ヒーローを夢見る少年はヒロインに助けられる   作:シーチ

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第六話 人生初のアルバイト

時は流れ、僕たちは無事に中学校を卒業した。僕は予定通り近くの高校の受験に合格、かのんちゃんも結ヶ丘女子高等学校の普通科の受験を受け、無事に合格した。

 

そして今は春休み。今日は特にこれと言った予定はなく、家でのんびりしようかとも思っていたが…

 

「げっ…何もない…」

 

昼食を何か作ろうと思い冷蔵庫を見てみると、食材がほとんど入っていなかった。

 

ちなみに、僕は炊事洗濯掃除などの基本的な家事は普段からやっている。幼い頃に母が亡くなったため、ずっと父と二人暮らし。父も優しい人だが、そこそこ有名な会社で僕にはよくわからない難しい研究をしているため、とにかく仕事が忙しい。なので小学生の頃から家事のほとんどは僕がやっている。

 

そういえば、最近バタバタしててあんまり買い物行けてなかったっけ…

 

できれば一日中家でまったりしていたかったが仕方ない。そう思い、僕は出かけるために身支度を済ませて家を出た。

 

そうだ。どうせ外に出るなら、昼ごはんはあそこで食べていこう。

 

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

目的のお店についた僕に、定員さんがそう声をかけてくれる。定員さんと言っても、よく知っている人物だが…

 

「あっ、はるさん!お姉ちゃんなら今部屋に…」

 

その定員さんというのは、かのんちゃんの妹の澁谷ありあちゃん。つまり、ここはかのんちゃんのお母さんが営むカフェだ。僕はちょこちょこ、ここでお昼を食べに来ている。

 

「あっ、違うんだ。今日はお昼でも食べようかなって…」

 

「そうなんですね!では、こちらのお席にどうぞ!」

 

今は比較的空いている時間帯のようで、僕は4人がけのテーブル席に案内された。何度もここに来ていて大体のメニューは把握しているため、席についた流れでありあちゃんに注文を伝える。

 

「じゃあ、オムライスとアイスミルクティーをお願いします。」

 

「かしこまりました!少々お待ちください。」

 

そう言って、ありあちゃんはカウンターの中にいるお母さんに注文を伝えにいった。ありあちゃんはこうしてよく店の手伝いをしている。この春中学2年生になるとは思えないほど、とてもしっかりした子だ。

 

 

「お待たせしました!」

 

数分して、ありあちゃんが頼んだオムライスとミルクティーを持ってきてくれた。

 

「ありがとね、ありあちゃん。」

 

「いえ、ごゆっくりどうぞ!」

 

そう言って、ありあちゃんはカウンター席の方に戻っていった。

 

「いただきます。」

 

僕はオムライスを1口スプーンに乗せて頬張った。

 

「ん〜…!」

 

美味しい…!卵がとってもふわふわとろとろしている。ここのオムライスは何度も食べてるが全然飽きない。それからしばらくオムライスを食べ進めていると、店の扉が開き誰かが入ってきた。お客さんかと思い、特に気にしてなかったが…

 

「まんまるー!君の丸は本当に素晴らしいね〜!」

 

かのんちゃんのペットのまんまるに話しかけている聞き覚えのある声に、この内容、これに当てはまる人物は一人しかいないだろう。

 

「ちーちゃん?」

 

僕はそう言って、まんまるがいる方に目をやる。

 

「あっ、陽翔も来てたんだ。うぃっす!」

 

やっぱりちーちゃんだった。

 

「うぃっす!ちーちゃんもお昼ご飯食べに来たの?」

 

「ううん、私はかのんちゃんに借りてた本を返しに来たんだけど…折角だから何か飲んでいこうかな!」

 

そう言って、ちーちゃんはありあちゃんにコーラを注文して僕の正面の席に座った。

 

「あっ、かのんちゃんに着いたって連絡しとかないと…」

 

そう呟き、スマホを操作し出すちーちゃん。そこに、ありあちゃんがちーちゃんの頼んだコーラを持ってきてくれた。

 

「そういえばはるさん、千砂都さん。」

 

ありあちゃんに呼ばれ僕とちーちゃんが顔を上げると、ありあちゃんはぺこりと頭を下げた。

 

