ヒーローになりたい。
そんなことを思ったことがある人は、案外たくさんいるんじゃないだろうか。かっよくなりたいから。人気者になりたいから。モテたいから。そんな単純な理由から思った人もいるだろう。
また、本当に助けたい大切な人がいる。目の前で大切な人が事故にあった。そのような経験から、ヒーローのような力があればと願う人だっているかもしれない。
理由は千差万別だが、ヒーローのような勇敢な戦士になりたいと思ったことがある人はたくさんいると思う。僕もその一人だ。ヒーローに憧れていた。
「誰かを助けられる人になりなさい。」
母が言っていた言葉だ。僕は幼い頃に病気で母を亡くしたため、母の記憶はほとんどない。だが、そんな朧気な記憶の中でも、母がこう言っていたことははっきりと覚えている。
母が亡くなったあと、僕は母が言った「誰かを助けられる人」とはどんな人なのかを必死に考えた。まだ幼かった僕の頭の中に浮かんだのは、当時テレビで見ていたヒーローだった。僕がヒーローに憧れたのは、それがきっかけだった。
僕は大好きだった母の教えを、守り抜こうと強く誓った。現実には人を襲う怪物もいないし、特別な力もない。だから僕は、誰かに意地悪をされている友達や、暴力を振るわれている友達がいたら守ろうと考えた。そしたら、ヒーローのようになれる。母の言っていた「誰かを助けられる人」になれる。そう考えていた。
しかし、現実はそう上手くいかない。僕は何か特別な才能があったわけでもなく、腕っ節も強くなかった。むしろ弱かった。オマケにドジだ。そんな僕が幼稚園や小学校のクラスのガキ大将たちを相手に、勝てるわけがない。幼稚園の頃も、小学生の頃も、いじめられていた子を守ろうと庇ったまではいいものの、結局いつも僕はガキ大将たちに反抗できず、ただやられることしか出来なかった。
そんなことを繰り返していく内に、僕は自分のことが嫌いになっていった。
そんな僕が小学四年生になったばかりの頃、公園で同い年ぐらいの他校の男の子が、2人の男の子にいじめられているのを見た。
助けないと!、そう思ったが足が竦んだ。結局僕が出ていっても、やられてしまうだけだ…それでも、ヒーローのようになりたい、母の言っていた「誰かを助けられる人」になりたい。その一心で、勇気を振り絞っていじめられている男の子を庇うように立った。
「いっ、いじめは!よく、ないと思います…」
もっと力強く、威勢のいい言葉を発しようと思ったが、いざ知らないいじめっ子を前にすると声が段々としりすぼみになってしまった。
「あぁん?なんだよお前!こいつとなんかカンケーあるのかよ!」
体が大きく、まさにガキ大将といったような見た目のいじめっ子が威勢よく怒鳴ってきたため、僕は更に萎縮してしまう。
「いっ、いや…ないけど…」
「だろうね。アイツもう逃げてしまってるし。」
もう一人のヒョロっとしたメガネをかけたいじめっ子が、後ろを指さして嘲笑まじりに言ってきたのでそっちの方を見てみると、さっきまでいじめられていた子がいなくなっていた。
うそでしょ…あの子逃げたの!?いやまぁそりゃ逃げるかもしれないけどさぁ…うぅ…まずい、どうしよ!?
内心そう怖気付いていると、太った方のいじめっ子が胸ぐらを掴んでくる。
「てめぇのせいでアイツ逃げちまったじゃねぇか!邪魔しやがって…このぉ!」
そう怒鳴り、いじめっ子が僕を殴ろうと手を振りあげた時だった。
「こらぁー!そんなことしちゃダメでしょ!」
クリっとした紫色の瞳で、オレンジ色の髪をした同い年ぐらいの女の子が、そう叫びながら僕の前に立った。
あっ、確かこの子、今年から同じクラスになった女の子だ…確か名前は、澁谷、かのんさん…?
「また邪魔者かよ?邪魔だどっか行け!」
澁谷さんはそう怒鳴ってくるいじめっ子に臆することなく、むしろより強気に返す。
「君たちこそ逃げた方がいいんじゃない?」
腰に手を当てて自信満々にそう言った彼女に、いじめっ子二人はもちろん、僕も疑問符を浮かべる。正直言って、彼女が喧嘩が強いようには見えない。しかも相手は男の子で2人組。そんな相手に、どうしてここまで自信満々なんだろうか。その疑問は、彼女が発した次の言葉でわかった。
「君たち、隣町の小学校の子たちでしょ?私、さっきその小学校の先生に電話したよ!この公園で悪いことしてる子がいますって!」
なるほど。確かに、その手は小学生にはとても有効な手かもしれない。小学生だと、まだ先生に怒られるのは怖いと感じる子が大半だろう。
「なっ、なにぃ!?」
「くそー!おっ、覚えてろー!」
案の定、いじめっ子二人は逃げていった。
「全くもう…」
逃げていくいじめっ子たちを呆れたように見て、ため息をついた澁谷さん。
この時の僕の中には、様々な感情が渦巻いていた。自分一人じゃ何も出来なかった悔しさ。助けてもらったことへの安堵。結局、自分じゃ母の言うような人にはなれないのか、という悲しみ。
だが、そんなのがどうでも良いと感じるくらい、二つの感情が僕の心を大きく支配していた。
「大丈夫?」
夕日に照らされながら、尻もちをついている僕に手を差し出して微笑んだ彼女、澁谷かのんさんに僕は見惚れていた。ヒーローという抽象的存在に憧れていた僕だったが、ここでそれが変わったのだ。思えば澁谷さんは、クラスでもよく友達の力になっていた。些細なことでも困っている友達がいたら助けていた。きっと彼女のような人が、母の言った「誰かを助けられる人」なんじゃないのか。そう思った。
僕は澁谷さんに、憧れたのだ。
「君、同じクラスの子だよね!」
「うっ、うん…助けてくれてありがとう。僕は
僕はぺこりと頭を下げ、そう名乗った。
「私は澁谷かのん!よろしくね!」
眩しく見えるほどの綺麗な笑顔で、そう名乗った彼女。そんな彼女の笑顔に、僕は釘付けになっていた。
この日、僕は彼女に、恋をしたんだ。
以上、プロローグでした。いかがでしたか?
ということで、はじめましての方ははじめまして!知ってくださっている方はお久しぶりです!シーチです。
この度、ラブライブ!スーパースター!!を題材とした作品、『ヒーローを夢見る少年はヒロインに助けられる』を連載することにいたしました。澁谷かのんちゃんがメインヒロインの作品となっております。この後の第一話からも少しオリジナルエピソードが続きますが、後々スーパースターのアニメに沿った話も書いていく予定で、他のLiella!のメンバーも登場します。
そしてもう一つ、長らく連載が止まっている『μ'sと仮面ライダーの物語』について気になっている方もいらっしゃるかもしれないので、その件に関しては後日活動報告に記載する予定です。よろしければ、そちらもご一読いただけると幸いです。
では、今回はこの辺で。プロローグを読んでくださりありがとうございました!お気に入り登録、評価や感想など是非よろしくお願いします。
次回、第一話はこのあとすぐの投稿予定となっております!是非ご覧ください!
※このプロローグと第一話は、こちらの手違いで一度削除してしまったため、もう一度投稿いたしました。大変申し訳ありません。特にお気に入り登録してくださった方、本当に申し訳ありません。