私の名前は坂崎都
「8月に山口か……今回はキツい任務になりそうだ」
不器用だが愛想が良くて次の任務に励む日本帝国軍本土防衛軍の女性衛士だ。
衛士訓練学校入る前、私は鬼と呼ばれるほどに喧嘩が強かった。
「唯依ちゃんの顔面が凹んじゃった!」
「狂犬坂崎のパンチ…ヤバすぎる…」
「お前ら…迷惑を掛けた人達に土下座だ」
規格外のパンチ力から不良共は私を”狂犬坂崎”と呼んでいた。
碌でもない学生時代を送った私だが…弱い者いじめは大嫌いだった。
「(あの子、目が見えないのか。危ないな)」
「ふう…」
強く生まれた人間の責務は弱い者を守る事だと思っていた。
だが、世の中には残念なほど…クソな連中がいる。
ガッ
「あっ、ごめんなさい…」
「あぁ~ん?痛ってぇなぁ~」
「何だこのガキ、俺達を舐めちゃってんの?」
見ているだけで吐き気がするほどの……な。
「オメェは目が付いてねえのか?馬鹿野郎」
「ごめんなさい。目が見えなくて」
「見えなくても俺は許せねえなぁ」
「財布出したら許してやる。まあ、2万以上入ってたらだけどな」
「早く出せコラ。ブチ殺すぞガキ」
「は…はい」
「おいやめろクズ野郎。この子に土下座して走って消えたら許してやる」
「あぁん?何、この馬鹿」
「ムカつくね。殺しちゃおうよ。此奴?」
「俺らは空手二段なんだぜ。謝るなら今だぞボケ」
くだらない戯言を言う奴等は制裁する必要があるな。
「ボケがああああ!!」
ボガァ
「グエエ!」
「目の不自由な人のために点字ブロックを開けろ…」
「はい!すいません!勘弁して下さい!」
「ダメだ。男ならかかってこい」
人の道を外れた奴等に容赦はしなかった。
「バスが来たぞ。段差気をつけろよ」
「ありがとうございます」
「アイツだ!」
まあ、毎回警察にお世話になるんだが…。
1998年8月 山口防衛ライン
九州戦線の崩壊により、多くの部隊が壊滅。
生き残った戦術機部隊の多くは本州へ撤退し、山口県が新たな最前線となった。
この混乱の中、厚木基地の戸狩大佐の根回しにより、坂崎・大倉・小峠の3人は山口へ転属。
新たな部隊を編成することとなる。
山口防衛ライン・前線基地
「……今日から、我々がこの防衛区を守ることになる」
私は部隊の面々を見渡した。
新たに編成された”坂崎中隊”――後の佐渡基地第三予備戦術部隊”A中隊”の原点となる部隊だ。
一方、鈴乃も階級が大尉に昇格し新たな中隊を率いることとなった。
“大倉中隊”、後の”B中隊”の前身となる部隊である。
「九州を失った以上、ここで踏ん張らなきゃいけない……この戦いに負ければ、中国地方も持たないわ」
鈴乃が静かに言う。
華太は肩をすくめながらも、真剣な眼差しで戦術機の整備状況を確認する。
「……また地獄の始まりかよ。まあ、生き延びるしかねぇな」
こうして、新たな戦場での戦いが始まった。
山口防衛戦――
これは、“佐渡基地第三予備戦術部隊”誕生へと続く重要な戦いとなる。
1998年8月 山口防衛戦・開戦
九州戦線が崩壊し、山口県が新たな最前線となったことで、帝国軍は急ピッチで防衛体制を整えていた。
坂崎中隊・大倉中隊も、その中心戦力として配備されることになった。
山口防衛ラインの現状は…
・戦力不足
•九州撤退戦での損耗が大きく、戦術機の補充が間に合っていない。
•部隊の再編成が追いつかず、寄せ集めの混成部隊が増加。
・補給線の危機
•九州を失った影響で、本州側の補給拠点が逼迫。
•特に弾薬と燃料の供給が不安定。
