ヒーローを夢見る少年はヒロインに助けられる   作:シーチ

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第五話 芽生えた想い

 

「ああああぁぁぁぁ…恥ずかしい…」

 

僕、望月陽翔は自室のベッドで悶えていた。その理由は、昨日のかのんちゃんが家に来た件にある。

 

『僕はかのんちゃんの全部が好き。お化けが苦手なかのんちゃんも、高いところが嫌いなかのんちゃんも、ハンバーグが好きなかのんちゃんも、普段のちょっと内気なかのんちゃんも、芯が強いかのんちゃんも、その全部が大好きだよ!』

 

『それでも、僕はかのんちゃんが好きだよ。』

 

『それは悲しいけど、それでも好きだよ。』

 

 

「あんなの告白してるようなものじゃん…」

 

昨日はかのんちゃんに元気になってほしいって必死で思ったことをそのまま口にしたが、あんなに好き好き言っていたらただの告白…いや、下手したらプロポーズだ。まぁ、その気持ちは嘘じゃないんだけど…

 

「あぁぁぁ…下手したらかのんちゃんに好きだってバレたかも………いや、ないか。かのんちゃんだもんね。」

 

僕はつい1人でそう納得してしまった。

 

かのんちゃんは何故だか知らないが、恋愛面に関してはとことん鈍感だ。ラブコメによくある鈍感主人公なんじゃないか、そう思ってしまうくらいに。

 

ちーちゃんに聞いたところ、僕のかのんちゃんへの気持ちは気づかない方がおかしいほどバレバレらしい。だが、かのんちゃんはそれに気づく素振りも見せたことがない。

 

「はぁ…だとしても恥ずかしい…今度かのんちゃんに会った時、まともに話せる自信がない…」

 

枕に顔を埋めてなんとかあのことを忘れようとする。そんな時、僕のスマホに電話がかかってきた。

 

「もしもし…」

 

誰からかも気にする余裕がないまま電話に出た僕は、ボソッとした低い声で答えた。

 

『うぃっすー。ってどうしたの?なんかすごい声だね。』

 

どうやら電話の相手はちーちゃんだったようだ。

 

「ちーちゃん…それがさぁ…」

 

僕は事の顛末を説明した。それを聞いたちーちゃんは電話越しに爆笑していた。

 

『あははっ!流石は陽翔だね〜、そんなアツアツな愛の告白をしたなんてねー。でも、陽翔の想像通りかのんちゃんは気づいてないと思うから安心していいんじゃない?かのんちゃんの鈍感レベルを打ち破るには、真正面からちゃんとした告白をしないとダメだよ。』

 

「だよねー…今回ばかりはその鈍感さに救われたよ…」

 

『まあでも、ひとまず解決したようで安心したよ!』

 

ほんとにちーちゃんの言う通りだ。昨日、帰る時のかのんちゃんの表情は、来た時と比べると大分晴れていた。もちろん音楽科に落ちたという事実は変えられないため、まだ辛いしたくさん悩んでいると思う。でも、昨日僕やちーちゃんに胸の内を吐き出したかのんちゃんは、少しずつ元気になっていってくれるだろう。

 

『ところで、これからかのんちゃん家で会う約束してるけど、陽翔も来る?』

 

「行きたいけど、今かのんちゃんとまともに話せる自信ない…ちょっと心の準備してから行くよ。」

 

僕がそう答えると、ちーちゃんは再び笑いだした。

 

『わかった。じゃあ先行ってるね!』

 

笑い混じりにそう言って、ちーちゃんは電話を切った。

 

「はぁ…かのんちゃんの顔、見れるかな…?」

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

「うぃーっす、かのんちゃん!」

 

私、嵐千砂都はかのんちゃんの部屋の扉を開け、元気よくいつもの挨拶をした。

 

「あっ、ちぃちゃん!」

 

そう私の名前を呼んだかのんちゃんは、昨日より顔色が良い。さっきかのんちゃんのお母さんに会った時も、昨日私と陽翔に会ってからのかのんちゃんは、大分いつも通りのかのんちゃんに戻っていたと言っていた。それでもやっぱり受験の失敗は引きずっているみたいで、いつもより家族にツンケンしていると言ってたけど…

 

まぁ、何はともあれかのんちゃんが元の様子に近づいていることに安心していると、かのんちゃんは私の方を見て突然不安げな表情になった。

 

「かのんちゃん…?どうしたの?」

 

「はるくんは来てないの…?」

 

