知恵の女神の祝福   作:小鳥遊 渉

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転生後まではかなり短めですがご容赦を


プロローグⅠ

 

――ああ、まだやりたい事があったのに・・・

 

今際の際に呟いたのは未練だった。

周囲の人からすれば、みんなそうだと口を揃えて言うだろう

誰しも未練を抱かずにこの世を去る人なんているはずがない

むしろ天寿を全うしたのにまだ未練があるのかと呆れる人のが多いかもしれない

 

それでも私はあと少しでいいから生きていたかった。

どんなに苦しくても、なんとか延命してやりたいことがあった。

数ヶ月前寝たきりになった頃、掛かりつけの医師にもう長くないと宣告されて

から、“アレ”をするまでは死ねないと思い、もう少しというところまで生きた

 

しかし、そんな望みは今絶たれようとしている。

もう喋る気力もなく、歳老いて細くなった眼で周りを見渡すと自分の傍に

孫夫婦が佇んでいた。

最期に可愛い曾孫の顔を見たいと思い、孫夫婦の隣を見たが曾孫の姿はなかった。

不思議に思い視界の届く範囲で探してみたがすぐさま諦めた。

思い出してみると曾孫は今年で5歳になる、5歳の子供といえば好奇心旺盛に

辺りの物を観察しているだろう。

ふとそう思い、寝返りを打ち孫夫婦に背を向けると少し離れた自分の机の前で

曾孫を見つけたので、顔を見ようと眼を凝らした。

しかし曾孫は自分に背を向けており私の机で不思議なものでもみたかのように

首を傾げていた。

 

(はて?子供にとって不思議なものなんぞあったかの?)

 

思考することすら億劫になり、記憶の奥底を掘り起こしても曽孫の興味を

引くものがあったのか分からない。

 

(私の机なんて趣味のものしか・・・趣味の・・・もの?)

 

ふと考える、寝たきりになる前“アレ”は処分したか?

――してないはず、忘れているだけかもしれないが、した記憶はない。

孫夫婦に自分の趣味は知られているか?

――知られていない、この事だけは墓場までもっていくつもりだ

子供が不思議な物をみたらまず誰に聞く?

――間違いない、親に聞く。

 

これはまずい

瞬間的にそう思ったが声が出せない、見ることしか出来ない

でも見たくない、聞きたくない。

見られるくらいならもうすこし、私の意識がなくならんうちは何も言わないでくれと

曾孫に祈り、それがきっかけになったのかすぐ後に意識が希薄になっていくのを感じた。

 

(よかった、最期まで私の尊厳は護られた。ありがとう曾孫)

しかし、最期自分の意識が消える瞬間曾孫の声が辺りに響いた。

 

「おかーさん!ひぃじーちゃんの机の下におんなのひとがかいてある箱がいっぱい

 あるー!これなぁにー?」

 

実際には大きな声ではなかったが、一番聞きたくない台詞だった為、それが私の

生涯で聞いた最後の声だった。

 

私の意識は闇に沈んだ。

 

 




遺書にHDDは中身見ないで廃棄処分してほしいって書いてあるのは
俺だけじゃないと信じたい
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