
都は俺に向けニコニコと笑みを浮かびつつ盃を交わした
「おう、乾杯だ」
互いに乾杯し、盃に入ってる日本酒を飲み干す
「良い飲みっぷりだな」
「どうも」
スナックママはガラスのコップを2つ出し都と俺に日本酒を注ぐ
それを飲み干す
「おい豊臣、何でもいいから何か面白いのを話せ」
おいおい、もう酔っぱらったのか?
早過ぎるだろ……まだ2杯しか飲んでないぞ
「女の話でも構わないか?」
「女ぁ?お前に彼女の話するとはな……聞かせて貰えないか?」
都は俺に絡む
「……欺衛軍の崇宰恭子って女傑衛士は知ってるか?」
「あ?崇宰……あー、鬼姫と呼ばれる五摂家の衛士か。知ってるも何も日本全国誰でも知ってるから有名なお姫様だ。お・ひ・め・さ・ま」
恭子を御伽話に出てくるお姫様扱いするのか
……悪くはないな、事実上欺衛軍の女性は品性あるお嬢様ばかりだ。
「で?その恭子様がどうしたんだ。お前には関係ない話だろ」
いや、関係大ありなんだが……。
「実はお前も欺衛軍の衛士で帝国軍の衛士に扮したスパイだったりして?」
都はにやりと口元が浮かび俺の顔を見る
まさかバレたのか?
鈴乃も少し戸惑っている
「ははは、冗談だよ。冗談」
おいおい、驚かすなよ……。
「恭子様とお前、どういう仲なんだ?」
「ああ、そうだな……(上司と部下の関係と言ったら俺は欺衛軍の衛士とばらすようなもんじゃねぇか!)」
「何だ?言いたいことあるならハッキリ言ったらどうなんだ?」
俺の腕に都の胸が挟み込まれた
無理してスナックに行ってないか?
俺は少し頬を赤らめ照れた
「トムとジェリー」
「へ?」
「トムとジェリーみたいな関係だよ。恭子がトムで俺はジェリーだ」
ネズミを追いかける猫の話を例えてみた
こんなこと言うのもなんだが失礼極まりない
すまない恭子……。
「あはははは、崇宰家次期当主様が猫で例えたぞ!面白い話だな」
いや滑ってるぞ?
都がこんな顔見れたの初めてだ
優しい笑みを浮かべ泥酔状態の都は俺を抱き締める
「!」
「もうさ、一生佐渡島に住んで私と付き合わないか?」
え?
ちょ、昨日の言った事忘れてないか?
「え?おいおい、昨日の事忘れてないか?」
と言いつつも都は俺の耳に近づき囁く
「今夜私と付き合ってくれ。ここでは言えない話がある」
え?
これって……都は俺を部屋に入れて一緒に寝ようとしてるのか?
「それは、アレか?愛の営み…」
「何を想像してるかは想像つくが違うと思うぞ」
違うのか……。
「ほほぅ、私が恋しいのか?」
な……!
「ち、違うと思うぜ」
動揺しちまったよ
正直参ったぜ
「正直に言え、言ったら私と一緒に添い寝する権利を与えよう」
都は酔いながらキリっとこう言い放った。
「はは、では正直に言うぜ……」
腹を括るんだ!
言え
今の気持ちを都に伝えるんだ!
「都、俺はお前と一緒に寝たい!そして甘えても、良いか?」
あー、恥ずかしい
恥ずかしい台詞行ってしまった
「うむ、正直に気持ちを伝えたな、宜しい」
都は俺の頭を撫でる
「ホント、可愛いな」
何処がだ?
俺は元の世界にいたころの写真を見せる
その写真に写ってるのは俺と義足野郎だ
ガンプラ大会に参加し出場した記念に撮って貰ったものだ
その手にはMG1/100スケール フルアーマーガンダムとサイコ・ザクがある
「これは……」
「俺はこの世界の人間じゃない。これが俺の本当の顔だ都」
驚愕…としか言えないよな
こんな写真見せたところで誰が信じるんだ?
