進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい 作:ちゃっぱ
最近、妙に地下街が騒がしい。
血生臭い騒動とはわけが違う。上にいるクソな兵士共が誰かを探して地下街を荒らしているわけじゃない。ゴロツキが何か悪だくみをして動いているわけでもない。
その中心にいる人物は、意外にも小さな子供だった。
女かと思えるぐらい幼く、小柄なくせに一匹狼を気取ったガキだった。
しかしいざ突っかかって喧嘩を売ると容赦なく歯を折るぐらいには狂暴なのだ。
彼は一人でよく地下街を駆けまわっていた。
以前はケニーとかいう男に連れられて様々な場所へ来ていたようだが今はその男はいない。捨てられて一人になり自暴自棄になって暴れでもしているのか。
しかしいつかはくたばると思っていたガキは意外にもこの地下街で根を張りいろんな場所に顔を出すようになった。
地下街で唯一酒場となっている場所。犯罪者が集まる厄介なアジト。商人たちが護衛兵を連れつつも動いている市場。そうしてそこらで彼は自分の顔を売り、金を稼ぐようになったのだ。
親も連れていない一匹のガキのくせに。
まだ十代にもなっていない幼い年齢のガキが一人で地下街を生きていけるわけがないのに、そいつは逞しく日々を過ごしていた。
ゴロツキ達に囲まれようとも全てぶっ飛ばし、犯罪者共に襲われ殺されそうになっても反撃し、その強さに皆が彼を認めるようになった。
この地下街は実力がすべて。
強いだけ生きるための選択肢も増えるだろう。何故こんなガキが地下街にいるのかと思う奴もいた。兵団などに入隊すれば、きっといい実力者になれるだろうと。
そう言ってきた男は外から来る新人の商人の一人だった。まあどこぞのゴロツキに襲われここへ来ることはなくなったが。
この地下街で生きていくためにはある程度ネジが外れていないといけない。
強さだけではない。他人に容赦しないその冷徹な精神。時には仲間を切り捨てるために自分を優先する自己中心的な行動力。太陽の光を浴びれない俺たちはいつか身体がいかれて死んでしまうだろう。それまでのつかの間の楽園を自分たちで築くのだ。
だからあのガキもイカれていた。
たまに誰もいない壁に向かってブツブツと呟いているのだ。まるで誰かと会話しているかのように。
そうしてたまに誰かから逃げるかのように地下街を駆け回っていることもあった。
────誰かに追いかけられているわけじゃないのに。
「……今日もまたやってるよ」
「ああ、そうだな」
地下街は今日もまた騒がしい。
一匹のガキが妙にうるさく駆けまわり、誰かに向かって怒鳴っているからだ。
ガキの方を見たが、そこには誰も追いかけてきていなかった。
ただ駆け回っているのだ。
誰もいない方を見て、何もない場所へ向けて怒鳴っているだけで。
────本当に、頭が狂った変なガキだ。
・・・
いつものように地下街でちょっとした金稼ぎをしている間。
俺の背中へ背後霊のごとく付け回すエレンがまた何かを決意したのか、突然襲い掛かってきたので狭い道やら屋根上やら逃げ回っていた。
普通の人間だったら気づかなかったかもしれない。
だって襲い掛かってきたのだってすごい静かだったし、鳥肌とか立ってなかったら避けようともしなかっただろう。
なんか俺、あいつが普通に記憶を消そうとしたときは本能でわかるようだ。
危機察知とも言うべきか。流石は人類最強のスペックと言うべきか。
「だから言っているだろエレン! 俺はこの記憶を消したいわけじゃない!」
「大丈夫ですよリヴァイさん俺が消したいのは貴方の余分な記憶であって、それ以外はそのままにします! じゃないとこんな地下街でリヴァイさん死んじゃうでしょ!」
「うるせえ人類最強舐めるな! ってかやっぱり俺の前世の記憶見たなお前!!」
「始祖の巨人や諸々の力舐めないでください! あと俺が主人公の漫画ってちょっと気持ち悪いですね」
「照れんじゃねえ安心しろよお前は結構人気だったぞ!」
「気持ち悪い!」
「ぶちギレながら俺の記憶飛ばそうとするな!!」
俺と接触しないと記憶が消せないのだろうか。
駆け回りつつも俺に向かって手を伸ばしてくるエレンから避ける。
しかしながら────。
「ハッ、やっぱりまだ子供なんだな。あのリヴァイ兵長が俺にあっけなく捕まるとか……」
「……エレン」
いつの間にか誘導されていたのか。
壁際に追いやられ、俺の頭を触ってくるエレンに派手な舌打ちを零した。
鳥肌が立つ。
危機感が身体中に巡ってくる。
しかし目に光がない────未来に絶望しきったこの男は本気で記憶を消したいようだった。
俺が抵抗してもすぐに壁へ押さえつける。
未来のため、自由を手にしたいから必要な物を切り捨てるのか。
それで俺をただのリヴァイにするのか。ようやく思い出したのに。
「いっ……」
「えっ?」
バチリと、エレンと俺の頭の間で何かの火花が飛び散った。
エレンの指先が負傷している。それに彼は眉を顰めてものすごい顔で俺を見ていた。
「そっか、アンタの記憶は始祖ユミルのものとは別の存在。前世の記憶は、別世界のものだからか……」
「はっ?」
ぼそぼそと呟く男に俺は顔を見上げて首を傾けた。
身長差が激しい。今の俺の身長はこいつの股下に届くかどうかってぐらいなのに、こいつ容赦なく壁に引っ張って俺を持ち上げてくるからな。今の俺って他の奴から見たら宙に浮いているように見えるんじゃねえだろうか。
そう呆然としながらも現実逃避していた。
なんか危機感が急になくなったせいだろうか。エレンの雰囲気は怖いままだけれど、殺しにかかるような冷たいものじゃないから大丈夫かなと思うんだ。
そうして奇妙なことをぶつぶつ呟いたエレンが俺を見て言うのだ。
「リヴァイさん、記憶を消したいと願ってください」
「嫌に決まってんだろうがクソが」
「いいから早く! 俺の言うことに従ってくれよ!!」
「嫌に決まってんだろうがクソが!!」
「何度も言う台詞か!?」
「それはこっちの台詞だよ!! お前記憶消せだの消してと願ってだのふざけたこと言ってんじゃねえよ! これは俺の記憶だ。俺の人生全てだ! 記憶を消すってことは今の『俺』を殺すようなものだ! 覚えとけクソガキ!!」
「いやどっちかって言うとリヴァイさんの方がクソガキじゃ……」
「うるせえ精神年齢考えろクソガキ」
無理やり身体を捩じって奴の手から逃れる。
ようやく地面に足がついて、少しだけ安堵した。それをエレンに気づかれないようニヤッと笑う。
「つまりあれだな。俺が了承しないとお前はちゃんと記憶を消せねえってことか」
「…………」
「否定もねえか」
そうして笑った俺に、エレンは真面目な顔をして睨みつけてきた。
「リヴァイさん、世の中には知らなきゃよかったってことがあるんですよ。アンタのせいで未来が変に捻じれるんだ」
エレンの考えていることとは違う未来に行けるなら、それでいいような気がするんだけどな。
「未来は嫌な方向に行ったか?」
「リヴァイさんに教えるわけないだろ」
「そうか」
肯定はなかった。
だからつまりは────俺が想像するよりはマシな方にいってるかもしれない。
そう思いたいな、俺は。
地下街編を多めに書いてもいいでしょうか?
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いいぞ、いっぱい書いてくれー!
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調査兵団からが本番だろ早くしろよ