『マブラヴオルタネイティヴクロニクルズ ~贖罪~』を参考にして書きました。
大倉中隊長視点で描写し、少し偏っているところありますが温かい目で見て頂ければ幸いです。
三部作でお送りします。
日帝の武闘派衛士 前編
私の名前は大倉鈴乃
道を極めている為に自分を磨いている日本帝国本土防衛軍佐渡基地司令部第三戦術予備部隊B中隊の長を務めていた女性衛士だ。
私がまだ幼少の頃、同じ年頃のいじめっ子のリーダー格に目付けられ虐められていたがそれを割り入ったのは後に同じ所属のA中隊の長を務めていた坂崎都大尉…私の戦友であり酒を飲み歩きシェアハウスに住み一緒に寝た深い関係であった。
小学校、中学校、高校、衛士訓練学校も同じであり都と一緒にいた生活は楽しく過ごしていた。
この楽しい日々は一生続くと私は思っていた。
あの地獄の日が来るまで……。
1990年
私と都がまだ訓練衛士だった頃、帝国陸軍横浜衛士学校の門を叩き衛士界隈に入った。
界隈に入ったとはいえまだ未熟の訓練兵。
BETAという存在は世界がどれだけ蹂躙され国土を荒されたかを教官から頭に叩き込まれた。
世間では女性衛士は邪見扱いしているがそんな事は関係ない。
ただ、授業も碌に受けず不貞腐れている鋭い目付きに丸眼鏡の男がいた。
私は気になり隣にいる訓練衛士に話しかけた
「あの眼鏡の……見かけない顔だけど」
「ああ、小峠の事か?彼奴は子供の頃から極道を憧れててさ、当時住んでた家の近所にヤクザらしき男がいたんだ」
確かにヤクザは世間から忌み嫌われてるのもあるが全員が悪人ではない
「関心を持たなかった両親の代わりにさ、その彼は面倒を見てくれた。その後両親が離婚して母親に付いたがそれでも母親が多忙で親子の仲の再構築はもはや不可能でグレて不良に成り下がった。所謂不良訓練衛士だな」
親が共働きだっただろうか家に帰ってくるのは遅い時間帯だった。
私は更に彼の事を聞き出す
「そのヤクザってどうなったの?」
「追い出されたよ。理由は暴力団だからって…両親の不仲だった彼はグレ始め衛士訓練学校を入った同時に家を飛び出したって訳さ」
………成る程、そういう経緯が。
「やめとけやめとけ。彼は未だに極道を憧れてるから関わらない方が良いよ。それに彼奴…本当に極道の世界に入ったかもしれないよ?」
日本がBETAに呑み込まれようとしているこのご時世で極道の世界か
笑えないが、彼には彼なりの事情があるのだろう。
講義が終えた後、私はその男に近づき話しかけようとするが突然睨まれ激情で圧を抑えられた。
「何だテメェは?」
「同じ訓練衛士の大倉鈴乃よ」
態度が悪いが悪くないが関係ない
「貴方、何故衛士に?」
質問を投げると、小峠は答えを返してきた
「あ?テメェには関係ねぇ…首突っ込むな!」
「極道の世界に憧れてる貴方が何故衛士になろうと?」
「しつけぇな……ぶっ殺すぞ!」
彼は態度が酷過ぎたためか私は彼に平手打ちを一発叩いた
パチーン!