「ぷっ!」
都は写真を見て拭き笑った
「あはははははは、やっぱ面白い奴だな豊臣は」
え?受け入れてくれたのか
「どんな顔であろうと私は豊臣の事は好きだぞ。勿論仲間としてだ」
酔いながら誇らしげな笑みを浮かべる都は俺の顔を胸で埋めさせる
「!」
ちょ、これはどういう展開なんだよ!
でも温かい……母性が溢れてるぜ
「おーい、2人共。私がいる事忘れてない?」
「あら、お盛んね~」
鈴乃……せっかくいい雰囲気だったのに
「で?これが豊臣の本当の顔ね……」
鈴乃は俺が持ってる写真を眺めた
「ここに写ってるのは元の世界にいた俺の仲間だ。皆ガンプラが大好きで語り合っていた……フルアーマーガンダムはカッコよくて重装備で火力が半端ないって自慢げに語ってたよ」
「ガンダム……?もしかしてこれの事?」
鈴乃はスナックママから渡された新聞の記事の一面を見せる
そこに書いていたのは紛れもなく帝都であった京都の防衛戦で瑞鶴一個中隊…ファング中隊と共にフルアーマーガンダム1機でBETAを殲滅している場面だ
都は酔いが覚め、新聞の記事を見る
「ガンダムか……」
都は俺の顔を胸で埋めるのをやめ、新聞をじっと見る
「京都で謎の戦術機が飛んでBETAと戦ったのはガンダムと呼ばれる機体か……」
興味津々だな
「ふむ、成る程な」
ん?何がだ
都は俺の手を引っ張り店から出る
「ごめん帰る」
と一言を添え俺を連れ去っていった
「行っちゃった……(都、豊臣と一緒に私が知らないところで…)」
「みたいね~」
数時間後、都は俺を連れて行った場所は金北山にあるシェルターの一つだ
「ここは……」
「万が一の為にシェルターがある。ここを入ればBETAによって住民に被害遭う心配はない」
シェルターか……ここに逃げ込めば助かるって訳か?
都はシェルターの扉を開き中へ入る
「どうした、入らないのか?」
「あ、ああ……」
中へ入ると、そこには何もない
ただ広いスペースがあるだけだ
それにいつ崩れてくるかわからないシェルターに住民をここに避難させるのか
「中、広いんだな」
「豊臣、鈴乃には言えないがお前だけに話したい事がある」
?
都は俺の顔を見て真剣な表情で話しかける
「……お前は人が亡くなった時、悲しんだことはあるか?」
「え?何を言って…」
「……」
口籠った……言わせるな、か。
「あるさ、ただ実の両親が亡くなった時は全然悲しくなかった。俺、おかしいよな……戦場で燥ぎ戦って…」
「お前の両親は酷い事したのか」
「両親だけじゃねぇ、姉さんもだ。姉さんは俺の事、家族として俺が死ぬまで接することはなかった」
嘘じゃない……俺の姉さんは家族として振る舞わなかった。
都は俺の手を握る
「手が震えているな」
俺の手を擦って優しく触れる
「……」
隙間風が入り体が寒気を感じる
「よし、少しは温まってきたな」
ここには誰も来ない
今は2人きりだ
都は突然上着を脱ぎ服を捲り上げ白い下着を露にしその豊満な胸を俺に見せる
それを見た俺は興奮しドキッと心臓の音が鳴り出した。
「な……何で服を捲り上げるんだ、風邪引いちまうぞ」
「そう言ってるが、あそこの方は正直すぎるぞ」
都の視線に俺の何かが勃起しているのを見られた
「こ、これは…その…」
「嘘は通用しないぞ、私が解消してやろう。そうすればお前は満足を得るだろ?」