「お姉ちゃんのこと、ありがとうございました。2人がいなかったら、お姉ちゃんはもっと落ち込んだままで大変だったと思います。お姉ちゃんを支えてくれて、本当にありがとうございました。」

 

ありあちゃんは本当にかのんちゃんのことを大切に思ってるんだな…

 

僕とちーちゃんはそんなありあちゃんに微笑んで答える。

 

「気にしないで。僕もかのんちゃんに元気でいて欲しいって気持ちは一緒だから。」

 

「私もそうだよ!かのんちゃんには、ずっと元気なかのんちゃんでいて欲しいから!」

 

僕とちーちゃんがそう答えると、ありあちゃんは再び頭を下げた。

 

「お二人とも、本当にありがとうございます!」

 

そう言って、僕が食べ終えたオムライスのお皿を持って、ありあちゃんは戻っていった。

 

「なんかいいなー…あんなに心配してくれる妹がいるなんて。僕兄弟いないから、ああいうの憧れる。」

 

「私も一人っ子だから、その気持ちわかるよ。」

 

僕とちーちゃんはお互い一人っ子だ。そのため、かのんちゃんとありあちゃんの信頼し合える姉妹がいるというのには憧れることがある。

 

「あっ、かのんちゃん!うぃっす!」

 

すると、ちーちゃんの連絡を受けたかのんちゃんが自室からやって来たようで、それに気づいたちーちゃんが声をかけた。

 

「うぃっす!って、はるくんも来てたんだ!」

 

「うん、ちょっとお昼ご飯を食べに来てたんだ。」

 

折角3人集まったので、そのままかのんちゃんはちーちゃんの隣の席に座り、僕たちはそのまま少し話すことにした。ちーちゃんが見つけた丸い物の話だったり、この前見たテレビ番組の話、かのんちゃんのペットのまんまるの面白い話だったりと、毎日のように会っている僕たちだが、集まればこうして会話が尽きることもない。

 

そんなこんなで雑談を続けて30分ほど経った頃、ちーちゃんが時計を見て立ち上がった。

 

「ごめん!私そろそろ帰らないと…」

 

「あっ、そうなんだ…ダンスの練習?」

 

もう帰らないと行けないと言ったちーちゃんに、かのんちゃんがそう聞いた。

 

「ううん、バイトの面接なんだ。」

 

「バイト…?あっ、もしかして前に言ってたたこ焼き屋さんの?」

 

そういえば、ちーちゃんは昔からたこ焼き屋さんで働いてみたいって言っていた。丸いものが好きなちーちゃんは、もちろんたこ焼きも例外ではない。好きな食べ物はたこ焼きだし、昔から完璧な丸いたこ焼きを作るために研究を重ねていた。今では本当に完璧な丸のたこ焼きを作れるようになり、しかもお店のレベルと言ってもいいほどとても美味しい。

 

「うん!結女に入学したら念願のたこ焼き屋さんでバイトしようと思って、とりあえず今から面接受けてくるんだ〜!」

 

「そうなんだ!頑張ってね!」

 

「受かったら食べに行くね!」

 

僕とかのんちゃんはそう言って、ちーちゃんを見送った。

 

「バイトかぁ…」

 

「はるくん、バイトに興味あるの?」

 

ちーちゃんが帰ったあと、僕が呟いた言葉を聞いてかのんちゃんが聞いてきた。

 

「うん、ちょっとね。」

 

「はるくん、何か欲しいものでもあるの?それとも、ちぃちゃんみたいにどこか働いてみたいところがあるとか?」

 

「そういうわけじゃないんだけど、ちょっとした社会経験としてどこかで働いてみたいなって思って…」

 

僕とかのんちゃんがそう話していると、カウンター席の中にいたかのんちゃんのお母さんから声がかかる。

 

「それだったら陽翔くん、うちでバイトしてみない?」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「えぇ!今はありあがよく手伝ってくれてるけど、この子も来年は受験生だしね。丁度夕方とか、一人じゃ大変だと思ってたのよ!そんなにたくさんじゃなくてもいいから、うちに来てくれないかしら?」

 