・新型BETAの脅威
•九州で確認された”異形の要撃級”の存在が報告され、戦術の見直しが求められている。
山口防衛戦の幕開けとなる。
8月某日 未明――
《敵影接近! 関門海峡を突破、戦線へ向かっている!》
BETAの大群が九州から海を渡り、山口防衛ラインへ迫る。
《またかよ……今度はどれだけいる?》
華太が苛立った声を漏らす。
《要撃級、突撃級、光線級……そして、“例の新型”のシグナルも確認されてる》
《くそっ……やっぱり来たか》
私は歯を食いしばる。
「……」
鈴乃が冷静に分析する。
《九州での戦いよりは戦力がある……でも、問題は”新型”ね。奴らの行動パターンが分からない以上、前回みたいな戦いはできないわ》
私は指揮官として、作戦を決断しなければならなかった。
「……どうする?」
……決断を下さなければならなかった。
「総員傾注!坂崎中隊はこの場から一時撤退する。大倉大尉」
《了解した。坂崎大尉―――大倉中隊も後退だ。坂崎中隊に続け!》
坂崎中隊と大倉中隊は戦線後退を選択。
戦力を温存しつつ、補給を整えた後に反撃を仕掛ける作戦だった。
しかし、撤退の最中に戦場で孤立した戦術機を発見する
瓦礫と炎が広がる戦場。倒れた”撃震”は既に稼働不能。
しかし、乗っていた衛士は無事だった。その衛士に手を差し伸べる女性衛士の姿が目に入る。
彼女は機体から脱出したパイロットを助けようとしていたのだが、戦車級の群れが、その女性衛士の背後に迫っていた。
「っ…やばい!」
私は即座に撃震86式の跳躍ユニットを噴出し、駆け出す。
「―――都、何しているの!?」
鈴乃が無線越しに叫ぶ
「間に合わねぇ!」
華太の声も焦っていた。
間に合え…間に合え…間に合えええええええええええ!!!
私は女性衛士に警告し、回避行動を取らせようと試みるが
「お前、後ろだ!!」
必死に警告を飛ばした次の瞬間、女性衛士は反応するものの、一瞬の判断の遅れが致命的だった
「っ……!!」
ドスッ……!
戦車級の巨体が、彼女の体を押しつぶす。
血しぶきが舞い、彼女の姿は瓦礫の下へと消えた。
同時に、撃震のコクピットにいた衛士も逃げる時間がなかった。
戦車級の群れが覆いかぶさり、悲鳴すら聞こえないまま、その機体は崩れ落ちた。
「くそっ!!!」
私は怒りと無力感に襲われながら、機関砲のトリガーを引いた。
だが、既に遅かった。
「……間に合わなかった……」
鈴乃が歯を食いしばる。
華太は静かに呟いた。
「これが撤退戦だ……助けられねぇ奴が出るのは、わかってたことだろ」
それでも、彼の声には悔しさがにじんでいた。
そして、決断を迫られる……。
「……進むぞ」
私は拳を握りしめ、戦線へと目を向ける。
この悔しさを無駄にしないために、必ず反撃の機会を作らなければならない。
「山口を……この場所を守るんだ」
坂崎中隊、大倉中隊は撤退を続け、反撃の準備を整えることとなる。
しかし、この戦場で救えなかった命の重みは、決して消えることはなかった――。
※序盤に出てくる唯依ちゃんは篁唯依ではありません。同姓同名の衛士とは全く縁がない女性です。
いよいよ緊迫した空気になりましたね。
次回は最終回、佐渡島赴任の話です。
坂崎大尉の運命は……?
この作品を…トータルイクリプスサンダーボルトや他の作品、Pixivで投稿した作品を読んで頂けた全ての方々に感謝しつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます
ではまた