トータルイクリプスサンダーボルト 外伝   作:マブラマ

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駒木

1998年9月15日

帝都であった京都が陥落してから一か月

俺が佐渡島に左遷されてから15日の月日が流れ、佐渡基地の皆と仲良く接してきた

訓練、業務、プライベートの事等

2人の出会いで俺自身の心境が変わったかもしれない

今日、新しく赴任する衛士が来ると急いで基地に向かったがブリーフィングに遅れてしまった。

「わりぃ、遅れてしまった」

「気が緩んでるぞ!」

都は遅れてきた俺に向け呆れつつ怒りを抑えた

「ハッ、失礼しました!坂崎大尉」

「……今日、新しくここに入った衛士がいる。貴様は遅れてきたから後で紹介する」

「新しく入った衛士か……」

廊下を歩いていると、気になる部屋を見つけた。

音楽室と書いてある。

ぼやきながらも

「ドラムあっかな?」

そう考え、扉を開ける。すると、

「おお!!」

あった。奥に、ドラムがあったのだ。

他の大量の楽器はこれまで新潟基地に滞在していた将校から寄贈されたものが殆どだ。

「この世界に来てから全然ヤれてなかったからなぁ。」

そう言い、近くにあったドラムスティックを引き抜く。軽く色々なものを叩けば、いい音が鳴り響いた。

「スティックよし、楽器よし。オーディエンスとボーカルとドラム以外の楽器を鳴らす奴がいないのが残念だが、ヤるか!!」

そう言い、ドラムを軽快に叩く。曲は、ジャイアント・ステップスだ。

己の音楽の世界へ入り、気が付いたら、顔から汗を滴らせるほど、ヒートアップしていた。

「さて。次はどんな曲を…………」

その時、パチパチパチパチ。と、拍手が聞こえてきた。

「あ?」

気が付くと、音楽室の扉の近くにここに赴任してきた女性の姿があった

「凄い上手に演奏してますね、思わず聞き入っちゃいました」

「アンタは…」

「佐渡基地司令部第三戦術機予備部隊に配属しました駒木咲代子少尉です!」

駒木……まさかあの女が新入りか

俺がここに来てから15日だから、ここでは先輩だな

「豊臣悠一少尉だ、宜しくな!駒木少尉」

「はい!ところで貴方は京都防衛戦で」

ん?

「あ、いいえ。何でもありません、お気になさらずに」

駒木の手を握る。

駒木の表情は凛とした顔で常に冷静に振る舞っている

「アンタの他に入ってきた新入りはいるか?」

「はい、村田少尉と早乙女少尉です」

村田と早乙女か……。

「俺はB中隊に属している。駒木は……」

「A中隊です」

「んじゃ、模擬戦の時はアンタと戦って蹴散らしてやるぜ」

「はぁ…」

次の模擬戦楽しみだな~、都の率いる中隊に配属されたのなら軽々と戦える

俺は静かに、目に闘志を燃やした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、ブリーフィングルームにてB中隊衛士全員集合し、BETA戦闘においてハイヴ攻略について講義を行った

「総員、各員皆揃ってるな?これよりハイヴ攻略の講義を開始する」

鈴乃の号令で、ここにいる皆は椅子に座る

「貴様等、ノートと筆箱持ってきてるだろうな?重要な解説するから絶対に聞き逃すな」

可愛げある顔だが、やっぱ衛士としてとなると真面目だな

俺は好きだぜ

と思いながら俺はノートで鈴乃の講義を鉛筆で書く

「最初にHSSTがAL弾による軌道爆撃が行われAL弾は光線級が迎撃することにより重金属雲が展開する」

成る程な、メモしておこう

聞き逃さないよう耳を傾ける

「AL弾とは炸薬をオミットしその殆どを鉛を主成分とした…」

鈴乃はホワイトボードにAL弾について解説し始めた

「重金属で成型されており、AL弾はレーザー照射を受けると…」

鈴乃は光線級BETAがAL弾に向け照射してる絵を描き解説し続ける

「高熱で気化し重金属雲が発生させる。この雲にはレーザーを大きく減衰させる効果がある為、光線属種の能力を著しく低下させ、砲弾の着弾率を高めることが出来る」

俺は頷きながら講義内容をノートに書き続ける

「第一波軌道爆撃に対する光線属種の迎撃で重金属雲が戦闘濃度に達すると、ハイヴ周辺に展開した支援砲撃部隊が、光線属種の射程圏外からAL弾飽和攻撃を開始し、重金属雲が発生した後……」

ほぅ、要するに光線級に当たらずに攻撃仕掛けるのか?