かのんちゃんはまるで捨てられた子犬のような目をして、震えた声でそう聞いてきた。

 

「陽翔?陽翔ならちょっと遅れるけど来るって言ってたよ。」

 

私がそう答えると、かのんちゃんはパァっと一気に笑顔になった。

 

えっ?何その反応?今までにも私だけで遊びに来たことだってたくさんあったけど、こんな反応は初めてだ。

 

「かのんちゃん、どうしたの?」

 

「えっ?何が?」

 

そう惚けたように聞き返してくるかのんちゃん。

 

「いや、なんか変だよ?」

 

再びそう聞くが、「えっ?なんでもないよー。」と答えてかのんちゃんは笑った。大体こういう時のかのんちゃんは、いくら聞いても答えてくれない。長年幼なじみをやっていると、こういうことは徐々に分かってくるのだ。

 

しょうがない…

 

「ふーん…」

 

私はそうとだけ言って、あたかもその話題に興味がなくなったかのような反応をした。そして私は、かのんちゃんの部屋の窓から外を見て一言。

 

「あっ、陽翔。」

 

「えぇっ!?」

 

私が陽翔の名前を口にした途端、驚きの声を上げたかのんちゃんは手鏡を取り出して前髪を直し始めた。

 

「やっぱりかのんちゃん、変だよね?」

 

私が少し強めに聞くと、かのんちゃんはハッとして固まった。

 

「ちなみに、まだ陽翔は来てないよ。」

 

「ちっ、ちぃちゃん!?嘘ついたの!?」

 

「ごめんね。でも、こうでもしないと答えてくれないでしょ?」

 

私がそう言うと、図星だったようでかのんちゃんは「うぅ…」と俯いた。

 

「それで、どうしたの?」

 

すると、かのんちゃんはようやく小さな声で話し始めた。

 

「わからないの…」

 

「えっ?」

 

「私にも、わからないの…昨日、はるくんの家から帰ってきてから、どうしてかわからないけど気がつけばはるくんのことばかり考えてるの…それに、はるくんのこと考えると、すっごくドキドキして胸がキューってなるの…」

 

頬を赤く染めて、かのんちゃんは言った。

 

うわー…なにこれラブコメのヒロインの典型的なやつじゃん。逆になんでそれが恋だって気づかないんだろう。ドキドキして胸がキューってするなんて、恋ぐらいだろうに…まぁ、私も経験ないんだけど。

 

「はぁ…」

 

まさかここまで恋愛に対して鈍感だったとは…そう思い、私は思わずため息をついた。

 

「あのね、かのんちゃん。それは恋、だよ。」

 

「こい…?・・・何言ってるのちぃちゃん、私は人間だよ。」

 

あははー、と乾いた笑い声とともにそう言ったかのんちゃん。

 

「それは鯉ね。」

 

そんな惚けたかのんちゃんに私は即座にツッコミを入れる。

 

「えっ?んー…あっ、私そんなに特徴ないよ?どちらかというと薄いと思うけど…」

 

「それは濃い。別にかのんちゃんの性格の話してないよ!」

 

「うーん…それじゃあ、もしかして私、ちぃちゃんになにかしちゃった?だとしたらごめんね!わざとやったつもりなんてないよ!」

 

「それは故意!無理ありすぎるよ!?」

 

最後の『故意』は本当に無理がある。よく私もツッコめたなぁ…

 

「あーもうっ、大喜利やってるんじゃないんだよ!?恋だよ恋!ラブ!」

 

流石に謎の大喜利大会のツッコミにも疲れた私は、そう中断させた。

 

「恋?ラブ?…………っ!」

 

ようやく私の言葉の意味を理解したのか、かのんちゃんの顔はみるみると赤くなっていく。

 

それにしても、まさかかのんちゃんがこんなにも乙女な反応を見せるとは…

 

今まで陽翔がかのんちゃんを好きなことは知っていたし、かのんちゃんと接していると事ある事に顔を真っ赤にしたり動揺したり、かのんちゃんが好きなんだとバレバレな反応を示していた。しかし、かのんちゃんの方はそれに全く気づく素振りも見せなかった。そもそもかのんちゃんの恋愛話なんて聞いたことなかったけど、この感じを見るときっとこれが初恋なんだろう。

 

「もしかしてかのんちゃん、初恋…?」

 

私がそう聞くと、かのんちゃんは真っ赤な顔のままゆっくりと頷いた。

 

