トータルイクリプスサンダーボルト 外伝   作:マブラマ

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Schlacht an der Havel

シュプレーヴァルト基地・大隊執務室

 

ニコラは大隊執務室に入り、ベアトリクスの前で直立した。彼の表情は冷静で、無駄な感情を挟まずに事実を伝えようとしていた。ベアトリクスはデスクに座り、静かに彼を見つめている。

「報告します。ノイルピーン市街戦の状況、ハイムの逃亡、そしてリィズ・ホーエンシュタイン中尉の処刑について、全てご報告いたします」

ベアトリクスは短く頷いた。

「話せ」

「ノイルピーン市街戦は予想以上に敵の抵抗が激しく、制圧に時間を要しました。しかし、最終的には我々の勝利に終わり、敵部隊は壊滅しました。ただし、その過程でハイムが脱出し、行方をくらませました」

ベアトリクスは軽く眉をひそめたが、すぐに表情を戻した。

「ハイムの逃亡に関して、具体的な経緯は?」

「市街戦の混乱に乗じて、複数の協力者の支援を受けて逃亡しました。我々も捜索を試みましたが、現時点では行方を特定できていません」

ベアトリクスは小さくため息をつき、指を組んだ。

「……続けて」

「ホーエンシュタイン中尉は、裏切り行為を働き、組織の理念に反する行動をとりました。最終的には敵に拘束され、逃亡を図った際に処刑されました」

「処刑の詳細は?」

「彼女は最後まで抵抗し、武器を隠し持っていました。反撃を試みたため、処分はやむを得ないものでした」

ベアトリクスは沈黙し、暫く考え込むように視線を落とした。そして、ゆっくりとニコラを見据えた。

「……ノイルピーンの戦況については既に報告を受けているが、ハイムの件は問題だ。引き続き捜索を続けろ」

「承知しました」

「リィズ・ホーエンシュタインについては、妥当な判断だったと認める。彼女はもう利用価値がなかった」

その言葉に、ニコラはわずかに目を伏せた。しかし、それ以上何も言わず、静かに敬礼をして部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベアトリクスに報告を終えたニコラは、執務室を出た後、すぐに通信室へ向かった。ハイムの行方を追うため、各部隊に指示を出す必要があった。

通信室に入ると、部下たちが慌ただしく動き回っていた。彼は迅速に指令を出し、ハイムが逃げた可能性のあるルートを洗い出させた。

「ハイムの足取りを追え。市街戦の混乱を利用して逃げたとなると、南か西のルートが有力だ。関係者の尋問も強化しろ」

部下たちは即座に命令を受け取り、捜索を開始した。しかし、ハイムの姿はどこにも見当たらず、逃亡の手掛かりも少なかった。

同時刻、ハイムは密かにある人物と接触していた。彼は地下の隠れ家で傷の手当てを受けながら、これからの行動について考えていた。

「……ここを出るのはリスクが高いが、長くは留まれないな」

その隠れ家にいたのは、かつての戦友か、それとも新たな協力者なのか――。

一方、ベアトリクスはニコラに新たな指令を下していた。

「ハイムの捜索を続行するのは当然だが、それだけではない。敵勢力の動きが活発化している。ノイルピーンでの戦闘が終わったばかりとはいえ、次の衝突は避けられないだろう。今のうちに戦力を再編し、準備を進めろ」

ニコラは静かに頷いた。

「了解しました」

ハイムの行方、次なる戦い、そしてリィズを失ったテオドールの心境――それぞれが異なる思惑を抱えながら、物語は次の局面へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、イングヒルトは…シュプレーヴァルト基地の片隅で、イングヒルトは書類をめくりながら、沈んだ表情をしていた。基地内の空気は重く、戦況の緊迫感がひしひしと伝わってくる。

リィズの処刑、ノイルピーンでの戦闘、そしてハイムの逃亡――全てが短期間で起こり、状況は大きく動いていた。

「(リィズが……処刑された……)」

その知らせを聞いたとき、彼女の胸には複雑な感情が渦巻いた。リィズとは決して親しい関係ではなかったが、彼女の狂気じみた執着の裏には何かしらの理由があったはずだ。

しかし、それを知る機会はもう失われた。

「……これでよかったの?」

誰にともなく呟く。

だが、その答えを知る者はもういない。

彼女は視線を机上の報告書に戻した。今は考えても仕方がない。

シュプレーヴァルト基地では、既に次の作戦が動き出していた。

イングヒルトが整理していた報告書の中には、新たな戦場に関する詳細が記されていた。

”ハーフェル川防衛戦”