「……っ!」
「講義をさぼって何処ふらふらと歩いてるのかは詮索しないわ。でも私は、貴方の事をもっと知りたい。だから…」
そういって彼に手を差し伸べる
周りからは関わるなと言われたがそんなの関係ない
「何の真似だ?」
「ん?私は貴方の味方よ」
「味方だと?」
私は笑みを浮かび頷いた。
彼は私の手を握り不貞腐れた態度取りつつ頬を赤らめた。
「……衛士になりたいと思った訳じゃねぇ。俺は憎いんだ…BETAを」
「そう…」
「それに、お前の事は知らねぇがいい奴に見えるよ」
自分が望む未来を他人任せにしたくない
彼だけでなく私と都はそう思った。
「良い人か……」
彼と話してから10分経ち、都が寮に戻るよう私に手を振る
「そろそろ私は行くわね」
立ち去ろうとした次の瞬間
「それと俺はアンタと同じ班の班長だ。今まで放り投げてすまない」
彼は私と同じ班の班長だった。
彼は射撃、格闘はあまり強くはないが度胸はあり、どんなに痛めつけられても絶対に引かない不屈の根性の持ち主の性格だ。
そして今まで講義に出なかったことを私に謝罪した。
「班長失格だ、アンタがまさか俺と同じ班にいたとはな。驚いたぜ」
「別に驚くことじゃない。貴方が講義に出てくれればそれでいいのよ。他の人達も迷惑掛からない」
「新井とは同じになりたくねぇ。彼は典型的な男尊女卑の考えを持つ男だ」
仁義と任侠はあるな…少し理解した気がする
衛士は男も女も関係ない
そう言いたいよね?小峠
「大倉は、何で衛士になったんだ?」
私は正直に答えようとするが都が私の名前を叫んだ。
小峠は寂しげな顔を浮かびつつ立ち去ろうとする私にこう言い放った
「大倉!」
「?」
「また話そうな……俺頑張るから。アンタに好かれたい」
彼がそう言うと私は小さな笑みで言い返した。
「ええ、また話しましょう」
これがきっかけで私と都、後に天羽組の武闘派ヤクザ、小峠華太と出会った。
次の日、実技訓練に遅れた私は都に咎められた
「遅いぞ」
「ごめんね……寝坊しちゃって」
「……班長が極道に憧れている男だとはな」
まあ、そうだよね……。
少し落ち込んだ私は、小峠を見かけた
訓練だけは参加するのね
「おはようございます、小峠班長」
「ああ、おはよう。教官からの話がある」
私達が担当する教官は坂元という名の衛士だ
周囲からは「鎌使いの坂元」「化け物」と恐れられている
なんでこんな男が教官に……黒い噂が絶えない。
衛士では珍しくBETAとの戦闘では、突撃砲で発砲しながら特注の戦術機用鎌を振るって襲い掛かるという、恐ろしい絵面で攻め立てる戦法だ
真面な衛士とは程遠い
ツーブロックの金髪と、帝国陸軍BDUを身に纏い筋骨隆々な体型が特徴の男―――坂元が私達の前に立った。
私達の前に修羅場を起こした。
「貴様等全員集まったのは外でもない!この中に俺の恋人を奪った無礼な奴がいる」
髪の毛が逆立つほどに坂元は怒っていた。
しかも自分の恋人を奪った犯人を捜している
私の後ろにいた山田という男が挙手をした
「ん?山田訓練兵か!」
「はい!」
「テメェ……大変な事したねぇ」
「ひぃっ!」
挙手した山田は坂元の問いに詰められる
「俺の女に手を出して……勇気あるじゃん。死にたいんだね?」
「も、申し訳ございませんでした!!」
山田は坂元の恋人と知らなかったのだが、そんな理由で通る筈がなかった。
坂元は「こっちに来い」と山田に誘導し鉄拳制裁を食らわした
私達の前でだ
そして坂元は山田に対し儀式が行われる
そう、指切りだ。
私達訓練衛士の前で公開処刑の形で指を切ろうとしていた
「分かってるよなぁ。山田訓練兵…手を出せ」
「う…」
衛士は健康状態をきちんと管理しなければならない
体重は勿論、病気とか怪我などあったら致命的だ
当然指を切る時点で、衛士生命は絶たれる。
「鈴乃、坂元教官には絶対に逆らうな。私達にも指切られる」
都は坂元の事は心底嫌っていた……あれが衛士訓練学校の教官の行動とはとてもじゃないがそうは思えない
坂元は山田の指を輪ゴムで縛り付け麻酔代わりにする。
「はぁ…はぁ…」
「そろそろいけんだろ。ワレ」
「は…はい…」
鬱血して指の色が変わったら山田をうつぶせにさせ刃を向ける
意図をピンと張ったような緊張感の中、私は怯えた顔で見ていると……
「小峠……お前がやれ」
「えっ?」
突如飛んできた思わぬ球に小峠は面を喰らってしまった
「あぁ?何だその返事は」
「いや…やらせてください」
勿論、坂元の前で首を横に振る事は衛士生命が絶たれてしまうからだ。
「すまん、山田」
「うわぁああああ!」
決意を固め、小峠はそっとアーミーナイフを持ち上げた
そして
「フンッ!」
ザク!
