知恵の女神の祝福   作:小鳥遊 渉

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もうちょっとだけプロローグ
ある意味残酷な描写が含まれますので
男性の方は注意して閲覧ください


プロローグⅡ

気が付いたら真っ暗な空間に立っていた

「あれ?私死んだ・・・よな?」

そう呟き、自分の脳内を探る、すると直近の記憶を鮮明に思い出してきた

 

今際の際に孫夫婦が立ち会ってくれたこと

自分の5歳になる可愛い曾孫の顔

そして“アレ”をすることができなかった未練

曾孫に墓までもって行くつもりだった趣味を最後の最期で孫夫婦に

バラされたことまで

 

そこまで思い出して私はその場に頭を抱えて蹲った

「いらん事思い出した、ちくしょう・・・」

ただただ真っ暗なだけの空間に独り言を呟く

自分の台詞が何もない空間にエコーが掛かったように耳に響いた。

 

とりあえずここがどこなのかを把握しようと、立ち上がり目の前に手を

突き出してみたが透明な壁のようなものに当たり、前に進むことはできなかった。

「どうなって・・・いや、ここどこだろう?」

改めて周囲を見渡してもただの暗闇にしか見えない、はずだった

しかし私が後ろを振り向くと小さな光が遥か遠くに見えた。

「あれは、なんだろう・・・行ってみるか」

呟くが早いか、私は吸い寄せられるように歩き出した

 

――それからどれくらい歩いただろうか、歩けど歩けど光は近づかない

半ば意地になって小さな光を追い求めていた時、不意に頭の中に声が響いた

 

『そっちに行ったら普通に転生しちゃうよ?』

 

急に知らない女性の声を聴き、驚いて振り向くも姿は見えず

そこにはただの暗闇が広がっていただけだった

 

「誰かいるんですか?」

誰もいないはずの空間に自分の声が響く、気のせいかと思った矢先

また同じ人物の声が頭の中に響き渡る

 

『どこをみてるの?こっちこっち、上上』

 

不振に思い、言われるがまま上を見てみると・・・

女性の人影・・・ではなく、純白のパンツが浮いていた。

 

「は?え?あれ?」

予想外すぎて上手く言葉を紡げない。

 

『何呆けてるの?わからないことがあるんでしょう?なんでも答えるよ』

また脳内に直接声が響くも、私は呆然と見つめ続ける事しかできなかった

・・・いや、それ以外にも一つだけできた、いやできてしまった

「あの・・・パンツ、モロ見えですよ?」

気が付いたときにはそう話しかけていた。

 

しばらくの間沈黙が続き、また頭の中に声が響く

『白いパンツは嫌い?』

「大好きです!・・・じゃなくてその反応はどうかと」

反射的に応えてしまった為、無駄に大人の対応を繰り広げてしまった。

 

『キミやっぱり面白いね、ボクと趣味が同じだけあるよ』

私の趣味を知っている?しかも同じ趣味・・・だと?

自分の人生を振り返るも、同じ趣味で私の趣味を知っている人は

いないはず、そう考えるも一人だけ該当していることを思い出してきた

 

それは今ではもう70年近く前になるだろうか

私が若いころ勤めていたとあるIT企業に派遣されてきた

ギリシャ人の女性だった。

私が教育担当者だったのが印象に残っている、最初の頃は言葉の壁が厚く

あまり効率的に教えられなかったことを悔やんでいたが

彼女が日本語を覚えてからは誰もが驚くような速度で研修が進み

同僚に驚かれたところまでは思い出した。

 

そういえば彼女とはプライベートでの付き合いもあり

趣味が同じ事をどこからか嗅ぎ付けたのか

休日には双方の家に押しかけ、いろいろと話し合ったのを覚えている。

 

『そうそう、あったよねーそんなこと』

思い出すうちに、そういえば彼女もパンツ見られたくらいでは

動揺せず感想を聞いてくることもあったなと納得していた

 