なにこのかのんちゃんすっごく可愛い…!?普段のかのんちゃんももちろん可愛いけどこれはやばい。こんなに乙女でしおらしくなったかのんちゃんは、最早言葉では表せないほどの可愛さだ。なるほど、これがギャップ萌えってやつなんだね…今の状態のかのんちゃんを、陽翔が見たらやばいだろうな…

 

「はるくんのことを考えるととってもドキドキして胸が苦しくなるのに、とっても温かい気分になる。そっか…これが恋なんだ。ねぇ、ちぃちゃん。私、これからどうすればいいんだろう…?」

 

「えっ?うーん…私も誰かを好きになったことないからなぁ…」

 

実を言うと、私も恋というものを経験したことがない。まあでも、これでかのんちゃんと陽翔は両思いってわけだし、心配することなんてないと思うけど…それを私が言っちゃうわけにはいかないよね。

 

「とりあえず、かのんちゃんのやりたいようにやればいいと思うよ。かのんちゃんと陽翔は今でも十分仲がいいんだし、何も心配することないよ!」

 

「うん…ありがとう、ちぃちゃん。」

 

まぁ、私としても折角仲直りしたかのんちゃんと陽翔がまたギクシャクするなんて嫌だ。

 

それにしても、もう一つ気になることがある。私はそれを、かのんちゃん本人に聞いてみることにした。

 

「ところで、何がきっかけで陽翔を好きになったの?」

 

そう、陽翔を好きになったきっかけ。陽翔はずっとかのんちゃんが好きだった。陽翔は元からいろんな人に対して優しさを持ってるけど、想い人であるかのんちゃんに対してはそれがより顕著に出ていた。そのため、今までだってかのんちゃんが陽翔を好きになってもおかしくない要素はたくさんあった。ここに来て好きだと思ったのは、一体何がきっかけなんだろう。

 

「きっかけは、私にもよくわからないな…でも、昨日私が家に行った時に、はるくんが私にかけてくれた言葉や私を見つめてくれた眼差し、私が抱きついた時に感じたはるくんの温もり。気づいたらその全てにドキドキしていて、はるくんのことで頭がいっぱいになってたの。そしたら、急に今までのはるくんの優しいところとか、カッコイイところとか、はるくんの全部を思い出して、とってもドキドキし出したんだ…」

 

恋というものを経験したことがない私にとって、それは完全に未知の世界だ。でも、これだけはわかる。きっとかのんちゃんの陽翔へのこの気持ちは、音楽科の受験に失敗して空いてしまったかのんちゃんの心の穴を段々と埋めてくれるだろう。そしていつか、かのんちゃんがまた歌うキッカケになってくれる。この時の私は、何故か強くそう思えた。

 

それにしても、確か陽翔も昨日のことを思い出して今日はかのんちゃんとまともに話せる自信がないと言っていた。大好きなかのんちゃんに会うのに、わざわざ心の準備をするとか言っていたぐらいだからよっぽどだろう。そして、陽翔に恋心を抱いたかのんちゃんも、この様子を見るといつも通りとはいかないと思う。

 

あはは…これは、大変なことになりそうだな…

 

 

 

私の予想通り、本当に大変なことになった。陽翔が来る前もソワソワしていたかのんちゃんだったが、陽翔が来てからはそれはそれはもう落ち着きがなかった。

 

「お邪魔します。」

 

「あっ、陽翔!うぃっす!」

 

かのんちゃんの部屋に入ってきた陽翔に、私はそう声をかけた。

 

「あっ、ちーちゃん、うぃっす!かっ、かのんちゃんもうぃっす!」

 

いつも通り私のを真似た挨拶を返してくれた陽翔は、いつもよりは少し固いがかのんちゃんにも声をかけた。まだ昨日のことが恥ずかしいと言えば恥ずかしいんだろうが、流石は長年かのんちゃんに想いを寄せてる陽翔。もうその恥ずかしさを乗り越えつつある。

 

「はっ、ははは陽翔くんっ!ここここんにちは!ほんっ、本日はお日柄もよく…」

 

それに対して恋愛初心者のかのんちゃんは、明らかにテンパっている。

 

「かっ、かのんちゃん…?どうしたの?」

 

この様子に、流石に陽翔も戸惑っていた。

 

 

「おっ、お待たせ〜、お茶持ってき…うわっ!?」

 

また、かのんちゃんがお盆の上に乗せてグラスに入った冷たいお茶を持って来てくれた時には、部屋に入った瞬間に足を絡ませて躓いてしまった。

 