「うがああああああああああ!俺の指がぁぁぁぁぁっ!!」
山田の指が飛び、衛士生命は絶たれた。
これにて山田の禊が終了……と思った次の瞬間。
「まだ終わったなんて一言も言ってねぇだろうが」
「へ……え……?」
なんと坂元が自前の鎌を勢い良く振りかぶった
そしてあろうことか麻酔していない他の指を切り落とし始めた
「ほらほらほらぁ…どんどん切っていこう!」
それだけでは気が収まらず、あろう事か「いっぽんでもニンジン」を歌いながら指を切り落とす
「ギィィ!!」
狂気じみた笑顔で次々と指を切っていく
「ドラ〇もんになーれ」
暴走機関車と化した坂元は最早誰にも止める事は出来なかった。
数分後、やっと坂元の手が止まり儀式が終了した。
「ヒャヒャヒャ!アミバだ!アミバ!」
「ひぁぁ」
山田の左手の指が4本なくなり絶望に追い込まれ、何も出来なくなっていった
女性の悲鳴が響き、他の班がいる訓練場まで巻き込まれ事件が起きた。
この事件は衛士訓練学校指切り事件として世間に広まり、その後、山田は救急車に運ばれたが切られた指が坂元によってゴミ箱に捨ててしまった為か修復できず誰にも一言別れの言葉を言わずそのまま去ってしまった
その後の消息は不明となっている。
しかし、禁忌を犯したとはいえあまりにも凄惨過ぎる断罪だった。
「貴様等は足手纏いになりたくないなら山田みてぇにはなるんじゃねぇ」
この男は狂人だ
この時、私達はまだこの言葉の本当の意味を理解していなかった。
数時間後、凄惨な光景を見てしまった私と都はPXで食事をしていた。
あんな光景は二度と見たくない……。
暗い表情を浮かんでいた私は食事を手付かずにいたが、都は心配そうな表情で私に話しかけた
「鈴乃、お前の気持ちはわからないまでもない。確かに山田は坂元の恋人を奪った。が彼は衛士の命綱である指を切った。今回の件で坂元は左遷されるか退役されるかどちらかだろう」
………都、貴女は私の事を心配してくれてるのね
「鈴乃、今日は思い切り私の胸に飛び込め」
都が優しい笑顔で浮かびそう言うと私は啜り泣き始めた。
「うぅ……ぅ…」
「早く食事を取って。体調管理はしないと体壊すぞ」
私は頷き食事を取り終えた後、寮に向かおうとしたが小峠と遭遇してしまう
「何だ?」
少し複雑な表情を浮かんだ
やらされたんだ。それしか言葉が浮かべなかった。
「大倉、それに坂崎もいてたのか…」
都は小峠に詰め寄る
「いてて悪いのか?あと、坂元にやらされたんだな。南雲教官はお前の処遇については不問になったと聞いた」
「ああ、すまない」
………。
「坂崎もか?」
「?」
「その…アレだな。坂元教官に何か因縁付けられたのか」
小峠は都に問いかける
「ないよ。私達がここにいる理由は早く一人前の衛士になって異星起源種を殲滅したいだけだ」
都の答えを聞いた小峠は納得するような顔で頷いた。
「そうだな……坂崎、俺は」
「都で構わない」
「え?」
「私の事は都と呼んでいい」
そこまで親密ではないが都は小峠に下の名前で呼ぶことを推奨した
「……じゃあ俺も下の名前で呼んで構わない。都、鈴乃……」
この時の私は小峠…いや華太を班長としてだけでなく一人の男として接する事にした。
その次の日、坂元教官と南雲教官が私達を訓練場に集まり今回は白兵戦での模擬戦を行った
真面に訓練受けてないのに白兵戦の訓練……だがこれも衛士訓練の一つだ
負けていられない……!