この提案は僕もしてもとても有難い。初めてのアルバイトだし、やっぱり知っている人がいる店の方が安心する。僕がそう考えていると、正面の席に座っていたかのんちゃんが身を乗り出し、ずいっと顔を近づけてきた。

 

「それいい!はるくん、是非うちでバイトしてよ!」

 

そう凄い勢いで勧めてくるかのんちゃんに驚きはしたものの、僕もここでバイトしてみたいという気持ちになっていたので即返答する。

 

「じゃあ、そうさせてもらおうかな。僕でよければ是非よろしくお願いします!」

 

僕は立ち上がり、そう頭を下げてお願いした。

 

「こちらこそよろしくね!はるくんが来てくれたら心強いわ!はるくん、お家では料理もしてるんでしょ?」

 

「あまり大したものは作れませんが、程々にはできます。」

 

「なら厨房のお仕事でも任せられそうね!じゃあ、高校生になったらよろしく頼むわね!」

 

こうして、僕はかのんちゃんの家で人生初のアルバイトをすることになった。

 

「そういえば、私はるくんの料理食べたことないな…どんなの作るの?」

 

「大したものは作れないけど、基本的なものなら作れるよ。例えば、カレーとかオムライスとか…あと、ハンバーグとか。」

 

「ハンバーグ!?」

 

ハンバーグの名前を出した途端、かのんちゃんの目がキラキラと輝いた。そういえば、かのんちゃんの好物の一つはハンバーグだったな…

 

「へぇ…はるくんハンバーグも作れたんだ…」

 

そう呟いたかのんちゃんは、明らかにうずうずしている。きっと好物のハンバーグの名前を出したせいだろう。

 

「はるくんの作ったハンバーグ、食べてみたいなぁ…」

 

「じゃあ、食べてみる?」

 

「いいの!?」

 

僕がの言葉に、更に目を輝かせたかのんちゃんがそう聞いてきた。

 

「もちろん。かのんちゃんがそんなに食べたそうにしてくれるなら、ハンバーグだってなんだっていくらでも作るよ!」

 

「っ!やったぁ…!ありがと〜、はるくん大好き!!」

 

かのんちゃんは満面の笑みで、僕の手を握りしめて言った。

 

「っ!?」

 

大好き、思わずこの言葉に動揺してしまった。かのんちゃんのこの言葉は、友達とかに対して抱いている大好きだ。僕がかのんちゃんに思っている大好きとは違う。落ち着け、落ち着け僕…

 

「じゃっ、じゃあいつがいい?」

 

僕は昂った気持ちを無理やり落ち着かせてそう聞いた。

 

「私はいつでも大丈夫だよ!」

 

「んー…じゃあできるだけ早い方がいいよね…」

 

こういうのは、時が経つと気持ちも冷めてしまい忘れてしまうこともよくある。本当にハンバーグが大好きなかのんちゃんだからそんなことはないと思うが、だとしても早いに越したことはない。

 

「丁度この後買い出しに行く予定だったし、今日とかどう?あっ、でも、流石にそれは急だよね…」

 

すっかり忘れかけていたが、今日僕が外に出てきた1番の理由は買い出しだ。だから今日材料を買って作るのが1番良いかとも思ったが、流石にそれは急かな…?

 

「ううん!寧ろはるくんの話を聞いてハンバーグの気分になってたからその方がいい!」

 

「ほんと!?じゃあ、今日の夕飯はハンバーグにするね。」

 

「やった!楽しみだなぁ…はるくんのハンバーグ!あっ、一応お母さんに聞いてくるね!」

 

かのんちゃんはそう言って、カウンター席の方にいるお母さんに聞きに行った。といってもすぐそこなので、何となく声は聞こえる。

 

「お母さん!」

 

「はいはい、話なら聞こえてたわよ。行ってもいいけど、陽翔くんに迷惑かけないようにするのよ?」

 

「もー、そんなことわかってるよ!」

 

この間、最近かのんちゃんが反抗期気味だとお母さんは言っていたけど、こうして笑顔で話している姿を見るとやっぱり親子仲がいいなと感じる。

 