今更だが、戦闘機が見かけないのはその為だったのか

「通常弾とAL弾を交互に切り替えながら、重金属雲濃度を維持しつつ…」

鈴乃はホワイトボードに描いた絵を消して別の絵を描きながら解説する

「地表構造物半径50km円内の光線属種を全滅を目的とした面制圧を行う」

講義を聴き続けているうちに睡魔が襲い掛かってきた

眠い…退屈だ。

鈴乃は俺が眠りに入ろうとした時、無心な顔で笑みを浮かべ溜息を吐く

「はぁ、ハイヴ攻略の講義は一旦中止して別の議題に入る」

と言って、鈴乃はホワイトボードに一枚の紙を貼った

「東ドイツ最強と謳われ光線級吶喊を主にした戦術を生み出した第666戦術機中隊シュヴァルツェスマーケン…そう666がいなければ光線級吶喊という戦法は生まれてはおらず各国にその戦術を広めることはなかった。そこで問題だ。救国の女神と謳われた東ドイツの女傑衛士は?豊臣答えろ」

一枚の紙に描かれているのは1人の女性衛士だ

日本人ではないことは確かだ

何処か才色兼備な部分がある

答えはアイリスディーナ・ベルンハルトだが、俺は寝ぼけて別の名前を答えてしまった

「え…と、リィズ・ホーエンシュタイン?」

「それ666に潜入した東ドイツ史上最低最悪な女性衛士ね。女性に生まれ変わって義兄に盲目な愛情を募りたいのか?貴様は」

本で読んだ筈なのに……間違ってしまった

「本題の講義に戻すぞ」

鈴乃はアイリスディーナの肖像画の紙をホワイトボートから剥がしそれをバインダーにしまい鞄に入れる

「…これらの支援砲撃部隊は、戦域データリンクによる統合運用を受け、HSST艦隊の軌道爆撃第二波と連携しつつ…」

睡魔がまた襲い掛かってくる

ダメだ、寝るな!

「光線属種のみならず、地表に展開するBETAハイヴから現れる増援を掃討し…」

鈴乃は一枚の紙をホワイトボードに貼る

撃震を主にした戦術機部隊が光線級BETAを殲滅している写真を貼る

「後続の戦術機部隊、戦車部隊の突入を支援する。これに前後してA-6J戦術歩行攻撃機が上陸地点へと進出し橋頭堡を確保する」

……。

「橋頭堡を確保した後LCAC等で上陸した部隊や…」

鈴乃は真面目な表情で解説し続ける

「戦術機部隊と交代する!この時点でA-6Jは弾薬が心許ない状況にあり、戦線を一旦離脱して補給する」

一撃離脱戦法って奴か

「また作戦の推移状況によっては再出撃もあり得るため、補給後も作戦終了まで即応態勢を続行する。面制圧によって地表のBETAの掃討が確認されると揚陸船団に搭載されている第一波攻撃隊が突入する。第一波攻撃隊は戦術機部隊で構成される。この部隊は制圧を免れた光線属種を撃破しつつ敵軍後方に進出する」

俺が睡魔に襲われ眠ってしまった、それを見た鈴乃は怒りを通り越し呆れた表情で言い放つ

「……またか、今日の講義はここまでだ。続きはまた日を改めて行う。総員解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の業務は無事終了

何のトラブルもなく平和な一日を過ごした

さてと、帰って何すっかな~。

都が俺の肩を抑えるように触れ呼び止める

「豊臣、この後飲みに行かないか?」

「おう、良いぜ」

誘いに断るわけないだろ

俺は少し安堵な表情になる

しかし、スナックバーへ行こうとしたが鈴乃にバッタリと遭遇する。

「豊臣、少し良いかしら?」

ん?

「鈴乃か…駒木の歓迎会開くぞ」

「駒木少尉の?」

鈴乃は意識的に口角を少し上げると、明らかに強張り不自然だった。

やはり諦めきれてないのか?

「大丈夫だ!駒木はまだここに来たばかりだから豊臣の事を好意抱くなんてあり得ないよ」

「あ、それもそうね」

と鈴乃は居心地のいい笑みを浮かんだ

おいおい、駒木に対して失礼だぞ?

最初の印象は眼鏡かけてる生真面目な女だからまだ分かんねぇ

案外、眼鏡かけてる本土の将校と付き合ってそうだな……真面に話せるかは不安を募る

「都、俺とカラオケしないか?」

俺は都にカラオケの誘いをする

「構わないぞ」

「狡い!都だけ私も入れてよ!」

鈴乃はふくれっ面になり子供みたいにごねる

「3人で歌おうぜ?それならいいだろ」

「駒木も参加させるか?」

と都は駒木をカラオケで歌わせようと俺に提案した。

「本人の意思なしで歌わせるのもな……」

「では本人に聞いてからにする」

楽しい会話が弾む中、駒木が俺達の後ろで話しかけた

「あ、お疲れ様です。坂崎中隊長に大倉中隊長。豊臣少尉」

真面目かよ

気が緩んでないんだよな……偶には気を緩んで楽しもうぜ?

