進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい   作:ちゃっぱ

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幼少期 地下街でのエレンと攻防戦(苦戦しているようだ)
プロローグ


 

 

 

 前世の記憶を持っていることが良いとは限らない。

 知識を持っているということは、つまり幸せだった頃の記憶を持っていると言うに等しい。

 

 

「汚ねえな、クソが」

 

 

 転生したらゴミだらけの地下街にいた。

 周囲の話を聞いて、ここが漫画で見たことのある「進撃の巨人」であり、その中で人類最強と名高い人気キャラクターだったリヴァイ兵長に生まれ変わったのだと気づいた。

 

 でも、ちゃんと記憶を思い出したのは幼少期。

 ケニーから生きるための術を教わった後だった。

 

 そのおかげで子供の身でも戦う術を習い、汚い大人と交流するにはどうすればいいのかも理解している。前世では抵抗感があった暴力すら、必要であれば使うようになった。

 それら全てはケニーのおかげだった。餓死しかけていた俺を救ったのだってあいつが母さんに会いに来てくれたから。

 

 まあ、これから先一人で生きてかなきゃならないし、ケニーに会うのは原作が始まった後。俺が大人になって兵長として活動するようになったらだと思うが……。

 

 

(いやでも、俺は朧気ながらもちゃんと知識を持っている。記憶もある、原作の流れも……大体だけど、覚えている)

 

 

 マーレと言う名の壁外の国。

 そしてパラディ島の真実。始祖ユミルがどういう存在なのか。

 これから先、何が起きてどうやって巨人が滅んでいくのかも分かる。

 

 ただ細かい時系列までは覚えていない。それだけが唯一の気がかりだろうか。

 ただこれから先の絶望的な未来にいろいろ思うことはあるけれど、とりあえず今やるべきことは体を鍛えることだろうかと思った。

 

 

 筋肉は全てを凌駕する。たぶん、きっと。

 人類最強と呼ばれるなら、俺はもっと強くならないといけない。

 地下街にいる人よりも強く。巨人に立ち向かえるほど逞しく。

 

 そして、俺自身重傷を負って足手まといなんかにならないために。

 

 きっと俺の記憶はエレンほど苦しいものじゃないはずだ。

 あいつは全部を知って、これから先の未来を見て苦しんでいく。だから仕方がなかったことをした。

 

 でも俺は、未来のために誰かが死ぬ必要があるとは思えない。

 人はいつか死ぬけれど、エレンが見た未来のために────その通りに動きたいとは思わない。

 

 生まれた時から記憶があったなら、きっと俺は母さんを生かすために必死に動いたはずだ。自分が死ぬような目に遭うことも、あの離れていくケニーの背中を追いかけることだってしたはず。

 

 手遅れになったのは、記憶を思い出すのが遅かったせいだろう。

 

 

 ────もしも叶うなら。

 

 

(エルヴィン、ハンジ。これから先、死ぬであろう仲間たちを生かしたい)

 

 

 彼らに対する感情はまだない。

 だってアニメや漫画で見ただけのキャラクターに思えるのは、死んでほしくないと言うだけのただの自己欲求。

 直接会って交流して、そうしてようやくその人に対する生かしたいという感情が強くなるだけだと思うから。

 

 ────対して、ケニーに対する思いは強い。

 だって俺の血の繋がりのある叔父だ。彼は何も言わなかったけれど、俺は前世の記憶でそれを知った。だから絶対に生かすと決めた。生かしてどっかの酒場で飲み下してろ。そうしていい未来を築いて、いつかこうだったって友人の墓場まで行って話でもすりゃあいい。

 

 

 だから俺は、エレンが突き進む未来を止める。

 斜め上に俺が覚えている限り全員を生かして救ってみせると決めたから。

 

 そのために体を鍛えよう。

 いやまずは部屋の掃除からだろうか。ケニーがいなくなった室内は奴が置いていった酒瓶やらなんやらとたくさんのゴミが存在している。

 

 貰ったナイフだけは綺麗にして使おう。それ以外は……必要ないものは全部処分してちゃんと自室として綺麗にして使おう。

 そう思って俺は濡らした布の欠片を手に動く。

 

 この一歩こそ、これから先の未来の────良い未来に繋げるために。

 

 

 

「駄目ですよ、リヴァイ兵長……いや、今は兵長じゃないか……」

 

「はっ?」

 

 

 

 気が付けば髪を伸ばした男がいた。

 ────何処からやってきたのか。部屋に鍵はかけていたはずなのに。

 

 無表情で重たい感情を目に宿す男。

 何を考えているのか分からない。いや待て。こいつ今俺の事を「リヴァイ兵長」って言ったか?

 

 そうだ。こいつは俺の知る未来のエレンだ。

 

 つまりこいつは俺が何の知識を持っているのかを知っているのだ。

 未来で何かをしたのだろうか。だからまだ幼少期である俺を狙い、始末しようとしているのか。

 

 ってか始祖の力ってそう言うのあったっけ?

 いや話してないだけか? それとも王家たるジークと接触している時間軸か?

 グリシャは確か未来から来たエレンが見えていたはずだったよな。

 いやでもそれは進撃の巨人の力を保有しているから未来のエレンが見えていただけのはず。なら今の俺に未来のエレンを見る力はない筈なのに……。

 

 

(……未来で俺の何かが変わって、ただそれだけで未来のエレンが見える?)

 

 

 よくわからない状況に俺は首を傾ける。

 エレンはそんな俺を捕まえようと動くが、俺はすぐさま避けて部屋の隅へ逃げた。もちろん追い込まれたわけじゃない。子供の身体だから身軽だしエレンに接触しなくても動けるってだけ。人類最強のスペックは伊達じゃない。

 

 

 

「もうわかっているかもしれませんが……未来を変えようとするあなたを止めるために、俺は来ました」

 

 

 

 そう言って俺の頭へと手を伸ばしたエレンに、俺は反射的に避ける。

 記憶を消そうとしたのだろうか。それぐらいこいつなら容易そうなのに……。

 

 

「記憶を消すだけのために、わざわざ俺の元まで来たのか?」

 

「……」

 

 

 彼は何も言わない。ただ俺を見つめているだけだ。

 そうしてしばらく睨み合っていると、彼はただ小さく溜息を吐いた。

 

 

「……リヴァイさん。そんな記憶必要ないでしょう。未来の知識を持っていても意味がない」

 

「意味がないわけないだろ」

 

「リヴァイさん」

 

 

 まるで子供に言い聞かせるように、奴は俺を睨み続ける。

 それでも俺は記憶を失いたくはない。だから逃げることにした。

 

 

 

 

 

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