微笑ましい家族のやり取りを聞いてホッコリした気分になっていると、僕とかのんちゃんのスマホから同時にメッセージアプリの着信音がなった。2人同時になったということは、きっとちーちゃんから3人のグループにメッセージが届いたんだろう。

 

そう思いメッセージアプリを開くと、案の定ちーちゃんからメッセージが届いていた。『面接合格したよ!』とのメッセージと一緒に、たこ焼きを食べているちーちゃんの自撮り写真が送られてきた。面接が受かった上に大好きなたこ焼きを食べているためか、いつも以上に満面な笑みを浮かべている。

 

このちーちゃんかわいいな…いや、いつもかわいいんだけど。

 

いつもはついかのんちゃんのことばかり可愛いなどと言いがちだが、かのんちゃんと同じくちーちゃんもとても美少女。2人とも学校のマドンナと呼ばれてもおかしくないほど可愛いのだ。

 

そんなことを考えながらちーちゃんに『おめでとう!』とメッセージを返していると、かのんちゃんが席まで戻ってきた。

 

「あっ、かのんちゃん。ちーちゃん、面接受かったって。」

 

「そうなんだ!じゃあ、またちぃちゃんのたこ焼き食べに行きたいね!」

 

ちーちゃんの作るたこ焼きだ。きっと絶品なんだろうなぁ…

 

「そうだ!夕食のハンバーグ、ちぃちゃんも誘ってもいい?」

 

「うん!もちろん!」

 

僕がそう答えると、早速連絡しようとかのんちゃんは3人のグループに『ちぃちゃんおめでとう!今日はるくんの家で晩御飯食べるんだけど、ちぃちゃんもどう?』とメッセージを送った。すると直ぐに既読がつきちーちゃんからメッセージが返ってきたが、どうやら今日は用事があるから行けないとのことだった。

 

来れないなら仕方がない。ちーちゃんはまた次の機会に誘おうとかのんちゃんと話し、僕たちは早速夕飯の買い出しに行くことにした。

 

 

ちなみに、来れないと連絡をもらったすぐ後に、今度はちーちゃんとの個人チャットでメッセージが来た。

 

『せっかくの機会だし、たまにはかのんちゃんと2人っきりで話して距離をつめてきなYO!』

 

ちーちゃん…気持ちは嬉しいけど、こんなこと言われると変に意識して緊張しちゃうよ…

 

ちーちゃんからのメッセージを見て、僕はつい顔を赤くしてしまった。それをかのんちゃんに不審がられてないかと思い、ふと彼女の方を見てみると何故かかのんちゃんもスマホを見て顔を赤くしていた。なんでだったんだろ…?




第六話でした。いかがでしたか?

今回は次回に繋がる話だったので、少し内容的には薄めだったかもしれませんね。ということで次回は陽翔とかのんちゃんのデート回となります!やっとちゃんとした恋愛模様を描けますね!笑

そして前回のアンケートについてですが、皆様ご回答くださりありがとうございます!現在ヒロインはかのんちゃん1人のままという意見と、1人ぐらいサブヒロインがいてもいいという意見がほぼ同率。まさかここまで拮抗するとは思ってなくてビックリしてます。

なので、ここで再アンケートを取らせていただきます!サブヒロインはこの子というのがある方がいらっしゃいましたら大変申し訳ないんですが、もしサブヒロインを作るならこの子かなっていう候補を2名、こちらで絞らせていただきました。その2名とは嵐千砂都ちゃんと平安名すみれちゃんです!

ということで今回は、サブヒロインなし、この2名のどちらか、もしくはこの2名両方というのでアンケートを取らせていただきます。最初は2名両方はなくてもいいかと思っていたんですが、サブヒロインは2人以上という意見もありましたため、念の為入れさせていただきました。皆様、是非アンケートにご協力よろしくお願いします!

ということで今回はこの辺で…第六話も読んでいただき、ありがとうございます!お気に入り登録、評価や感想なども是非よろしくお願いします!アンケートの回答もお願いします!

次回、第七話も是非ご覧ください!

サブヒロインについて(2)

  • ヒロインはかのんちゃん1人のままで!
  • サブヒロインは千砂都ちゃんで!
  • サブヒロインはすみれちゃんで!
  • 千砂都ちゃんとすみれちゃん両方!
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