進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい 作:ちゃっぱ
第十話、食事
「……エレン、ここに保管しておいた縄が無くなっていたんだが、何処にやったのか覚えているか?」
「それならリヴァイさんが盗人か変態が出たとか言ってそいつを縛るために持っていったでしょ?」
「そう、だったか?」
「そうですよ」
にっこりと笑った声と言葉に、曖昧に頷く。
この地下街じゃいろいろ喧嘩に巻き込まれるし、殺されそうになったことも何度かある。だから俺が忘れていただけか……。
「それよりも、ご飯食べなきゃだめですよリヴァイさん。今日何も食べていないでしょう。だからそんなに小さいんですよ」
「うるせえチビなのはまだガキだからだ。今に見てろ」
「いやそこは諦めましょうよ。未来から来た俺がはっきり断言するんですから!」
「未来は不確定に変わるんだろ! なら俺がお前以上にでっかくなってもおかしくない未来があるはずだ!!」
「大丈夫です周りが変わってもリヴァイ兵長だけは頑固として変わってませんでしたから!!」
「ふざけるなクソ」
「膝打ち止めてください痛い!」
いつものように軽く喋るが、エレンの様子は変わらない。
いや今日は元気な方だろうか。最近はなんか疲れたような顔だったし、変に苛立っていたようにも見えたから。
「……今日は堅いパンか」
「スープにするんですか?」
「ああ、どうせファーランも来るだろうし、味が薄いが……蒸留水で軽く玉ねぎスープでも作って、それに浸して食うとする。……お前も食うか?」
「いや俺は実体がないので無理ですよ」
「でもお前には触れるだろ? ……あれ、触れる? なら逆に物を持ったりいろいろ出来るんじゃ」
「リヴァイさんこっち見て」
「あぁ?」
じっと見つめてきたエレンの目は緑色の星のように見えた。
頭を触ってきたエレンに、少しだけ戸惑う。
……あれ、俺何やってたんだっけ。
「エレン、今何かやったか?」
「いいえ。ほらリヴァイさん、スープ作らないんですか?」
「スープ……ああ、そう。そうか。そういえばスープ作るとか話してたな。そうだった。作らなきゃな」
記憶が少しだけぼやけているのはどうして────いや、今は考えるのは止めよう。
スープを作るのを優先しよう。
小さく溜息を吐いたエレンに気づいてはいたが、その意味を『今』考えてはいけない気がした。
じっとこちらを見つめてきたエレンは、そんな俺の考えに気づいてしまったのか。
「……チッ、スープを作るのに木材消費するのもアレだしな、違うのも作るか」
「どうせならリヴァイさんの好きな紅茶とかどうです? 茶葉はまだありましたよね?」
「まぁな」
「ああそういえばリヴァイさんって最近身長伸びました? ちょっとだけ服の裾が短くなっているような」
「本当か! あっ、いや。ゴホン……まあ成長期だからな。そろそろこの伸び切った髪も似合わなくなるだろうし、切って売っちまうか……」
「ぶふっ」
「笑うなエレン。ふざけるなよクソ」
「だから何度も蹴らないでくださいよ!」
「チッ────それにしてもファーラン遅いな」
「買い物でしたっけ? なんか市場に面白いのがあるからそれ貰ってくるとか……」
「紅茶だったらいいな」
「それで喜ぶのリヴァイさんぐらいです」
「うるせえ」
家の外から聞こえてくる足音。誰かが喧嘩でもしているのか、怒鳴り合いが響く。
エレンは椅子に座り、作業している俺の後姿をじっと見つめてきた。
「…俺とファーランだけ食っててお前はみているだけってのもアレだ。エレン、お前も食わないか?」
「いりません」
「そう、か」
デジャヴのような気がしたが、本能的に鳥肌が立ち、警戒するような感覚に襲われたので考えるのを止める。
「最近物価も高くなりやがる……はぁ……」
「まだ子供のリヴァイさんにそんなこと言われたら世も末ですよ」
「うるせえ精神年齢は子供じゃねえ」
「ハイハイ」
地下街で食料などの供給はないに等しい。あるとしても何か意図があってのことか、身内が地下街に追いやられた人を救うための方法か。
地下にいるネズミを喰らっても生きられるかどうかわからない程度には貧困なのだ。豊かな国ってわけじゃねえし、どこぞのお偉いさん達が無料で配給してくれるわけじゃない。
国は────というか、このパラディ島の王はいつか来る罪の裁きを待っている。かつてマーレなどと言った国々を巨人として襲い、エルディア人は残虐な悪魔だと思われた。だから何も知らない子孫でも、その罪は同じもの。死はその代価だと思われている。
そのせいで救えるものを救わず。弱い者はそのまま死んでいく弱肉強食が地下街に根付いていた。
親もいない子どもならばより酷い。家を持たずに路上暮らしな奴もいるし、パン一個盗んで死にかけたファーランだって同じだ。
だからと言って地上が安全かと言われたら、それには頷ける自信はない。
なんせいつか巨人がやってくるだろうから。
「エレン、地下街と地上の価値観は同じか? 食料もここまで高くなるのか?」
「まあ、地上も地下街も似たようなものですよ。巨人に襲われた直後の数か月間は本当に酷かったですし……」
「食料不足が原因か」
「それだけじゃありません。俺達はマーレ人……エルディア人以外の人がやっている普通の暮らしすら出来ていない。これが普通だと思わないでください、リヴァイさん」
そう言ったエレンが拳を軽く握る。
家の外は騒がしく喧嘩している音が響くのに、まるで別世界かと思えるぐらい部屋の中はとても静かだった。
エレンの目を見つめるが、奴が何を考えているのか分からない。何を見てきたのかすら、ちゃんと全てを理解できないのだろう、俺は。
「エルディア人は全員、家畜と同じなんですよ」
「……マーレにいる奴らもか?」
「あいつらにだって良い奴はいます。助けてくれた人もいた。でも世界は俺達を認めない」
「だから壊すしかないって?」
「はぁ、もうこの話題は止めましょう。せっかくのスープが美味しくなくなりますよ」
「……エレン、本当に対話は諦めたのか?」
そっぽを向いたエレンに俺はもう何も言うことはない。
彼にかけるべき言葉すら思い浮かばない。
(……そういえば、俺はエレンの何を警戒していたんだったか)
このままじゃいけないのは分かる。
エレンの手の平の上で踊って、それですべてを終わらせたくはない。
ここに居たらエレンの思うが儘な気がする。ケニーには悪いが、どうにかしてここから出なければ……。
そう思っていると、扉を叩く派手な音が聞こえてナイフを手に警戒しつつ外へ出た。
そこにいたのはファーラン含めた数人の子供たちだった。
「リヴァイ!」
「りヴぁーい!」
「リヴァイ! なんで俺達と市場に来なかったんだよってかいい匂いする!」
「……なんだファーラン。遅かったな。あと何でガキども連れてきたんだ」
「あーはは。ちょっと事情が……って待って! これ見てくれよリヴァイ! ようやく入手できたんだ!」
「あぁ?」
「リヴァイが欲しがってただろ! 立体機動装置!!」
リヴァイが先に協力を願うならどっち?
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調査兵団(エルヴィン)
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ゴロツキ組(ケニーおじちゃん)
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幼馴染組(アルミン)
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マーレ組(アニ)
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エレン