「駒木の歓迎会開こうと坂崎大尉が提案してな」

そういうと駒木の表情が悩ましいまでに柔らかく女らしい表情を浮かびこう答えた

「私の歓迎会……ですか?」

「おう、行くか?」

「場所は」

「スナックバーだが、苦手なら他の場所へ行くぜ」

「是非行かせてください」

と駒木は誇らしげな笑みを浮かんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、俺含めて都と鈴乃は駒木を連れて行きつけの「ゆみ」という店名のスナックバーに到着し中に入り、都はスナックママに挨拶をする

「あら、都ちゃんいらっしゃい」

「ママ、私の部下の駒木咲代子少尉だ」

スナックママは駒木の顔をじっと見て妖艶な表情を浮かべる

「へぇ、良い別嬪さんじゃない?」

「初めまして」

と駒木は一言添えて挨拶し、椅子に座る

都は慣れた様子でスナックママと話し会話に浸り込む

鈴乃も会話を参加し、都の話を聞いて「うんうん」「そうだね」と一言を添え頷いた

俺は………相変わらず会話が入れない

「豊臣少尉はこういうの慣れていないのですか?」

「恥ずかしながら…あまりこういうところは行かないからな」

まぁ事実だし、最初行った時はすげぇ緊張したぜ

「ボトルキープした酒をくれないか」

スナックママは都の注文を聞き、カウンターの後ろの棚にあるずらりと並べられた酒瓶を一本手に取り盃を交わす

撃震や不知火と書かれた日本酒だ。

都は俺と駒木に絡む

「飲んで楽しく話そう」

都は俺と駒木に向けニコニコと笑みを浮かびつつ盃を交わした

「おう、乾杯だ」

「乾杯」

3人で乾杯し、盃に入ってる日本酒を飲み干す

「お?相変わらず良い飲みっぷりだな」

「どうも」

スナックママはガラスのコップを3つ出し都と駒木、俺に日本酒を注ぐ

それを飲み干す

「おい豊臣、何でもいいから何か面白いのを話せ」

おいおい、もう酔っぱらったのか?

早過ぎるだろ……まだ2杯しか飲んでないぞ

「そうだな……んじゃ、駒木!」

「あ、はい!」

俺は駒木に好きな音楽ジャンルを聞いた

「好きな音楽は何だ?」

「音楽ですか……」

まさか、民謡と答えるんじゃないだろうな?

「ポップスですね」

ダリルと同じ趣向の音楽だ。

「平凡で良いと思いますよ、優しい音楽が聴こえてくる……」

都は駒木に詰め寄り話しかける

「ポップスか?駒木は優しい性格してるな」

「そんな事ないですよ、中隊長」

都は駒木を絡み左腕で駒木の首を優しく包み込むように回した

「駒木、男性経験はあるか?」

唐突的に都は駒木に男性経験の話を持ち込んできた

駒木は困った顔のまま愛想笑いを浮かべた

「あ、ありませんよ、中隊長…」

「ホントにか?」

「えぇ、本当です」

俺は我ながら面白いくらい困った顔をした。

それからそれから、都は明るい笑顔で駒木と一緒にカラオケでデュエットした

歌ってる曲は『世界中の誰よりきっと』だ

ポップスだが、良い曲だ

好きな人とずっと一緒にいて世界中に敵回しても愛し続ける。

曲が終わり、次が歌う順番に回される

「豊臣も何か歌ったらどうかな?」

鈴乃が俺に何か歌わせようと嘆願する

「んじゃ、俺はこの曲で」

俺はフランク・シナトラのI've Got You Under My Skinを選びそれを歌った。

「ジャズか、カッコいい曲だな」

都は俺が歌ってる姿を見て褒めた。

「ホント、そうね」

鈴乃も優しい笑みを浮かべる

「豊臣少尉は陽気な方なんですね」

駒木も鈴乃と同様、優しい笑みを浮かべる

曲が終わり次は鈴乃が歌う番だ。

「私は良いかな」

「お前も一曲歌え」

「ん~そうね…この曲にするわ」

鈴乃が選んだ曲は『そばかす』だ

るろうに剣心か、良いセンスしてるじゃないか

俺は鈴乃の歌声に魅了し見惚れてしまった

こうして無事に駒木の歓迎会は終わり一日を過ごしていった




次回はA中隊(都、咲代子)とB中隊(鈴乃、悠一)のダブルス模擬戦闘です
お楽しみに
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