進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい   作:ちゃっぱ

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第十一話、邂逅

 

 

 

 あれから数年と少し経ち、中学生ぐらいの年齢になったかと思う。きっと。おそらく。

 身長がそこまで伸びなかったのでファーランとそこに近い区域で生まれたチビ共の面倒を見ていたらあいつらの方がやけにでかくなりやがったのが原因でもあった。

 

 一応これでもファーランとは大体同じぐらいの年齢だと思うんだが、そう見えないのは身長のせいか。

 酔っぱらいやら通行人がわざと俺たちを見てファーランの方を兄扱いするのでそのたびにぶちギレてはぶん殴りに行く程度には神経質になっている自覚がある。

 

 身長の扱いは充分注意してほしい。

 これでも結構気にしてるんだ。いろんな意味で。

 

 

「……リヴァイさん」

 

「あぁ?」

 

「逆立ちしても身長は伸びませんよ」

 

「うるせえクソが」

 

 

 家の中ではいつものようにエレンが呆れたような目で俺を見てくる。

 一発蹴りでも食らわせようかと思ったがどうせ避けてくるだろうと思い止めた。まだ俺はエレンが避ける程度にしか強くないってことだ。もっと頑張って鍛えて、いつかエレンにブチ当ててやろうと思う。

 そう考えていたのがバレたのか、ドン引きした顔で「凶悪な面になってますよリヴァイさん。まだ子供なのに今からそれで大丈夫なんですか!?」とか心配されたんだが解せぬ。

 

 

「今日はどうするんですか?」

 

「ファーランはチビ達と立体機動の練習してるからな。……俺はちょっと、散歩でもしてくる」

 

「散歩ですか」

 

「ああ、どうせいつか壁の外でこいつを存分に使うことになるだろうし、今のうちに慣れさせてもらう」

 

 

 立体機動装置を身につけながらも言う俺の言葉に、エレンは真顔で何も言わずに佇んでいた。

 その態度に思うことはあるが、今は何も聞かない方が賢明だと判断する。

 

 

 ────どうにも、俺の記憶は曖昧な部分があるように感じたからだ。

 それを指摘すればするほど、きっと俺の記憶に穴が開くのだろう。エレンにとっての地雷か、それとも最悪の未来を防ぐためにある程度は修正しているのか。

 

 とにかく余計なことをこいつに言うよりは、自分で行動した方が早いと判断する。

 ……今のところは、だが。

 

 

「ファーランって人、なんだかアルミンに似てますね」

 

「アルミンほど頭は良くないだろ。人と対話して距離感を掴むのは優れてると思うが……」

 

「まあリヴァイさんそういうの苦手ですもんね。この前だって凶悪な顔してたせいで盗賊か何かだと勘違いされて襲われてましたし────いっだぁ!」

 

「余計なお世話だ!!」

 

「飛び蹴りはやめてくださいよ兵長! 腹打ったんですけど!?」

 

「うるせえ俺はまだ兵長じゃねえ」

 

「ああ……そう、そうですね。リヴァイさん」

 

「…………とりあえず、ファーランについては後で考える」

 

「そうですか」

 

 

 そう。いつかの未来で死ぬと確定しているファーランはどうにも社交性に優れているようで、様々な人と渡り歩き情報を集める力を身につけていた。立体機動を手に入れられたのもそのおかげと言える。

 このまま俺と一緒にいつか調査兵団に捕まって壁の外に出るよりは、どこかで地下に潜って憲兵たちや王族周りでの動きを探ってほしい。

 いつかきっと、エレンとクリスタ────後のヒストリアと名乗る少女を連れ去る事件の際に協力してほしいから。

 

 

(まだ覚えてるから、大丈夫だとは思うが……)

 

 

 前世の記憶は紙に書き写した。そのせいでずいぶんと出費してしまったが、人の頭は数年経てば忘却する記憶が増える。曖昧な前世での原作知識を余計に曖昧にしてたまるかと思い行動したが、それが良かったのかもしれない。

 パラディ島の文字は読み書きできないので、前世での文字になってしまうが……。 

 

 

「……リヴァイさん」

 

「あぁ?」

 

「行くなら遠い方が良いですよ。今は憲兵たちがいっぱいいて、万が一捕まったら面倒ですし」

 

「そうか」

 

 

 エレンの忠告に頷いた。

 立体機動装置を持った俺たちはある意味処罰の対象だろう。なるべく顔も見られないよう気を付けて進まないとな。

 

 独学で立体機動装置をうまく使えるようになったのは、今のところ俺だけ。

 ファーランはあともう少しでコツを掴めると言っていたから出来そうで、他のチビ達は何度やっても無理そうな感じがする。そういうところも世界の修正力が働いているというのだろうか。エレンは何もしてないようだったから、ただの偶然かもしれないが。