都は俺の下半身に顔を近づけズボンを脱がせ俺の欲求不満を解消していった
その後の事は………言いたくねぇ。
1998年9月5日
朝を迎え、シェルター内に俺と都はここで寝てた
漸く2人は起きるが、お互い揃って寝不足
あんだけ激しくやったらな……まぁ、いい経験になったぜ
「……」
そうだよな、俺は都を抱いて互いの体を絡み合った
温かった
優しく包み込むように
「ん……早く基地に行かねばな」
都はそう言って優しい笑みを浮かべながら俺の手を繋いだ
「……出会ってからまだ5日だが、一気に距離を詰めたな」
そうだな
恭子の事は忘れて都と一緒に幸せな生活するのも悪くないな
……そうなると、斯衛軍を抜けるしかない。
「もう一度告白していいか?」
「何だ?」
「こんなに距離詰めて俺にここまで接してくれたのはお前が初めてだ」
ホントだぜ
こんなに接してくれたのが
「そうだったんだな、私が初めての相手……か」
そういうと都は俺の手をぎゅっと握りつつ歩き始めた
「ほら、遅れるぞ」
「ああ」
安堵な表情を浮かびつつ、急いで基地へ向かい走った。
2時間後、基地へ到着した俺と都は門の前に立ってる警備兵に身分証明証を見せてから中に入る
中に入った途端、資料室に向かってる鈴乃に遭遇した
「おはようございます、坂崎大尉。豊臣少尉も」
「おはよう大倉大尉、何か異常は?」
都は鈴乃に敬礼する
俺も同時に
「ありません。坂崎大尉、昨夜は自宅に帰らず何処にいてたのですか?」
「昨夜豊臣少尉と少し付き合ってな。野宿したよ」
鈴乃は俺の顔を見て黒い笑みを浮かべる
「あら、そうだったのですね」
鈴乃は俺の顔に近づき真顔で口調を変え誰もが驚愕するような発言を放った
「貴様、坂崎都大尉と寝たのか?」
図星だ
何で分かったんだ……。
「寝てたんだな?」
俺は鈴乃の気迫ある表情を見てしまい、屈服し頷いた。
「坂崎大尉、豊臣少尉を少しお借りして宜しいでしょうか?」
「ん?構わないが」
「では失礼します」
鈴乃は俺の手を引っ張り連れて行かれた
連れて行かれた先は資料室ではなく倉庫だ
「な、何をするんだ?」
鈴乃は不敵な笑みを浮かべながら扉に鍵をかけ恍惚に言い放つ
「ふふふ、B中隊の長として貴方を指導しなければならない。教育の一つよ」
何処がだよ!
これじゃ拉致監禁と同じじゃねぇか
「まさか俺を殺すのか?」
「そんな物騒なことはしないわよ」
目が笑ってないぞ
何するつもりだ?
閉じ込めた空間でにやりと笑みを浮かぶ鈴乃は突如俺に抱き着いてきた
何が何だか分からない………。
「寂しい…」
ん?
涙……泣いてるのか。
「泣くこたぁねぇだろ……」
「都ばっかり……私を1人にしないで」
………。
いつもと違うから寂しい思いしてたんだな
「悪かったよ、お前を1人にさせてすまなかった」
鈴乃……構って欲しかったのか
俺は鈴乃の気持ちが分かっていないと悟り少し落ち込む
「仕事は真面目に励んでることは確かだ、それは認める。が、プライベートは出来るだけ…私に構ってほしいし…頼ってもいいのよ」
「なぁ、今やらなきゃならない事とかあるか?俺も手伝うぜ」
俺は問いかけ鈴乃は涙を拭い笑みを浮かべ優しく言い放つ
「今のところないわね、せっかくだから何か話さない?」
「んじゃ、部屋に行こうぜ」
「いや、ここで話しましょう」
倉庫の中でか?