それが、次なる戦いの名称だった。

ハーフェル川は、反体制派が勢力を拡大するオラニエンブルク方面への重要な拠点だった。もしここを突破されれば、彼らは一気にシュプレーヴァルト基地を脅かす位置まで進出する可能性があった。

「……敵の狙いは明確ね」

イングヒルトは呟きながら、作戦内容を確認した。

反体制派はハーフェル川を渡河し、一気に東へ進軍するつもりだった。対する政府軍側は、川を防衛ラインとし、敵の進軍を食い止める作戦を立てていた。

指揮を執るのはベアトリクス・ブレーメ

彼女は既にハーフェル川へ向けて部隊を編成し、布陣を開始していた。

イングヒルト自身も、この戦いにどのように関わるべきかを考えていた。彼女は情報分析と戦術補佐を担う立場にあったが、戦況次第では最前線に出る可能性もある。

「(この戦いを落とせば、敵はさらに勢いを増す。何としてでも食い止めなければ……)」

一方その頃、ハーフェル川周辺では、既に戦闘準備が進められていた。ベアトリクスの指揮のもと、ヴェアヴォルフ大隊が防衛ラインを構築し、敵を迎え撃つ態勢を整えていた。

そして、その対岸では――。

反体制派の部隊が集結し、指揮官たちが作戦を練っていた。その中には、オラニエンブルクに逃れたハイムの姿もあった。

ハーフェル川を挟んで、ヴェアヴォルフ大隊と反体制派が対峙する。

戦争は、新たな局面を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュプレーヴァルト基地の作戦会議室には、軍服姿の女性衛士達が集まっていた。空気は重く、誰もが真剣な眼差しを向けている。その中央に立つのは、ベアトリクスの副官 ニコラ・ミヒャルケだった。

「現在、反体制派はオラニエンブルク周辺で勢力を拡大しつつある。ハーフェル川を突破されれば、奴らはこのシュプレーヴァルト基地に直接攻勢を仕掛けることが可能になる。つまり、この戦いは絶対に落とせん」

ニコラは冷静に地図を指し示しながら説明を続けた。

「敵の主力部隊は、カティア・ヴァルトハイムを中心とする革命勢力と、軍籍を離脱したハイムの指揮する部隊だ。カティアはプロパガンダの象徴であり、ハイムは戦車部隊を指揮している。奴らの目的は明確だ――ベルリンへ進軍し、政府を転覆させること」

会議室がざわめく。ハイムの離脱は政府側にとって大きな痛手だった。彼はかつて優秀な戦略家とされていた人物であり、敵に回ると厄介な存在だ。

「そこで、我々の作戦はこうだ」

ニコラは指を地図の一点に滑らせた。

「ハーフェル川を防衛ラインとし、敵を迎え撃つ。我が大隊が防衛を担当し、こちらは機動力を活かした迎撃戦を展開する。しかし、それだけでは不十分だ。敵の戦意を削ぐためには、情報戦が鍵となる」

その言葉に、イングヒルトは僅かに視線を上げた。

「イングヒルト、お前にはベルリンへ向かってもらう。ドイツテレビジョン放送に潜入し、反体制派の動向を監視するのが任務だ」

「……了解しました」

静かに頷きながらも、彼女の内心は複雑だった。最前線で戦うことはなくとも、情報戦が戦局を大きく左右することは十分に理解している。

「さらに、カティア・ヴァルトハイムやズーズィ達はあえて泳がせる。我々の目的は、彼女らの影響力を完全に遮断することではなく、利用することだ。反体制派が調子に乗れば乗るほど、我々が介入する隙が生まれる」

「……彼女達を生かすということですね」

「そうだ。革命の象徴は大衆を動かす力を持つ。だが、それが暴走すればどうなるか……? 我々はそこを突く」

イングヒルトは静かに思案した。カティアはただの理想家ではない。彼女の言葉は人々を動かし、戦争の流れすら変える力を持っている。それを逆手に取ることが、この作戦の本質だった。