「いいか!クソ共よ!今回は白兵戦を想定した模擬訓練を行う!貴様等新米がどれだけ成長出来てるか俺は見届けさせて貰う!」
坂元は教官らしく言い放った。
今更教官面しても遅いわよ
早く終わらせないと……
「各班、互いに1対1で戦闘始めろ!合図を出すぞ」
緊迫感が走る。そして――――
「始め!」
坂元が合図を言った瞬間、私が地を蹴り華太の懐へと突っ込む。
相手が華太か……闘志が燃えてくるじゃない
目の前で屈み下から振われる刃。しかしそれは意図も容易くゴム製の訓練ナイフに受け止められてしまった。
「くっ!」
「まだ本気は出してないようだな」
受け止められた左手を回し、遠心力を利用しながら今度は右手を繰り出す。しかしこれも上手く上体を逸らした華太に躱される
汗ばんだBDUを着つつ訓練ナイフを握る私は華太を切り込む
「ぐうう!」
「!」
華太は勢いのまま後ろへと下がる。だがそんな隙を私が許す筈もない。目にも止まらぬ速さで距離を詰め、そのまま突きで華太を狙う。
その次の瞬間、私の目に映ったのは、小さな笑みを浮かべる華太の姿だった。
私は、華太の右手に掴まれていた。
「捕まえたぞ……!」
「っ!」
私の首元へと振り下ろされる左手。間一髪で回避に成功したものの訓練ナイフを手放す
「奇怪な事を……!」
「それが仁義を守るっていうんだ」
再び華太へと突っ込む私。
しかし華太が持つ訓練ナイフの刃先に私の右目を向いた。
そして、勝負はつく。
「俺がいない間、ここまで強くなるとはな……」
「なっ……」
力が抜け、膝をついたのは私の方だった。
「勝負はついたが、その調子じゃ俺より強くなってるかもな」
「え……?」
「見直したぜ」
華太は私に誇らしい笑みを向け浮かんだ。
3時間が経ち、坂元の合図で訓練は終了
「よぉし!やめ!」
この時点で皆は疲労困憊だ。
そしてPXで食事を摂りに行った。
PXで私と都、華太の3人で食事を摂取している途中、男の声が聞こえある女性に詰め寄ってきた光景を見てしまった。
「参ったなぁオイ!?飯を食う姿は御淑やかな女そのものじゃねえか。え?」
彼の顔を除くと、そこにはトレイを持った新井が立っていた。
そしてあろうことか、向かいの席で腰を下ろしてしまった。
彼女はそれを無視し、カレーを口に運ぶ
余談だが私もカレーを食べている
都はチキンカツカレー
華太はエビフライカレーだ。
「なあ、神宮司。お前さ、女の癖に何で衛士になって戦おうとするんだよ?」
そんな事を言いに向かいの席に座ったのか
呆れたな……
「お前に限らず、志願する女共ってその辺が不思議なんだよなあ。後学の為に聞かせろよ」
こんな奴の質問に真面に答えるのは恐らく坂元だけだろう。
トラブルの切っ掛けを態々与えるようなものだ。
他の教官の目がある。私は彼女――神宮司まりもの様子を見届けるしかなかった。
しかし、華太が席に立ち新井の元へ近寄り威圧的な顔で問い詰める
「話の途中悪いな、聞きたい事がある」
「誰だお前は?」
その目は、腐った魚の目だ
都は冷静に振る舞い何も言わずに黙々とカレーを口に運ぶ。
「俺は小峠華太、今の世の中を生きるしがない訓練兵だ」
「へぇ~、アンタも衛士になって戦おうとしているのか?良い度胸だ。で、聞きたい事ってなんだ?」
「ああ、アンタが言う女が戦ってはいけない理由聞かせて貰えないか?」
馬鹿!何を言ってるの!?
暴力沙汰にならなければいいけど……。
「おいおい、質問で質問に返すな。会話もまともにできねぇのかよ。神宮司と同類だな」
その時、華太は怒りを抑え拳を握り堪えていた。
馬鹿に馬鹿扱いされるほど腹が立つ事は無い
だが、華太は違った。古き良き任侠がある男だったのだ
「そうか……だったら話しかけるな。アンタ、坂元教官がやらかしたことを知りつつ知ってて知らないふりをしてるな。他の班の人から聞いた、とばっちりな行動してるんだってな…」
「とばっちりなのは神宮司の方だ。馬鹿にしてるのか」
この男は………!