 

 

「行ってくる」

 

 

 その言葉にエレンは返事をしない。違和感を感じて振り返ればいつの間にかエレンはいなくなっていた。

 多分また未来に戻ったのだろう。ここ数年は俺と一緒に居たり、突然いなくなったりを繰り返していたのでもう慣れたが。

 

 家の中は俺一人だけ。ファーランたちがいないせいか、とても静かで寂しい空気が漂っている。外も珍しく静寂に包まれていた。

 

 その空気に居心地の悪さを感じてしまい、頬をかきながらも何も言わずに部屋の外へ出た。

 

 

(さて、何処へ行こうか……)

 

 

 とりあえずエレンが言っていた通り地下街の端っこにでも行こうかな。

 どうせだし地上への穴が開いたあそこにしよう。

 

 ……たしか、あのファーラン達が出てきたアニメの中にあった地上へ繋がる穴の方。そこだけは記憶していた。アニメで見たときに、鳥が飛び立つ姿は美しい光景だなと思ったから。

 

 地下街の端。通常では人が通れない崖のような位置に立つ場所に一部分だけ地上への光が差し込む場所があったはずだ。

 そこから地上へ行くことも出来そうだったが、さすがにファーラン達をおいて出るわけにはいかなかった。

 

 あのままあいつらを放置していたら野垂れ死ぬかもしれない。

 チビ達は自分の身を守れないし、ファーランも戦闘特化というわけじゃない。まだ教えなきゃいけないことが残っている。

 

 もう少しだけこの地下街の生き方を教えて、ちゃんと一人で行動しても死なない程度には育てよう。

 それぐらいの責任は俺にあるだろうから。

 

 そう思いながらも日にあたってボーっと考えていると、後ろに見知った気配を感じて振り返った。

 そこにいたエレンはまたも呆れたような顔で俺を見ている。

 

 

「……日向ぼっこしても小さいままですよ」

 

「うるせえエレン。別に身長が理由でこっちに来たわけじゃねえクソが!」

 

「でもリヴァイさん最近ファーラン達に身長を抜かれて焦ってますよね? チビって呼んでるけどもうチビじゃないし、見知らぬ他人にその呼び名知られて爆笑されて『お前の方がチビだろ!』って喧嘩売られてましたよね。速攻で三倍返しにして終わらせてましたけど」

 

「チッ、エレンよ。お前最近身長についていろいろ言うようになったな。喧嘩売ってるのか? 三倍どころか十数倍で買うが?」

 

「嫌ですよ俺痛いのが大好きな変態じゃないんですから」

 

「俺はチビじゃねえ。まだ成長期だ!!」

 

「そ、そうですね……」

 

「ドン引きすんな!!」

 

「ねえあなた、誰と話してるの?」

 

「あぁ決まってんだろそこにいるエレンと────誰だ?」

 

 

 ここは地下街からは誰も来られない場所だ。立体機動装置を使わない限りは急な崖みたくなっていて、昇らないといけない場所。地下街の端っこだし、普通に行けるわけがない。

 

 それに子供の声だった。女の子みたいな明るめの声がした。

 地下からじゃないということは、おそらく地上────。

 

 

 

「あぁ?」

 

 

 不意に何かが空から落ちてくる。よく見れば頑丈そうなロープだった。

 空から地下街へ降ろされたそれに思わず目を見開いた。

 

 

(何やってんだ一体。憲兵共が知ったら死罪にもなり得る犯罪行為だぞ)

 

 

 まるで前世で読んだことのある光景。あの地獄から這い上がりたい亡者たちの物語たる蜘蛛の糸を思い出した。

 

 よく見れば太陽の光を遮る小さな影がこちらへゆっくりと下りてくる。それは子供だった。俺と同年代かそれより下ぐらいの子供だ。

 

 

「そこどいてー! ちょっと失礼!」

 

「はぁ?」

 

 

 上からロープを垂らした子供は、必死に縄から下へ降りてくる。

 しかし体力がないのか、それとも無理に下へ降りようとしたのか最後は尻からずり落ちて強打し、悲鳴を上げていた。

 

 短い髪。顔立ちは中性的で性別がはっきりとしない。

 しかしその顔は見たことがあるものだ。何処で見たのか思い出せない。でもその感覚があるということは、こいつは前世で見た漫画の知識の中にいるキャラクターの一人ということだろう。きっと。

 

 そう思っている間に何とか痛みから回復してきたらしい子供が、強打した部分を擦りつつゆっくりと立ち上がってきた。

 

 

「いでで……ふぅ、着地成功! ひぇーここすっごい高い場所だったんだね! あははっ、崖じゃん! ねえねえ貴方ここの地下街の人間なの!? ってちょっと待って、それ立体機動装置!? 手に入れたのすっげぇー!!」