「では、作戦は決定だ。イングヒルト、お前の潜入任務の準備はすでに整えてある。身分証、履歴書、局内の配置図……全ては手配済みだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

イングヒルトはベルリンの ドイツテレビジョン放送(DFF) の建物の前に立っていた。

彼女の姿は、もはやシュタージの衛士ではない。黒縁の眼鏡に、地味なブラウスとスカート。髪はまとめられ、特別目立つような特徴はすべて隠されている。彼女は今、「アンネ・ヴァイス」 という新しい身分を背負っていた。

エントランスでは、厳重な身分チェックが行われていた。

「新しく配属されたアンネ・ヴァイスです」

彼女は落ち着いた声で偽造された身分証を差し出す。警備員は身分証と彼女の顔を交互に見比べ、少し考え込むような素振りを見せた。

「(まずい……)」

一瞬、警戒されたかと感じたが――

「……技術部門の新入りか。入れ」

身分証が返され、イングヒルトは無事に局内へと足を踏み入れた。

建物内は活気に満ち、スタッフたちが慌ただしく動いていた。テレビ局独特の喧騒が響く中、彼女は与えられたデスクに向かった。

「君が新しい技術部スタッフのアンネか?」

上司らしき男が声をかけてくる。

「はい、本日から配属されました」

「ちょうどよかった。今、戦況レポートの編集をしているところだ。反体制派の動向もまとめられているから、チェックしてくれ」

渡された資料を開くと、そこには反体制派の戦況報告が詳細に記されていた。

「(こんな情報が放送されるの? いや、むしろ内部の人間がこれを把握しているということは……)」

彼女は慎重に周囲を観察しながら、情報を整理した。

DFFの中には確実に反体制派と通じている人間がいる。そして、この情報がどこまで漏洩しているのか、政府軍側がどれだけ把握しているのか……すべてを知る必要がある。

「(カティアたちの動きを完全に封じるのではなく、泳がせる……か)」

彼女は改めて、ニコラの言葉を思い出した。

「(なら、私は彼らの言葉を、放送を、利用するまでよ)」

そう決意すると、彼女は静かに微笑み、編集作業に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イングヒルトが「アンネ・ヴァイス」としてDFFに潜入して数日が経った。