おいおい、勘弁してくれ
誰か来たら誤解されるだろ
「誤解されるぞ」
「ふふ、いいのよ」
「新聞の記事に載ってたガンダムの話」
「ん、あぁ昨日スナックで見た記事ね」
「そう」
鈴乃は興味津々だ。
「あの機体はな、本来この世界に存在しない機体だ」
俺の因縁の相手は確か……マブラヴ世界かオルタ世界とか呼んでたな
回想で恭子が父親主催のジャズコンサートに行き偶然遭遇した義足野郎……徳川良平(後にダリル・ローレンツと偽名を名乗る)がファム、アネット、恭子、佳織とガンダムやサイコ・ザクについて語った時のことだ。
(ダリル君の…モビルスーツって、凄く重武装だけど扱いづらいわね)
(サイコ・ザクは四肢切断しないと動かせない機体ですよ、ファム大尉)
五摂家の女性の前だぞ、バラしちゃ駄目だろうが…と言っても恭子は知ってて知らないふりをする
(何で四肢切断しないと動かせないの?お姉さんは分からないわ)
そりゃあそうだろうな……別次元の機体だぞ?
ジャズの音色を響くホテルの大ホールの中で俺達は楽しく会話し続ける
(パイロットの四肢を義肢化しコックピットに接続することでモビルスーツをパイロットの身体の延長のように操縦することを可能にする「リユース・サイコ・デバイス」を搭載した実験機です)
ダリルは優しい笑みを浮かべつつファムに話しかける
(リユース……何かしら?)
(リユース・サイコ・デバイス……それはパイロットの脳が発する電気信号を、機体の駆動系に直接伝達させることで、パイロットの手足のように扱うことができる技術です)
ファムはそれを聞いて困惑した
まぁ当たり前だが、仮にこの世界でリユース・サイコ・デバイスみたいな技術を使い戦術機に搭載したら世界中から非難殺到するだろう
(俺が元の世界にいた頃は五体満足だった)
ダリルは急に暗い表情をしてゆっくりと口を動かし声を発する
(ある日、体が怠くて熱っぽいから念のために病院へ行くと精密検査され、医師からの診断では細菌性髄膜炎だった)
ダリルが放った言葉は一瞬に凍り付いた
(3日後、緊急入院する事になり、ICUで集中治療を施されてそれから15日間も意識失ったまま生死の間を彷徨った)
そんなことがあったのか……。
(何とか一命を取り留めて回復したが目が覚めた時は既に遅かった。両腕と両脚が真っ黒に変色し…)
(それで手足を切断したのね)
ファムはダリルの話を聞いて悲しげな表情になりハンカチで涙を拭いた
アネットもダリルの話を聞いて「可哀想に…」と涙を流しつつ悲しげな表情をした。
俺は現実を受け入れなかった
何を言えばいいか分からなかった
モビルスーツの小型熱核反応炉の本来の燃料は木星産ヘリウム3の事だが、どうもこの世界ではそんな物質は一切存在しない
どうやって運用するかって?それはG元素だ
BETAの落着ユニットの残骸から発見された未知の元素だ
それらを燃料として利用しビーム兵器のエネルギーにも変換される
つまりだそのG元素を利用することによってBETAといつでも戦える状態になる訳だ
(心中お察しするぜ)
(あー、それとお前、この世界でモビルスーツをどうやって製造する事が出来るのか?全く考えてないだろ)
確かにな…この時代で宇宙世紀の兵器を作るなんて無理がある
どうやって製造するんだ?
ケヤルガがそんな事出来る筈ねぇしな
彼奴は人間の顔、体、性格に形を改変する事しかできない
記憶を書き換えたり奪う事もある
出来るとしたらそれはパルテナみたいな女神様がやるレベルだろうよ
もしくは『異世界から持ち込んだ』と。
(まさかと思うがこの世界にモビルスーツ開発を携わった技術者とかこの世界に転生したら作れると思い込んでるのか?)