「かのんちゃん!?」

 

それにいち早く気づいた陽翔は咄嗟にかのんちゃんの体を支えた。飲み物はこぼれてしまったが、そのお陰でかのんちゃんとグラスは無事だった。が、問題はその後。

 

「っ!?」

 

陽翔は倒れかけたかのんちゃんを抱きかかえて支えたため、2人は見つめあって抱き合っているかのような体制になったのだ。まるで王子様とお姫様のように。

 

「あっ、ごっごめん!かのんちゃん、大丈夫?」

 

陽翔は少し頬を赤くして、照れながらそう聞いた。それに対し、かのんちゃんは…

 

「あっ…いや…その…ごっ、ごめんなさーい!!」

 

顔を真っ赤にして、そう叫びながら部屋から出ていってしまった。

 

「かっ、かのんちゃん!?」

 

私はかのんちゃんを呼び止めたが、かのんちゃんはドタドタとカフェの方まで行ってしまった。

 

はぁ…まさかあそこまでとは…

 

私は内心そう感じながら陽翔の方に振り返ると、こっちはこっちで大変なことになっていた。

 

「げっ…はっ、陽翔…?」

 

「は…はは…」

 

陽翔はまるで魂が抜けているかのように精気を失ってしまっていた。なんだか今の陽翔は、すぐに飛んでいっちゃいそうなペラペラの紙一枚に見えてしまう。

 

「だっ、大丈夫…?」

 

「ぢっ、ぢーぢゃん!」

 

涙を流し、鼻が詰まったため濁音まじりに私の名前を呼んだ陽翔は、私に泣きついてくる。

 

「僕、なにかしちゃったのかなぁ…」

 

いやまぁ、何かしたと言えばしたんだけど…

 

「ほっ、ほらっ!かのんちゃん、昨日のこととかあってまだちょっと陽翔と話すのが恥ずかしいんじゃないかな?」

 

内心苦笑いしつつも私はそう誤魔化す。

 

「確かに…うーん、そうなのかな…?」

 

「うん!きっとそうだよ!」

 

私はそう何とか誤魔化し、陽翔を納得させた。

 

 

その後、なんとかかのんちゃんも戻ってきたが、結局この日のかのんちゃんと陽翔はお互いにお互いを意識し合ってなんとも言えない空気になっていた。

 

まぁ、これもすぐ解決すると思う。元から陽翔はかのんちゃんが好きだったわけだし、陽翔はいつの間にか両思いになってるなんて知らない。かのんちゃんもかのんちゃんで、好きだとと意識しだしたから変に気にしているだけで、すぐに元のように陽翔と接するようになるだろう。

 

私の予想通り、二日もすれば二人は元通りに戻っていた。




第五話でした。いかがでしたか?

まず初めに、お気に入り登録してくださった方々、誠にありがとうございます!まだプロローグを投稿して1日ですが、お気に入り登録をしてくださっている方々がいてとてもモチベーションに繋がりました。本当にありがとうございます!

そして今回、かのんちゃんも陽翔を好きになり2人は両思いとなりましたが、もちろん本人たちはお互いが好き同士だなんて知りません。今後はそんな2人のもどかしい恋模様を描いていくわけですが…

ここで一つ、今後の展開について初のアンケートを取りたいと思います!何に関してかというと、この作品の「サブヒロインについて」です。このままかのんちゃんとの恋愛模様を描くのでもいいんですが、折角なら恋のライバル?的な感じで、もう一人ぐらいヒロインがいても展開的にも面白いかなと思いまして…あっ、そんなギスギスした感じにはならないと思うのでご安心ください!笑

ということで、サブヒロインの有無についてアンケートを取りたいと思います!基本的にはサブヒロインはLiella!のメンバーから考えていますが、他にも候補がいればそちらの方も検討します。最終的にはハーレムではなく、ちゃんと一人に絞る予定です。

では今回はこの辺で…第五話も読んでいただきありがとうございます!お気に入り登録、評価や感想なども是非よろしくお願いします!

ではまた次回、第六話も是非ご覧ください!直感など理由はなんでもいいので、アンケートの方も気軽によろしくお願いします!

スーパースター最終回、めっちゃ面白かった…!

サブヒロインについて

  • ヒロインはこのままかのんちゃん1人で!
  • サブヒロインも1人ぐらいいてほしい!
  • 2人以上サブヒロインいてほしい!
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