技術部の新人としての役割をこなしながらも、彼女の本当の目的は 放送局内にいる政府側の協力者と接触し、反体制派の動向を探ること にあった。

しかし、誰が協力者なのかは事前に知らされていない。慎重に情報を集めながら、相手の正体を見極める必要があった。

その日、イングヒルトは編集室で戦況レポートの整理をしていた。

反体制派に関する情報がリアルタイムで局に届けられており、スタッフはそれを編集し、報道として流す。彼女はそこで 一つの異変 に気づいた。

「(……このニュース、武装警察軍の戦果が意図的に削られている?)」

ハーフェル川周辺の戦況報告には、武装警察軍が劣勢にあるような描写が強調されていた。実際の戦況を知る彼女から見れば、これは事実の歪曲だった。

「(局内に反体制派とつながっている人間がいるのは確実ね……)」

だが、それと同時に、政府側の協力者も存在するはずだった。もし 政府の意向が完全に排除されているなら、この放送局は既に反体制派の手に落ちている筈だからだ。

その時、彼女のデスクの近くを、ある男 が通りかかった。

その男は、編集部のスタッフ アロイス・ホフマン だった。

四十代半ばの彼は、放送局で長く働いているベテラン編集者だ。彼はふと、イングヒルトの作業画面に視線を落とし、小さく呟いた。

「……おかしいと思わないか?」

イングヒルトは慎重に顔を上げた。

「何が、でしょうか?」

「このニュースの編集方針さ。政府軍がまるで何の抵抗もしていないように見えるだろう? 実際は違うのに……」

彼は小さなため息をつくと、周囲を警戒しながら続けた。

「俺たちは中立の報道をするべきだと思うが……どうも、この局の上層部はそれを望んでいないようだ」

「(……この男、何かを知っている?)」

イングヒルトは慎重に言葉を選んだ。

「中立であるべき、というのは同感です。でも……それが許されない空気もあるんじゃないですか?」

アロイスは一瞬、じっと彼女の目を見た。そして、低い声で言った。

「君は……何者だ?」

彼女の胸の奥が警戒心で固まる。

「(……バレた?)」

しかし、彼の視線は敵意のあるものではなかった。むしろ、試すような、慎重なものだった。

イングヒルトはほんのわずかに考え、賭けに出た。

「……正しい報道をしたいだけの、新入りです」

アロイスは数秒間彼女を見つめた後、ふっと小さく笑った。

「なら、俺と同じだな」

彼は何事もなかったかのように立ち上がり、去っていった。

だが、イングヒルトは確信した。

「(この男、政府側の協力者だ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

イングヒルトが休憩室でコーヒーを飲んでいると、机の上に 小さなメモ が置かれているのに気づいた。

何気なく手に取ると、そこには短い文章が書かれていた。

 

「23時、アーカイブ室。話がある」

 

送り主の名前は書かれていない。

だが、これが アロイスからのメッセージ であることは明白だった。

「(……さて、どう出るべきかしら)」

イングヒルトはメモを手の中で丸めながら、静かに微笑んだ。

23時、放送局のアーカイブ室。

局内の明かりはすでに落ち、人気はほとんどない。静寂の中、イングヒルトは慎重に足を踏み入れた。

「来たか」

クルトが奥の棚の前に立っていた。

「さて、話というのは?」

イングヒルトは淡々と問いかける。アロイスはしばらく彼女を見つめた後、意を決したように口を開いた。

「俺はシュタージと繋がっている。だが、この局の上層部には既に反体制派の手が回っている。カティア・ヴァルトハイムの演説は、間違いなくこの局を使って全国に放送されるだろう」

彼は懐から 小型の通信機 を取り出し、イングヒルトに渡した。

「お前も……政府側の人間なんだろう?」

「……どうしてそう思うの?」

「直感さ」

イングヒルトは微かに笑った。

「鋭いですね」

彼女は通信機を手に取り、アロイスを見た。

「この放送局で、どこまで動けますか?」

「内部に何人か、俺と同じ立場の人間がいる。決して多くはないが……戦況次第では、放送の妨害は可能だ」

イングヒルトは軽く頷いた。

「なら、必要なときが来たら動いてもらうわ」

「その ‘必要なとき’ ってのは……?」

「カティアの演説の最中よ」

アロイスの表情が険しくなる。

「そんなタイミングで……?」

「ええ。ギリギリまで泳がせるのが、今回の作戦の鍵よ」

彼女は小さく息を吐くと、通信機をポケットにしまった。

「(これで準備は整った)」

DFF内部には政府軍の協力者がいる。

そして、カティアの演説が始まった瞬間――彼らの力を借りて、放送を中断させる。

それが、イングヒルトに与えられた 最大の役割 だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハーフェル川戦線の北方森林地帯――そこでは、ヴェアヴォルフ大隊と反体制派の戦術機部隊が激突していた。

霧が立ち込める深い森の中で、静寂を切り裂くように銃声と爆発音が響く。

「くそっ、ヴェアヴォルフ……!」

リリー・レーヴィット少尉は、愛機バラライカを操りながら、眼前の敵影を睨んだ。

「敵は強力だ……でも、やるしかない!」

彼女は味方機と連携しながら、ヴェアヴォルフ大隊の布陣を突破しようと試みた。しかし――

ギャリギャリギャリ!!

突如、森林の茂みが揺れ、大型の影が現れた。

アリゲートル――その背には、ヴェアヴォルフ大隊の指揮官、ベアトリクス・ブレーメが乗っていた。

その両脇には、チボラシュカ2機が随伴し、彼女の獲物を狩る準備を整えていた。

「お待たせ。狩りの時間よ」

ベアトリクスの冷ややかな声が通信回線を通じて響く。

リリーの背筋に冷たい汗が流れた。

「(マズい……!)」

彼女が次の行動を決める前に、アリゲートルの突撃砲が発砲された。

ドゴォォォン!!