「答える気がねぇなら一生黙ってろ。他の教官が見られているぞ」
新井は伺うように辺りを見回した。
教官はこっち見ていないのに馬鹿な男だ
「女は大人しく銃後で男を支えてればいいんだ。非力な女が戦場に行ったところで何になるんだよ」
女は非力、役に立たない……所謂、「私作る人と俺食べる人」か。
その短絡思考に唖然とさせられた。
一昔前の歩兵ならいざ知らず、衛士には腕力以上に重要なものがあるだろう
「衛士は男も女も関係ねぇ…アンタが言ってる主張は何も根拠がねぇただの差別発言だ」
神宮司が言おうとした言葉は華太が代わりに新井と言い争っている
「いいや違う。女はのこのこと戦場に出てくるべきじゃない」
会話になってすらいなかった
もう怒りが限界に達する頃だろう……。
嚙み合わない問答を続けるのも仕方がない
この男は最初から明らかな敵意しかない……つまりBETAと同じだ。
互いに理解し合える事は不可能だからだ。
「女兵士が役立つとすれば、レイプされる民間人とカマを掘られる新兵を減らす事ぐらいさ」
醜悪な発言だ。
冷静に振る舞った都は食事を口にするのをやめ彼の言葉を耳に傾ける
流石に腹立ったのか新井の元に行く
そこには殺風景な空気
「ん?俺は親切に言ってやってるだけだぜ、小峠」
「あ?」
「訓練学校で良い成績を収めたって公衆便所になるか無駄死にするだけだ。悪い事は言わねえからやめておけって」
華太は新井に殴りかかろうとするが都に止められる
「!」
「私に任せろ」
都は新井の顔を見て軽蔑した目線で話しかけようとしたが神宮司の口が開き言葉を放った
「なるほど……そういう事……」
「おおっ、やっと理解できたか?じゃあさっさと除隊しちまえ。それがいい」
「私が理解したのは、あんたを女を目の敵にする理由」
「あ?何が言いたいんだ?」
華太は怒りを鎮め都の傍に寄り神宮司と新井の会話を見るだけだった。
神宮司は続けて言い放つ
「あんた、自分がカマを掘られたいから女が邪魔なんでしょう?それならそうと早く言ってくれればいいのに」
「…何だと!?」
聞き耳を立てていた周囲の訓練兵達が声を上げて笑った。
新井は余程腹が立ったのか、顔が真っ赤になった。
いい気味だ。
「競争相手は今のうちに減らしておきたいのね……でも安心して。あんたのお楽しみを奪うつもりはないから」
「おい……俺を挑発すんな。とばっちりはもうごめんだからな…」
声色は落ち着かせているが、明らかにドスを効かせている。
「旗色が悪くなると、脅しにかかるなんて最低ね」
「……うるせえ!」
最早会話に介入するのは不可能だ
ここから先は新井と神宮司の討論合戦だ
「ろくな根拠ない癖に、感情論だけで絡んでくるからそうなるのよ。恥をかきたくないならせめて場所を選べば?」
神宮司の言う通りだな
新井は鼻で笑う
「フンッ」
バツが悪いのか徐にトレイを煽り、物凄い勢いでカレーを掻き込む。
成る程……教育がダメなら学習させておけばいいのか……。
「―――じゃあ、お前には、女が戦場に出るべき根拠ってヤツがあるのかよ?――――ああッ!?」
…………学習ができない男か。
やれやれね。
「男性の徴兵年齢の引き下げに続いて、女性を徴兵対象にする事が今の帝国議会に検討されている事ぐらい知ってるわよね?」
「――――ッ!!」
新井の顔色が変わる。女が同等に扱われるのが本当に嫌だったんだな
これは神宮司が勝ったな。
ふふ、いい気味だ。女を見下すから罰が当たったのよ。
「――――検討しているだけだろッ!そんな事する必要ねえんだよッ!!」
「――必要だから検討しているんでしょう!BETAとの戦いは人類全体の問題なのよ!!」
そうだ、もっと言ってやれ
「当然男達の問題だけじゃないわ。もう女だって戦わなくちゃいけない時代なの!」
欧州では女性を編成した戦術機中隊が存在する
日本もそれを見習うべき時が来たのだ。
だから私と都はここにいるんだ。神宮司も同じだ。
自分に出来る事なら何かを成し遂げて軍隊に身を置いているんだ!