それはないと思うぜ
多分な
(仮にそうなればそれは運がいいだけの境遇だ)
運がいいだけの境遇か……。
回想終わり
「存在しない機体が京都で飛び回ってBETA群を殲滅した。これは紛れもない事実よ」
鈴乃は優しい笑みを浮かべる
「そうだな、早くこっから出ようぜ。憲兵来たら厄介事になるぞ」
「ああ、そうだったわね」
鈴乃は扉の鍵を開け倉庫から出る
何時間閉じ込められたんだろうか?
時間の感覚が狂って来たぜ
倉庫から出た俺と鈴乃は急いで資料室に向かうが、一人の男と遭遇する
「大倉大尉、何処にいてたんですか?」
「草野か?少しね…」
新兵だな……。
「A中隊とB中隊合同のブリーフィング見かけませんでしたが、一体何を?」
「頼りない部下を指導しただけだ」
嘘吐くなよ、さっき俺を抱き締めて「構って」と言ってたじゃないか。
草野という新人衛士はまだ佐渡島に赴任したばかりの男だ。
あー、A中隊の……初日に見かけた衛士か
全然覚えてねぇ……。
「豊臣少尉ですね、坂崎大尉から話は聞いています。不束者ですが宜しくお願いします」
草野は俺に話しかけ誇らしげな笑みを浮かべつつ敬礼した
「おう、宜しく頼むぜ」
今日は何事もなく業務を終えたな……ブリーフィングに何故出なかったんだ!都に怒られたしな。
鈴乃が俺を倉庫に閉じ込めて2人でイチャイチャしたなんて言える訳がない
言ったら嫉妬すると思う
女の嫉妬は怖いからな……。
そんな帰り道で都と鈴乃が住むシェアハウスに向かってる途中に都が腕を組んだまま怒った顔していた
「倉庫の監視カメラ確認させて貰ったよ」
監視カメラ、まさか見られていたのか!?
「お前と鈴乃の2人が抱き締めてるのを見てしまったよ、どういう事か説明して貰おうか?」
これはマジで怒ってる
どうする?俺
何か言い訳考えないと……。
「……」
ダメだ、言い訳出来ねぇ!
「……豊臣、お前は私と鈴乃。どっちが好きなんだ?」
「!」
「……選べないとは言わせないぞ」
詰みだ……。
「ここでお前の事は結婚したいほど好きだ。と言えるわけないだろ」
……。
都は平静を装ったが、声は自分でも分かるほど上ずっていた。
「なら私以外の女と付き合うな」
「お前はそれでいいのか?俺の事が好きだって気持ちは確かに受け取った。これは認めざるを得ない」
「……」
俺は都の気持ちをはっきり答えようとしたが鈴乃と遭遇してしまった
「都、貴方も豊臣の事が好きなのね」
最悪だ……。
都と鈴乃は俺を巡って睨み付け凄まじい怒りが眉の辺りに這う
「……」
「都、提案があるけど良いかしら?」
鈴乃は都に耳に近づけ何かを言い出す
その提案とは……?
「ほぅ、面白い。望むところだ」
「期限は10日、それまでにどっちが相応しいか?競争よ」
悪魔的といえるかも知れない挑んだ表情を眼に浮かべ誇らしげな笑顔になる
「勝ったら豊臣の事は諦めて大人しく親友として振る舞う」
「ご心配なく、勝つのは私だから」
「鈴乃、お前…豊臣を奪おうとしてるのか!?」
は?
「お前が男誑かす奴だなんて正直思わなかったよ。草野も同じ事してるだろ」
「は?何言ってるのよ!そんな訳ないでしょ!B中隊の長がA中隊の一衛士を誑かすだなんて…酷いよ」
「失望したよ、もういい。鈴乃お前のことは嫌いだ!」
都は怒りを任せ鈴乃に向け嫌いと言い放った。
それを聞いた鈴乃は絶望的な表情になり悲しげな顔で泣き始めた
「私はただ、豊臣と楽しく話したかっただけなのに。何で…どうしてそんな事言うの!都もB中隊の衛士を手出ししてるんでしょ!」
「え?」
「都なんか大嫌い!」
おいおい、趣旨が変わってねぇか?