そこまで思い出して思い立つ

私は死んだのでは?と

『うん、現世では亡くなったね。ご愁傷様です』

思考に間髪入れずお悔やみの言葉を返されるも、ありがとうございますと返した

そこでおかしい事にようやく気付く。

私は言葉を発していないはず、もしかして思考を読み取る能力でもあるのではと思い

話かけてみることにした。

『お、さすがにわかるかい?ボクはキミの思考を読み取って話してるよ。楽だからね』

直後また頭の中に声が響く。

どうやら話しかける時は直接声に出すより思考したほうがはやいみたいだ

とりあえず、今現在気になっていることを思考する。

(ここはどこですか?地獄?っていうかあなたは誰?まさか昔あの会社であった同趣味の人?)

色々なことを考える、全て自分で考えてもわからないことばかりだ

 

『よし、わかった。一つ一つ答えていくよ。まずここは地獄じゃない天国でもない、冥界の図書館だよ。そしてボクはキミの言うとおりキミの人生で唯一の同趣味の人で正解。他に聞きたいことは?』

(冥界の図書館?というか私は死んだはずですよね?なんでここに?)

『冥界の図書館っていうのは、生物の一生が綴られている本が格納されているところだよ。キミの一生も一冊の本になっている。もちろん最初から中身が決まっているのではなく、選択した時に勝手に綴られていくんだけどね。ほら未来は誰にもわからないっていうじゃない?あれホントなんだよね。神様にだってわからないことくらいあるよ。あとキミは確かに死んだ、なんでここにって・・・趣味を共有できる人と久々に再会したんだし、転生前にお話くらいしたいからね』

 

つまり、私は彼女に呼ばれたってことか

ん?今の話に気になる点が・・・転生?

(転生ってこのまま?輪廻転生って順番待ちとか人の次は畜生道とかってあるんじゃ?)

『キミの転生はこのままってわけじゃないけどね、輪廻転生に順番待ちなんてあるわけないじゃないか、そんなのあったらこの冥界は魂であふれてしまうよ』

「私は他と違った転生でもするんですか?」

反射的に聞いてしまっていた。普通に転生できるならそれに越したことはないだろうと

それに現世に転生すればまた同じ趣味になれるかもしれないという希望もあった。

 

そこで思考が阻まれるように声が響いた

『キミ自分が死んだ後どうなったか知らないだろうから教えてあげるけど、というかこれがキミをこのまま転生させない理由でもあるんだけどさ。キミ死ぬ間際に曾孫に趣味を暴かれたのを覚えてるよね?』

聞かれてすぐに頷いた。あまりに印象的であったため死んでも忘れられない

『あの後孫夫婦が慌てて曾孫から箱を奪おうとしたとき、キミの足に躓いて・・・その、男の象徴を膝で思いっきり押しつぶしちゃったのよ』

 

聞いた瞬間身がすくみあがった。が、なおも話は続く

 

『あの瞬間ボクは主神と一緒に見てたんだけど、主神の目から同情の涙があふれ出てね、惨めで可哀想すぎるから、望むものをあげて転生させてやってほしいって言われたんだ。せめて前世のトラウマが消えるまではって事で記憶もそのままにね』

(普通に転生させて忘却させたほうが楽なのでは?)

そう問いかけてはみたものの乗り気じゃないようで

『トラウマってのは脳じゃなくて魂に刻まれるものだから転生させても無駄なんだよね、ちょっとしたきっかけで追体験しちゃうから。また苦しみを、今度は痛みまで思い出しちゃうけどそれでよければ普通の転生で・・・、でも魂に刻まれたままだから永遠に苦しむことになるからお勧めしないよ』

聞きたくなかった答えが返ってきた

ここでゴネても仕方がないと思い、普通じゃない転生でお願いしますと答えた。

 

『よし、それじゃ色々説明するよ。トラウマは刻まれたままだからそれがあっても余りある楽しい人生を送ってもらいたい。それとキミは現世でボクに優しくしてくれたから色もつけちゃおう』

 

そう彼女が言った瞬間、私は眩い光に包まれた。

 

 




書いてる本人も主人公と同じく身が竦み上がりました
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