だが、新井は見下した態度を取りつつ不敵な笑みを浮かび言い放った
「……流石志願兵様だぜ。随分とご立派な事だな?!」
「別に。でも、男というだけで女より優れていると信じているあんたよりは、よっぽどまともでしょうけど」
「なにい……!?…お前はそんなに戦争が好きなのかよ!?」
何も知らない癖によく言う
「―――そんなもの好きな訳ないでしょう。分かった風な事言わないで!」
「じゃあ何だってんだ、ええッ?お得意の根拠っていうヤツを言ってみろよ」
これは流石に呆れた
いい加減にしてほしい
神宮司は怒りを露にし言葉をぶつける
「――なんであんたなんかに話さなきゃならないのよ。いい加減にして」
そう言うと新井がまた見下す態度を取り不敵な笑みを浮かびながら言い放った
「ふん………偉そうな事言っても結局それかよ。どうせ根拠なんてねえんだろ!?」
ッ!
「徴兵されて嫌々ここに来た奴とは根本的に違うのよ!あんたみたいな志の低い男と一緒にしないでよ!!」
神宮司がそういった後、新井は睨み付ける
「―――てめぇ……」
静観を決め込んでいた周囲の連中が色めき立つ
だが誰も新井を止めようとしなかった……筈だった。
ここにいる殆どの訓練兵が徴兵でここに来た者達だ。神宮司の言葉は彼らへの侮辱にも等しかったに違いない。
周囲に誤解されようとも、華太は関係なかった。
都は華太を静止する
これは神宮司本人の問題だ。下手に介入したらややこしくなる
「また頭に血が上ったのね。そんな事じゃ、幾ら訓練校の成績が優秀でも無駄死にするわよ?」
「ッ……」
自分の台詞を返されたのがよっぽど悔しいだろう。
新井の顔が更に赤くなる。
「教官の言った通り、あんたみたいな短絡思考の人間が隊にいたら、いつか誰かを殺す事になるんでしょうね」
「……女だから殴られねぇと思ってやがるな……」
「あんたこそ、女を殴り返さないとでも思っているみたいね?」
互いに殴りかかろうとした次の瞬間、教官の怒号が響く
「―――楽しいお遊戯はそこまでだ!クソ共ッ!!」
「――!?」
教官の声に新井の腕から力が抜ける。
最悪な場面だ……。
「―――いつまでクソを喰ってる気だウジ虫共ッ!その小汚いケツを蹴り上げられたくなかったら、さっさと演習場に行けッ!」
教官の怒号に、今まで動こうとしなかった周りの連中が、蜘蛛の子を散らすように動き始める
無論私達も含めてだ。
「新井、神宮司、貴様達は訓練後に教官室に来い!言い訳次第ではここから叩きだしてやる……覚悟しておけッ!」
教官は、視線で私達を殺そうと試みているような形相だった。
互いに「了解しましたッ!教官殿」と一言を添え演習場に向かって走っていった。
良いパートナーと巡り合ったな神宮司
私は少しだけ神宮司を羨ましく思った。
バグ大の小峠を出しましたが、本編の彼とオルタ世界の彼は全く異なります。
坂元教官は当然ながらバグ大の坂元の兄貴ですね(-_-;)
ヤクザでなくても狂人さがある事は変わりありませんね
一番関わりたくない衛士として登場させました。
こんな男が教官だなんて信じられませんね……。
訓練兵達の前で公開処刑という形で指切られるのはやり過ぎですね(-_-;)
それでは、皆様にはこの辺りでブラウザバックして頂いて今回は、ここで筆を置かせていただきます。
因みにバグ大キャラの中で一番推しなのは紅林君です
女性キャラは高嶺さんや千恵さんかな( ´艸`)