何でそうなるんだよ!
元の世界にいた頃の俺は好きな人はいたがあっさりと別れてしまった。
別れたと言っても一方的ではない、他の男と浮気していた
それが原因で別れた
この世界に来て、俺はモテ期が到来してしまったのか。
「おいお前ら、喧嘩はよせって」
「「豊臣は引っ込んでて!」」
俺が何か言おうとした時、都と鈴乃は目がきっとなる
「戦術機で勝負したらどうだ?」
「え?」
「それって……」
「ああ、個人戦だ」
その日以後、都と鈴乃は互いに接触を避けるように10日まで練習を励んだ
あれから5日が経ち、基地の演習場で都と鈴乃は撃震のモニター越しで睨み合い突撃砲を構える
草野はこの2人の姿を見て困惑したような目つきをした
「あの…坂崎大尉と大倉大尉の間に何かあったんですか?」
俺は白けた顔をする
「知らねぇ、けどよ。2人は今喧嘩してる」
「これでは中隊の士気が下がる一方では…」
草野が言ってることは一理ある
放置という訳にはいかないが気が済むまでやらせとくか
「……終わるまで好きにやらせとけばいい」
俺は分かっていた、都がどれだけ強いかを。
戦術機に乗る衛士としての腕は一級品だ
だが、心の弱さが何処かにある
この2人の個人戦の審判は草野が務める
「えぇと……これより個人戦を想定した模擬戦闘を開始します」
草野は合図を送り整備兵用のヘッドセットで大声をはっきりと出す
「それでは開始してください!」
2人の戦いが始まった
その動きを見た俺は2人が操縦する戦術機の速さを見て驚愕する
凄まじいぜ……互いにペイント弾を放つが当たらず躱すばかりだ
《大倉ぁぁぁぁぁ!》
《うおおおおおお!》
気迫ある声だ!
雄叫びながらペイント弾を次々と放っていく
「2人が喧嘩してる姿なんて見たくはないです」
御尤もだ
道理にかなうぜ、ホント
そう眺めてるうちに互いのペイント弾が切れ、ナイフを握り構え接戦を繰り広げる
互角に渡り合ってる……。
模擬戦闘を始まってから3時間が経過し機体がボロボロになってきた
《ぐ……》
都は疲労を隠せずまだ戦闘を続行しようとしている
これ以上はやめた方が良いと思った、そんな矢先に鈴乃機は疲労が溜まり動きが止まった都機にナイフで攻撃を仕掛け頭部に突き当てる
しかし、都は鈴乃の動きを読んでおり力を振り絞りナイフで攻撃仕掛けその刃先で管制ユニットに突き付ける
互いの機体の動きはここで止まり勝敗は付けた
草野は困惑し驚愕していた
「……引き分け」
引き分けだと!?
この模擬戦の結果を見た俺は都と鈴乃の腕は互角に渡り合って戦えると捉えた。
模擬戦は終了し都と鈴乃は機体から降り、悲しげな目つきを見せつつ抱き合った
「すまない、鈴乃。お前の事嫌いだなんて言って」
「ううん、私こそごめんね……酷い事言ってごめんね」
抱き合って号泣し始めた
草野の前でやるなよ…………。
「…まぁ、仲直りしてよかったですね」
「ああ、草野。ここに楽器とかねぇか?」
「楽器ですか?ピアノとかありますが何を使うのです?」
2人の笑顔が見たい、その為だったら俺はやり遂げる
「2人の笑顔がいつまでも絶やさないで欲しいんだ」
そうだ、2人の笑顔が好きなんだ
ここに来て良かったぜ
そして5日後、本土から来たある女性が佐渡島に赴任してきた
後半はグダグダになりましたが、個人的には『いいんじゃね?これ』と思っています。
さて次回は駒木咲代子が佐渡島に赴任してきます。
この先どうなるかは次回のお楽しみに