進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい   作:ちゃっぱ

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第九話、暴挙

 

 

「あの子は放って良かったわけ?」

 

「放置したわけじゃねえ。お前にはまだ聞きたいことがあったからな。その後にちゃんと弁明しに行く」

 

「……やっぱり俺のこと知ってる?」

 

「そうだといったらお前はどうするつもりだ」

 

 

 気がついていないだけで、俺はエレンの何かを見逃していたような気がする。

 エレンは俺を触れた。きっとその気になれば物にも触れられたかもしれない。でもそれに何で気づかなかったのか。あんなに一緒にいたはずなのに。

 

 そういえば、あの漫画でそんな描写あったか?

 

 覚えていないだけかもしれない。

 ……そんなに気にしなくてもいいかもしれないが、何かひっかかるのだ。

 

 いや今はジークと話すのが優先か。

 

 

「お前は誰の敵だ? 俺達か、それともエレンか?」

 

「……ねえ、君本当に幼児なわけ? それとも精神はそのまま? こっわ……」

 

「うるせえ質問してるのは俺だ」

 

「……さぁ、どうだろう」

 

 急に思い詰めたような顔をしてきたジークが自嘲の笑みを浮かべる。

 

 

「もういいや。リヴァイに記憶があるって思って話すから」

 

「なにを?」

 

「俺はもう何もする気がない。エレンが俺の力を使おうが、もうどうでもいいんだ。だからあの時自暴自棄になって穴に飛び込んだかもしれない……まあ、強いて言うならエレンの敵かな」

 

「……今そっちでは何が起きてる?」

 

「エレンが暴走して地ならしが決行されてるんだ」

 

 

 つまり、今のままだと俺はエレンを止めきれないのか。それとも未来が反映されてなくて何も理解しきれないジークが説明してるのか。

 

 ……いや、しかしエレンが始祖ユミルと出会うことが一番最悪へ繋がるルートな気がする。

 原作では俺はその前にエレン達と接触できたか?

 朧気だが、ジークと会うことは出来た記憶がある。その後何処かで負傷して死にかけていたはず。

 

 だから俺は、エレンと会うことが出来なかった。

 

 

(前提条件が駄目なのか?)

 

 

 このままここに、地下街にいていいのか。

 俺は確かに仲間達を助けたい。でも今なら────まだ子供で、始まってもいない今ならやれることがあるんじゃないのか?

 

 

「……ジーク」

 

「なに、リヴァイ? ってかやっぱり俺のこと分かってるんじゃん」

 

「それはどうでもいい。お前に聞きたいことがある」

 

「なんだよ」

 

「ここからマーレに向かうにはどうすればいい? 俺一人で、潜入できると思うか?」

 

「……あり得ないことを言うんじゃないよ、まったく」

 

 

 ブツブツと呟いたジークが、しかしと言う。

 

 

「あの時、グリシャとクルーガーが出会うあの場に向かうことが出来ればもしかしたら叶うかもしれない」

 

 

 でもただの子供がなんの機械も持たずにたった一人で向かえるわけがないだろうと話す。

 それは当然だ。俺も無謀じゃない。

 ただの可能性の話だ。もしも先に皆よりマーレに向かえたらと。誰にも会わずに、エレンのように一人だけ潜入し戦うエレンの場に居合わせられたら。

 

「ジーク、未来を変えたいか?」

 

「……無理に決まってるだろ」

 

「今ここは過去だ。俺も未来からきたわけじゃない。エレンを止めたいなら協力する。だからどうすればいいのか未来について細かく教えろ」

 

 

 ジークが背後霊のように引っ付いてるのが普通なら、未来を教えてくれたら。

 エレンが敵だと言うなら俺に少しは協力してくれるかもしれない。

 物にも触れられるし、縄でしばれるけどそれを他人には空中に縄が浮いてるように見えてるみたいだし。それを、何かに利用できるなら。

 

 俺の考えにジークは面白そうに見てきた。

 

 

「……今は無理でも、俺がパラディ島に行く時に接触出来たらきっとマーレにも行ける。可能性は低いけどそれが成功できれば」

 

「そこまで待つ必要はある、か……」

 

 

 それに、ジークの手を借りることを選べばきっと何処かで誰かが死ぬだろう。俺が救えるはずだった人も死ぬかもしれない。

 どうしたらいいのか……。

 

 

「ジーク、お前と協力するなら俺は何をしたらいい?」

 

「それはっ────」

 

「ジーク?」

 

 

 青ざめた顔で俺の後ろ側を見つめるジークに、ハッと我に返った。ピリピリと肌が突き刺さるように痛い。これはおそらく危機察知。

 

 後ろへ振り返れば、そこにいたのは久々に見た気がする男、エレンだった。

 やはり目は薄暗く淀んでおり、何を考えているのか分からない表情。少し怒っているのかもしれない。

 

 

「楽しい話をしてますね。全部忘れてください」

 

「エレン────」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

「……あれ、ここは」

 

「気がつきましたかリヴァイさん」

 

「エレン? 俺は何をやって……」

 

「気絶したように眠ってたんですよ。最近いろいろと休む暇なく働いてたでしょう?」

 

 

 俺の額に手を当てたエレンが笑う。

 

 

「ファーラン君も後で見舞いに来ると思いますよ。リヴァイさんが倒れたことを知ったようなので。……今は寝ていてください」

 

「……ハッ。それなら他の奴等にも知られたな。襲撃されるかもしれねえ」

 

「寝てろ」

 

 

 そういって雑に布団を俺に被せてくるエレン。ケホッと咳が出てきたのでかなり重症かもしれないと思い、素直に従うことにした。

 

 

「俺が少し離れただけでこれかよ……まったく……」

 

 

 エレンが離れたとは何なのか。エレンは俺と一度も離れてはいないはずだろう?

 その言葉の意味が理解しきれないけれど、眠気に負けて俺は意識を落とした。

 

 

 

 


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