 

「おい待て、話を──」

 

「ねぇここの地下での暮らしってどんな感じ? なんか秘密とか隠されてない? 窮屈な場所ってない? 何か違和感を感じるとかない? 立体機動装置ってどうやって手に入れたの!? ねぇねぇ!!」

 

「うるせえクソガキ! 落ち着いて話をしやがれ!!」

 

「いったぁ!?」

 

 

 奴の尻に向かって蹴りを入れると、先ほど落下した時のダメージも残っていたのか地面に転がってもだえ苦しんでいる。それに同情するような目でエレンが眺めているが、奴の姿が見えていないのか何も手助けをしようとしない。

 

 いつもだったらここらは家の中と同じように静寂に包まれている場所なんだが、この女か男かわからないガキのせいで喧嘩している時みたく騒がしい。

 

 

「お前なんで地上から降りてきたんだ、戻れなくなったらどうするつもりだ」

 

「大丈夫だいじょうぶ。その時はちゃんと考えてたし、地上へ通るための通行費ぐらいは用意してたよ。それに実際に地下街を見てみたかったんだ!」

 

「あぁ? なんで?」

 

 

 問いかけた言葉に反応し、頬を赤らめ息荒く俺に眼前まで近づいてきやがった。

 

 

「地下街ってどうやって作られたのかなって不思議に思ったんだよねぇ! 自然とできたものなのか、それとも人工的なのか。それにどうやって地下に移り住もうって決めたんだろうとか何か隠されてるんじゃないかって考えだすと止まらなくて衝動的に来なきゃって思ったんだよ!」

 

「地下街の危険を承知でかよ……変態か……」

 

「私は変態じゃないよ! 実際に目で見て知る、見聞を広めるためにはそれぐらいの危険は覚悟する必要があると思うんだ。何で地下街が出来たのかを知れば、もしかしたら第二の地下街が出来るかもしれない。知って初めて自分の手で何か作れるかもしれないだろう! 人が住む場所、家畜とかそういうのが作れる場所が増えればもっと豊かになれると思わないかな!?」

 

「いや知るか」

 

「冷たいなぁもう。……それで、君は?」

 

「あぁ?」

 

「何で君はここへ来たの? 立体機動装置なんて格好良いものつけてさぁ! やっぱりいいよねそれ! 人類の文化の最先端だよね! それがあれば壁の外へ出られるし、調査して何かを見つけられるかもしれない! いつか兵団に入ろうかなって思ってたけど、羨ましいなぁー!」

 

 

 こいつ本当にうるさい。

 でもまあ、もう帰ろうかなと一瞬思ったが、地上へ行くための一つの手になりそうなので何も言わないでおく。

 

 

「地下街について教えてくれない!? 貴方とは良い友人になれそうな気がするんだ!!」

 

「俺はそうは思わないが……」

 

「名前教えてよ! 貴方の名前!」

 

「名前を問いかけるならまずはお前が先だろ」

 

「ああ、そうだね。確かにそうだ。名前は自分から名乗るのが礼儀ってもんだ!」

 

 

 

 一瞬名前を問われて俺をどうするつもりかと警戒してしまったが、まあ子供だし大丈夫だとすぐに意識を切り替えた。名前を聞く奴は大抵が悪意を持って近づく輩だからな、この地下街では。

 

 立体機動装置について憲兵共に何か告げ口するようなら報復ぐらいはしてやろう。

 

 その程度の好奇心旺盛な子供だと思っていた。

 

 

 ────その時は。

 

 

 

 

 

「私はハンジ・ゾエ。よろしくね!」

 

 

「ッ────」

 

 

 

 その声に、その言葉にようやく合点がいった。

 エレンの方を思わず見たが、奴は無表情で俺を見つめている。これはまさか、試しているのか?

 

 俺が急に変な方を見たのが気になるのかハンジが「ねえねえなんでそっちの方向見てるのそういえばあなた派手な独り言呟いてたよねもしかしてそういうお年頃!? それとも頭がぶっ飛んでるのそれが地下街での普通なの!?」と息荒く問いただそうとしてきたのでとりあえず蹴り入れた。そうしたら地面に転がって呻き声をあげつつ「急に物理行使とか酷い!」と喚いてきた。それに適当に謝っていると、また俺の事が気になったのだろう。

 

 奴は俺に向かって手を伸ばして握手しようと言ってくる。

 

 

 

「私はちゃんと名前を言ったよ。今度は貴方の番だ! さあ、君の名前は?」

 

「……俺は、リヴァイだ」

 

「そっか、よろしくねリヴァイ!」

 

 

 

 

 

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