瞬間、リリーの機体の右腕が吹き飛ぶ。

「きゃああっ!」

「リリー! 回避しろ!」

オイゲンが叫ぶが、チボラシュカ2機が前に出てリリーを逃さない。

「……リリー、助けに行くわ!」

アネットが援護に入ろうとするが、その時、ベアトリクスの冷たい声が割り込んだ。

「ダメよ。私たちの狩りを邪魔しないで」

彼女はそう言うと、ロザリンデが乗るチボラシュカが即座にアネットの進路を塞いだ。

「くっ……!」

アネットは歯噛みしながらも、敵の牽制に阻まれ、前に出られない。

そして――ニコラ・ミヒャルケとカタリーナ・ディーゲルマンの機体が同時に突撃した。

ニコラ機の突撃砲がリリーのバラライカを直撃し、装甲を粉々に砕く。

「ぐっ……!!」

カタリーナの機体がその隙を突き、高速のスラッシュ攻撃を繰り出した。

ズバァッ!!!

機体のコクピットを貫くように、カタリーナのナイフが突き刺さる。

「……あ……」

リリーの目に、刹那の光が映った。

そして――バラライカは爆炎に包まれ、ハーフェル川の大地に墜落した。

「リリー!!!」

オイゲンの絶叫が響く。

彼は怒りに燃え、ベアトリクスのアリゲートルに向かって突進した。

「よくもレーヴィット少尉を……!」

しかし、ベアトリクスは微動だにしなかった。

その代わりに、ファルカの機体が横から忍び寄り――

ザクッ!!

オイゲンのバラライカの管制ユニットが、鋭いナイフによって貫かれた。

「……な……!?」

操縦不能になったバラライカが、一瞬の静寂の後、爆発する。

オイゲン・アルトナー戦死。

戦場に、彼の断末魔が木霊した。

「よし、次の獲物は……」

ベアトリクスは冷たく呟く。

そこでテオドール機とグレーテル機がアリゲートルに総攻撃を仕掛けるが意図も簡単に躱され、返り討ちにされる

「同志中尉!!」

「グレーテルで、いい……」

グレーテル機が120mm弾に直撃されて墜落……しかし奇跡的に脱出を成功した。

ヴェアヴォルフ大隊の圧倒的な強さが、戦場に刻まれた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルリン陥落の序章――反体制派のプロパガンダが始動する。

ハーフェル川の戦いの後、政府軍は防衛線を後退させ、ベルリンへと戦力を集中させていた。

一方、反体制派は次なる一手として 「情報戦」 を加速させようとしていた。

その中心にいたのは――

 

カティア・ヴァルトハイム(本名:ウルスラ・シュトラハヴィッツ)。

彼女こそが革命の女神と言える存在なのだ。

ベルリン市内、ドイツテレビジョン放送(DFF)のビル内部。

深夜にも関わらず、局内は異様な熱気に包まれていた。

放送局の幹部たちは、反体制派の進軍を前にして 次第に彼らに迎合する姿勢を見せ始めていた。

「我々は中立の報道をすべきでは?」

そう口にする者もいたが――

「もう遅い」

反体制派のリーダー、ズーズィ・ツァプは冷たく言い放った。

「シュタージは追い詰められている。この国の未来は変わるのよ」

彼女は幹部たちを睨みつけながら続けた。

「今、どちらに味方するかで、お前たちの命運も決まる。愚かな選択をするな」

幹部たちは顔を見合わせ、無言のまま頷いた。

DFFのスタジオでは、反体制派の技術スタッフが急ピッチで放送の準備を進めていた。

政府軍に有利な情報はすべて排除され、反体制派の勝利が目前であるかのような演出 が施される。

「よし、映像素材は揃ったか?」

「はい、戦場の映像も編集済みです。シュタージの劣勢を強調するようにしました」

「カメラとマイクも準備完了です」

ズーズィは満足げに頷く。

「いいわ。これで全国民に‘革命’を知らしめることができる」

カティアがスタジオに入ると、場の空気が一気に変わった。

彼女の姿を見て、スタッフたちは一様に緊張する。

「準備は整いましたか?」

彼女の静かな問いに、スタッフは「はい」と頷く。

「……これが、新しい時代の始まりですね」

彼女はスタジオの中央に立ち、カメラに向かって視線を送る。

「生放送のカウントダウン開始します!」

 

10秒前――

 

緊張が高まる。

 

5秒前――

 

スタッフたちが息を呑む。

 

3… 2… 1…

 

放送開始。

カティア・ヴァルトハイムの演説が、全国へと発信された。

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